【IS×DARKSOULS】佐々木潤という男【オマケ】 作:エーブリス
なんか作風変わってたら本当にすんまそん。
「せぇええええいッ!」
迫る白式・雪羅。
それを考え得る総ての武具でぶちのめし、最後はアリーナの向かい端まで叩き返す――――それは最早、佐々木にとって毎日のルーティンにしか過ぎなくなっていた。
「どうした?
いつものパターンか?」
「な、ワケッ…!」
とは言え、だ…徐々に、徐々に、何かが変わりつつあった。
単純な部分では、その“ぶちのめす”課程がやけに長いといった所で、時に何を試したいのか…訳の分からぬ行動をとる事がある。
「ッ!?(この動きは…そうか、面白い。が)」
これが何を意味するのか、佐々木はそれを察せぬ白痴では無い。
一夏が自身の技量に、迫りつつあるのだ…それも、物凄いスピードで。
――――正直それは、面白くもあり不服でもあった。
あの勢い任せの若造が何もかもを学び、次々と飲み込んでゆく様こそ老骨にとって心躍る以上のモノがある…だが、それによってたった数度だけ戦った小僧に斬り伏せられるのは――例え本気でなかったとしても――どうにも頂けない。
故に佐々木もまた、次のステップへと歩み始めた。
彼の周囲が…青白く輝き始める。
「えっ…ッ!?」
見た事もない――――あぁいや、過去の一度瞬く間に見た光景に気を取られ、咄嗟に飛翔した魔術の
複数発のソウルの太い矢を受けた一夏は怯み、そこへ容赦なく【ソウルの大剣】が叩き込まれる。
「うぐぅうッ!?」
質量があるのか、無いのか…。
だがパワーは感じられるその一撃に、結局一夏はアリーナの端まですっ飛ばされてしまうのだった。
既に“定刻”が近づきつつある。
うつ伏せの一夏を見つめながら、彼は自身のIS【レガシーオブDARKSOUL(以下LoD)】を解除した。
「ッつぅ~…。
そうだった、コイツ魔法もあるんだった…」
「そんな体たらくだから、お前は何時までもアホなんだ。
ほら立て。今日はもう終わるぞ…今の対策は明日までに考えていろ」
同じく白式を解除した一夏に、佐々木は手を伸ばす。
「?、早くないか?」
「今日は健診だ。
お前の姉様から「遅れるな」と釘を刺されている」
「だろうなぁ…佐々木の時間間隔、狂ってるし」
言い返す事は無かった、出来ないのだから。
◇――――――――――――――◇
【3話:
◇――――――――――――――◇
「来たか、佐々木…珍しく遅刻しなかったな。
――――だが上裸で来るとはどういうつもりだ」
「扉の前で脱ぎました」
それがなにか?とでも言いたげに、佐々木は腕に掛けた上着を見せつけた。
担当教師である千冬も山田も、この困った老生徒にあきれ果てる。
「だからってですね…。
――――にしても佐々木君、こんな傷だらけでしたっけ?」
山田は一度、ちょっとしたアクシデントで彼の上裸姿を見ている。
その時こそ同じく筋骨隆々であったが、今ほどに酷い古傷は無かった。
特に、腹筋を横一文字に割く巨大なそれは、明らかにナイフやその手のモノとは思えない。
まるで巨獣の爪によるもののようだった。
「えっと、アレは何と言ったか…あぁ、所謂ホログラムですよ。
実体のないガワで、酷い身体を誤魔化していましてねぇ。今は用いておりませんが」
「束の、か…。
確かに少々刺激的だが、貴様がその程度の傷を態々隠そうとするとは思えんな…本当は何を隠している?」
「…流石はブリュンヒルデ、鋭い感覚をお持ちのようだ」
“健診”の準備が着々と進む中、彼は幾つかの知識を使って力を流動させ、自らを侵す呪いを全身に浮かび上がらせた。
その身体はみるみると皺くちゃになり、眼孔は深く暗く沈み…四肢は痩せ細る。
枯れ枝のような形相は、生きている人間とは思えなかった。
所謂【亡者】と呼ばれる状態である。
山田は口を覆って愕然とし、千冬もまた顔を僅かに引きつらせる。
「ッ…」
「長く生き過ぎた人間の…妥当な末路、と言う訳か」
「自分だけがそうだった訳では無かった、のですがね。
私の時代では、いつからだったか…人はいずれこうなる定めでした――――」
やがて正気すら失い、亡者として彷徨い貪る。
故に不死は神から…果ては“まだ闇の証が見えぬ”人間たちにさえ恐れられ、北方にて閉じ込められたのだろう。
「――――お陰で私の半生、牢獄暮らしでしたがね。
腹も空かぬし官吏もうろつくだけなので、暇なだけでした」
「それは…」
「最早苦しかったとも思えませんよ、山田先生。
現に、私はあの檻の外へと出る事が出来たんだ…」
身体を戻し、次に彼は手に火を宿した。
小さな小さな種火はほんの僅かな熱は、その周囲数センチ程度のみを暖かく照らす。
