とある科学のホワイトルーム生   作:嫉妬憤怒強欲

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少し文章が短めです。申し訳ありません



アニメで幻想御手編の終盤を見た時にはハラハラしました。


副産物(後編)

 車から降りたオレは陸橋のような高速道路の下で起こっている戦いを傍観していた。

 

 電撃という一つの手札を工夫して使うレベル5の御坂は、観測しているのでも既に10以上の手札を披露している多才能力者木山に少しばかり苦戦しているようだ。

 まあ、木山を殺してしまえば治療法が手に入らないのを考えて気絶させる程度で威力を加減しているのだろう。もっとも、治療用プログラムは今初春が持っているがまだ伝える必要はないな。

 

「……もうやめにしないか。私はある事柄について調べたいだけなんだ。君の目的は私を捕えて昏睡状態となった学生たちを助ける方法を私から吐かせることだろう?安心してくれたまえ。私の用が終われば学生たちを解放するつもりだ。誰も犠牲にはなることはない。だから退いてくれないか?」

「ふざけんじゃないわよ!誰も犠牲にしない?あんたの身勝手な目的にあれだけの人間を巻き込んでおいて……人の心を弄んで……こんなことしないと成り立たない研究なんてろくなもんじゃない!そんなの見過ごせるわけないでしょうが!」

 

 木山の言葉に御坂は怒りを露にする。言いたいことはわかるが、オレは御坂の言葉には賛同できないな。レベル5とはいえ、所詮世間知らずのお嬢様か。

 

「…君たちが日常的に受けている能力開発――あれが100%安全で、人道的なものだと、本気で思っているのか?」

「…………どういうことよ」

「学園都市の上層部は能力に関する重大な何かを隠している。ほとんどの人間はそれを把握していない。普段、子供達の脳を掻き回している教師達ですら……それが、どれだけ危険なことだか分かるだろう?」

「……なかなか面白そうな話じゃない。アンタを捕まえてゆっくりと調べさせてもらうわ!」

 

 御坂は木山の言葉には少し引っかかっても“後で”調べると、戦闘を続行した。

 電気の力で地面から黒い砂――おそらく砂鉄を操り、複数の槍を作り上げて木山を攻撃する。だが木山は念動力かなにかで瓦礫を展開して槍を防いだ。

 

「残念だが、まだ捕まるわけにはいかない」

 

 木山は近くの大量の缶が入ったゴミ箱を念動力で自分の上で移動させた。そして中身の入った缶を御坂に向かってばら撒いていく。

 

 虚空爆破が来ると御坂は気付いたようで、電撃を飛ばして缶を破壊していく。

 だが空間移動で飛ばされた缶が一瞬で御坂の背後に現れ、大きな爆発が起こった。

 

 爆発により舞い上がった煙でよく見えないな。仕方ない。下りるか。

 

 

 

♢♦♢

 

 

 能力で作った壁の先に広がるのは、更地に近い乾いた景色だった。

 

「もっと手こずるかと思っていたが……こんなものかレベル5。恨んでもらって構わんよ」

 

 そこに横たわる御坂に対し、開き直るように木山は告げて踵を返す。

 だが

 

「捕まえた」

「っ!」

 

 背後から腹に手をまわされ、ゾクっと背筋が伸びる。振り返ると倒れたと思っていた御坂だった。

 

「馬鹿な!あの威力で立っていられるはずが!」

「磁力で即席の盾を作ったのよ!」

 

 直後、ゼロ距離で電撃使いの一撃が流れ込む。

 

「うあああああああ!」

 

 御坂の一撃が効いて木山は叫び声を上げた。手加減はしたが、これで戦闘不能なはずだ。

 

 その時だった。

 

『センセー』

「⁉︎」

『木山センセー』

 

 子供の声と姿が、御坂の頭の中に流れ込んできた。

 

(これは……木山春生の記憶!?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこはどこかの研究所の執務室のような場所だった。目の前には白衣を来た老齢の男性がいる。

 

『私が教師に?何かの冗談ですか?』

『いやいや、君は教員免許を持っていたよね?』

『はい……』

『なら教鞭を執っても何もおかしくないじゃないか』

『しかし、あれはついでに取っただけで……』

『研究から離れろと言っているわけではないよ。それどころか統括理事会肝いりの実験を任せたいと思っているんだ』

『本当ですか!』

 

