【IS×DARKSOULS】佐々木潤という男【オマケ】 作:エーブリス
前者は本小説の第3話及びに本編におけるナターシャの一文を見れば何となく分かると思いますが…不死人、つまり佐々木がIS学園を卒業した後の足跡を前日譚的に語るものです。読んで字の如くの典型例のような内容ですね。
それで後者は…想定としては2、3世紀程後の話で、とうとうIS世界に知人が居なくなった不死人が(宗教観の変化でグローバルな感じになったけど殆ど人のいない)墓場へとお参り行って…みたいな話です。
コッチはまぁ…色々な伏線の回収も兼ねています。
で、それが何時出来上がるかと言えば…もしかすると最速で2日後、なんかの間違いで出来上がるかもしれないし、もしかすると数年たっても見える事は無いかもしれない。
あんま期待しないでネ。
不死人とて所詮は人である…イラつきに苛まれる事が無い訳ではない。
ただ、年と経験の功で大抵の事柄は流せるというだけで、上限はしっかりと存在する。
対IS近接戦闘訓練用の
ドローンがプログラム通りに打鉄のブレードを構えれば、荒々しい蹴りでそれを破る。
ガードが崩れた所に斧を振るうが、それは刃を叩きつける為ではない…ソレをフックの様に扱い、ドローンの首辺りへと引っかけて…そして引き寄せた。
「ッ…!」
同時に自らも相手目掛けて飛び込む。
その運動エネルギーは全て、右脚の膝へと収縮し…強烈な二ーキックとなり、ドローンの喉元へと叩き込まれた。
斧の直角部分と、佐々木――――レガシーオブDARKSOULSの右膝。
その二つがまるで虎の顎の様にドローンの首元へと噛みついた!
しかし噛みつくだけで獲物は死なぬ。
故に、彼はより強くホールドした後に、パワーアシストに始まり、スラスター、PIC、その他諸々…ISの機動に関わる全ての機構を用いて、空中でドローンをぶん回した!
瞬く間に十分な加速を付けた所で、それを空目掛けて放り投げ…アリーナのドームバリアへと激突させる。
バリアの反発力で跳ね返ったドローンを彼は、更に両足による挟み蹴りで頭部を追撃し、更に右手を掴んで捻り上げ、重力とスラスターの加速によって地面へと突撃を決行!やがて巨大な土埃の柱を起こし、人型のソレをアリーナの大地へと…アルファベットの「L」の字に、固め封じたのだった。
――――古武術奥義【虎王】の完成である。
肩関節を極められ、佐々木にのしかかられたドローンは一切動く事が出来ず、しかしプログラムに従い無駄な足搔きを続ける。
佐々木自身やLoDのパワーもあり、これで敵ISのエネルギーはかなり削れた。
だが、恐らくこれで倒しきる事は叶わぬだろう…故に此処から、更にトドメとなる
空いてる拳で殴り続けるのもいいが、体勢的にそこまでのエネルギーが生まれない…せっかく敵の動きを封じているのだ、強力だが詠唱に時間のかかり、弾速や射程に問題のあるスペルを用いるのもいいかもしれない。
【太陽の光の槍】…いや【雷の杭】、【ソウルの結晶槍】、【封じられた太陽】や【苗床の残滓】、【深みの大澱】或いは【絶頂】。
しかしそれらを放つつもりは毛頭なかった。
既に佐々木の怒りは、虎王を決めた時にスカッと晴れてしまったのだ。
これ以上やればまた備品破損でどやされる…その懸念で更に頭が冷えて、ドローンを遠隔操作で停止して演習を終えた。
因みに怒りの理由は、ネット通販のトラブルである。
詳細は長くなるので省くが…運営側が十割悪いにも関わらず、何故かナメた対応をされて腹が立っていた所だった。
次は性別でも偽ろうかと…彼は独り言ちた。
さっさと着替えを済ませ、更衣室から出る直前…入り口の向こうに人の気配を感じた。
どうも経験上、彼は待ち伏せに人一倍か二倍ほど敏感なのだ。
比較的平和のご時世の上、更に平和の度数が高い日本国管轄の場所で、有事など警戒していてはバカらしいと思われるかもしれないが…やはり警戒はするに越した事は無い。
それに結局の所、日本も統計上は少しずつだが物騒になりつつある。
自動ドアである事を念頭に置き、慎重に近づき扉の向こうの景色を覗くと…そこにはやや見知った顔がいた。
「やっほー!
