とある科学のホワイトルーム生   作:嫉妬憤怒強欲

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後半はとある科学の超電磁砲のグラビトン事件となります。どれだけ綾小路を再現できてるか不安です。


妙なめぐりあわせ

 能力者には6つの格付がある。

 

・生徒の六割を占める、測定不能や効果が殆どない能力を所有する無能力者(レベル0)

・スプーンを曲げる程度の、日常では殆ど役に立たないレベルの能力を所有する低能力者(レベル1)

・低能力者と大差ない出力の能力を所有する異能力者(レベル2)

・能力的にはエリート扱いされ始める、日常生活で役に立つほどの能力を所有する強能力者(レベル3)

・学園都市外部の科学技術では到底再現不可能な超常現象を実現でき、戦闘面においては軍隊で価値があるほどの能力を所有する大能力者(レベル4)

・単独で軍隊と戦えるほどの能力を所有する超能力者(レベル5)

 

 食物連鎖の生態系ピラミッドのごとく、ランクが上がるにつれて該当する能力者の数が減っていき、頂点に立つレベル5は全学生約180万人の内7人しかいない希少な存在だ。

 そのため学園都市中を歩いても遭遇する確率は極めて低いのだが……

 

「あっアンタ!」

「げっ」

 

 行きつけのファミレスで注文をまっていたとき、そのレベル5の一人と出くわしてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼女と最初に会ったのは数週間前のこと

 

「不幸だぁーーーー!」 

 

 その日の授業も終わり、ダラダラと、街を歩いていると聞き覚えのある声が聞こえてきた。声のする方を見ればそこにはスーパーの袋を地面に落とし、この世の終わりを見たような顔をする悪友、上条当麻がいた。

 

「何やってるんだ上条」

「あっ清原!聞いてくれよ!放課後急いで手に入れた特売セールの卵が地面に落ちてグシャグシャに!」

 

 上条が手に持っている卵パックの中では、卵の殻や卵白や卵黄やらがぐちゃぐちゃになって無惨なものになっていた。

 

「……相変わらずの不幸っぷりだな。はぁ……後でオレのを分けてやる」

「す、スマン。この埋め合わせはいつかする」

「それはそうと…お前、今日は掃除当番だったんじゃ?」

「ぎくっ」

「……吹寄にまたどやされるぞ」

「う……」

「あー!アンタ!」

 

 甲高い声が聞こえ、オレと上条はそちらを向く。そこにはお嬢様校である常盤台中学の制服を着た茶色い髪の少女がオレたち……というか上条を睨んでいた。 

 

「あっ、ビリビリ中学生」

 

 びりびり?

 

「ビリビリ言うな!私の名前は御坂美琴(みさかみこと)!今日こそ決着つけてやるんだから!」

「なんだ上条。知り合いか?」

「ああ。前にこいつがスキルアウトに絡まれていた所を助けに入ったんだけどな…なんかぶちぎれて電撃放ってきたのを俺の右手で打ち消してやったらなんか目を着けられたんだよ」

「どうせいつもみたいに失礼なこと言ったんだろ?」

「なんで上条さんが悪いみたいになってるんだよ!?」

 

 どうやらあのお嬢様は能力者としてのプライドを傷つけられたとして上条を目の敵にしているようだ。それにしてはこの二人かなりフランクな関係なんじゃないだろうか?軽口を叩き合っているように見えるし。

 

「……もしかしてオレ邪魔か?」

「そうよ」

 

……うん。関わるべきじゃないな。

 

「そうか……じゃあ、オレはこれで」

「いやいやいや!なぜここで立ち去ろうとするんですかね清原さん!?」

「いや、だってオレには関係ないし」

「そりゃそうですけど!」 

 

 面倒臭くなったので、思わず投げやりな態度を取ってしまったのが、運の尽きだった。

 

「はぁ……痴話喧嘩に巻き込まないでくれ」

 

 その一言は割と地雷だった。ピリッ……と、目の前のお嬢様から殺意が放たれる。それも、紛れもない大きなものだ。

 自身に危機が近づいている事をすぐに察し、それは上条の方も同じだった。

 

「誰と、誰が痴話喧嘩だコルァァアアアッッ‼︎」 

 

 直後、放たれた電撃に、オレは反射的に後方にジャンプして避けた。上条の方は右手で電気を打ち消した。

 

