車のエンジン音が少しうるさく響き渡る夜、一人のトレーナーが3日ぶりにトレセン学園へと帰還した。
私の名前は真田裕一。中央トレセン学園のトレーナーだ。
今は友人からの頼みで、とある装置を受け取りに行って、帰ってきたところだ。
なんでも、『トレセンは広いから、実地テストもやりやすいだろ?』との事らしい。
まぁ、友人の頼みなんで、いっちょ受けたという訳だ。
さて、本題に入ろう。
誰もいない
[夜なんだから当たり前だろ]と思うかもしれないが、警備員の方々すらいないのはおかしい。
一先ずは休む事にしよう。そう思ってトレーナー寮の自室に入る。
入ると、机の上になにやら茶封筒が置いてある。
【担当配属辞令】
ん?トレセン側から担当をつけてくるなんて一体なんの騒ぎだ?
...まぁ、私には担当はいないが、ウマ娘の意思を尊重しなさ過ぎではないかとも思う。
とりあえず開封してみる。
封筒内には紙がいくつか入っており、一番上に辞令らしきものが封入してあった。辞令の日付は昨日であった。
しかしそこに書いてある文章を見て、私は目を疑った。
緊急辞令
緊急事態発生の為、中央ウマ娘トレーニングセンター学園の全ウマ娘を貴殿の担当ウマ娘とする。なお、この辞令は拒否する事はできない。
理事長 秋川
たったこれだけ。しかしそこに書かれている事はどうやら事実であり、理事長のハンコまである。
では何を持って事実、とするかであるが、それはこの近くに置いてあった段ボールの中身が語ってくれた。
中には大小様々な紙が入っており、そこにはいろいろとウマ娘達の事が載っていた。もちろん人数分の、とてつもない書類の束が。
...恐る恐る、置いていった仕事用スマホの中を確認する。
起動し、最初に入って来たのは悍ましいほどの同期や、知り合いのトレーナーから来ていたメッセージの通知だった。
ざっと目を通すと、この“緊急事態”とやらが何か分かってきた。
・トレーナーをはじめ、トレセンの職員が消え始めている。
・ウマ娘達は何か知っている様子だが、何も教えてくれない。
そして最後に来ていたメッセージにはこう書かれていた。
【たすけて】
私は即座に部屋の全ての鍵をかけ、一先ず寝る事にした。
どうしようもないこの現実を整理しようにも、とても落ち着けなかった。だからこそ、一度寝て忘れる事にした。
今の時間から学園を抜ける事はほぼ不可能であったので、仕方なく、だ。
最も、寝て忘れられる程簡単な事態でもない。
翌朝を迎えられる事を祈って。