 老人の視線が部屋にある窓の外へ向く。そこでは小さな子供たちがサッカーをして遊んでいた。

 

『あの子供たち……彼等は”置き去り(チャイルドエラー)”と言ってね。なんらかの事情で学園都市に捨てられた、身寄りのない子供たちだ。そして今回の実験の被験者であり、君が担当する生徒になる。実験を成功させるには被験者の詳細な成長データを取り、細心の注意を払って調整を行う必要がある。だったら、担任として受け持った方が手間が省けるでしょう」

『それは、そうかもしれませんが……』

『なに、なにも君が初めてのケースではない。私のかつての助手も街の外で同じ事をしている。確か今は研究と子育てと教鞭を両立していると聞いているな』

『はぁ……』

『まあ、気長にやるといい』

 

 

 

 厄介なことになった。だがこの実験を成功させる為の辛抱だ

 

『あー……今日から君たちの担任になった木山春生だ……よろしく』

『『『よろしくお願いいたしまーす!』』』

 

 子供は嫌いだ。騒がしいし、デリカシーがないし、失礼だし、悪戯するし、論理的じゃないし、馴れ馴れしいし、すぐに懐いてくるし。

 

『センセー。私でも頑張ったら大能力者とか超能力者になれるかな?』

『今の段階では何とも言えないな。高レベルの能力者に憧れがあるのか?』

『んー、それは勿論それもあるけど……私たちは学園都市に育ててもらってるから。この街の役に立てるようになりたいなーって』

『……』

 

 研究の時間がなくなってしまった。本当にいい迷惑だ。

 子供は……本当に、嫌いだ。

 

『やーい、引っかかったー』

『先生彼氏いないんでしょ?俺の彼女になんなよ』

 

 騒がしいし、デリカシーがない。失礼だし。論理的じゃないし。

 

『『『せんせー!お誕生日おめでと~!』』』

 

 子供は……。

 

 月日は流れ、実験に日になった。

 AIM拡散力場制御実験。長い時間をかけて何度も計算を繰り返し準備してきた。何も問題はない。これで先生ゴッコもおしまいだ

 

『怖くないか?』

『全然。だって木山センセーの実験なんでしょ。センセーのこと信じてるもん。怖くないよ』

 

 これでおしまい……。

 

『ドーパミン値、低下中!』

『抗コリン剤投与しても効果ありません!』

『早く病院に連絡を!』

 

 そう思っていた。だが実験の途中でアクシデントが起きる。研究者たちが慌てる中、あの老人だけは笑みを浮かべながら端末の画面に表示されているデータを眺めていた。

 

『あー、いいからいいから』

『しかし、このままでは!』

『浮足立ってないで、データをちゃんと集めなさい。この実験については所内に箝口令を敷く。実験は恙なく終了した。君たちは何も見なかった。いいね?』

『は、はい……』

 

 

 老人が何を言ってるのか、木山の耳に入っていなかった。教え子たちが実験の途中で昏睡状態に陥ってしまったのである。木山はあまりのショックに顔を真っ青にしていた。

 

『木山君。よくやってくれた。彼らには気の毒だが科学の発展に犠牲はつきものだ』

 

 老人が邪悪な笑みを浮かべながら木山の肩に手を置いた。

 

『今回の事件は気にしなくていい。君には今後も期待しているからね―――っと失礼、電話だ』

 

 老人は木山から離れ、ポケットから携帯を取り出す。

 

『ああキヨハラ君久しぶりだね。私は元気だよ。今ちょうど実験も終了してね。そっちは息子さんの方はどうかね?』

 

 

 

♢♦♢

 

 

 陸橋の端にあった階段を降りて下に到着すると様子がおかしかった。

 

「い、今のは……?」

「ッ!?観られた、のか……っ!?」

 

 傷だらけの手で頭を押さえる木山の様子は、とても痛々しく見えた。ダメージを与えたであろう御坂の方はなにかにショックを受けているようで固まっていた。

 