…って、何?どうしたの!?何をそんな警戒してるの!?」
二年生新聞部の、黛 薫子だ。
部活動の性質の割には、どうも佐々木とは――連絡先を交換するほどには――仲の良い生徒の一人である。
「っ!…黛先輩でしたか。
すみません。どうも待ち構えられてる気配を感じると、つい」
「ウソォ、あの勇猛果敢…寧ろ蛮勇ってレベルの佐々木君が!?
今さっきの訓練の勢いは何処に!?」
「だからこそ、ですな。
そうやって浮足立っていたら、脇腹をやられた事がありまして――――」
刺された時の痛みと驚きを、その箇所を摩り、思い出しながら語ると…薫子が「え?何ソレ何ソレ!?」と食らいついてきた…。
因みに佐々木は一般的には“某スラム育ち”として通っている。
「そんな大げさな…。
こんなの、井戸端会議のネタにしかならないのでは?」
「ノンノンノンノン、分かって無いなぁ佐々木君。
こういった細かい情報が、文章に“強さ”を持たせるのよ」
「は、はぁ…」
新聞など、見出しが殆どだろうに。
そう思った彼であったが、素人の口だし等無駄でしかないので、黙っている事にした。
「で、それで?
刺された後どうしたの?」
「刺された後、当たり前の様に殴り返しました」
「殴り返して…それで?」
「一旦下がり、ナイフ?折れた剣?を引き抜いて、投げ返そうとしたら…消えていました」
「消えてたァ!?」
まるで怪談話のような展開に、思わず目を見開き、あんぐりと口を開ける薫子。
しかし事実はそうでは無かった。
「単に、殴り飛ばした先が崖だったという話です。
刺される前に崖下を覗いていたので、生きてはいまいと判断して…そのまま放置しました」
「放置したってのは…助けるのを諦めたって事?」
「いいえ、トドメを刺す手間を省いたという意味です。
助けたり生かしたままにしたら、その手のヤツはまた殺しに来ますから」
「うわぁ、怖いなぁ。
ちょっと流石にそのまま使えそうに無いわね…」
「お気遣いは結構。後ろ指なんぞ、もう気にも留めませんから。
――――所で要件は?こういう場合の貴女は、こんな小噺を聞きに来る筈がない」
そろそろ本題に入れと急かすと、彼女は「あぁそうだったそうだった」と本来の要件を伝えた。
「少し佐々木君に頼みがあって…。
私の姉の事は話したよね?」
「あぁ、あの――――インフィニット…ストライプス、の副編集長の。
…取材依頼ですか?」
「そう!その通り!
話が早くて助かるわぁ…それで、頼まれてくれる?独占インタビューなんだけれど」
「ふぅむ…。
インタビュー、ねぇ…」
彼は先ず考えた。
…何せ彼の記憶が、表にポロッと出すだけで世の天地がひっくり返る、とんでもない情報の宝庫なのだ。
そうでなくとも、その手の言葉を漏らしてしまえば彼はすぐさま“不思議ちゃん”の仲間入りである。
後ろ指などいくらでも刺されてきたと豪語する佐々木も、その手の
まあ慎重にやればいい…以外にも嘘が上手なこの男は、問題は無いと承諾する事にした。
「…構いませんよ、何せ先輩の頼みだ。
しかし大丈夫なのですか?インフィニット・ストライプスって俺のような人間は畑違いでは…」
「大丈夫…じゃない?
物騒な話題も、イスラエルとかあの辺りのパイロットのインタビューで取り上げた事あるし」
「どうなんだか…。
一先ず日程は?」
「えっと…今週の日曜日。
空いてる?」
「問題ありませんよ」
佐々木はそうはいうものの、実は一夏との特訓の約束をしており、今現在その事をすっかり忘れている。
しかし彼はソレに気付くことなく、只々「ありがと、それじゃあねー」と去る薫子を見送っていた。
「………あっ!
