このウマ娘、リュークの姿が見えている…
ノートの所有者であるチヨノオーにさえ見えていないのだから、てっきり誰の目にも見えないものだと勝手に思っていた。
しまった、動揺を顔に出してはいけない。
何も知らないという体でやり過ごそう。
「いや、分からないな。僕の後ろには誰もいないと思うけど?」
リューク、頼むから大人しくしててくれよ。
「そう…ですか。すみません、私、よく霊的なものが、見えるんです。周りに言っても…信じてもらえないんですが。」
霊感が強いタイプなのか?
もしそうだったとしても、死神が見えるはずはないんだが…
理由はどうあれ、彼女には今リュークが見えている。
「そうなんだ、霊感が強いんだね。教えてくれてありがとう。僕の名前は夜神月。新米のトレーナーさ。よろしく。」
「あ、いえ…こちらこそ、よろしくお願いします。
私は、『マンハッタンカフェ』と言います…。あの、もし困ったことがあれば…お力になりますので…。」
「ありがとう、助かるよ。」
そう言って、僕はマンハッタンカフェと別れ、中距離コースを目指した。
「リューク、どういうことだ?ノートに触れたことのない人間にはお前の姿は見えないはずじゃないのか?」
「そう責めるなよ。俺だってどうしてあの女に姿が見えるのか分かってないんだから。」
「そういえばリューク、お前は今も人間の寿命が見えるのか?」
前にも気になっていたことだが、リュークは今、死神の目を持っているのだろうか。
そしてリュークは今も『死神の目』の取引が出来るのだろうか。
「……月、実はな。俺、多分死神じゃないんだ。」
「なんだと?どういうことだ?」
「まぁ…人間の寿命が見えなくなってるってのもあるんだけど。
最初は気づかなかったんだよな。でも気づいたんだ。今俺に見えてる数字は多分能力値みたいなもんだ。」
…?
どういうことだ?
「ちょっと待ってくれ。リューク、お前は今人間の寿命が見えないが、何か別の数字が見えているってことか?」
「あぁ、そうだ。俺自身この数字が何なのかよく分かってないけどな。最初は寿命が見えてるんだと思ってた。けどこの数字減らないんだよな。なんだったら増えてるときもある。」
「つまりその数字はその人間の能力値…という可能性があるのか。」
「ちなみにウマ娘の数字も見えるぜ。なんかスカウターみたいだな。」
もし、リュークの言っていることが本当なら…こいつは今、ウマ娘の能力値を可視化出来ているという事になる…
それはトレーナーからしたら、喉から手が出るほど欲しいものなんじゃないか…?
「リューク、その目の取引の条件は何なんだ?死神の目と同様に寿命の半分なのか?」
「さぁな。俺は死神の目の取引は何度かしたが、このよく分からん目の取引はしたことがないからなぁ。ただ、何かしら代償があるって認識は多分間違ってないぞ。取引ってのはそういうもんだからな。」
「せめてその目の取引の内容が分かればよかったんだけどな。残念だ。それで、今までの行動から察するに、その目を使って僕を助ける気はないんだろ?」
「あぁ、今のところはな。取引するか?何が取られるかは分からないけど。」
リュークは不敵な笑みを浮かべながらそう言った。
「いや、遠慮しておくよ。何を代償として払うかも分からない取引をするほど切羽詰まった状況じゃない。それに、昨日も言っただろう?自分の力を試すって。そんな目を使ったら、到底胸を張って実力です、とは言えないだろうしな。」
「そういうもんかね。ま、欲しくなったらいつでも言えよ。」
死神の目の時同様に、誰かにこの目の取引を行わせるか…?
正直、リュークの目はトレーナーなら誰だって欲しいだろう。
なんにせよ今は保留だ。不確定要素が多い。
それに、リュークは今死神じゃないというのも気になる。
死神ではない『何か』になっているから、あのマンハッタンカフェというウマ娘には姿が見えているのだろうか…?
「とりあえず、他のウマ娘にはお前の姿は見えてないってことでいいな?」
「多分そうなんじゃないか?」
曖昧な答えだな。お前のことなんだが…?
しかしそれなら、現状大きな問題ではないか…?
「なら今のところは様子見で行こう。あのマンハッタンカフェとかいう奴が近くにいる時は僕に話しかけるなよ。」
「お、おう。」
まだ分からないことは多いが、そんなことばかりも気にしてられない。
新たな不安要素を抱えつつ、チヨノオーの出走する中距離レースを見に、レースコースへと向かった。
補足ですが、この世界だとリュークは死神と霊的な存在の中間に位置する生物として扱われています。
原則としてチヨノートに触れた人間には見えますし、マンハッタンカフェのような霊感が強い人やウマ娘にも見えます。
ただ、霊感が強い場合ははっきりと見える訳ではなく、ぼんやりと存在を感じる程度です。
マンハッタンカフェにもリュークの姿ははっきりとは見えていません。
イメージとしては霧がかかっているときのような見え方をしています。
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