「なんで、あんなことを……?」

「あれは表向き、AIM拡散力場を制御するための実験とされていた。が、実際は暴走能力の法則性解析用誘爆実験だ……!能力者のAIM拡散力場を刺激して条件を探るのが本当の目的だ」

「じゃあ……!」

「暴走は意図的に仕組まれていたのさ。もっとも、気づいたのは後になってからだがね」

「人体、実験……」

「あの子たちは一度も目覚めることなく、今尚眠り続けている。私たちはあの子たちを使い捨てのモルモットにしたんだ!!!」

 

 何が起こったかは知らないが、ようやく合点がいった。

 

 幻想御手で昏睡状態となった学生を誰も犠牲にしないと木山は言った。木山からすれば昏睡状態になった学生を治す必要はどこにもないはず。用意するにしても捕まった時の交渉材料にするべきになのにそれをせずに初春に渡した。

 それにオレたちを拐ったのにも関わらず人質にして警備員を突破しなかった。人質にすれば簡単に突破できるはずなのに。

 自分の能力を無闇に使えば道路が壊れて逃走できなくなる可能性が充分にあるのにも関わらず能力を使った。バリアを展開したまま自分を軽くしてスピードを上げて直接攻撃で戦って制圧した方が道路が壊れて逃げられなくなるという最悪の事態は回避できる。

 それをしなかったのは木山自身が自らの手で人を傷つけることにトラウマがあるからだ。

 

 これらとさっきの話の内容から一つの答えが導き出された。

 

 木山は過去に子供たち、おそらく生徒を実験で傷付けてしまい、そのせいで自らの手で直接、人を傷つけることができなくなった。今回の騒動は子供たちを目覚めさせるのに必要な演算システムを作るために必要だった。学園都市には『樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)』があるが――――

 

「で、でも!そんなことがあったのなら警備員に通報すれば!」

 

 甘いな御坂。

 

「23回」

「え?……」

「あの子たちの回復手段を探るため……そして事故の原因の原因を究明するためのシミュレーションを行うために樹形図の設計者の使用を申請した回数だ。樹形図の設計者の演算能力を持ってすれば……あの子たちを助けられる筈だった。もう一度太陽の下を走らせてあげることも出来ただろう。だが却下された!23回とも全て!統括理事会がグルなんだ!警備員が動くわけがない!」

 

 統括理事会まで関わってるか。思っていたよりこの街の上層部は腐っているらしい。

 

「でもそれじゃあんたのやってることも同じになっちゃ……」

「君に何がわかる!!あんな悲劇を二度と繰り返させはしない!!その為なら私は何だってする!!この街の全てを敵に回しても止まる訳にはいかないんだ!!」

 

 木山は声を荒らげる。御坂は木山の言葉を聞いて、何も言い返せないでいた。

 

「うっ……ああ……ぐうっ!?」

 

 突如、木山は両手で頭を抑えながら苦しみ始める。

 

「ちょ、ちょっと……!?」

「ネットワークの暴走……いや、これは……虚数学区!? あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」

 

 木山は返事をすることもできず絶叫を上げていた。そしてそのまま地面にうつ伏せの状態で倒れてしまう。

 その直後、木山の頭からねばりとした半透明の液体のようなものが出て来る。

 それは徐々に形を変えていき、歪な突起物が生えてきて、やがて手足の形に整っていく。まるで生を受けたばかりの胎児のように。

 

『――――ギ、ィ』

 

 『何か』の進化は続く。

 エメラルドの帯が何本も伸び、口が、耳が、鼻が、そして眼が、刃物で切ったように浮き出てくる。木山と同じ真っ赤に染まった双眸が爬虫類のようにぎょろぎょろと蠢き、焦点が定まっていない。さらに頭上に天使のような光の輪っかが形成される。

 

「なに、これ……?」

 

 突然現れた、理解し難い存在を眼前に御坂は言葉を失っている。

 さすがのオレもこれは想定していなかった。

 

『ぎっ?ギ?キィ゙ァァァアアアァぁぁぁッッッ!!!』

 

 咆哮、或いは慟哭の如き産声が響き渡る。それだけで衝撃波が発生し地面が裂け、大量の瓦礫が吹き飛んでくる。

 