「……は?」

「っぶねぇ〜……完全に死ぬ威力だったんだけど……」

「お前はその右手があるから大丈夫だろ」

 

 お嬢様は上条が電撃を打ち消したのよりも、オレが難なく避けたことに驚いてるようだ。

 さて、こっちに飛び火する前にさっさとお邪魔虫は退散するか。

 

「じゃ上条、後はがんばれ」

「あっ、ちょっ、清原さん!?」

「ちょっ、ちょっと茶髪のアンタ!逃げるんじゃないわよ!」

 

 二人のお呼び止める声を背に、オレはその場を走り去った。

 

 まさか電撃を放った常盤台生がレベル5の第三位で、電気を操る『電撃使い(エレクトロマスター)』だとは思いもしなかった。

 

 

 

 

 

 

 あの後あの常盤台生とは遭遇することはないと(上条が人身御供となることで)思っていたが現実は非情で……

 

「あ、あんたは!」

「……違います、人違いです」

「そんなわけあるか!」

 

 他人を装っても誤魔化すことはできなかった。どうやら影の薄いオレの顔を覚えていたようだ。なぜこんな時に(生贄として)頼りになる上条がいないんだ。

 今日の放課後は補習の説明会で、上条、土御門、青髪補習組はいない。

 

「どうしましたのお姉さまそんなに大声を出して、って貴方は……」

 

 短髪の常盤台生には3人の連れがおり、そのうち二人は柵川中学校の制服を着た女子学生、もう一人は一昨日の風紀委員の常盤台生がいた。

 

「あれ?この人って白井さんが調べてくれって言ってた人ですよね」

「え?え?御坂さんと白井さんだけじゃなく初春も知ってる人?」

 

 花飾りを頭に乗せる黒髪ショートヘアの大人しそうな少女と白梅の花を模した髪飾りをつけている黒髪セミロングの明るそうな少女がこっちを見てくる。

 

「取り敢えず自己紹介を。わたくしは一七七支部で風紀委員を勤めています常盤台中学1年、白井黒子(しらいくろこ)ですの」

「……同じく常盤台中学2年、御坂美琴(みさかみこと)よ」

「し、白井さんと同じ一七七支部所属風紀委員で、柵川中学1年、初春飾利(ういはるかざり)です」

「同じく柵川中学1年、初春の友達の佐天涙子(さてんるいこ)でーす」

 

 自己紹介されたのだからこっちもしなくちゃな

 

「……とある高校の1年、清原綾斗だ」

「なんであんたは学校名言わないのよ?」

「守秘義務ってやつだ」

 

 だって教えたら校門の前で待ち伏せされそうだし……

 

「それより突っ立ってたら店員の邪魔になるぞ」

「それもそうですわね。さ、お姉さま、佐天さん、初春、席に座りましょうか」

「「はーい」」

「う、うん」

 

 白井に言われ、御坂たちが移動する。

 って隣のテーブル席に座るのかよ。

 

「それでそれで、三人とはどういう知り合いなんですか?」

 

 1人だけ蚊帳の外になっていた黒髪セミロングの少女、佐天がオレに声をかけてきた。

 

「常盤台生の二人とは顔を合わせた程度で名前は今知ったぞ」

「じゃあどういう経緯で顔を合わせたんですか?」

 

 この佐天という女子中学生、グイグイ来るな。

 

「一昨日わたくしのクラスメイトが不良に絡まれていたところを助けて下さった方たちの1人ですの」

「へぇー、そんなことがあったんですね」

 

 白井が代わりにオレと会った時の経緯を説明してくれた。

 

「……で、なんでその後オレのバンクかプロフィールを調べたんだ?」

「えっ!?わ、わたくし…なにも言ってませんわよ!」

「いや、さっきそこの初春って子が『この人って白井さんが調べてくれって言ってた人ですよね』って言ってただろ」

「はわぁっ!?」

 

 しまったと言わんばかりに、花飾りの少女、初春が両手で自身の口を隠す。

 

「ひょっとして風紀委員で情報収集担当、もといハッカーか?」

「ど、どうしてわかったんですか!?はっ!」

「う~い~は~る~!」

「はわわわ、す、すみません白井さん!」

 

 こうもかまかけに引っかかるとは。

 

