怪獣娘と発情期   作:電王牙

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少し間が空いて第4回はデッカーに出番が内定したノイちゃんです。

彼女の場合は元々持っている性質と噛み合ってしまったケースとなります。


case4 鳴無ミサオ/ノイズラー

 

 

アタシ、鳴無ミサオは微睡みから意識が目覚めかけた時、アタシの耳に数多の音が響いた。

 

「ん…………ぅ!?」

 

人の話し声、雑踏の足音、車やバイクの走行音、工事現場の騒音、電車のブレーキ音と警笛、空を翔る旅客機の風を切る音、ヘリコプターのローター音……アタシの鋭敏な耳は周辺一帯で発生する全ての音を捉えていた。

 

「外れてたのか……」

 

アタシは枕元に落ちていた朝日野先生から貰った耳栓を拾い、耳の穴に入れる。

入れても全然普通に聞こえるけど、これでも無いよりマシだ。

 

「はぁ……サイアク……」

 

怪獣娘特有の発情期、アタシの場合は聴覚の鋭敏化だった。

アタシに宿ってるノイズラーのカイジューソウルの影響でアタシの聴覚は元から鋭敏化しており、それが更に増強され、普段以上に広範囲の音を拾ってしまっている。

 

幾つもの音を聴覚が捉え、それが頭痛を誘発。更にそこから気分まで悪くなる。

症状がアタシにピンポイントで酷い影響を及ぼしちまう。

 

変身して音を食べようにも範囲が広すぎて近くの音を食べても焼け石に水だ。それに気分が悪いから下手に食べたらもっと気持ち悪くなって吐きそうになる。

……というより前に食べたけど、全然効果無かったし、無理に食べたせいで本当に吐いてしまった。

 

「……今日で3日、後2日くらいか……」

 

発情期になったのは今回で2回目。まだまだ馴れない。

今日が症状のピークだからこれから回復に向かうだろうけど……まだキツいし……辛い。

 

「はぁ……薬飲んで寝よう……」

 

この耳の状態だとヘッドホンで音楽聴こうにも鋭敏過ぎて負担の方が大きい。

……早く治ってロック聴きたい。作曲したい。

そんな事を思いながら、アタシは飲みかけのペットボトルの水で抑制薬と頭痛薬を流し込んでからまた布団を被り眠りにつくのだった。

 

「はぁ…………こんなの全然ロックじゃない…………」

 

アタシの気分は最悪に乱降下していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

──────

 

 

 

 

 

 

 

 

アタシは体を優しく揺すられて、再び微睡みから目覚め掛けた。

 

「なんだよぉ……」

 

布団から顔を出すとそこには……

 

「よっ」

「え、○○?」

 

アタシの幼馴染みの○○が居た。

 

「なんでここに……」

「いや、お見舞いに」

「……女の部屋に勝手に入るなよ」

「おばさんに許可貰ってる。それにノックの音でも響くだろ?」

「…………そうかよ」

 

気遣いは嬉しい。けど、心配掛けたくもない。

 

「それとこれ、朝日野先生から渡された追加の抑制薬とお見舞いのゼリーな」

「さんきゅ……」

 

そういえば食欲無くて変身して軽く音しか食べて無かったっけか……。

 

「何かしてほしいこととかあるか?」

「…………別に」

「遠慮しなくていいぞ?」

 

『別にない』……そう言おうと思ったけど、今のアタシはかなり弱ってたらしい。

 

「……なんでもいい?」

「できる範囲なら?」

「なら…………ちょっと添い寝して」

「え?」

「なんでもするって言ったろ?」

「いや……でも……」

「アタシと添い寝するの……ヤなの?」

 

なんてこと言っちまったんだろう。嫌だって言われたくない。……言われたらって考えたら泣きそうになる……。

 

「ヤなら……別にいいよ……」

「……わかったよ」

 

そう言いながら○○はベッドの中に入ってきた。

 

「ありがと……」

 

一緒に寝てくれて嬉しい。……なんだか単純な気もするけど、自分でも知らないうちに弱ってたのかもしれない。

アタシは○○の胸元に顔を寄せ、埋める。

○○の体の音が聴こえる。

 

○○の生きている証である心臓の鼓動……血液の流れる音……関節の音……そのひとつひとつが心地いい音だった。

 

「なんか……落ち着く」

「心臓の音聴くと落ち着くってなんかで聞いたな……」

「なら……たぶんそれだと思う」

 

それに……○○の匂いを嗅いでいると気持ち悪さが消えていく。アタシ……この匂い好きかも。

 

「ほら、ゆっくり眠りな……」

「うん……」

 

○○はアタシの頭を優しく撫でて、背中をさすってくれた。

子供扱いされてるみたいだけど……とても気持ちいい。

 

「…………」

 

アタシは久しぶりにいい眠り就くことができた。

 

 

 

 

 

 

 

──────

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから数日経って、アタシの発情期はすっかり収まっていた。

 

そしてアタシの聴覚も普段程度に戻って頭痛も治まった。

 

ただ……思考がシラフになってから冷静に考えると………………なんつー恥ずかしいことやってたんだよアタシはァァァァァ!!?

 

いや、弱ってたし色々煩いのももう限界だったけどさ!○○にあそこまで甘えるとか!?何やってんだよォォォ!?

 

というか○○に添い寝して貰ったけどあの時のアタシ調子悪くて風呂入れて無かったよな?臭わなかったかな!?

そ、それに○○が居なくなった時に怪獣娘の姿になってて口の中がすごく旨かったけど、アタシ何食べてたん…………○○の音がしなかったから○○の音食べてたのか!?

いや、最高においしかったけど!?何やってんのアタシ!?

 

 

「うぁぁぁぁぁぁぁ……!?駄目だ……○○のこと考えると…………うぅぅぅぅ……」

 

思考が纏まらない……!顔は鏡を見なくても真っ赤だって分かる。

 

「うぅぅ……○○のばかぁ……。こんなのぜんぜんロックじゃないぃぃ~……」

 

やっぱり発情期なんて嫌いだー!

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