眩しさに目をすぼめつつ、私は起き上がる。
時刻は午前10時。何とか私は、無事に次の朝を迎えられたらしい。
部屋から窓の外を見てみても、やはり誰もいない。
今日は授業も何もない日のはず。であるならば、通常はもっとこの学園は騒がしいはずだ。
ここまで静かな学園に少しずつ恐怖を覚えながら、学園のロビーの方まで出向くことにした。
きっとあそこなら誰かいるだろうし、何かしらの情報も手に入るだろうと、そんなことを考えつつ、ロビーまで向かいだす。
しばらくしてロビーに着く。そしてそこには、
誰もいなかった。
誰一人、たずなさんでさえいない。
ここまで来る道中にも誰とも会わなかったことを鑑みるに、おそらくあの辞令の緊急事態というのは、冗談ではなさそうだ。
そんなことをぼんやりと考えていると、誰かの足音が聞こえる。
「どうされましたか?トレーナーさん?」
私の目の前に現れたのは、緑の制服に身を包んだ人物、たずなさんであった。
「いや、学園内でここ二日間誰とも会ってないもんなんで、何かあったのかと思いましてね」
「ふふ、特に何も起きていませんよ?」
「いや、学園で他のトレーナーさんと一人とも会わないのは流石に何かあったとしか...それに、私宛によくわからん辞令も届いてますし、何かありましたよね?」
「.....」
急にたずなさんが黙り込んだかと思うと、急に館内放送が響く。
[最後のトレーナーさんを捕まえられた方が優勝です]
誰が話したかは分からない。しかしこの最後のトレーナーというのは、まぎれもない私であろう。
「ではトレーナーさん、ゲームスタートです」
少し遠くから聞こえたたずなさんの声。その方向に目を向けると、何人かのウマ娘達が並んでいた。
私は本能的にその場を駆け出した。なんであんなに急加速できたのかわからなかったが、それどころではなかった。
しばらく走ると、自室の前へと着いていた。急いで自室に入り、考えを巡らせる。それと同時に、友人から受け取った装置を身に着ける。
友人から受け取った装置、それは人間がウマ娘と同等のスピードで走れるようになる補助機、いわゆる外骨格というやつであった。
今の状況を端的に表すなら、
1VS2000
ということになる。はっきり言って勝ち目はほとんどない。
学園にいなかった1日か2日前にネットニュースにそのような話題がなかったことを考えるに、外部から時間がたてば救援が来るとも考えにくい。
コンコン
そんなことを考えていると、ノックの音が聞こえる。
しかし今の状況を考えるに、このドアの外にいるのはおそらく、私を捕まえようとする”誰か”であることはほぼ間違いない。
(この部屋は一階...なら...!)
ドサッ
最低限の荷物を外に放り投げ、その後に私も同じ窓から外へ出る。
外に出たその直後、自室のドアが破壊される音が聞こえた。
私は息を殺して近くの物陰に隠れた。数分もすると、自室からの音は消え、同時に学園が再び動き出したような感覚を感じた。無論、いい意味ではないがな。
私はふと、学園を取り囲むフェンスの外を見た。嫌な感覚がしたから見てみたが、どうやらその感は当たっていたらしい。
学園を取り囲む装甲車の車列と、謎の人影。スマホのズーム機能を用いてその人々を観察してみると、腕には緑、白、橙の三色旗のパッチ。
そう、彼らの正体は他でもない、アイルランド軍であった。
なぜここにアイルランド軍がいるのか一瞬疑問であったが、昨晩見た書類のことを思いだす。
【ファインモーション】
確かこのような名前のウマ娘がいたはず。そして彼女はアイルランド王家。
このことから、おそらく何が何でも、私を捕まえる気でいるのだろう。
私は見つかる前に走り出し、屋上に向かう。
なにが起きているかまだ十分に理解もできていないし、情報もない。
ただ一つ、目指すべき目標は、自然と出来ていた。
〈トレセン脱出〉
その目標を達成する為、私は行動を開始する。