所でさっきのは新技?」
「いいや、ものは前々からありましたので…寧ろ、禁じ手ですね。
何せ首辺りを狙ってしまうので、万一にも後遺症の可能性が…」
◇―――――――――――◇
【4話:エルデスト・サン】
◇―――――――――――◇
【英雄、或いは戦士】。
後の世にてこう語られた、二人目の男性IS操縦者…佐々木潤。
彼の存在が公表された当時は、一人目の織斑一夏に埋もれ、メディア等への露出が極端に少なかった。
その為に、名前すらも知らなかったという者は少なからず存在したという。
契機となったのは彼の入学より数か月後の事だった。
各国政府が敷いた厳重な情報統制の中マスコミ達が、河川より濾し取った僅かな砂金の様…それはそれは大事に持ち帰ったネタが、市井へと広まったのはその時期である。
“
そして極めつけが…先の第一次
当時主流だったSNSを通じ、誰もがIS学園一年生の専用機持ち達による怪物狩りを見た――――その映像が存在する理由?まあ、勇者と愚者は紙一重だったというだけだ、一先ず歴史的資料を残した…目先の名声に目が眩んだ誰かを今は放っておこう。
ともあれ人の噂とは、インクのようなものだ。
たった一滴が紙の上で素早く広がり、そして簡単には乾かない。
これより記すのは、ただ強いという一点で人の興味を引いた男の人となりを掘り下げたインタビュー記事。
ある時に記されたインフィニット・ストライプスの数ページの…その原本である。
――――こんにちわ…あら、本当に大きいわね。雰囲気も、とても大人びてるし。
「実を言うと、私が市井で巨人の一族だと噂されている事には本当に納得が行っていないのです。憤りと言うよりは、むず痒さだ、この国に来る直前まで、その総てを見上げていたというのに。同時にクラスメイトから“長老”等と呼ばれる事も…いや、これはそこまで気になる話題ではありませんね。
…申し遅れました、IS学園一年生の佐々木潤です。枯れ枝のような人間ですが、本日は宜しくお願いします」
――――枯れ枝…面白い表現ね、気に入ったわ。
――――インフィニット・ストライプス副編集長の黛渚子よ。こちらこそよろしくね。
「えぇ。
…所で、服装については何かご注文は?私服はどれも酷いものでして」
――――そうねぇ、先ずはインタビューからと思っていたけれど…。
――――でも服装はそのままで大丈夫よ。凄い制服ね、これだけで絵になりそう。
「最近仕立て直したのですが…どうも店の方々に気を遣わせてしまったみたいで。
ともかく、早い内に始めましょう。お忙しい所来てくださったのに、いたずらに時間を取らせる訳にも行きません」
――――えぇ、早速始めましょう。
「はい。
では…失礼します」
――――…早速最初の質問なんだけど、佐々木君。女子校に入学した感想は?
「正直な所、現状には今でも何かの冗談を疑っています。
まるで古い映画の様な…思い出した、【トゥルーマン・ショー】。あれのような事に巻き込まれているのではないかと」
――――随分と古い映画を知っているわね、私が生まれた前後の映画よ?
「その様で…最近知る作品どうもその年頃の物なのですよ。
とは言え、学園に“4つ”も男子トイレが作られました…きっと真実なのでしょう」
――――あら?妹の話では、男子トイレは“2つ”と聞いたのだけれど
「私の入学が決まり、急遽増設したようです。
二人目の発見はかなり急でしたからね…お陰で一夏は今も学園の男子トイレが2つだと思っている始末です。というか生徒間で男子トイレの急造を知っているのは、最悪私と一部の教師だけの可能性さえあり得ます」
――――ソレって大丈夫なのかしら?
「残り二つは多目的トイレなので、生徒への負担はそこまで大きくは無いかと」
――――成程、女子生徒が多目的トイレと気付かずに使っている可能性も…と。
――――まぁ、ここら辺で次の質問に行くわね…この前の襲撃事件の事だけど、何処まで話せそう?
「当時の細かな動向や、デーモン――――っ、失礼。絶対天敵の詳細を問う様でなければ問題ないと思われます」
――――良かった…大丈夫よ、私も機密とかはちゃんと避けるから。
「助かります」
――――じゃあ、さっきと似た質問だけれど…絶対天敵と戦っててどう感じた?
