今回はエレキングさんの話。
内容がかなりしっとり気味(当社比)。
途中でR-18行かないけど結構な踏み込みそうなシーンがあるので注意。
怪獣娘の生理周期に入る形で発生する発情期と呼ばれる症状。
発熱、怠さ、食欲増減、感覚の鋭敏化……更には怪獣娘個別に発生する特殊症状を加えれば多岐に渡る。
私、湖上ランにもその症状はやってくる。正直、私はこの症状が苦手だ。
自分の場合はそこまで症状が重くは無いが、それでも症状による体調不良による業務の遅れが発生する。
そうなればいずれ巡り巡って自分に帰ってくるだろう。
効率が悪いが生理現象の一種であり、避けては通れないので半ば諦めていた。
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ある日曜日、私はこれから○○と共に横浜の方に調査に向かうことになっていた。
調査後に行くアニメショップも事前に調査し、予定も構築済み。
GIRLS内で待ち合わせ場所である休憩室に入ると○○はマガバッサーとマガジャッパと談笑していた。
「…………」
その姿を見て、私は無意識に手を強く握っていた。
彼から『喜び』あるいは『楽しい』という微弱な電磁波のようなものを感じる。
何故?
以前 はこのような症状は無かったはず。症状が変化したのかもしれない。
後日、医務室で診察して貰う必要があるだろう。
やがて談笑を終えたマガバッサーとマガジャッパは休憩室から出ようと入り口に移動してきた。
「あ、エレキングさん!おはようございます!」
「おはようございます」
「…………おはよう」
我ながら態度が悪かったかもしれない。かなり冷たい声色だった。
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「さっきのエレキングさん、なんかすごく機嫌悪く無かった?」
「確かにそうかも……○○さんと話してたからかな?」
「えー、エレキングさんがそんな子供っぽい理由で怒るとか無いんじゃない?」
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我ながら子供みたいな理由で機嫌が悪くなっている。
「よ。それじゃ行くか?」
「……ん」
自分でも拗ねている自覚はある。けど、人と待ち合わせしておいて後輩の女の子二人と楽しく話しているのはどうかと思う。
明るく子供っぽいがその性格に反してスタイルのいいマガバッサー。
大人しくおどおどして控えめだが、とてもいい香りのするマガジャッパ。
控えめに言ってどちらも美少女だ。そんな二人に彼が惹かれてしまう可能性は無いと思いたいが可能性はゼロではない。
不確定要素、絶対と言い切れない。
「早く行くわよ」
「へいへい」
彼は私の機嫌が悪いことを察したのか特に触れずに隣を歩いている。
私の事をよくわかってくれている、その事実は彼に取って私は特別な存在であると思わせてくれる。
彼から出ている電磁波も先程とはやや違うが推定『喜』か『楽』だろうか?
─────────
電車に乗り横浜へ向かう。山手線から京浜急行久里浜線に乗り換える。
乗り込んだ電車は2100系だった為、私達は隣に座る。
私が窓側、彼が通路側だった。
さりげなく太腿が触れるように座る位置を調整する。
彼が足を動かして私の足に触れないようにする。
少し意地が悪いが、異性として意識されているようで悪い気分はしない。
彼の電磁波も微弱 揺らぎが出ている。おそらくドキドキしているのだろう。
横浜での調査は滞りなく終わった。そして私は彼と共にアニメショップ巡りに繰り出した。
………………控えめに言って、これはデートでは無いだろうか?
そう思ったがアニメショップ巡りである。それも数件はしごしての。
そんな色気の無いデートで良いのだろうか?