 とマズいな。

 気を失った木山が前方から衝撃波によって飛ばされていた。オレはすぐに駆け出し、跳躍して木山をキャッチする。

 

 が、空中で衝撃波を避けきれず、木山を抱えたまま橋脚に叩きつけられた。

 

「……流石に痛いな……」

 

 御坂の方はというと、電撃を胎児に放った。その電撃は見事直撃し、その箇所は拍子抜けに破裂した。だが血も出ず、直ぐに修復した。

 

「再生までするとはな……」

 

 修復どころか、その箇所から今度は三本目と四本目の腕が生えてきた。しかもさっきよりも大きくなっている。

 顔の表面積の半分近くを占める巨大な双眸が、ギョロリと御坂に向けられる。

 

『ギェッェァァッァアシャァァァアァァァァァァァギャアアァァァ!!!!』

 

 再び発せられた非生物的な甲高い悲鳴と共に、大気中の水分が収縮され、氷の槍となって御坂に襲いかかる。

御坂はそれを電撃で相殺しつつ、バックステップで距離をとりながら避けた。

 

「御坂さん!清原さん!」

「初春さん!?」

 

 すると初春がこっちにきたので御坂が電気で砂鉄を操り盾を作った。

 

「ダメじゃない!こんなところに降りてきちゃ!」

「ごめんなさい!でも!」

「そこから出ないで!……よくわかんないけど、やるってんなら相手に…………に……?」

 

 御坂が胎児のような化け物の方を見るが、胎児の方は見向きもしなかった。

 胎児は御坂を追いかけもせず、その場で触手を振り回している。闇雲に暴れてるだけなのか…?

 

「まるで、何かに苦しんでるみたい…」

 

 初春がそういうが、たしかにそうかもしれないな……

 

「とりあえず比較的安全な所に避難したらどうだ?」

 

 気絶した木山を肩に乗せ、オレはそう二人に提案する。

 

「って、なんでアンタもここに!?しかもいつの間に木山を!?」

「さっき衝撃波で吹き飛んできたのを受け止めたんだよ」

「そ、そういえば清原さんさっき壁に思いっきりぶつかったみたいですけど大丈夫なんですか!?」

「ええ!?」

 

 初春に見られていたか。

 

「あー……まあ身体は頑丈にできてるから問題ない。そんなことよりさっさと行くぞ」

 

 

♢♦♢

 

 そのころ、幻想御手の患者が収容されている病院では異変が発生していた。

 

「グっ……あ……あぁぁあああ!!!」

 

 病室に響く喚き声。それは隣のベッドの患者からも発せられ、連鎖的に周辺の病室から同様に連鎖する。

 

「どうしました!?」

「それが……例の患者さんたちが一斉に苦しみだして!」

 

 看護師たちが患者をベッドに押さえつけようとする。しかし、いくら抑えても収まる気配がない。

 

「意識が戻ったんですか!?」

「いえ、さっきまで昏睡状態だったのに、全員同時に!」

「…………いったい何が起こっているんだ」

 

 

♢♦♢

 

 

 

「ここならいいだろう」

 

 柱の側に木山を寝かせる。

 離れた所では、いまだ胎児が暴れている。

 時折、銃声が聞こえることから、意識を取り戻した警備員の何名かが、あの怪物と応戦しているのだろう。

 

「う……ん……」

「っ! 目が覚めたみたいね」

「…………!」 

「あっ、まだ起きない方が──」

 

 すぐに意識を取り戻した木山は御坂の制止の声を無視し、或いはそもそも聴こえていないのか虚ろな目で見晴らしの良い場所へと向かう。

 

 そして、高く昇る土煙の中から、あの胎児のような異形の姿を確かに捉える。 

 

「ククッ、アハハハ……凄い……凄いな……学会で発表すれば表彰ものだぞ……」

 

 泣くような乾いた笑い声をあげ、木山はその病的に細い手で目を覆い、柱に力無く身を預ける。

 

「もはやネットワークは私の手を離れた…………おしまいか……」

 

 木山は懐に手を入れようとしていた。オレはその手を掴み、ぐっと自分に引き寄せた。そこには拳銃が握られていた。その銃が自分達ではなく、木山自身に使うつもりだったのだろう。

 