――――佐々木君は一年生の専用機持ちの中でも、一際活躍している様に見えたけれど。
「あぁ、あの“何故だか急に燃えた現象”の後の…隊列組んだ奴ですね。
数が数だったので、誰か大怪我するのではないかと思いましたが…兎も角払うべき注意を払った他は無情に近かった。不思議だとか、見栄っ張りのように思われるかもしれませんが…あぁいった乱戦は慣れているし、得意とする所でもありますね」
――――そう言えばスラムの生まれだったわね。
――――でも相手は怪物よ?そういう存在への恐怖は?
「異形への感情も特に変わりはありませんよ…あいつ等もまた、戦の場において“殺意”に溢れる一体だったのです。
世論が動物愛護や保護に傾いている手前、これまで公言した事は無かったが…獣たちを相手に凶器を握った事も少なくはありません、文字通りに血に飢えていた…そして殺意があった。
私が思うに、殺意とは何よりも純粋です。何せ、それ自体があらゆる感情を頭から洗い流してくれるから…人間も何ら変わりありません、人もまた獣の一体…いいや、人類こそ何よりも恐ろしい不定形の怪物であるのかもしれません」
――――随分と詩的な言い回しね。
「冗長だったでしょうか?この頃どうも、自分の言葉にさえ欠伸が出てしまうように感じまして」
――――いいじゃないの、教養がある証よ。
「だといいのですが。
…先のをもう少しコンパクトかつ“強い”モノにしてみます。
あー…『絶対天敵など…所詮は人や獣と何ら変わり無かった。敢えて言えば全部カスだ』。ちょっとクサいな…」
――――かっこいいけれど、ちょっと強過ぎないかしら?今時強情な男は逆に顰蹙を買うかも。
「妹さんには言いましたが、私は後ろ指を恐れません…何なら被った詐称全てをこの胸に引っ提げてさえ重みを感じないと言い切れます」
――――成程、来るなら来い。と…
――――そこまで言うのなら…逆にいいかもしれないわ、真に英雄たる証!って感じ。
「英雄…。
そう祭り上げられるのは正直…私はただ、闇に生まれ闇に忍ぶ――――いや、風と共に忘れ去られる一介の戦士であるままでいいんだ」
――――そのフレーズもいいわね、メモもしておきましょう。本当にその生き方が出来るかは別として。
――――…それじゃ最後の質問だけれど、“一人目”の織斑一夏君や、他の専用機持ちの事はどう思ってる?
「どう…これまた難しい質問だ。
皆――――私に無いモノを沢山持っていて、かけがえのない友人たちです。先は忘れられてもいい等と口走りましたが、彼ら彼女らにはどうか記憶にとどめていて欲しい…と思わなくもないですね。
………申し訳ありません、ありきたりな言葉ばかりで」
――――大丈夫!とても良いインタビューだったわ。
――――それじゃ、撮影に移りましょ…さっき言った通り、制服のままでいいからね。
かくして数日後、この音声記録を元に幾つかの編集が加えられたインタビュー記事が、当時のインフィニット・ストライプス最新刊に掲載された。
秘密のヴェールに包まれていた、男性IS操縦者の人物像をかなり深く掘り下げたというのだ。
それはそれは、もう飛ぶように売れたという…きっと当時の誰もが、あの中世モノの一枚絵のような表紙を目にした事だろう。
最も、更に後の一夏のインタビュー回との比較は、手元に売上の資料等が存在せず行えないのだが。
因みにこの時の日本国内SNSで最も勢いのあったトレンドは【洋ゲーパッケージ兄貴】である。
「………へぇ。
佐々木君がこんな気取った事を言えるとは思わなかったわ」
「バラエティーでつまらぬ受け答えをする訳にも行かないでしょう、生徒会長」
「薫子ちゃんのお姉さんでしょ?
適当な言い方でも、きっと面白く変えられるわよ」
「それは…本職のジャーナリズム的に非常によろしくないのでは?
まぁ、いいか」
ある時の男子部屋…一夏がおらず、佐々木だけの間に生徒会長こと更識楯無が押しかけてきた。
話題の雑誌を手にしてはいるが…どうも話はそれだけでは無い。
「で、一体何の用です?
俺らをからかって遊ぶというのなら、容赦なくつまみ出しますが」
「まさかぁ。
まあ、その?えっと――――あなた、簪とは仲良かったわよね?」
「えぇ、そこそこには………まさか」
何となく、要件を察してしまった佐々木は…何を隠すでもなく、大げさにため息をついた。
【次回「
はい、簪編ちゃんと続き書きます灰。