ご主人様とお気楽ペット 作:ちゃっぱ
気がついたら暗闇の中にいた。身体を自由に動かせず、縛られてるのかと思ったけどなんかそういう感じじゃない。
パニックになって必死に助けを呼ぼうとして、声が出せない恐怖に支配された。
私は何故ここにいるのだろう。
だって私はあの時の事故で死んだはずじゃ……。
「……たまご?」
聞こえてきた声にハッと我に返った。
なんか聞き覚えのある声だったような気がする。なんかこう「私が来た!」って感じの頼もしい方の声。
「なんで家に卵が置いてあるんだろう……しかも結構大きいし、動いた?」
ふわりと浮遊感に襲われて気づいた。
これ私が卵に入ってる!! しかも産まれる前の状態!!
つまり私はあの事故で死んで、生まれ変わったのか!!
いやでも、じゃあなんで前世でよく聞いたアニメの声がするの?
これでも私、前世で何度も読み込んだ程度にはヒロアカファンだし、もしも目の前に緑谷出久がいたなら仲良くなれる程度にはヒーローファンでナード心分かってるし、推しはイレイザーでいっぱい課金した記憶もある。
「親は……ううん、いないみたいだ。もしかして僕がここにいるせいで来れなくなってるのかな」
ふわりと地面に置かれた感覚に焦る。多分このまま放置されたら死ぬかもしれないと思ったからだ。なんせ卵でしょ!? 多分鳥だよね!?
私、野生で生きていける気がしないから無理! 助けてオールマイト!!
気合いを入れて身体を動かすと困惑する声が聞こえてきた。たぶん地面でガッタガタと揺れる卵が見えているはずだ。
「まってヒビ入ってる!? これ僕のせいじゃないよね!? ええっ、ちょっとまって産湯! いや病院!?」
なんかすごい焦っているけれど放置する気はないのか流石はオールマイトの声に激似の人。親切なの助かるのでそのまま私をペットにして楽な生活をさせてくれ頼む!
なんとなくこのまま動かせばいいのかと思っているうちに、自分の身体の感覚が掴めてきた。
「あっ、卵が……!」
よし、今なら出られる!!
「ぶい!」
卵からコロンと飛び出してきて一鳴き。
産まれたばかりでまだ眩しいけれど、目を開けることができた。
前足がある。身体を確認すると鳥ではないらしい。あとふさふさの大きな尻尾があるし、爬虫類でもない。ということはペット生活で餌となるだろう虫は食べなくて済むやったー!!
喜んでから疑問に思ったのは、じゃあ何に生まれ変わったのかということ。鳴き声からして普通じゃない。たぶんこれイーブイかな。ブイブイ言う犬がいるなら違うと思うけど。つまりここポケモン世界? ポケモントレーナーに拾われるって言うならちょっと勘弁してほしいけどどうしようかな。できれば楽なペット生活を送りたい。
まあとにかく、私のご主人様となる人を見なきゃ……って思ったんだけど。なんか見たことのある顔をしている。
ねえ待って。この顔知ってる。
今は痩せた身体してるけど。まさかの本物?
この世界ってポケモンじゃないの?
「ぶ、ぶい?」
「え、ええと……兎? いや、犬かな。なんで卵から生まれたんだ?」
どうやら私が産まれたときからその種族が何なのかについてずっと考えていたようだ。犬や兎が出ると言うことはポケモンを知らない。もしくは私がイーブイじゃないって可能性もあったけど、彼にゆっくり抱き上げられて至近距離から顔を覗き込まれた時の瞳に映し出された私の姿がイーブイそのままだった。
とりあえずご主人様はオールマイトだよね?
「ぶいぶい」
「うーん……君、親は……いないのかな。でもこの卵の状態。それに周りに動物の気配もないし……」
そうですよご主人様!
私は天涯孤独の身ですよ! イーブイだからアニマルセラピー出来ますよ可愛いでしょ!
お願いだから拾うって言って! 確かに私はヒロアカ好きだけどマジで来るなら話は別だから!
イーブイに転生したってことは絶対に動物の新種扱いされる。ヴィランに狙われるかもしれない。下手したらオール・フォー・ワンに狙われるかも!?
それは嫌だからお願いご主人様私を飼って。飼え!
「ぶぶーい!!」
「なんか勢いが強いなぁ。……ふふ、僕と一緒にいたいの?」
「ぶいぶい!」
ヒーローだから危険もいっぱいだし悩むのは分かるけど野生よりマシだからね!
飼わないって言うなら『でんこうせっか』でストーカーばりについていくからな。技が使えるか分からないけどね!!