「アンタが自決したところで何の解決にもならない」

 

 拳銃から弾倉を抜き、スライドを引いて弾丸を排出する。御坂と初春がそれを見て何か言いたげだが無視する。

 木山はオレの顔をぼおと見つめていたが、やがて吐き捨てるように言った。

 

「じゃあ、どうすればいい?あの子たちを取り戻すことも回復させることも叶わなくなった。それにあれを止めることは誰にも――――」

「諦めないでください!」

 

 一人絶望している木山に初春が喝を入れた。

 

「できないかどうかなんてやってみないと分からないじゃないですか!教えてください木山先生、アレは一体なんなんですか?」

「…………」

 

 しばらく初春の目を光を失った瞳で見つめていた木山だが、大きく息を吐いた後、ずるずると柱を背に座り込み、話し始めた。

 

「アレか…………虚数学区を知ってるか?アレがそうだ」

 

 アレが?現物は初めて見たな。

 木山が口に出した単語に、御坂と初春は目を見開いている。

 

「虚数学区?それって都市伝説じゃなかったの?」

「実在したんだ。まあ、噂のようなものではなかったがね」 

 

 ぽつりぽつりと、木山は説明を続ける。

 

「学園都市最初の研究機関、学園都市の運営を陰から掌握しているとも噂されるそれの正体はAIM拡散力場の集合体だ。アレも恐らく原理は同じ。AIM拡散力場で形成された怪物──“幻想猛獣(AIMバースト)”とでも呼んでおこうか。幻想御手のネットワークによって束ねられた一万人のAIM拡散力場が触媒になって生み出され、そしてそれらを取り込んで成長しようとしているのだろう。そんなモノに自我があるとは考えにくいが、ネットワークの核であった私の感情に影響されて暴走しているのかもしれないな」

 

 つまりあれが暴れているのは『幻想御手』使用者が共通して抱える劣等感や欠落感、木山が抱える怒り等のマイナス感情を攻撃性が反映されているからということか。ただし「やられたらやりかえす。倍返しだ!」ぐらいの知性はある様子。

 

「どうすればアレを止めることができるの?」

「それを私に聞くのかい?今の私が何を言っても、君たちは信用……」

 

 聞かなくても方法は大体察してるが。

 

「信じます」

 

 初春は間髪入れずに言い切った。

 

「子供たちを助けるのに、木山先生が嘘つくはずありません。だから信じます」

 

 ずいっと木山に顔を近づけた初春がにっこりとそう言い放った。呆気にとられた木山先生は目を見開いて初春の顔を覗いた後、しょうがないなと言いたげに苦笑した。

 

「預けたものはまだ持っているかい? アレは幻想御手のネットワークが産んだ怪物だ。ネットワークを破壊すれば止まるかもしれない」

「幻想御手の治療プログラム!」

「試してみる価値はあるはずだ」

 

 予想通りだな。あとやるべきことは役割分担だな。

 

「それじゃあアレの相手は御坂、ネットワークの切断は初春、オレは初春の護衛だな」

「ちょっ、それ私が言おうとしてたのに……」

 

 どうやら御坂の台詞を奪ってしまったようだ。

 

「……アンタに初春さんを任せていいのよね?」

「ああ、任せろ」

「……いいわ。初春さんに傷一つでもつけたらただじゃおかないわよ!」

 

 そう言って、御坂は脱兎の如く胎児の方へ走って行ってしまう。

 

「……さて、こっちもこっちで動くか。それで、ワクチンプログラムのインストールは具体的にどうするんだ?」

「……ワクチンプログラムは幻想御手と同じく音を使っている。使用者にそれを聞かせるだけでいい」

「あっ、それなら警備員の車には通信機器があります。その端末から幻想御手使用者が入院している病院の放送システムにアクセスすれば――――」

「いや、未だ病院に搬送されていないのもいるだろう。確実に全員に聞かせるなら学園都市中に流した方がいい」

「あっ、そうですね!」

 

 オレの案に初春が賛成する。

 こっちの方針が決まったところで、オレと初春は再び上へと上がっていく。

 

 

 

 だが、その途中で胎児からレーザー光線のようなものが放たれ、オレの視界は光に包まれた。

 

 





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