僕のヒーローアカデミア×Fate Grand Order 作:小野屋陽一
side三人称
ロマニは語り始める。
「『人理継続保障機関フィニス・カルデア』これが僕たちが所属している組織。『特務機関特殊案件秘匿対策課』は表舞台で活動出来るよう設立した部署。まぁヒーロー公安委員会とは書面上、そっちが上だけどやってる事が違うからお互い干渉したがらない。だから僕たちの事を調べても何も情報が無いんだよ。ホークス」
「…俺が調べてたの知ってたんスね。」
苦笑気味に答える速すぎた男。ニコリとロマニは笑みで応えた。ホークスは問う
「じゃあ早速なんですが、アンタらと俺らヒーロー公安の違いって何です?」
「うーん…ざっくり言うと、守る対象かな?君達ヒーローは『人』を守っている。僕たちは…『人類史』を守っている。さて、人類史とは何か知ってるかな?」
全員が訝しむ。そこに八百万が挙手しながら訊く。
「人類史とは…その…約700万年前に類人猿から分岐した人類の起源と進化、文化の発展、社会の形成を追求する学問の事で?」
「そう。カルデアは人類の未来を語る資料館。人類史を長く、何より強く存在させるため多くの研究者が集まった研究所にして観測所。人類の決定的な絶滅を防ぐ為の各国共同で成立された特務機関。」
「人類の決定的な絶望…?」
誰かがそう呟く。それに反応したロマニは言う。
「ある時、何の前触れもなく観測されていた未来領域が消失した。つまり、人類は絶滅する事が判明。否、証明されてしまう。何者かによる歴史介入で人類史が焼却されてからは、本来は存在しないはずの過去の特異点事象が発見される。これに介入して破壊する事により、未来を修正するための作戦…『冠位指定(グランドオーダー)』を始動した。つまり…君達が雄英高校に入り、ヒーローを目指す前から藤丸立希、藤丸立香の二人が人類史救済の為に動いていたのさ。」
「ぐ、冠位指定…?」
「未来が消えるって何…?」
「ぶっ飛んだスケール過ぎて何がなにやら…」
ざわつく周囲。理解が追いつけない者も出てくる。
「要するに、俺達が学校で学んだ教科書に出てきた歴史を、貴方達カルデアが―藤丸姉弟が守っているって事っすね。」
「すごく分かりやすい!」
さらっと分かりやすくまとめたホークスに思わずツッコむ。直後、エンデヴァーが言いこぼす。
「だが…いささか重すぎる。俺達ヒーローに秘匿するぐらいの力がある割にはたった2人…ましてや子供に人類の歴史を守らせるなんて、合理的じゃない。機関というくらいだ。藤丸姉弟以外にも、動ける人員はいるはず。」
「言われてみれば…」
「確かに…」
その疑問にロマニは少し眉をよせるが、直ぐに冷静な顔つきで話す。
「…さっきも言ったけど。ある日、カルデアで『20xx年を最後に、人類は絶滅する』という研究結果が“証明”された。原因を調査するうち、突如として過去の日本のとある地方都市に観測不能領域の出現を検知された。ありえない事象に僕たちは人類史が狂い絶滅に至る理由と仮定。時間遡行を実行する。」
「時間遡行ってタイムマシン!?マジであるのかよ!」
「…この時までは藤丸姉弟以外にも人類史救済する者達―マスターはいた。マスター達を過去へと送り込もうとした時、カルデアは何者かの破壊工作による爆発を受け…まだマスター候補だった藤丸姉弟以外、全員全滅してしまった」
「ぜ、全滅って…」
「最悪な事件だった…結局、そのマスター候補だった藤丸姉弟に時間遡行を実行。紆余曲折あったげど一先ず一件落着…けど先の爆発で所長が消えたり、首謀者が現れたりでね…直ぐに元の時代へと帰還した藤丸姉弟を迎え、カルデアは人類を救うためにいくつもの鍵となる願望器―『聖杯』が歴史上の異変・特異点にあることを突き止めた。」
一息付き、話し続ける。
「過去への時間旅行。マスターを過去に送りこみ、事象に介入する事で時空の特異点を探し出し、これを解明、あるいは破壊する禁断の儀式。その名を―『聖杯探索(グランドオーダー)』。人類を守るために人類史に立ち向かう、運命と戦うものたちの総称。何度も言うけど、藤丸姉弟は現在進行形で人類史を守っている。君達で言うヒーローなんだよ。」
静寂。ロマニの話を聞いたその場にいた全員は藤丸姉弟を見る。各々が思っていた事以上に背負っているものが壮大な事に何を言えばいいのか分からず、ただ黙るしかなかった。
「さて、ここまでで訊きたい事はあるかい?」
その問いかけに、轟が訊く
「あの…マスターって何ですか?立香と立希が個性で呼び出す人物達がよく2人に向けてそう呼んでいますが…さっき全滅したって言うマスター達も、2人みたいに召喚する”個性”を持っていたんですか?」
「あー…うーん。どう答えたものかな…マスターって言うのはまぁあだ名みたいなものかな?さっき言った時間遡行して歴史上の異変・特異点を探索、解明、破壊する者の事かなぁ…それと…藤丸姉弟の個性は知ってるかな?」
「?…はい。『英霊召喚』。有名な偉人を呼んで使役する…って立香が言ってました。」
「うん。そうだね…結果から言えば、藤丸姉弟と同様に、全滅したマスター達も英霊呼び出す事は出来た。けど2人とは違う方法で召喚してたんだよ。」
「違う方法…?個性以外での超常現象があったので?」