いや、今回はデートでは無く、調査後の空き時間の有効活用である。だから問題は無いはず。
「今日はどこから行くんだ?」
「まずはaniだらけね。次にマクワブックス。それから…………」
予定について話し合う。
彼とは途中で一旦別れてグッズを買ってきてもらうことになった。
…………自分で提案しておきながら、別れて寂しさを覚えてしまった。
これならそもそも二人で行動した方が効率が良かったと思うが……それは錯覚だろう。……発情期で心が揺らいでいるだけ。そう自分に言い聞かせた。
ショップにてグッズをカゴに次々と入れていく。
成人男性向けコーナーの同人誌が目に止まる。
それは流行りのソーシャルゲームの女騎士のキャラクターがメインの本だった。
女騎士が男性主人公と…………行為をする内容である。
「…………」
私はごくりと唾を飲み、それを手に取った。そして既にカゴに入れていた女性向け成人同人誌(BLモノ)の間に入れてレジへと持っていた。
…………女性向けを買う時はなんとも思わないのに男性向けというだけでとても緊張してしまった。
「お待たせラン。そっちは?」
「え、ええ。目当ての物は買えたわ」
「?」
その後、合流した彼にやや不振な態度を取ってしまった。怪しまれてはいない……はず。
───────
「あ……」
私は怪獣娘の姿で○○の手によってベッドへと押し倒されていた。
武装である盾も尻尾の鞭も取り外された状態でベッドの傍らに落ちている。
まだ角や全身からの放電攻撃などもできるが既に私の思考からはそんなことは完全に抜け落ちていた。
彼は抵抗できぬように左右の手でそれぞれの手首を押さえる。
彼はそのまま自らの顔を私の顔へと近付けてきた。
「……!」
私は唇を奪われると思い、目を瞑り備えたが彼の唇が触れたのは私の三日月型の角だった。
エレキングの角はアンテナやレーダー、ジャミング装置としての役割を果たしており、同時に弱点でもある。
「ん……♥️…………んんぅ♥️」
角に口付けをされ、舌先で角を舐められる度に頭に直接ゾクゾクとした強い快感が響く。
「はぁ……♥️…………ぁあ♥️」
暫く角を舐め続けられ、私は行きも絶え絶えとなってしまった。
彼は角から顔を離すと今度こそキスをしてくれるのだと思った。
しかしその期待は裏切られ彼は今度は耳を舌で舐め始めた。
「ひぁ……♥️」
くちゅ……ぴちゃ……と耳に唾液の音が反響する。唾液のいやらしい音が直接響き私の思考は更に蕩けて体に力が入らなくなっていった。
「ねぇ…………そろそろ…………キス……してよ…………♥️」
私は彼にキスをせがんだ。もう、抑えきれなくなったのだろう。
しかし彼は私の体に力が抜けたことで手首から手を離した。
もはや抵抗すらできない。
「ゃん……♥️」
彼は私の怪獣娘姿で大きく露出された胸に顔を埋めながら胸を揉みしだいた。
自分の激しい心音は確実に聞かれているだろう。それは少し恥ずかしい。
「ねぇ……んん……♥️……胸なんかより……まだ……キス……してもらってない……♥️」
私は彼に唇にキスをして貰いたかった。それをねだるも彼は全く聞こえていないのか、胸から片手を離すとその指先は私の太腿に触れた。
「ぁん……♥️…………ま、まって……」
いや……。
彼の指先は太腿をなぞり、少しずつ上へと上がっていく。
「だめ……」
やだ……。
やがて彼の指はスカートの中へと進み…………。
「やめて……!?」
やめて……!?
