ご主人様とお気楽ペット   作:ちゃっぱ

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三話 でんこうせっか

 

 

 

 

 今日の私って運が悪いのかなぁ。それともこれはヴィランのせいかな?

 

 

「クソが! てめえら動くんじゃねえぞこのペットがどうなってもいいのか!!」

 

 

 

 現時点でオールマイトはここにいない。何故と言われればご主人様がヒーローの仕事をするため。私を一人残して部屋に出るにはちょっと心配だったのか、それとも私をもっとよく調べるために預けようとしたのかは不明だけれど。

 

 そのときの私は、ケージの中で苛立っていた。預かってくれる人がいたんだけど、その人は仕事がとーっても忙しく書類に埋もれたままテキパキと腕を動かすメガネな男。その人のことは見たことがある。ナイトアイだっけ?

 

 未来を予知する個性を持った人がご主人様と一言二言話をしてからすぐ別れたのだ。私が入ったケージはナイトアイの手に、ご主人様は「すぐ戻ってくるからね」と言っていたので待つことに。

 

 でもこれでよくわかった。ここはあの原作より過去の世界だ。ナイトアイはもともとオールマイトの仲間。相棒のように仲が良かったけれど、オールマイトが死ぬという未来を予知したことで喧嘩になり、仲違いした二人。気まずいという形で再会することはままならず、ある事件が起きたせいで重傷を負い死ぬ間際だったナイトアイを看取ったのがオールマイトだった。

 

 そんな彼が私に少しだけ驚いたように目を見張る。兎もどきな見た目に驚愕した────というよりは、何かに気づいたかのようだった。まさか未来予知でもしたのかな?

 

 しかしすぐに真顔になり、何を考えているのか分からないが「自由にして構わない。好きに動いて良し」と言ってくれてケージを開けてくれたのだ。

 

 だからまあ、好きに行動することにした。

 柔らかそうなソファの上に寝たり、開いている窓の外を眺めたり。雲がゆったり動いている昼。風が心地よく、部屋の奥でカリカリとペンを動かす音が聞こえてくるのみ。

 

 お腹空いたけどご主人様はまだ戻ってこない。ナイトアイもご飯を食べる時間はないぐらい働いてるから無理にねだるのもなんか申し訳なくなるので止めた。それにご主人様が病院で頑張ってきた分の褒美をくれるだろうし、今ここで何かを食べるより待っていた方がよさそうだ。

 

 それにしても遅い。あのオールマイトが苦戦とかするのかな。ここまだ過去だろうし、緑谷出久に個性を譲り渡してはいないだろう。

 たぶん事件が連続して起きているからその対処に追われてるとかなのかな。

 

 窓の外から下を眺める。ここから出るには塀を伝って歩いたら簡単に行けそうだ。少しだけ一人で散歩行ってきてもいいかなと思うぐらいには暇してたし……。

 

「ぶい、ぶぅ?」

 

「……ああ、出るのか」

 

「ぶぅい」

 

「構わない。気をつけて行け」

 

「ぶいぶい!」

 

 

 なんかあっさりしてるけどいいかな。いやナイトアイが良いって言ってるんだし大丈夫だよね!

 よし行こう!

 

「ぶい!」

 

 すぐに帰ってくるから心配しないでねー!

 

 そうやって、もふもふな尻尾をユラユラ動かしつつのんびりと散歩を楽しんでいたはずだった。

 予知で何を見たのかは分からないけれど、嫌なものじゃないと思うから安心してる。

 

 

 ────そう思っていたのが間違いだったらしい。

 近くで強盗があったこと。ヒーローが出動しヴィランが逃走したこと。

 近くにいた人は来ていたヒーローが事前に通達して避難していたこと。それを知らない呑気な私がヴィランによって捕まり人質……ならぬ、ポケ質となった私がいるというのが現時点。

 

 

「いいか! こっから動くなよ! 絶対に動くなよ!!」

 

「ぶぅ?」

 

 

 おおっとそれは押すなよ精神かな?