「す、すごいですよ清原さん!名探偵コ○ンですか!?」

「いや、たまたま耳に入った情報からなんとなく思いついただけだが」

 

 というかそんな名推理してないだろ。

 

「……で、なんでそんなことしたんだ?」

 

 口を滑らせた同僚の頬をつねっている白井に問いかけると、こほんと軽く咳払いをした。

 

「ご不快な思いをさせてしまったならお詫びします。実は一昨日貴方と対面したとき、只者ではないとわたくしの直感が告げておりましたので確認を、と」

 

 野生の勘みたいなやつか。

 

「なにか期待させて悪いが、オレはどこにでもいるレベル0の平凡な高校生だ。調べてもなにも出てこなかっただろ?」

「確かにそうですが……」

 

 そもそもオレのことは出てくるわけがない。学園都市に来る前のことなんか特に。

 

「……平凡な高校生があたしの電撃を避けれるわけないでしょ」

「ん?なにかおっしゃいましたかお姉さま?」

「ううん、なにも」

 

 御坂の小さな呟きは三人には聞こえなかったようだ。

 

「ところで、つかぬことをお聞きしますが清原さん」

「なんだ?」

 

 佐天が本題と言わんばかりに目を輝かせて聞いてきた。 

 

「御坂さんとはどういう経緯で知り合ったんですか?」

「ぶふぅ!?ゴホッゴホッ!」

「お姉さま!?」

 

 御坂本人は予想外の質問だったらしく、飲んでいたお冷でむせた。

 

「…なんでそんなこと聞くんだ?」

「いやぁ一応常盤台のお嬢様でレベル5の御坂さんと顔見知りになる機会なんてそうないですから気になって。あたしの場合は初春と白井さん経由で知り合ったんですけど」

 

 この佐天という女子中学生、好奇心旺盛だな。

 

「っ!え、えっと!たまたま会って……その…」

 

 御坂が説明に困っている。そりゃ女友達に男子高校生をつけまわして勝負を挑んでる(しかも一回も勝てていない)話の部分は説明しづらいか。

 ここは助け舟をだすか。

 

「あー…前にオレの知り合いがコイツに失礼なことを言って怒らせちゃったみたいでな。喧嘩してるところにたまたま居合わせてただけだ」

「ちょっ!」

 

 噓は言ってない。ただ少し説明部分を省いただけだ。

 

「へぇーそんなことが。御坂さん、ちゃんとその人と仲直りしないとダメですよ?」

「えっ!?」

「そうですよ御坂さん。そういうのを長くしてると逆に丸く収まるタイミングが無くなっちゃいますからね」

 

 今の説明で御坂が初春と佐天に注意されだした。

 

「う、うん。そ、そうね…仲直りはちゃんとしないとね」

 

 明るい声でそう言いつつ、御坂は流し目でオレのことをキッと睨んできた。

 誤魔化しておいたから逆に感謝してほしいくらいだ。

 

「お待たせしましたー」

 

 御坂からの視線に気づかないふりをしつつ、店員が持ってきた食事にありついたのだった。

 

 

♢♦♢

 

 

 今日の授業を終え、オレと上条はブラブラと道を歩いていた。

 

「いやぁ、あと2日もすれば夏休みか~」

「上条たちは補習だがな」

「ちょっ、やめてくれよ清原。人が現実逃避してたのに」

 

 現実逃避しても補習は確定しているというのに。

 

「ま、現実逃避はほどほどにしておかないと宿題をやらないまま夏休みが終わってしまうぞ」

「くそ!頭が良いやつの余裕ってものなのかー!?」

「要領がいいと言え」

 

 ちなみにオレはもう夏休みの宿題に取り組んでいる。

 

「ん……」

「どうした?」

 

 道端で上条が急に立ち止まる。何やら一点を見つめている様子なので、オレもその目線の先を追った。するとそこにはピンクのバッグを下げた小学生低学年ほどの小さな少女が、道の真ん中で右往左往していた。

 

「どうしたんだ?迷子か?」

 

 上条が少女の方へ近づいていった。

 

「……え?」

 

 突然上条に話しかけられて驚いたのか、少女は少しきょとんとした顔をしている。

 

「いや、道に迷ったなら案内してやろうと思って」

 

 相変わらずのお人好しだな。

 

