一人部屋の寮生活に同居人がいる件   作:古時雨

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プロローグ

「改めて諸君。今日から君たちD組の担任を務める茶柱紗枝だ。担当科目は日本史。三年間を共にすることになるだろう、よろしく頼む。」

 

良く晴れた入学に丁度良い天気の日。ああ、僕も晴れて高校生か。

何だかいい気分だよ。でもこれには慣れないね。

ある日を境に突然人の感情、それも悪感情を鋭敏に感じようになったんだ。

先生が言ったよろしくと頼むって言葉は薄っぺらいただのハリボテってこともわかちゃうし。

矛盾を孕んでいるそれは新入生諸君にとって希望をもたらすコールの様にでも聞こえてるんじゃないかな。

言葉って軽いね。

でもそんなことも些細に感じるくらい今から始まる高校生活が楽しみでしかたない。

特に憧れのリア充に………!

 

「これからこの学校についてのルールが記載された資料を配る。こちらの説明を聞きながら読んでみてくれ。」

 

物思いに耽っていると何やらプリントが配られた。

配られた資料をそっちのけに何と無しに教壇に目を向けると、

[お、あいつ旨そうだな。特に胸部が良い。]

とても美人な……っておい話遮んな。今はプロローグだろ。

[何言ってやがんだ?頭がイカれたか?…どこも異常は無さそうだが。]

僕の頭ん中見んなよ!人が話してる最中だろうが。

[お、あいつも旨そうだな。地味目のメガネ。]

全くどうしてこんなになったんだろう。

くそっ……でも今は新しいお友達作んなきゃね!楽しい高校ライフだよ!

そんなこんなでHRは終わり、少しずつ教室に声が滲んできた。

[まじかよ!豊作だぜユウキ!このクラスで一年はもつな!]

ギャーギャー騒ぐおれの頭の中の同居人。

さっきから仲良くなれそうとかよりも旨そうな人間の話しかしてない……。

………前言撤回、やっぱり楽しくなさそう。

 

 

 

僕はずっと同居人と話していて幾分か時間が流れたらしい。

数時間後に部活動紹介が講堂で行われる旨を伝えた先生は去っていったのが横目に見えた。

恐らくはその間の自由時間になるのだろう。

[これからどうするんだ?飯でもいくか?]

お前飯だけのことしか考えてないじゃん!全く。

しかしやっぱり高校初回の登校日には良い印象をみんなに見せないとね。

でもさぁなーにこの空気。誰も自己紹介しようなんて言わないやん。ん?何?僕が言えって?HAHAHA冗談きついよ。

芸能事務所に無断立ち入りして女優に求婚して来るくらい無茶だよ。

周りと話す人やそれを見る人だったりあとは自分を貫く人。クラス内が大きく分けて三パターンになったところでイケメンと言っても差し支えないだろう青年が全体に声をかけた。

 

「皆自己紹介をしないかい?名前がわかんないのも何だし…何より互いの親睦を深めたいな」

「私もさんせー」

「私も!」

 

主に反応するのは女子、やっぱイケメンって得すんなー。僕もあんなふうにみんなに意見してみたいなー。

[じゃあ変身するか?恐怖は1番の交渉術だぜ?]

バカたれ。そんなんじゃ馴染むどころか僕の学校生活が無くなっちまうぜ。

おっと数人出ていくな。いかにも不良そうな赤髪の子、それと長い黒髪の少女。ヒエッ、目合っただけで睨まれちまったぜ。くわばらくわばら。

あんな風に僕も自分が貫けたらな…。

[じゃあへんs]おkおk。黙ってましょーね。[ケッ]

僕の中のはなんかやり始めたしイケメンの言葉に残ってるみんな賛同する雰囲気だし。

 

「じゃあ僕からいいかな?僕の名前は平田洋介。みんなと良い思い出を作りたいな、これからよろしくね」

 

トップバッターはもちろん彼。おっふおっふ。さいですか、そうですか。何だよこの空気。

鶴の一声って感じだよ。女子はキャーキャーって。くっそう!いけめん撲滅すべしだぞ!