「あったんだよ。個性という超常現象が起こる前から存在し、決して表社会には出されなかった。神秘、奇跡を人為的に再現する行為。それを僕らは『魔術』と称した。」
「『魔術』…」
「マスター達はその魔術を用いて藤丸姉弟の様に英霊召喚していたのさ。ただ、魔術を使った英霊召喚と個性を使った英霊召喚には大きな違いがあった。」
「どんな違いが…?」
「一言で規模。魔術での召喚と言ったけど人という生命体を、ましてや過去の存在を現代に呼び留めるという方法にはそれなりの準備、触媒、魔力、詠唱が必要なんだ。場合によってはあっさり呼べるけどまず無い。それに召喚できるマスターと出来ないマスターもいた。それと違って藤丸姉弟は違う。個性によって先のプロセスは無く、二つ返事で容易に呼び出す事が出来る。呼び出す人数も2人の魔力量によって呼べる人数が変わる。凄い事だけど…この2人の持つ”個性”『英霊召喚』は…個性でもあり魔術でもある…『曖昧な個性』と言う『魔術』なんだよ。」
「個性でもあり…」
「魔術…?」
「結局どっちなんだよ?」
「あの…」
ロマニの説明途中に麗日が手を上げる
「ずっと前に…立香ちゃんに聞いたことがあるんです。『どんな両親か』って…そしたら『いない。』って…それと関係があるんですか?」
「………………」
麗日の問にロマニは俯く。
「関係は…ある。寧ろこれこそ、藤丸立香、藤丸立希の原点とも言う。」
『!』
「でも2人の事を話す前に…まずは魔術について話そうか。一言で魔術と言ってるけど、実際には多種多様。君達が持っている個性の様に色々な魔術があった。英霊召喚の様に何かを呼び出す召喚術、万物や物質の流転をテーマとする錬金術、魔力で物質化させる投影魔術、怖いけど生贄を捧げ災厄を起こす黒魔術とかもあった。この多種多様な魔術は個人で保持してるわけじゃなく、基本的に親から子への一子相伝で自分たちの魔術と研究を受け継いでいく。」
「へー、何か継ぐって点なら個性と同じようなもんだな。」
「…………」
誰かの呟き、少しだけエンデヴァーは反応した。
「そんな多種多様な魔術がある中に、ある召喚術を生業とした家があった。そこはそれなりに歴史があり、魔術の根源へ至る為に相伝の召喚術を極めていた…が、中々成果は出ず、召喚術にも頭打ちになる。が、そんな時ある朗報が入った。『発光する赤児が生まれた』という、魔術以外の現象が」
「!個性…」
誰もが知っている、今となってはそれが普通となった超人社会の始まりの事だった。
「因みにだけど”個性”に関して魔術師観点から色々調べたけど結果は不明。今だ解明できてない…けど、その召喚術を相伝していた魔術師が一つだけ判明した事があった。それは『個性』と『魔術』は相性が良かった事。」
「相性?」
「魔術を扱う者には必ずある『魔術回路』。これは生命力を魔力への変換させる疑似神経。その神経と…"個性"を発現させる人間の遺伝子に組み込まれた特殊な因子、『個性因子』が好反応を見せた。召喚術に必要な魔力、触媒を個性が補ってもらう事に目を付けたその家系は一気に研究を進ませた。」
何か嫌な予感を持つを者達。ロマニはそれに何となく気付いているが気にせずに続ける。
「まず配合。個性を持つ者と魔術を持つ者を婚姻させ個性と魔術を両方保持した子供を産ませる。」
「それって…個性婚みたいな事…」
「自身の"個性"を強化して、子孫に継がせることを目的とした結婚。超常第二世代から第三世代の間で社会問題になった出来事。うん概ねそんな感じだね。けどこれは上手く行かなかった。ほとんどが個性保持の子供だけだった。だから…次にその家系は文字通り子供を作った。所謂ホムンクルス。」
『!?』
「人って…作れるの!?」
「ぁ…さっき言った錬金術…」
「そう。魔術の中には人を作れる魔術も当然あった。恐ろしい事に魔術は魔力、材料、詠唱があれば神秘的・奇跡的な出来事を人為的に再現する事が出来る。結果として召喚術に適合した人間の情報遺伝子を個性に混ぜた所、個性因子も遺伝情報として人間は継いだ。だから逆にその個性を利用して召喚術に取り込んで更に強力な召喚術を行える人間を作った。鼠算式に増えた一方、その多くは…酷い言い方だけど不良品だった。」
「っ……」
不良品。その意味に誰もが理解する。
「そんな研究が、実に何百年と続いた。」
「何びゃ…そんな人が許されない所業を…っ誰も止めなかったのか!?」
「全ては根源に至る為。残念ながら過去の大半の魔術師の人間性に関しては一般的な価値観から離れている。目的のためなら実験材料にすることも厭わない。この家系もまた、悪だと思っていない。」
「っ……」
知らなかったとはいえ、ヒーローとして誰よりも動いていた元・No.1ヒーローは拳を震わせ嘆く。
「…そして遂にこの研究は功を奏した。
―魔力を十二分に保持し、
―個性という触媒で、
―いつでも複数召喚できるホムンクルス。
―その子供は女子、男子と二名。
―同じ年、同じ場所に誕生。
―作り終えた時間差で女子を姉、男子を弟として設定。
―実験体番号133904。並びに171047。
さて、もう既に察している者のいるだろうね。
そう、これこそ個性と魔術の二つを兼ね備えた個性魔術複合生命体…
『藤丸立香』
並びに
『藤丸立希』」
ロマニは言い切った。