ガンダムSEED ELPIS 赤の騎士と偽りの歌姫   作:明日希

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オリジナル機体出てきます。


赤と黒の兄弟

 地球降下後、指示されたポイントに着いたが、何の影も見えない。

 念のため見つかりにくい場所にセイバーを隠して、外に出る。

 待っている間に考えるのは、やはりオーブのことだ。

 

 移動中にオープンで流れているニュースチャンネルを拾ったところ、フリーダムの指名手配情報などは流れていなかった。

 オーブ代表が不在であると他国に知られないため公にしていないのか。あるいは、フリーダムに拐われたという事を隠すためか、だ。

 良くも悪くも先の大戦を停戦に導いた三隻同盟、その主力だったフリーダムとアークエンジェルは有名だ。カガリの支持基盤も父親由来のものと、彼女が戦争を止めるために戦ったことを支持する軍部だった。平和のために動いた彼らがカガリを拐ったという事は、今回の結婚に問題があったのではないか、と疑う人も出てくる可能性がある。

 それにしても。

「セイランの思想はともかく、縁談自体はそう悪いものでは無かったはずなんだが」

 

 ユウナはやや傲慢な所があるが、宰相の後継である。文官達を取り込めるきっかけになるので、カガリの支持者達も特に婚約に対して反対していなかった。ここ1年で五大氏族となったセイラン家の意見に国を成長させたアスハ家を継いだ彼女が反対すれば、強硬手段は取りにくい。彼女を軟禁するという手はあるが、それも長期的にやると国民に怪しまれるので限定的な手段だ。つまり、上手く立ち回れば彼女にとって有利になる婚約だったのだ。そうでなければ彼女の父も了承しないだろう。

「どうして直ぐに戻ってこないんだろうな」

 議長達にも言った通り、カガリの不在によってセイラン家が軍部の全てを思い通りにすることは避けられる。だが、不在が長引くと彼らに実権を握らせてしまうことは想像に難くない。地球軍に協力することで、地球軍に焼かれたオーブが他国を焼く立場になるのだ。戦争が終わっても、遺恨が残る。ここは理念を重視して中立を貫くべきだった。芯の強いカガリなら、周囲のフォローもあるため折れないと踏んでいたのだが。

「余程のことがあったか、買い被り過ぎたか?」

 そう呟いた瞬間、風を伴って黒いMSが降りてきた。中から黒いパイロットスーツを着た待ち人が降りてくる。

「悪い、待った?」

「いや。直ぐ起動させるから、少し待っててくれ。それ、お前の専用機か?」

 セイバーに乗り込みつつ、気になる事を問いかける。

「そ。ジェミニっつって、お前の乗ってたイージスの後継、兄弟機にあたる。製作違うけど、可変フレームって意味では、そこのセイバーの試作にもなるのか? 軽くて速いし、火力も高い。VPS様のおかげで、装甲の色が自分で変えれるのは節電と防御面で助かるな。あと気分。気になるんなら、ミネルバ着いたらこっそりコクピット乗せてやるよ」

 

 VPS……ヴァリアブルフェイズシフト装甲はザフトが開発した、より効率の良いフェイズシフトだ。電圧の調整による防御性能の変化が可能なら、確かに色を変えることも可能だろうが、ただでさえ忙しい可変機の操作に防御面の調節までこなすのは相当面倒なはずだ。パイロットとしても、一技術者としても気になる。頼む、と返しつつセイバーを起動させ、二機そろってカーペンタリア基地に向かった。

 

 

 

 カーペンタリアで日用品等を購入し、ミネルバに戻ろうとしていたシンは、上空で見慣れないMSが二機、基地に着いたのを見かけた。自艦への追加戦力だろうか? ミネルバのMSハンガーに向かうと、ちょうど2機目のMSが格納された所だった。コクピットハッチが開き、それぞれ黒と赤紫のパイロットスーツを着た男性が降りて来る。

 

「なぁ、あの機体って……」

 近くにいたヨウランに話しかけると、俺も知らない、と返ってくる。

 着地した二人がヘルメットを脱ぐ。現れたのは、オーブのアスハと一緒にいた、アスラン・ザラ。もう一人は長い黒髪が印象的な青年だった。

「認識番号285002、特務隊フェイス所属アスラン・ザラ。こちらは、サジタリウスからの協力員、ラーナス・ウィル・フィリアス。乗艦許可を」

 

「なんで、あんたが!?」

 口に出さずにはいられず、叫んだ瞬間、ルナに名前を呼ばれて咎められる。目の前の人にふふ、と少し笑われた。横のラーナスさんとやらにも楽しそうにニマニマされる。

「艦長は艦橋ですか?」

 アスランさんに問いかけられたエイブス班長が、やや緊張した面持ちで、おそらく、と返した。

 メイリンが案内を申し出ようとしたが、ルナが前のめりで先に言っていた。ミーハーだなぁ。

 

 ありがとう、と笑いかけてルナと一緒に艦橋に向かおうとする人に、思わず問いかけていた。

「あんた、何でザフトに戻ったんですか?」

 

 少し間が開いて、アスランさんの目が伏せられる。ダンマリかよ、と思った矢先、その横から声がかけられた。

「色々あったんだよ。コイツ自身もまだきちんと整理できてないから、落ち着いたら話すのでいい?」

「え、あ、はい……」

 思ってもいない人からの返答に驚き、慌てて返事をすると、サンキュ、と黄色い目を細めて返事が返って来た。少し眉を寄せていたアスランさんの頭をわしゃわしゃと撫でながらルナを促して、艦橋から消えて行った。その場にいた全員が目を見開いて固まる。どうやら、アスランさんと彼は、とんでもなく親しいらしい。

 

 にしても。

「何なんだよ、あの人達…… 色々あったって、なんだよ……」

 誰に言うでなく、呟いていた。




機体設定

ジェミニガンダム
形式番号 SGMF-X21S 全高 18.5m 重量78t
所属 サジタリウス
パイロット ラーナス・ウィル・フィリアス

装備 MA-BAR70 高エネルギービームライフル
M106 アムフォルタス プラズマ収束ビーム砲
MA-7B スーパーフォルティスビーム砲
580mm複列位相エネルギー砲 スキュラ
ビームクロー(両脚装備)

黒と黄の単色2パターン切り替え可能なヴァリアブルフェイズシフト装甲採用の機体。普段は防御力を犠牲にした上での速度向上と砲撃への電力維持のため黒。どうしても回避より防御が要る際は索敵装置との相性も良いとされる黄色に変えられる。VPSとパワーエクステンダーを使用しているためセカンドシリーズに属してはいるが、ザフト製造機では無いのでデュートリオン受信装置は無い。
可変フレーム、スキュラの搭載等、ストライクを撃破したイージスに並ぶ機体を造るという技術者達の挑戦心満載の機体。武装はイージス、セイバーと共通するものが多い。
三形態への変形は予算の問題で再現困難だったが、移動砲台としてのMA形態と、万が一近づかれた際に格闘によって距離を引き離せるように両脚の先にサーベルを装備したMS形態を持つ。基本はMA形態で、高火力のスキュラやビーム砲を撃っては高速で移動して敵を翻弄する。パイロットの希望で極限まで機体を速くすることと火力を上げるため、イージスやセイバーにある対ビームシールドは積んでいない。
中〜遠距離装備が殆どで出力を火力と速度に振っていることも相まって、やられる前にやってしまえ、を体現したような機体といえる。



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