ガンダムSEED ELPIS   作:明日希

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落日の乗船者

 訓練規定を終えた後、セイバーのコクピットでプログラムを細かく調整する。宇宙戦と地球での戦闘では重力の有無などの環境の違いが大きい。大気圏降下後に軽く弄ったが、本格的にとなると動かしていない状態でやりたかった。作業しながら先ほどの訓練を思い出す。

 急に挑んできたシンは、やはりオーブから来た俺のことが気に食わないのか終始睨まれた。去り際にアンタって人は! と叫ばれたが、訳が分からないとでも言いたいのだろう。昼間にはラーナスが話を逸らしてくれたが、ザフトに戻ってきた理由も次聞かれた時には相手が納得できるものを答えなくてはならない。平和のために何かしたい思いもあるし、議長に請われたこともある。オーブに帰れなくなってしまったことも理由の一つだ。最後の事に対して俺自身は特に思うところは無いが、シンあたりがまたオーブやカガリに悪感情を抱くだろう。

「どうしたものかな……」

「何がですか?」

「え……うわっ!」

 目の前に現れたルナマリアがリフトからこちらを覗き込んでくる。

「そんなに驚かなくても。先程は勉強になりました、ありがとうございます。この機体、最新鋭ですよね? 変形機構があるって聞いたんですけど。うわぁ! やっぱりザクとは全然違う! インパルス、っていうよりカオスと同じ感じ?」

「座ってみるか?」

 興味津々といった様子に、思わず申し出ていた。いいんですか!? と聞かれたので動かすなよ、と念押しして場所を変わる。

 プラグインの違いについて答えていると、下から声がかかった。

「取り込み中ごめんなー? アス、ちょっと降りといで」

 ルナマリアに声をかけてから降りる。さて、何があったのだろう。

 

 

「ボスゴロフ級が護衛に?」

「そ。艦長さんが話してるの聞いたんだよ。ちなみに明朝出発だってさ。ところで、俺のジェミニ、水中戦はイケると思う?」

 唐突な問いに眉を顰めるが、楽しげな目の前の笑顔は変わらない。

 水中戦自体は可能だろう。ザクですら、装備を換装する必要はあるが出来る。フェイズシフトで装甲を強化できるなら、水圧に耐えるのは問題ない。ただ、奪取されたアビスのように水中で高速で動けるか、という問いならノーだ。水の抵抗が邪魔をする上、ビーム兵器が分散しやすく、威力と命中率が落ちる。

 コイツの専用機、ジェミニは中〜遠距離主体でビーム砲が主武器の機体だ。収束率を上げて問題を解決したら、今度は燃費が悪い。バッテリーの質がかなり向上しているとはいえ、長時間戦闘は無理だろう。

「短時間なら可能だろうが水中だと速くは動けないぞ。……何する気だ?」

「別に? 地球で戦闘するとは思ってなかったからさ。万が一水中戦やる羽目になっても問題ないかと思って。ありがとな、お礼がわりに気になってたコクピット乗せてやろう」

 はぐらかされた気もするがセイバーとの違いが気になるので、ここは大人しく従っておく。部屋に戻ったら問い詰めようかと考えると、頭上のスピーカーが鳴った。

「アスラン・ザラ、ラーナス・ウィル・フィリアス。お二人とも、至急艦長室へ」

 再度踵を返し、急いで向かう。ただ事とは思えない。一体何だ? 

 

 

 

 すっかり日が暮れた中、タリアはブリッジで一人の女性と向き合っていた。

 白い髪に桜色の瞳。美しい容姿よりも、さらに人目を引くのが彼女の右足だ。華奢な太腿から先が無骨な銀色の義足となっていた。

「初めまして、になるのかしら。ミネルバ艦長、タリア・グラディスよ」

「ご丁寧にありがとうございます、グラディス艦長。改めまして、セントエルモ社所属の医療研究員、フィル・ファリアスです。本日付けでミネルバの軍医として着任させていただきます。

 すいません、本当は進水式の時に乗艦する予定だったのですけれど。ユニウスやオーブの件もあって遅くなってしまい、申し訳ありません」

「あんなことが起こるなんて誰にも分からないもの。気にしなくていいわ。衛生兵は重要だもの、来てくれてありがとう。それにしても、今日は千客万来ね」

「あら、私の他にも新しいクルーの方が?」

「ええ。大戦の英雄アスラン・ザラに、サジタリウスから協力員が一名」

 そう答えると彼女はあら、と呟いてから驚いたように言葉を止めた。それも束の間、綺麗に笑って言葉を繋げる。

「それはそれは。せっかく同じ日に乗艦したご縁です。ご挨拶をしたいので、呼んでいただくことはできますか?」

 

 そんな会話があり、メイリンに呼び出すように頼んで数分後、ノックの音が響いた。入りなさい、と声をかけると昼間と同じように二人揃って入ってくる。

 

「艦長、何かありました、か……」

 アスランが言葉を止めた。そういえば、その横の彼のファミリーネームはフィリアス、そしてソファに座った彼女がファリアス。よく似ている。

 噂好きの若いクルー達の間では、同時に着任した彼ら二人が幼馴染であるのは周知の事実と化していた。まさか彼女も? 

 少し険しくなった目線で見ると、隠すつもりは無かったんです、とこちらに謝罪を一つして、楽しそうに笑って立ち上がった。

「お久しぶり、二人とも。本日から軍医として乗艦することになりました。昔みたいに夜ふかしや食事抜きが出来るとは思わないでくださいね?」





個人的に、アスランは夜更かしとか食事抜くイメージあるんですけど、どこでついたんでしょう。
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