「……もしかして、なんぱってやつ?」

「はぁ!?」

 

 少女の口にした意外過ぎる言葉に口を開ける上条。

 

「上条……お前本当はそれ目的だったのか」

 

 まじ引くな。

 

「いやいやこんな小さい子をナンパなんてしたら、完全にロの字が付く人になっちまうじゃねぇか!!」

 

 慌てて否定する上条だが、慌てている分余計に怪しく見えた。

 なんとなくクラスメイトの青髪ピアスを思い浮かべてしまった。もし上条があいつと同レベルなら交友関係を改めないといけないな。

 

「まあ上条の変態疑惑は置いといて」

「おい!」

「それで、どうして道の真ん中で立ち止まっていたんだ?」

 

 上条の代わりにオレが聞いてみる。

 

「えっとね……セブンミストってお店に行きたいんだけど道が分からなくて」

「一人でか?」

「うん」

 

 セブンミスト。

 それは学園都市内でも最近よく話題に上がる店舗だ。

 主に女子中学生から高校生の間で流行し、名を売り始めている衣服を販売する、衣服販売の店舗が複合されたショッピングモールである。

 

「ふーん、じゃあそこまで案内してやろうか?」

「いいの?」

「ああ、どうせ完全下校時刻まで暇だしな。清原はどうする?」

「……まあ、オレも新しい服を見てみたいな」

「おしっ、そう来なくっちゃな」

「やったー!」

 

 少女に洋服店まで案内してあげる事になったオレたちは共に通りを歩く。

 歩くこと20分。目的地であるセブンスミストへと到着する。そして店内の洋服店に向かった。

 

「連れて来てくれてありがとうお兄ちゃんたち。私、行って来るねー」

「おう。転ぶなよー」

「うん!」

 

 洋服店が見えると少女は一人で先に走って行く。 

 

「これで一安心だな……ん?」

「どうした?」

「いやあそこにいるのって……」

 

 上条が何かに気づく。上条が指を指した方向を見ると、そこには鏡の前で服のサイズが合うかどうか確認している御坂がいた。

 

「何やってんだビリビリ?」

「っ!?」

 

 上条が話しかけると御坂はビクッと肩を震わせ、慌てて服を後ろに隠した。

 

「な、何であんたたちがここにいるのよ!?」

「何でって……いちゃ悪いのかよ」

「お兄ちゃーん」

 

 そこに服を持った少女が戻って来た。

 

「あ!トキワダイのお姉ちゃんだ」

「え?かなちゃん」

 

 どうやら初対面ではないらしい。すごい偶然だな。

 少女を見て、思い出すように言った御坂は、こちらに視線を戻した。

 

「え、どっちの妹?」

「違う違う。洋服店探してるっていうから、案内してきただけだ」

 

 御坂の問いに、上条が答える。

 

「あのねー、おにーちゃんたちに連れてきてもらったんだー。私もテレビの人みたいにお洋服でおしゃれするんだもん」

「そうなんだー。今でもじゅうぶんオシャレで可愛いわよー」

「…短パンの誰かさんと違ってな」

 

 上条、余計なことを口に出すなよ。

 

「なによやる気!?だったら何時ぞやの決着を今ここで―――」

「待て、こんなところで能力使うな。やるなら上条と外に出ろ」

「おい!?なにちゃっかり上条さん差し出してんだよ!?」

 

 だってオレには関係ないし。

 

「……あ、おにーちゃん。次あっち見たい!」

「あ、おう、分かった」

 

 上条の服の裾を引っ張り、少女は催促した。

 さて、オレもこの場から退散を……

 

「ちょっと待ちなさいよ」

 

 回れ右をしようとしたとき、後ろから御坂に肩を掴まれる。それにしても凄くドスの効いた声だな。

 

「そういえば、あんたにちょっと話があったのよね」

「……オレにはないがな」

「あれー?かっこいい方のお兄ちゃんはどうしたのー?」

「おう、あいつはビリビリとお話があるみたいだから先に行ってような」

 

 上条の奴、売られる前にオレを売ったな。

 

「あれ?清原さんじゃないですか」

「こんなところで会うなんて奇遇ですね」

 

 上条たちが離れた後、入れ替わるように佐天と初春がやってきた。すぐに御坂は手を離す。

 