そうえばベノム。今しがた僕のズボンがすごくネチャネチャしてるんだけど…君、僕の楽しみにしてたチョコ食べたね?

[憶測で判断するのは良くないぜ。信頼も信用も失っちまう]

すげー腹立つ正論。でも君、やってんだよなぁ。

 

「じゃあ次の子、言ってもらっても良いかな?」

「あ、うん!」

 

まじかよ。他の子の聞けてないや。

 

「僕は月見里祐希って言います。珍しい苗字で読みにくいかもしれないけどこれからよろしくお願いします!」

 

クラス全体から聞こえた拍手。

よかったー、何とかファーストインプレッションは良くできたぜ。

でもあの子可愛くない?とか実は女の子なんじゃない?って言ってる女子よ、いただけないな。

くそっこうなるから最初はいやないんだよ!中性的な顔つきだし身長も高くないから間違えられるけど僕は男なんじゃい!

そんな視線を背中に感じながら、それをシャットアウトするように反対側へ顔を向ける。

あーあー今日は良い天気だなぁ。陽光がたくさんの桜吹雪に反射して綺麗だなぁ。

あ、そうえば現実逃避してるところで思い出した。

僕の席を言っていなかったね。

僕の席は窓側の最後尾から一つ前のところにあるよ。

後ろの子はなんだか不思議な感情を感じるねえ。達観しているような、物珍しさを感じているような。でも全体的に薄いぞ。

おっと自己紹介も僕のすぐ後ろで終わっちゃったみたいだからどっか行こっかな?どこ行きたい?

[飯探しに行こうぜ。]

おk。とりまファミレスで良き?あ、食うにしてもお金ねーやん。

[おうよ。食糧1の話を聞くと金はとりあえず10万あるらしいぜ。]

わーお、潤沢な資金の使い方だぜぇ。てか先生のこと食糧1って呼ぶなや。

なんてたわいない話を挟みつつ計画を相棒と建てて教室を出て廊下を歩く。

改めて見るとデカすぎるよなぁ…この学校の敷地。なんかありそうで草。

…そーえば茶髪の身長高めな僕の後ろの人。自己紹介──すげぇビミョかったな。

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

 

ほうほう。やっぱ広いぜこの学校!どうも月見里祐希です!絶賛迷子なうです。

助けてベノム、部活動説明会に遅れちゃうよ!まだ敷地内わかってないから!おせーてくだせぇ!!

[I copy.てかよいつになったら飯にありつけるんだ?もうマッピングは終わって腹が減り過ぎた。]

まじかよ。ベノさん優秀すぎ。あー飯ね飯。そこらへんの雑草でいいかな?もちもん僕の奢りだから好きに食いな。

[おうよ。手始めにそこのやつ食おうぜ。]

いやばか。歩いてる何の罪もない子を食おうをするなや。ここ道のど真ん中ぞ。常識的なもん欲しがれよ!ステーキとかハンバーグとかさ。

てか大丈夫か?あの子。杖ついてたし足が悪いのかな?

[そんなことより入学式行くぞ。]

待ってよ。多分新入生の子だしやっぱほっとけないかな。先行っててベノム。あの子と一緒に行くからさ。

[同じ体だろ。ボケは他所でやれ。]

 

「ねぇ君。申し訳ないんだけどさ講堂までの道案内をしてくれないかな?」

「はて…それは私に言っていますか?」

 

わーお。めっさ警戒心抱かれてるやん。この感情はざらざらした様な感触がするんだよ。

てかかわよ。お人形さんかよ。さっきも思ったけどなんかこの学校の顔面偏差値高くね?高くね(確信

[いや…こいつは皮と骨しかないぞ。きっとまずいぜ。]

こら。相手がぺったんこでもそう言うこと言わないの。

[お前も大概だぞ。]

 

「うん。君は…こう感覚で物言っちゃいけないカモだけど、しっかりしてそうだからわかるかなって思って。…ごめんよ。」

「ええ、構いませんよ。…それにしても随分お優しいのですね、杖つく相手の補助なんて。」

 