 

 そいつの個性なのか手から溢れるドロドロの液体をこちらに向けて脅している。

 ヒーローがヴィランを囲みじりじりと詰め寄るがそれにヴィランが興奮し「来るんじゃねえ!」と怒鳴り付けた。

 

 その時に分かったんだけど、こいつの手から出てるのってたぶん硫酸か何かだ。

 

 

「ぶぅ」

 

「ぶぅぶぅうるせーんだよクソが!! 早く車か何か持ってこい! このペットが死んだら次は人も襲ってやるぞ!!」

 

「やめ、止めるんだそんなことは!」

 

「落ち着きなさい! これ以上罪を重ねるのは止めて!!」

 

「うるせぇぇ!!」

 

 

 ヴィランに捕まって殺されかけてるかもしれない状況なのに、何故かそこまで怖いとは感じない。オールマイトが私のご主人様だからかな。それとも病院でいろいろと経験値でも稼いだのか。最近のポケモンってキャンプしてカレー食べるだけでもレベル上がるからね。私だってある程度レベル上がってるよね?

 

 

「ぶぅーい」

 

 

 あーなんか腹立ってきた。

 これ私がいるから動けないだけでしょ?

 なら潰せばいいよね?

 

 んーっと、何か出来そうな気がする。たいあたりは捕まってるから無理だし、ちょっと別の技を試してみようかな。

 病院にいたときに無意識にだけど発動していたあの技ならなんとか……。

 

 

「ぶいぶい?」

 

 

 はーいこっち見てねー。

 

 

「いちいち鳴いてんじゃねえようるせぇぇ!!」

 

「ぶい!」

 

「ああ……っ!?」

 

 

 おっと、手のドロドロが少し弱まったような気がする。えっ、まさか『なきごえ』も効くの?

 とっさに使っちゃったんだけど……。

 もしかして個性持ちっていわゆるポケモン認定? 人の形をしたポケモン?

 個性が炎系なら『ほのおタイプ』って感じになるの?

 

 いや、今は考えてる暇はないか。力も弱くなったと感じたので身体を捩り抜け出した。

 慌てたようにヴィランが手を伸ばす。ポケ質がいなくなったので好機と見たヒーローたちも動く。けれどその前に私が行く!

 

 地面に着地した瞬間ヴィランの方に向きを変えて、そのまま足に力を入れて奴の腹に向かって勢いよく『でんこうせっか』を繰り出した!

 

 

「ぶい!」

 

「ぐはっ!!?」

 

 こうかは、ばつぐんだー!

 

 

 というわけで倒れたヴィランを見て呆然としていたヒーロー達だったが、すぐに己の本分を思い出したのか動き出す。

 私はナイトアイのところへ戻ろうかと思ったんだけどその前に誰かに抱っこされた。

 

 

「こんなところにいたんだねブイ君。危ないことをしたら駄目じゃないか!」

 

「ぶ、ぶい!」

 

 ご主人様じゃん!

 えっなに。探してくれてたの?

 

 その持ってる紙袋はもしかして私へのご褒美ですか?

 いっぱい期待しちゃうからねご主人様! 美味しいの食べさせてねご主人様!!

 

 ぶいぶいと鳴いて甘える私の頭を撫でてくれたオールマイト。周りにいる人はとっても驚いたように私たちを見た。

 

「もしかしてオールマイトのペット……いや、サイドキックですか!?」

 

「兎に似てますが、人間ですか!?」

 

「ぶい!」

 

「いやブイ君は人間じゃないよ。私が育ててる家族でね────」

 

「かぞく!?」

 

「オールマイトに家族!? しかもヴィランを一撃させるぐらいかなり強いペット!」

 

「これはスクープになるぞ!!!」

 

 

 ねえご主人様。なんかいつの間にかヒーローだけじゃなくて記者さんもいるんだけど。

 

 オールマイトごと私を撮る人もいるし、これいい……わけじゃないみたいだね!

 

 やっちまったって顔だね!

 ご主人様たまに天然でやっちゃうことあるよね!!?

 

 

 冷や汗かいてるしこれ大丈夫なの!!?

 

 

 

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