「お前たちも買い物か?」

「はい。そう言う清原さんも?」

「まあ成り行き上な…連れにはついさっき見捨てられたが」

「え?じゃあ今ボッチなんですか?」

「ボッチ言うな」

 

 相手にストレートに言われるとかなりくるな。

 

「あっ、よかったら一緒に回りません?こうして会ったのも何かの縁ですし」

「え?」

 

 突然佐天からそんな提案がされた。

 

「いやいや、中学生女子たちと男子高校生一人って肩身が狭いだろ」

「えー?そこは喜ぶとこじゃないですか?」

「喜ぶべきなのか?」

 

 土御門や青髪なら泣いて喜びそうだがな。

 

「悪いが、連れがいる」

「そうですか。あっ、ひょっとして彼女さんですか?」

「いやクラスメイトの男子だ。しばらくいるだろうから途中で会うかもな」

 

 それだけ言ってその場から去る。流石の御坂も二人の前で手は出せないだろう。

 

 

 

 

 

 

 何店舗か回ったが上条たちとまだ合流できていない。

 しばらく歩いていると足元近くに、生徒手帳らしきものが一つ落ちているのを見つけた。

 拾って確認してみると、『枝垂桜学園』と学校名が記されていた。おそらく店内にいるその学生が落としたのだろう。

 辺りを見渡せば、何やら床に目線を向けながら歩いている制服姿の少女がいた。多分少女のものだろうと考え、少女の方へ近づいて声をかける。

 

「なぁ」

「ひゃい!?」

 

 後ろから声をかけたためか、少女は跳び上がった。しかも同時になんか変な声まで出してしまう始末だ。少女がゆっくり振り返る。

 

「わ、わわわわたくしになにか?」

「この生徒手帳、お前のか?」

「え?」

 

 長い黒髪をツーサイドアップにした上品そうな少女にさっき拾った生徒手帳を見せる。

 

「あ、そうです!それ、わたくしのです!!」

 

 生徒手帳を受け取ると、少女はしっかりと胸に抱き安堵のため息を漏らした。

 ……幼い顔立ちしてるのに、デカいな。

 

「あ、ああありがとうございます!わざわざ届けて下さって」

「たまたま拾ったからな」

 

 さっさと、上条たちを探すか。

 

「それより、この辺で黒髪ツンツンウニ頭の男子高校生と黄色い鞄を持った小学生くらいの女の子を見なかったか?」

「いいいいえ、わたくしずっと手帳を探していたので…も、もももうしわけありません!」

「いや別に責めていないが」

 

 落とし物を探すのに夢中になっていたのだから仕方ないし、広い建物だからもしかしたら遭遇しなかったのかもしれない。頭を下げる少女を責める要素はどこにもない。

 責めるとすればオレを見捨ててさっさと行った薄情者のウニだけだ。

 

「お前はなにも悪くないから気にするな」

 

 それじゃあと言って既に踵をそうとした時、突然館内放送が流れだした。

 

『お客様にご連絡いたします。誠に申し訳ございませんが、店内で電気機器の故障が発生したため、誠に勝手ながら、本日の営業を終了させていただきます』

 

 店内の放送機器から、繰り返し同じ文言が流れる。

 遠回しに店から出ろと言っている。おそらくパニック誘発を防ぐべく、緊急時用にあらかじめ用意されていた文句だろう。

 遠くで初春たちが客を外へと誘導している。その表情にはわずかだが焦りがあった。 

 そういえばここ最近連続爆破事件が起こっていたな。

 能力者が起こしている事件とされていて、原因はアルミを基点として重力子の速度を急激に増加させ、それを一気に周囲に撒き散らす事で起こる爆発である。ようは『アルミを爆弾に変える』能力といったところか。最近ではアルミ製のスプーンをぬいぐるみや子供用の鞄といった警戒心を削ぐ物に仕込み爆弾とするため、非常に悪質なものとなってきている。

 既に九人の風紀委員が大怪我を負っており、学校のホームルームで、不審な人物又は物を見かけたら離れ、近くのアンチスキルもしくは風紀委員は連絡すること、と注意勧告がされるほど深刻になっている。

 

 ということは、今度はここが爆破されるということか。

 

「あっ、かっこいい方のお兄ちゃんだー」

 

