ウサミン星人日常録   作:エンゼ

4 / 5
今年もウサミン17歳!!
祝福せよ!!!

というわけで
前話の続きです。起承転結の承になるかと。

相変わらず主人公は面倒くさいですが、よかったらどうぞ。


貴女はただ一人のウサミンなんだから。

安心半分、申し訳なさ半分、それが今の私だった。

 

まさか、誰が想像できるだろうか。超大手の事務所との共同の仕事に行ったら、小学校の頃に別れた憧れだった友人がいるだなんて。

そして、新人アイドルとして仕事の見学をするだなんて……。

 

幸いあの子──菜々ちゃんは気が付いていない。だから安心半分。……ちょっと気が付いてほしかったと思う気持ちが、なかったわけではないけれど。

 

既に346プロの方々や他の事務所の方々は挨拶済みだったところに紹介という形で、最後に見学であるらしい菜々ちゃんに挨拶をされていた。一応社会人として言葉は返せた……と思うけど、出来ていたかはちょっと心配だ。

 

「……プロデューサー? どしたの?」

「! ごめんね、なんでもない……」

「……そう?」

 

担当アイドルに声を掛けられ、意識が覚醒。

そこで遠巻きにいる346プロの面々──主に菜々ちゃんを無意識に眺めてしまっていたらしい。今は思い出に浸るべきじゃない。仕事の場だ。切り替えないと。

 

「さてじゃあ、今日の仕事内容だけど──」

 

この仕事の異事務所間交流……と呼ぶべきか。346プロが主催する、他事務所のアイドルたちを呼んで、色々話すって感じ。

346さんは大きいからこそ色んな人がいるんだけど、それ故にあまり外部との交流なんかはしないで、クローズドなことばかりやる。それを変えようということで、始まったのがこの企画らしい。

 

私たちのような弱小の事務所からすれば、346というビックネームと共に仕事が出来て所属アイドルの名前が売れるかもしれない、という理由もあって双方WIN-WINの仕事になっている。

 

この子にやってもらう仕事としては、ありのままをさらけ出してもらう事。勿論ある程度自粛すべきところもないわけじゃないけど、まずは世間にこの子の存在をアピールさせる。"こういうキャラのアイドルがいる"ことを思い知らせる。他の事務所の子もいるなかでは結構難しいかもだけど、出来るだけ頑張って欲しい。

 

あと副産物として、346の子含め他のアイドルと仲良くなってくれればうれしい。仕事的な意味でも、プライベートな意味でも。

 

「──って感じ。出来る?」

「いつも通りやればいいってことでしょ? できるできる。泥船に乗ったつもりでいてよ」

「泥船は沈むじゃない……」

「にゃはは! 確かに」

 

すると全体に向けて、そろそろリハーサルをするから集合するようにという旨の周知がされた。

 

「じゃ、行ってくるねプロデューサー」

「うん、行っておいで」

「……ちゃんとさ、見ててよ? わたしのこと」

「? うん……」

 

不思議なことを言い残して、撮影舞台の方へ向かっていく。プロデューサーとして彼女のことを見ていくのもそうだけど……コネクションを作りに行く必要がある。

私のこと、もしくはあの子のことを印象付けないといけない。各事務所のプロデューサーに、話しかけに行って、軽く世間話をする。業界の情報収集も兼ねて。

 

勿論あの子のことも見てはいる。ひやひやする場面が全くない。嬉しいような、私は必要ないかもなと思ってちょっと寂しかったり。

 

……だけどどうしても、意識は逸らせそうにないらしい。

 

ふとした拍子に、菜々ちゃんの方へ視線をやっちゃう。その目はキラキラしていたし、ちょっと眩しそうにもしていた。

……やっぱり菜々ちゃんだよね。同姓同名なんじゃないかってずっと考えているけど、どうしても姿があの頃と重なる。そのまま成長して、かなり綺麗になった……というか同じ年なのに年下みたいだ。なんというか……いい意味で幼さを残してる気がする。

 

「気になりますか? うちの安部が」

「えぇ。──と、あ、す、すみませんッ! 御社の安部菜々さんを何度も見てしまって……!」

 

気が付いたら、346のプロデューサーさんに声を掛けられた。反射的に謝罪。

 

「いえいえ、怒ってたりはしてないですよ。ただ、よく彼女の方を向いてるな……と思いましてね」

「あ、あはは……すいません、気になってしまって。その……安部菜々さんは、新人アイドルさんなんでしょうか?」

「えぇ。弊社から近々デビュー予定でして。色々準備中なんですよ」

「そうなんですね」

 

近々デビューするんだ。……そっか、菜々ちゃん。もうすぐ夢に到達するんだね。

 

「差し支えなければ、どのあたりが気になったのかお教えいただくことはできますか?」

「え……ッ?!」

「他者さんからの視点も気になりまして。彼女のプロデュースの参考に出来ればと」

「私ごときの話が参考になるとは思えないのですが……」

「それでも、です。どうやら貴女の彼女を見る目が、他の方々と違うように見えましてね。何故その目をしているのか気になった、というのが本音です」

「!」

 

346のプロデューサーさんは観察眼も備えているらしい。こうして対面で話したのはさっきの挨拶くらいしかないのに、もうわたしが菜々ちゃんへ複雑な感情を持っていることを理解しているらしい。

 

流石、菜々ちゃんを見つけた事務所のプロデューサーさんだ。本物のプロの目だ。

 

「……なんてことないですよ。ただ眩しく見えただけです」

「ほう……」

「問題なかったらで大丈夫です。彼女の……安部菜々さんの公開されるプロフィールってどんなものかお教えいただけますか?」

「ほとんど公開情報ですから構いません。彼女は──」

 

──ウサミン星からやってきた歌って踊れる声優アイドルですよ。

 

あぁ、確定だ。菜々ちゃんその人だ。

 

目頭が熱くなる。

そっか、今まで頑張ってきたんだね。ひた向きに努力し続けていたんだね。

 

……あぁ、眩しいなぁ。

 

そんな思いと共に聞こえてくる菜々ちゃんのプロフィール。全部全部彼女らしさが出てる。納得しちゃう。菜々ちゃんの人格は小学生時代で出来上がっていたんだ。凄い。

 

「……ウサミン星」

「えぇ。……面白い世界観ですよね」

「はい、本当に。でもそれと同時に……とっても美しいと思います」

 

舞台から目を離さない菜々ちゃんを見る。真剣な表情でもある。勉強をしているんだろう。

 

間違いなく、菜々ちゃんはトップアイドルへの道を往く。最初はイロモノ扱いされちゃうかもしれないけど……あんなにもアイドルという存在に真正面から向き合ってるんだ。

 

……すごいな、菜々ちゃんは。

 

「うちの安部を、すごく評価してくれるのですね」

「えぇ。……あまり深い理由は、ないのですが。彼女のデビュー、楽しみにさせていただきますね」

「それはそれは、うちとしても頑張らないといけなさそうですね」

 

そんなことを言ってる間に、リハーサルが終了。スタッフさんの「休憩を取ります」の声が辺りに響く。

 

「あ、ではいったん休憩ですね。本番もよろしくお願いいたします」

「はい。こちらこそ」

 

去り行く346のプロデューサーさん……そして、去っていく菜々ちゃんを見ていた。

 

 

「……」

 

 

舞台からじっと私を見る担当アイドルの目に、気が付くことなく。




年単位の更新ですが、これは定期更新なのでしょうか。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告