「…もしよければ、まだまだ続けますよ。
適当なファンタジー小説から引き抜いた…御伽噺のようなもので良ければ」
「そういう話を聞くための“健診”でもある…最早貴様の“物語”を嗤えんよ。
姿を竜に変えた挙句、死んで生き返った様な男だと知った時からな」
「私もです。
やっぱり佐々木君の時代には、大きな竜とかが居たんですか?」
山田からの純粋さを強く帯びた質問に「竜、ねぇ」と指を顎に当て、多くなる話の整理をつけた。
…因みにこれらの間も、機器による測定等は行われている。
「居る事には居ましたが…既に矮小で見る影もない、滅びゆく種族でした。
それが最盛を誇ったのは【灰の時代】と呼ばれる…私らの時代からしても大昔の事です」
伝承者共の言葉に嘘偽りや間違いが無ければ…と付け加え(或いは前置きをし)て、佐々木は次に【最初の火】の起こりについて語った。
「――――元よりその昔、つまり灰の時代にはあらゆるものに差異が無かったと聞きます。
熱いだとか冷たいだとか…生きるだ死ぬだも無い、光と闇さえ曖昧だった…竜とは、そうした時代の支配者だった様です」
「差異の無い。
つまる所の虚無、か…?」「恐らくは」
けれども、その極限の静寂は何時までも続かなかった。
「…しかしある時に大火が燃え盛り、そこから差異が生じました。
私達はそれを【最初の火】と呼びます。そしてソレが齎したのは差異だけではない…力さえも、竜の足元でひっそりとする者共に与えたのです」
今の佐々木の手にはその力――――生命の根源、ソウルを手にしていた。
最早一連の時代そのものの化身と成った彼のそれは本来果てしなく強大であり、故にその一部しか表出し得なかった。
…そして“ある事実”に気が付いた山田が、その眼を見開いた。
「…ッ!
織斑先生、佐々木君の手にある…物体?からISコアの反応が」
「何だと…?
佐々木、それは一体」
「ソウル。あらゆる生命の源――――だったもの、と言うべきですかね。
大なり小なりあの時代の者であれば、誰もが持ち得ていました」
彼はグラスの中のワインを弄ぶように、揺らめくソウルを震わせた。
「生命力…の具現化、という見方でよろしいのでしょうか」
「大方は大丈夫でしょう。
こいつの姿形は人や存在によって多種多様…大概は似ているとも、実の所同じものは一つとしてありません。
中でも最も強力で、一番最初に見出されたのが――――」
突如、薄暗い臨時測定室の彩度が一気に増す。
煌々と輝くそれを…しかし何時までも見せびらかす訳にもいかず、佐々木は直ぐに体内へと引っ込めた。
「…この【王のソウル】です。
言うなれば太陽、火と光の力を持つコレを武器に…後に神と呼ばれる者と、その取り巻き達は…死なぬ古竜へと戦争を仕掛けました」
「竜まで不死か」
「戦争…成程、それで。
しかし、不死身の竜を如何なる方法で倒したのでしょうか…?」
「古竜の不死性――それも我ら“死んでも蘇る”不死人と違い“死なない”というもの――は、すべて身に纏う鱗より来ていると聞きました。
実際その…或いは末裔のウロコには、強い力が眠っていた」
彼は次に“ポケット”から【竜のウロコ】を取り出した。
研磨とコーティングにより見た目が変わってはいるものの、正しく古竜のものであった。
「これを剥げば死ぬ、そう神々が知った時…奴らは“光の力”を槍にして放り投げた。
…実際は鱗への有効打とするには、投げてはならず…こう、直接突き立てたようですが…一般的には長い事忘れていたそうです」
「忘れて…その話を、お前は何処で知った?」
「かなり後の世に、それを記した書物を見つけましてね。
なにせ死んでも生き返りますから…そうした事もあり得ましょう?」
僅かにその光の力――――雷を帯びた手で竜のウロコを2度か3度だけ叩きつつ、最後にはある程度の力を込めてソレにヒビを入れた。
「何あれ、この殺法を知った神々は結局…竜との戦争に勝利しました。
そして神々たる王族は…最初の火より見出した“太陽の光”による統治を始めました。私の時代…【火の時代】の始まりが、それです」
「灰の後に、火…ですか。
なんだか可笑しな響きの様で、言い得て妙にも感じますね」
「そうでしょうか…そこまで考えた事は無かった。
――――しかし、この支配も長くは続きませんでした。所詮は暗闇の中で燃え滾る、ただ巨大なだけの篝火だ」
この言葉に合わせて、手に出した火を少しずつ弱めていく。
同時にもう片方の手を用いて“闇の力”を同じ勢いで強めた。
「不死の呪いも、その時期から出始めました。
私とて最初は驚きました…戦場で殺した相手が、また生き返るのですからね」
ソレが結局何だったのか…詳しくは分からない。