 後ろから声をかけられて振り返ると、上条と一緒にいたはずの鞄の少女が駆け寄ってきた。その手に、見知らぬカエルの人形を持って。

 

「あれー?こっちのお姉ちゃんは誰ー?お兄ちゃんの彼女さん?」

「か、かかかっかかか―!?」

「いや、さっき落とし物を拾ってやっただけだ。あのツンツンウニ頭はどうした?」

「うーんとね。ちょっとはぐれちゃったんだ」

 

 なにやってるんだよウニ頭。まぁ、はぐれてしまったものは仕方ない。

 

「それで、手に持ってるその人形はなんだ?」

「さっきね、眼鏡をかけたお兄ちゃんがね、この人形をじゃっじめんとのお姉ちゃんに渡して欲しいって!」

 

 眼鏡をかけたお兄ちゃん……ね。 

 

「ちょっと見せて貰ってもいいか?」

「?うん」

「か……か……かー……かー……」

「カラスか」

 

 顔を真っ赤にし、湯気を放ちながらずっとフリーズしている制服姿の少女を尻目に、鞄の少女から人形をもらい調べてみる。すると、背中の部分に最近できたばかりの縫い目があった。縫い目を引っ張って中を覗いてみると、そこにはアルミ製のスプーンが一つ。

 どうやらオレが当たりを引いてしまったらしい。

 

 

 

♢♦♢

 

 

 数分が経ち、一階には避難誘導を行った初春と離れたところで鞄の少女、カナを探している上条と御坂以外、誰も人の影が見当たらなかった。

 

『初春!初春!聞きなさい!』

「今、全員避難したかどうか確認を……『今すぐそこを離れなさい!』」

 

 初春は黒子からの電話に出る。黒子の口調は慌てており、緊急事態であるということが伺える。

 

『過去9件の事件の全てで風紀委員が負傷していますの!観測地点周辺にいる風紀委員! 今回のターゲットはあなたですのよ!初春!』

「っ!?」

 

 黒子から犯人の狙いが自分であると知って初春は衝撃を受ける。

 

 その時だった

 

「お姉ちゃーん。眼鏡をかけたお兄ちゃんがお姉ちゃんに渡してくれって」

 

 カエルの人形を持ったカナが笑顔で初春に向かって行く。

 カナの大きな声を聞いて上条と御坂は無事だったと知り安堵する。一方で初春はカエルの人形を見て何かに気づき、カナに飛びついた。初春が飛びついたことでカナの持っていたカエルの人形が落ちる。

 

 

「逃げて下さい! あれが爆弾です!」

「「っ!?」」

 

 初春が叫んだ瞬間とカエルの人形がメキメキと不気味な音を立てながら、少しずつ形を歪めていく。 

 

(私の超電磁砲で!)

 

 咄嗟に御坂はポケットからコインを取り出して、カエルの人形ごと破壊することを決める。

 

 が、

 

(しまった!マズった!)

 

 御坂は手を滑らせてしまい、コインを落としてしまう。

 

(間に合わない……!?)

 

 カエルの人形が限界まで収縮してしまい、御坂がもうダメだと思った瞬間、

 

パン!

 

 風船が割れたような甲高い音が鳴って弾けた。

 

「「は?」」

「え?あれ?爆発しない?」

 

 人形が破裂しただけで轟音や爆風がなにも起きず、三人は間抜けな声を思わず出してしまう。

 

「もしかして不発?」

「そ、そんなはずは!既に何回も爆発のデモンストレーションをやっておいて今更失敗なんて……」

「ねーじゃっじめんとのお姉ちゃん。さっきの音なんだったのー?」

 

 御坂と初春が状況を呑み込めていないなか、上条のポケットから携帯の着信音が流れる。

 

「あっ、清原からメールだ。なんだこれ?」

「ん?どうしたのよ?」

 

 上条が携帯の画面を見て眉をしかめており、変に思った御坂が横から画面を覗く。

 

「なになに……『外に出てみたら一人様子がおかしい人物を見つけた。最近の爆破事件の犯人かもしれない。写真を下に添付したから近くにいる風紀委員かミサカに伝えてくれ』ですって?」

 

 メールの下部分を見ていくと、悔しそうに顔を大きく歪めた眼鏡の男子学生の横顔の写真があった。

 