警戒心が減って8割、興味0.003割くらい。残りは…何だか優越感?何だろ全てのもの見下してるみたいな。しかしはは、イケメンじゃないとこうやって興味持ってもらえるのも一苦労ってか…。

まぁ杖つく人に、それも異性に話しかけられてナンパだと疑っても仕方ないね。まぁ外見的に見ればナンパもされるだろうよ。それにその感情も見た目を見れば納得かな。

えとどこで曲がるんだっけ。

 

「ありゃりゃ…凄いね。エスパーなのかな?」

「ご冗談を…。考えればわかることでしょう?」

 

あ、笑った。育ち良さそうな笑い方するやん。

クスクスって。あ、そうえばHey、ベノム!時間を!

[私はsiriではありません。左腕についてるモン見ろやアホ。]

このしり口悪っ!てかこの子、頭が良さそうな子だな。

[オレはしばらく寝るぞ]

おっけ。それに加えて喋り方といい所作といいなかなかのお家の出だね。貴族かな?(日本にはない

あ、ここ左か。

 

「君はどこのクラス?」

「私はAクラスです。そういうあなたはどのクラスでしょうか?」

「僕はDクラスだよ。あ、思い出したけどクラス替えないんだってね。君と一緒のクラスなることは難しそうだねぇ。それに何でも買えるんだってさ!ポイントで。」

「っ」

 

あー何気なく思い出したけどクラス替えないってあんまり交流はさせない感じな教育方針なのかな。

10万円ももらえるし、これが大人の交流よ!って感じなのかな…。

 

「…あなたはどこまで気づいているのですか?」

 

ん?講堂への行き方かなぁ?ベノムに聞いた僕よりは知ってるんじゃないかなぁ…。ほんと迷子になりそうな敷地面積だよね。

金かかってんのか装飾や街路樹は凄い綺麗だけど。

 

「それは君が考えてる通りだと思うよ。」

「っ…!あなたは見抜いていたのですか…!」

 

足が悪いことかな?ふっそれは僕がエスパーだからだよ!っていいたいところだけど見ればわかるのでは…?

てかなぜに敵意?その感情はめっちゃちくちくするのでやめてほしいのですが。

 

「んーまぁ…。あんまり見ちゃいけないかなって思ったけど見て見ぬ振りは最悪な人がやる行為だからね。」

「では…他に何かお気づきで?」

「んー凄い…いいにくいけどね不安定だと思うよ。」

 

あーん。他にって言われても感想しか思いつかないんですけど。大丈夫かな?失礼なこと言ってないよね?

何?僕が人のこと馬鹿にする様な人に見えるのかな?んー…でもそんなふうな感情は感じないなぁ。

あ、講堂ついた。

 

「…そうですか。」

「講堂ついたね。道案内ありがとう!もう急がないと始まっちゃうから気をつけてね!」

 

入口から入ろうとすると後ろか待ったをかけられる。

 

「お名前は?私は坂柳有栖と申します。」

 

有栖ちゃんか…。アイスみたい。

 

「僕は月見里祐希。読みにくい苗字だけどよろしくね!」

 

やったぜ。美少女の名前知れたぜ。これが高校生活か…!

おっと、すみません。ここ土足禁止なんですね。

あと遅れてすみません。

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

迂闊でした。この足で開始時間までに主要施設を直接見ようなんて。柄にも無くはしゃいでいた様です。

あと10分しかありません。果たして間に合うのかどうか。

 

「ねぇ君。申し訳ないんだけどさ行動までの道案内してくれないかな?」

「はて…それは私に行っていますか?」

 

何でしょうか?この生徒は?この時間に講堂の場所を知ろうとしているところから同じ新入生で間違い無いでしょうが見たところ何か障害を患っている様子も見えないのでナンパでしょうか。

 

「うん。君は…こう感覚で物言っちゃいけないカモだけど、しっかりしてそうだからわかるかなって思って。…ごめんよ。」

 