最初の火が弱まった事により“生死の差異”が曖昧となったのだろうか…或いはそのサイクルにおける単なるバグだったのだろうか。
「本当、所詮は篝火…されと篝火だ。
弱まったのなら、また薪を足してやればいい――――そうして、王のソウルを手にした者の中でも中心的だった神【太陽の光の王グウィン】は、その身を最初の火の炉へとくべたのです」
「まさかそれが…【薪の王】…」
佐々木は頭を縦に、ゆっくりと振り肯定した。
「恐らくはグウィンが最初の薪だったのでしょう。
けれども、それでは足りなかった…王のソウルをその他の者達にも分け合ったのが恐らくの原因ですな」
「だから…佐々木君、いえ、佐々木君達が」
「全くその通りです、山田先生。
弱いが殺しても死なず、そして星屑の数だけ居る不死人は
それに答えられる者は居なかった。
果たして神々の、真の思惑とは何だったのか…それらを考察する判断材料こそ大量にあるが、恐らく今語り切る事は叶わないだろう。
ともあれ二人の教師は、今まで「只者では無い」とだけの曖昧なモノだった佐々木への印象が…より確固たるものに変わっていくのを自覚した。
「…この辺りが、私のISの…力の大本ですかね。
最早あの時代の総てですので、おそらく今の説明じゃとても語り切れていませんが…それはその都度、といった所か…」
「是非ともそうしてくれ。
まだまだお前に驚かされるとはな…」
「やはり人数を絞って正解でしたね、織斑先生」
何時ぞやの臨海学校の時の様に、身体に装着された検査機器等を外す佐々木。
その上から先ずはISスーツを纏わんとして居た時「それで…」と千冬に尋ねられた。
「佐々木潤、貴様はこれからもその強大なパワーを背負っていく訳だが…どうする気だ?」
「どうするもこうするも…どうも出来ませんよ。
只々封じて行くだけです。きっと人には扱えない」
破滅が確定されたエネルギーなのだ…恐らくは“上手くやれる方法”もそう簡単には見つからないだろう。
故に萎み切るまでに、ひた隠しにするしかない。
佐々木潤は番人の名前でもあるのだ。
皮鎧の様に分厚いISスーツを纏い、その上から制服を着る途中に「まあ、それはそれとして」と、思い出した様に語る。
「独自でこの力達の解析はやっておきます。
どうも楽しみが出来て、学徒らしい事をしたくなりましてな」
「それは良かったです、佐々木君。
その調子で成績も伸びると尚良いですね!」
「成績…、まあ、善処します」
少し痛い所を突かれた佐々木は言葉の端切れが悪くなる。
どんな人生を歩もうが、どんな力を持っていようが…結局は何処か出来の悪い生徒の一人である事実は変わらない。
同時に制服の着用も終わる。
――――ごつごつとしたISスーツに合わせて作られたその姿はまるで、鎧とサーコートを纏った騎士のようであった。
「どうした?その制服…仕立て直したか?」
「えぇ、以前のデーモン…あぁ、
アレの騒ぎで直すハメになりまして…中身にフィットするのは良いのですが、これじゃまるでコスプレだ」
仕立屋が気を使ってくれたのは良いが、一体あの店は己に何を見出したんだ。
高貴な直剣一本でも腰に差せば様になってしまう自分の有様が少し恥ずかしく、彼は後頭部を掻いた。
「そんな事ありませんよ、物凄く自然に似合っています」
「そう言って頂けると幸いです。
――――ではまた明日」
一礼をした彼は、測定室より立ち去った。
そして翌日の放課後、つまりはアリーナでの自主練時間。
やはり男子二人はそこにISを纏い立っていた…しかし一夏の方は少々ワケが違う。
「…おい、イチ坊。
なんで
「なッ!?カキタっ…!?
佐々木、な、なんて事を「箒?カキ何とかって、何だ?」黙っていろ一夏!兎も角今日は貴様にタッグマッチを申し込む!」
「タッグって、俺一人だぞ…(しかもこの二人、妙に連携が上手くいくから面倒だ…)。
まあ、何でもいいが」
突然仕掛けられた2対1の戦い。
とは言え不死人にとって数的不利は日常茶飯事、対応できない奴が全部悪い。
ならば…と彼はLoDを展開し、右手に闇と深淵を落とした。
非実体のようで、非常に重たいそれらを“領域”として足元に展開しつつ…左手にはその対となる光と炎の力を纏う。
「それじゃ、佐々木…俺と箒で“壁越え”と行かしてもらうぜっ…!」
「へッ…いっちょ前に調子こくじゃないか、クソガキ共。
まあ、遠慮せず打ち込んでこい――――特別に面倒見てやる」
俺を倒せるようになるまでは…。
紅白の閃光が迫るのと同時に、闇の尖兵を伴い光の力が突き進んだ。
壁はいずれ超えられる。
終わりを生きた巡礼者は…それが楽しみで仕方なかった。
僕の中では佐々木は3年生半ば程度に専用機持ち全員に壁越えされるイメージです。