「カナちゃん、カナちゃんに人形を渡した人ってこの人?」

「うん!この眼鏡のお兄ちゃんだよ!」

 

 御坂がカナに確認を取るとビンゴだった。

 

「私、犯人を捕まえてくるわ!!」

「み、御坂さん!?」

 

 初春の制止も聞かず御坂は犯人を追って行ってしまう。

 

「あ、あれ?上条さん、いらない雰囲気ですか?」

 

 せっかく来たのに大した活躍もなかった上条当麻であった。

 

♢♦♢

 

 連続爆破事件の犯人が警備員の車で連行された。

 その様子を遠くで眺めていたオレは踵を返してその場から移動する。

 

「あっ、かっこいい方のお兄ちゃんー」

 

 店から出てきた鞄の少女がオレに向かってきた。その後に続いて初春と佐天、白井、御坂がやって来る。

 

「怪我はないか?」

「うん!なんかお人形さんが破裂したけど全然大丈夫だったよ」

「そうか」

 

 そりゃあ、爆発の威力をオレは最小限にまで押しとどめたからな。

 これまでの爆破で風紀委員が相次いで入院レベルの重傷を負ったという情報と、鞄の少女に初春へ爆弾を間近に持ってこさせようとしたことから、標的が風紀委員であることはわかった。

 危ないためすぐに処分してもよかったが、起こるはずの事象が起こらないことに風紀委員の注意がむいてしまい、爆弾魔は野放しになってしまう。

 爆発の威力を考えるに、自身を巻き込んでしまう可能性もある為に安全な場所で起爆するだろう。そうなると、避難誘導に従って外に出た人ごみの中に紛れているだろう。

 なら顔も分からない犯人をあぶりだすためにやれる方法は一つ、相手の虚をつくことだ。

 途中までは上手くいっていたのに、最後の最後に予想が大きく外れてしまえば動揺を隠せないだろう。

 カエルの人形に手を加えた後、人形を鞄の少女に返して「初春が仕事を終えてから渡せ」と誘導し、外に出てから周囲の人ごみの様子を観察するだけ。

 鞄の少女を探しているであろう上条と御坂を見かけたため、発見したら情報を上条の携帯を通して風紀委員と御坂に伝えることも作戦に加えた。

 

 そして結果は予想通り――――セブンスミストは無傷のまま、誰も傷つけずに爆弾の爆発を防ぐことに成功した。

 

「いやーそれにしても清原さんが犯人を見つけちゃうなんて、やっぱり名探偵ですか?」

「たまたまだ。不審な人物を見かけたら通報しろってホームルームで言われてたからな。まさか本当に爆弾魔だったとは」

「えー?本当ですかー?」

 

 佐天はどんだけオレを名探偵にしたいんだ?

 

「そういえばなんで風紀委員に直接通報しなかったんですか?」

「写真を送っても対応に時間がかかるだろうし、決定打にかけていたからな。現場にいた初春に伝えようにもメアド知らないし」

「た、確かに」

 

 想定していた質問だったため、用意していた答えを初春に伝える。

 

「そういえばなんで今回だけ不発に終わったんでしょう?」

「それは追々調べればいいですわ。それより、今回犯人逮捕にご協力いただき誠にありがとうございます」

 

 上品にお辞儀をする白井。

 

「協力とは大袈裟だな」

 

 オレは礼を言われるようなことをしていない。

 痺れを切らしたように鞄の少女がオレのズボンを引っ張ってきた。

 

「ねーねーさっきまで一緒にいた彼女さんはどうしたのー?」

「ん?あいつのことか?あいつなら」

「え?さっき連れは男子って言いませんでしたっけ?」

「彼女じゃない。店で生徒手帳を落としたのを拾ってやっただけだでそいつとは初対面だ。外に出た後すぐに別れた」

「あのねーそのお姉ちゃんおっぱいがすごく大きかったんだー」

「へー?清原さんって巨乳好き?」

「ちょっと待て。なんか勘違いしているみたいだから話し合おう」

 

 鞄の少女が余計な一言を言ったおかげで女子勢の視線が軽蔑の色に変わった。

 オレは誤解を解くのに時間を弄し、先に寮に戻っていた上条をシメる頃には完全下校時刻は過ぎていたのだった。

 

 





まだオリ主がどんな能力を持っているかは秘密です。
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