ご主人様とお気楽ペット   作:ちゃっぱ

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六話 メロメロ

 

 

 

 私の散歩コースは自分が好きな時に決める。

 オールマイト達がいる前でとある机の上に乗り、町の名前が書かれた資料一覧の中から前足でポンっと乗せた名前。その町へ赴くというもの。

 まあもちろんそんな適当なことをするのは「ブイ君に来てほしいんです!」と大歓迎している地域だけ。それ以外は外して選んでるから大丈夫。あとオールマイトが「めっ」って言ったら止めるし。流石にご主人様の命令には逆らえないからね。

 

 それに散歩というよりはヒーローとしていろんな地域を巡回するような感じかな。ほら、一日署長のアイドルとかが町に繰り出すみたいな感じ。

 私はいわゆるレアすぎる生き物だからか、オールマイトと共にいるだけじゃなくて私だけでも出来るような仕事もあるということ。

 

 ナイトアイがいろいろ手回しをしてくれたのか、怖い依頼はないみたい。血生臭いこともしないでただのアイドル系ヒーローとして関東を中心としたいろんな町を歩いて回る。

 私がいるということはオールマイトもいるかもしれない。そういう抑止力が働いて町にヴィランが発生しにくくなるとかなんとか。そういう難しい話をしていたのは聞いた。

 まあ私の後ろにオールマイトが潜んでいるって言うのは分かるよ。最初の頃は散歩コースでも第二秘書な八木として傍に居ようとしたぐらいだし。

 ご主人様も過保護で「ブイ君はまだ赤ん坊だからね!」とか言うけれど、ナイトアイとかが動物と人間の赤ん坊はわけが違うと説明していたけれど、やっぱり心配みたい。

 

 まあでも何度もやっていけば慣れたもの。

 レベルも上がっているのかヴィランに対して怖いという感情が起こらないんだよね。前にヒーロー会議とかなんかよくわからない集まりに連れてこられた時に会ったエンデヴァーさんよりマシ。あの人私をものすっごい目で睨んできた。きけんよちか何かで身震いするぐらい物凄い敵意だったからね。オールマイトが傍にいたから何とかなったけど!

 

 まあエンデヴァーさんはいいや。たぶん私がマスコット系ヒーローで人気が出てきたこと。オールマイトの家族であることが気になって仕方がないだけだと思うし。

 

 それよりかは今の散歩コースについて物申したい。

 今日来たのは前世での私の推したるイレイザー・ヘッドがいるとされる鳴羽田。今はご主人様の方が大事だけどね!

 でもほら、アイドルと好きな人って別腹じゃん!

 

 そんな言い訳をしつつイレイザーに会えたらいいなと思いながら呑気に散歩していた私。

 しかし路地裏に入った瞬間、物凄い光景を目にしたのだ。

 

 

「わははははっ! 我ら疾風怒濤三兄弟!!」

 

 

 なんか気持ち悪い三兄弟が駆けていく姿が見えた。全身タイツか何かかな。顔を隠しているが、額部分にはご丁寧に1から3までの数字が記されていた。つまり長男次男三男が誰なのかわかりやすく書かれていたということだ。

 

 

「ぶぅーい?」

 

 

 見たことあるようなないような光景に首を傾ける。

 路地裏に入ったばかりで道の隅っこ。それも私は小さなイーブイだからか、他の人に見つかってはいないようだった。

 

 とりあえずヴィランだよね。なんか女性の人ばかり狙ってるし。

 

 

「俺がめくり」

 

「俺が抜き取り!」

 

「俺がはく!!」

 

 

 下着ドロボーか。なるほど。

 しかもかなり変態な奴らだ。女の子の脱ぎたてパンツを履くとか何に対して情熱持ってんだろう。いや、ある意味こんなヴィランがいて平和ともいえるのかな。血生臭くないし。

 

 とりあえず「でんこうせっか」をお見舞いさせて足止めしてから、最近覚えた新技をお披露目してやろうと思う。

 そう思いながら一歩前足を踏みしめた時だった。

 

 

 

「不埒な真似をする奴らは足払いをする男、ザ・クロウラー!」

 

 

 オールマイトのパーカーを着ている青年が私のように四つん這いになってヴィランに対敵してきた。

 たぶん自分の身体を使って転ばせようとしているのだろう。

 ヴィラン達は勢いよく走っているから、転べばただじゃすまない。

 

 

「ふははははっ! 同じ手が通用すると思ったか!!」

 

「なっ!?」

 

 

 

 しかしクロウラーと名乗った青年をものともせずジャンプし、逃げようとする奴ら。

 そんな彼らに私は飛び込んだ。

 

 

 

「ぶぅーい!」

 

 

 変態達に容赦なくでんこうせっかをお見舞いするイーブイ♀、ザ・ブイ君!!