まぁそのようなそぶりは見えませんね、あまり深く考えるタイプでもなさそうなので。大方私が杖をついているところを見て善意できたのでしょう。

 

「ええ、構いませんよ。…それにしても随分お優しいのですね、杖いつく相手の補助なんて。」

 

女子…生徒でしょうか?しかし可愛らしいお顔をされてますが制服が男子生徒の服ですね。身長も女子にしては高い様な気もします。167cmくらいでしょうか。

まぁ害がないので時間潰し程度に話しておきましょう。

 

「ありゃりゃ凄いね。エスパーなのかな?」

「ご冗談を…。考えればわかることでしょう?」

 

あまり頭はよろしくないようで。これでは暇つぶしにもならなそうですね。やはりあの人でしか私の相手はできないのでしょうか。

それにしても先ほどの先生の発言がどうも引っ掛かりますね。クラス替えがない…、それと確約されていない月あたりのプライベートポイント。

おそらくPT(プライベートポイント)は変動するのでしょう。しかしそれは個人ごとなのか学年なのか、はたまたクラス単位なのかまだわかりませんね。

 

「君はどこのクラス?」

「私はAクラスです。そういうあなたはどのクラスでしょうか?」

 

おそらくはCかD。私の教室の近くでは彼を見かけなかったので。

 

「僕はDクラスだよ。あ、思い出したけどクラス替えないんだってね。君と一緒のクラスになることは難しそうだね。それに何でも買えるんだってさ!ポイントで。」

 

やはりDでしたか。つまらないです…ね…?待ってください。なぜその話を今?

同じクラスになることが難しい?それにポイントは何でも買える?さっき担任が言っていたのは学校内においてこのポイントで買えないものはない…。学校の敷地内にあるものは何でも購入可能…まさか!

 

「っ」

 

言い換えれば()()()()()()…!それは文字通り…!あなたはクラス移籍の権利さえも買えることを意味してるとでも言いたいのですか…?

 

「…あなたはどこまで気づいてるのですか?」

 

まさかこの短時間であの情報のみでここまでに気づいたのですか…!私でも推測途中でしたのに結論に漕ぎ着けるとは…!

しかしここでもあなたの人柄の判断ができます。人より少し早く分かっただけで自慢したくなるような子供の様な性格なのかを。

 

「それは君が考えている通りだよ。」

 

何のそぶりもなくただただ当たり前のように言い放つ。人の良さそうな笑みに乗る目は悪意がある様に感じられません。

もしかして…彼と同じ施設出身…?いいえそうであれば私はあの日に見ているはずです。

しかしまぐれでしょうがその結論に至った時間が私よりも短いだなんて…!

 

「っ…!あなたはどこまで見抜いてたのですか…!」

「んーまぁ…。あんまり見ちゃいけないかなって思ったんだけど見て見ぬ振りは最悪な人がやる行為だから。」

 

わざわざ考えるまでもないことを教えたのは私に気を遣ってことだったということですか…!

…しかし冷静に考えるとそのポイントの変動の可能性までは気づいてなさそうですね。やはり子供のような精神の持ち主でしょう。

 

「では…他に何かお気づきで?」

 

ここまで熱くなったのは久しぶりです。それと気遣いがとても腹立たしいので少し嫌味を言ってあげましょうか。

 

「んー凄い…いいにくいけど不安定だと思うよ。」

 

…それは前提だとでも言いたいのでしょうか…。だから難しいと言っているのですか…?

 

「…そうですか。」

「講堂ついたね。道案内ありがとう!もう急がないと始まっちゃうから気をつけてね。」

 

…最後の最後までさも当然のように話して…悔しいです。

しかし同時に楽しみになってきました。私と同じような領域に立つ人は…久方ぶりに見ます。

1人内心盛り上がっていると、ふと気づけば名前を尋ねていました。

 

「お名前は?私は坂柳有栖と申します。」

 

この切り取られた箱庭で私が天才だと証明する一つのピース。

 

「僕の名前は月見里祐希。読みにくい苗字だけどよろしくね!」

 

そう言って去って行った背中は土足で上がって注意されていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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