「やめて!!」
私はベッドから飛び起きた。
「え……?…………あ」
まだ思考がボヤけている。
「夢…………?」
どうやら夢オチだったようだ。それもそうだろう。彼ならまずキスからしてくれるはずだから。
時計を確認するといつもの起床時間より2時間前だった。
……どうやら昨日購入し読んだ男性向け同人誌に当てられてあんな夢を見てしまったようだ。
「なに…………考えてるのよ…………!」
それを理解して顔が熱くなった。
「…………シャワー、浴びましょう」
火照った思考を冷ましたく、私は浴室へと向かった。
…………ついでに下着とパジャマも洗濯に出した。
熱いシャワーが降り注ぐ。
生まれたままの姿でシャワーを浴びながら先程の夢が反芻される。
「…………昨日、二人と話してた時……」
ああ、そうだ。そのときにマガバッサーとマガジャッパに対して嫉妬してしまった時からだろう。
彼とは長い付き合いだ。
お互いに気心が知れており遠慮しないでいられる。大切な…………幼馴染み。
そして私の初恋の相手なのだ。
彼を異性として意識したのはいつだろうか?怪獣娘であることを明かした時?いや、もっと前だろう。
彼との今の関係は心地よい。
しかし、私達も既に高校2年生。そろそろ進路などを決めねばならない。
進学するにしても就職するにしても後は1年弱で彼とは疎遠になってしまうかもしれない。
だから、私は……そろそろ関係を進展させたいのだろう。
しかし彼に思いを伝えてしまえば…………一線を越えてしまえば…………もう戻れない。
きっと、今までのようには過ごせないだろう。
告白してもしも……万が一……振られてしまったら……きっと私は耐えられないだろう。
そう考えると…………とても悲しい。
今、頬を水が伝っているのはシャワーだ。
涙なんか流れていない。
シャワーを終え、髪を乾かしてから部屋に戻る。
まだ少し落ち着ききっていない。
私はバッグから発情期抑制薬を取り出す。
本来なら水で飲むべきだが、私はそれを口に放り込み噛み砕いた。
「……苦ッ…………!」
口の中に苦味が広がる。
苦いのは苦手。
しかし、今はこうでもしないと落ち着かなかった。
「はぁ…………最悪…………最低…………」
気分は最悪。あんな夢を見てしまった自分は最低だ。そう思ってしまった。
────────
そして普段の起床時間を過ぎ、朝食を控えめに取ってから登校する。
そして……。
「ラン、おはよう」
あんな夢を見てしまったのに普段通りにやってくる彼を見て私の心は更に気落ちしてしまった。
「……おはよう」
気落ちしてるのを悟られないように表情に出さず、声色も平静を装う。
「……元気無さそうだけど大丈夫か?」
「問題ないわ。……いつものアレよ」
嘘。発情期よりも勝手に貴方に夢でいやらしい事をさせた自分に自己嫌悪してるの。
「…………わかった。調子悪かったら言えよ?」
彼から感じる微弱な電磁波はおそらく 『心配』だったのだろう。
彼に心配されていることが嬉しかった。
でもそんな自分にまた自己嫌悪してしまう。
授業中も心は晴れず、ここに在らず。
そんな状態で気付けば放課後だった。
「ラン……GIRLS行けるか?」
「……ええ。大丈夫よ」
彼が声を掛けて来る。朝よりもより強く彼からの『心配』を感じる。
「少し……症状が変化したみたい。診察して貰うわ」
「そうか。心配だしGIRLSまで付き添うよ」
「大袈裟よ………………ありがと…………」
私は彼と共にGIRLSへと向かった。
彼が隣に居る。肩が触れ合っているだけで、少し気分が晴れて行った。
私は思ったよりも単純なのかもしれない。
けど、今はそれでいい。
彼との関係はいつか変わるだろう。
けど、それは今じゃない。
もしもいつか変わるのであれば、それは私の方からか、彼の方からか。
だけど、今はこの関係が心地よいのだ。
いつかきっとこの思いを届かせたい。
覚悟してなさい、あなたの心を絡め取って痺れさせるのだから。
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「ふむ……電磁波のような形で人の感情を感じ取れると……。それは誰にでもかな?」
「いえ…………○○だけです」
「……そうかそうか……くく」
「何か分かったんですか」
「いや、推測の域だけど、『好きな人の事を知りたい』という発露での影響じゃないかな」
「あ…………!」
ランの顔はとても赤く染まっていた。
朝日野はそれを見て、くっくっくっ……と笑っていた。