 ……ザ・クロウラーの台詞を真似るならそんな感じになるかな。

 

 そう思いながらも私は「1」と書かれた真ん前にいる男の腹に向かってとびかかった。もちろん勢いはでんこうせっかのまま。突進にも似たそれに男が「ゴハァ!?」と叫びながらぶっ倒れる。後ろにいた次男や三男も同じく巻き込まれ盛大に転んだ。

 

 その勢いはすさまじかったのか、周囲に白煙が舞う。

 その真ん中に四つ足で立つ私は、首に巻いた真っ白のスカーフをたなびかせながらも堂々とヴィランの前に躍り出た。

 

 

「えっ、なに?」

 

「まさかあれは……!!?」

 

「コーイチ、あの子って最近人気が出てきたブイ君だよね? 何でいるの?」

 

「知らないよ! 待って待って色紙どこ!? 足跡だけでも欲しい! まさか本物が目の前にいるだなんて!!」

 

「アンタ、オールマイトのファンじゃなかった?」

 

「オールマイトの家族は別腹!!」

 

 

 空から降ってきたような女の子がザ・クロウラーの横に立って何かを話しているのが聞こえた。

 それを軽く見ながらも、私は変態三兄弟をしっかりと確認した。

 

 よーしこっち見てるね。オーケー。ほらほら、逃げないで私を見て。

 

 

「いっぶい!」

 

 

 片目をウィンクさせ、横に寝ころびながら前足をフリフリと動かし、可愛らしい仕草をとる。

 これにはあの無敵なご主人様すら地面に膝をついて負けを認めるほどの超凄技。

 

 いや、私もさ。この世界って技マシンないから無理かなって若干諦めてたんだよね。

 でもなんかミッドナイトさんと会って抱っこされてたら出来るようになってしまった。どうしてなのかはよくわからないけど使えるならいいかなって思ってる。

 

 

 

「ぶぅい!」

 

 

 というわけで必殺メロメロ攻撃を食らえ────!!

 

 

「グハァッ!?」

 

「な、何だこのかわいい生き物は!!!?」

 

「可愛い。パンツはいてないのか?」

 

 

 残念ながらイーブイなので身に着けてるのはシルクのスカーフもどきだけだね。おら、乙女のノーパンだぞ喜べ。

 というかよく見れば周囲の人たちも巻き込んでしまったみたいだ。ザ・クロウラーやその傍にいた女の子も巻き添えである。いや巻き添えというか、男子の方がメロメロの餌食に遭っていて、女の子は可愛い私に夢中になっているだけでメロメロ効果は無いように感じる。

 そこらへんはポケモンの技仕様なのかな。性別違う男子には効果があって女子にはないって言う感じなのは。

 

 まあこの世界の人間ってある意味ポケモンみたいなものだし。しょうがないよね。

 それにメロメロなら攻撃性は全くないから大丈夫。一時的に魅了されてるようなもの。個性で気分が高揚しているだけなもんだよ。だから安心してね男子たち!

 

 

「ぶぅ」

 

 

 というか前世の漫画について思い出したんだけどザ・クロウラーって派生漫画の主人公じゃなかった? あれ、ヴィジランテってつまりそういうこと? 私あんまり覚えてないんだけどな。……まあ、時系列は本編より過去ってことは覚えてるし、緑谷出久が動く頃は平和だったから大丈夫だろうと思う。たぶん。

 

 とりあえずヴィラン退治が先かな。

 ドヤ顔しながらトコトコとヴィラン達の前に躍り出る。それにザ・クロウラーの近くにいた女の子が「あっ、危ない!」と悲鳴を上げてくるけれど心配はご無用。

 

 

「いっぶい!」

 

「ガハッ!?」

 

 

 トドメのたいあたりを決めて、無様に倒れた三人のうち一人の腹の上に立ち、勝ったことを証明してみせた。それにザ・クロウラーを筆頭とした周りの人がパチパチと拍手をし、凄いと絶賛する。褒められて照れる私に皆が可愛いというのも分かるよ。私イーブイだからね。可愛いよね!

 

 でも私だけじゃなくてご主人様も可愛いところあるからちゃんと見てね!!

 

 

「ぶぅ」

 

 

 よし、じゃあイレイザーに会いに行こうかな!

 ここらの担当ヒーローってイレイザーヘッドのはずよね。

 

 ならほら、ヴィラン倒したんだし報告も必要だし、会わなきゃ駄目だよね!

 ちょうどいいところにこの町をよく知ってるヴィジランテヒーローがいるし!

 

 

「ぶいぶーい!」

 

 

 ほーら連れてけ、ザ・クロウラー!

 今なら私の毛をモフってもいいのよ?

 

 

 

 

 

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