CHiYO NOTE   作:苺ジャム

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第六十三話 特務部

URA特務部長、夜神総一郎は苦悩していた。

近頃水面下で騒ぎを起こしている新興宗教団体「鋼心会」の対応に手をこまねいているからだ。

 

ウマ娘こそが至上の存在であるという教義のもとウマ娘を信仰する団体で、基本的に大人しいがこの団体も一枚岩ではなく、過激派の中にはレースを中止にしろと声高に叫ぶ者もおり、現在夜神総一郎はその対応に追われているのだった。

 

「よりによって三冠のレースを中止にしろなどと…妄言もいい加減にして欲しいものだ。」

 

総一郎は思わずため息を漏らす。

いくら訴えられようとも、全国が注目しているクラシックのレースを中止に出来るわけがない。

何度もそう言っているのだが、彼らは聞く耳を持たない。

ここ最近URA本部のビルの前には常に5〜6人の人間がデモ活動を行っており、非常に迷惑している。

 

「なんで分かんないんすかね〜、レースの中止なんて余程のことがない限りありえないじゃないっすか。それなのに何度言っても『ウマ娘を見世物のように扱うのは辞めるべきだ』の一点張りですよ。彼女たちは自分の意思で夢を追ってるって言うのに!」

 

そう言って憤慨しているのは夜神総一郎の部下の1人である松田桃太だ。

彼は総一郎がこの部署に配属されてきた2年後にやって来た部下であり、それなりに付き合いも長い。

 

「まぁそう言うな、松田。彼らも彼らで思うところがあるんだろう。俺たちに出来るのは納得して貰えるよう説明を重ねる事だけだ。」

 

そう言ったのは夜神、松田と同じく特務部所属の相沢周市だった。

彼は松田よりも1年早くこの部署に配属された。

部下である松田に対するあたりはきついところがあるがその実力と夜神総一郎との信頼関係は確かなものであり、よく呑みに行く仲でもある。

 

「お前も少しは模木さんを見習ったらどうだ、俺たちがこうして話している今だって黙々と仕事を進めてるんだぞ。」

 

たった今話の引き合いに出されたのは、奥のデスクで黙々と事務作業をこなしている男、模木 完造である。

仕事人間とはかくやというような人物で、ほとんど喋ることがなく、あらゆる仕事をそつなくこなす特務部の中でもとりわけ優秀な職員である。

口数が少ないので職場の人間との人間関係が悪いかと思われがちだが実際はそうでもなく、大抵の仕事を任せれば完璧な状態で返ってくるからという理由で同僚からの信頼は厚い。

 

「えぇ〜、模木さんは真面目すぎますよ!いくら名誉あるURA職員と言えど、多少の遊び心は持つべきだと思います!」

 

「お前はちょっと遊びすぎなんだよ。この前の勤務時間中にお前がこっそりレース見てたのバレてるからな。」

 

「えぇ〜?!あれバレてたんですか?!」

 

「そこ2人、そろそろ仕事に戻れ。鋼心会の件もそうだが、そうでなくともまだ大量に事務作業が残っているだろう。口ではなく手を動かせ。」

 

言い争いをしている2人に、夜神総一郎が一喝を入れる。

それを聞くなり、松田桃太は渋々自分の持ち場に戻り、相沢周一は不満げな表情をしながら事務作業を再開するのであった。

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

そして時は経ち、終業時間となった。

URAの職員らが各々帰り支度を始める。

特務部も多分に漏れず帰ろうとする中で、またしても松田が口を開いた。

 

「そういえば部長、今度月くんとその担当の娘が皐月賞に出るらしいですね!」

 

皐月賞の出走メンバーが、つい2日前のURA上層部の会議を経て決定された。

この情報は一般にはまだ公開されていないが、URAの職員である彼らは、一般の人間よりも報道陣よりも、誰よりも先にそれを知れる立場にあった。

 

「…あぁ、そうだな。」

 

自分の息子の話題だが、夜神総一郎は表情を緩ませることもなく返事をする。

 

「担当のサクラチヨノオーってウマ娘も既にGIを勝ってる素質あるウマ娘ですし、もしかしたら月くん、トレーナーデビューから2年でクラシックレースを獲っちゃうかもしれないですよね〜」

 

「まぁそれは確かにそうかもな、実際各新聞社の下バ評でも軒並みサクラチヨノオーが一位だ。それを1年で育て上げた月くんも確かな手腕を持っているとみて間違いないだろう。」

 

部長の息子ということもあったのかもしれないが、普段は松田の言うことに対して何かと突っかかる相沢も、これには素直に同意した。

これに端を発し、帰り際の部署内で各職員が今回の皐月賞の結末の予想を展開し始めた。

そうはならないだろう、と思われるだろうがURAの職員は皆ウマ娘が好きであり、レースが好きなのだ。

それを語れる機会があらば皆が思いの丈を語るのは当然の事なのである。

 

その激論はしばらく止むことはなく、最終的にはやはり月くんが皐月賞の優勝候補筆頭というところで落ち着いた。

 

「部長はどう思いますか?」

 

その一言で場の空気が一瞬張り詰め、先程までお互いの意見をぶつけ合っていた者達も総一郎の一言に耳を澄ましていた。

一線を退いたとはいえ過去に華々しい経歴を持つ中央のトレーナーだった現URA特務部長の意見は、皆が気になるところだった。

そんな静寂の中、夜神総一郎は思い口を開く。

 

「長いこと見ていると、むしろ誰が勝つか負けるかなんてのは分からなくなるものだ。私としては自分の息子にいい結果を残して欲しいという気持ちはあるが、結果というものは安易に予想出来るものではない。」

 

「現役の頃に言われた言葉を借りるとするならば私からは『中央を無礼(なめ)るな』…としか言えないな。さぁ、そろそろ消灯の時間が近い、外に出るぞ。」

 

その長年の風格を感じられる対応は、思わずその場にいた全員が息を飲むほどだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、そんな話があったことなど世間は露知らず、時は移ろい遂に4月に突入する。

今年最初のクラシックレース皐月賞まで、あと2週間弱。




久々のキャラクター紹介、はっじまっるよー!

相沢周一
超常識人。
何かと特殊な感性の持ち主が多いデスノート世界においてはストッパーとして機能することが多かった。
笑いのセンスは松田以上模木さん以下。(独断と偏見)

模木完一
デスノート世界で2番目に仕事が出来る超優秀な人材。
彼がデスノート対策本部に残っていなかったらあそこまでキラを追い詰められなかったのではないかと言われているほど多大な功績を残している。
加えて真面目さだけでなくユーモアも兼ね備えているため無敵。
模木さんがミサミサのマネージャーをする回は個人的デスノート三大名シーンにノミネートしている。
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