ガンダムSEED ELPIS   作:明日希

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従者達の秘め事と新たな国防委員長

「入港作業が完了しました。各員、点検後待機してください。ザラ隊長は艦長室へ」

 メイリンの声がスピーカーから流れる。無事に入港出来たことに艦内の雰囲気が緩んだようで、すれ違うクルーも弾んだ声で話をしている。

 自分も買い出しに行きたいが、まだ時間ではないし、気になる事もある。目的の部屋の扉を叩くと、気安く返事が返ってきた。先程呼び出されていた彼は早速向かったらしい。ロックが解除されたドアを開けると、ヒラヒラと手を振って出迎えられる。

「いらっしゃい、姉さん。アスランなら放送で呼ばれるやいなや向かった。俺でいいなら伝言しとくよ?」

 方向性は違えど、自分と同じくアスランのことが真っ先に話題に出るほど大切に思っている彼に苦笑しつつ言葉を返す。

「違うんです。今日は、お前とお話があって。正確にはサジタリウスエースのラーナス・ウィル・フィリアスにセントエルモ社長名代のフィル・ファリアスとしての協力要請が」

 少しだけ、向けられる目線が険しくなった。

 

 

 

 話を聞き終えて、思わず大きなため息が出た。俺一人で抱えるには大きすぎる。13年前、この人が家を出た時と同じかそれ以上に、ずっしりと気が重くなった。思わず責めるような口調で、あの時と同じような問いかけをしてしまう。

「また、アイツには秘密にする気?」

「今回の件に関しては、ちゃんと後で話します。今は知る必要も意味もないでしょう? きちんと私から話しますから」

 ごめんね、と謝られる。謝られて許さない訳にはいかないから、分かったとしか返事出来ない。少しだけズルいと思う。まぁ、この姉に関しては既に一つ、墓場まで持っていく気のものがある。今抱えたもう一つは途中で下ろせるので、比べれば随分と楽だ。自分の中でひとまず折り合いをつけたので、気になることを聞く。

「そういや、社長さんは元気?」

「元気ですよ、ありがとうございます。今はセカンドシリーズに搭載したコクピット機構がもうちょっと改良の余地があるらしくて、そっちにかかりきりです。なんでも部品破損の誘爆に気をつけたんだけど、衝撃緩和材の性能をもう少し上げれるんじゃないか、って」

「耐久試験に駆り出された奴からかなりのものだって話聞いたけど。致死高度からの落下でも、五体満足で無事なんだろ?」

「リハビリは数日要りますからね。そこがネックみたいで。にしても、あのテスターの人ともお友達なんです?」

「知り合いの友達って感じで。確か大分前にフェイスになったとか。それよか、そっちに送った可愛い後輩はどんな感じ?」

「流石ですね。あの子なら分析チームで楽しそうにやってます。周りにも可愛がられてますし、順調そうですよ。

 ところで、あの人とはもう会いました?」

「そりゃ良かった。あー、師匠も何考えてんだか。俺、苦手だから避けてる。会合もボスと他のメンバーにお願いしてるよ」

 今話題になった人のことを思い浮かべて思わず顔をしかめる。我らが師匠は腕は確かだが考えは独特で、パトリック様も扱いあぐねたのか、あくまで俺達の指南役として招いていた。そんな人があんな地位に着くなんてプラントの人材不足もいよいよだなと情報を手に入れた時から思っている。

「そういや、アスランって、この事知ってるっけ?」

 ふと思い立って聞いてみる。基本的に友好国といえど他国に情報は詳しく流さない。オーブに対して与える情報も限られていたはずだ。復隊してからもインド洋での揉め事から和解したシンに懐かれたから世話を焼いていたり、整備クルーの奴らと同じ機械好きとして話を弾ませたり、パイロット達に稽古をつける合間に書類仕事をしたりと忙しくしていた。見かねて無理やり飯を口に突っ込んだり、姉さんがベットに叩き込んで強制的に寝かしつけに来たのは俺にとって珍しくなくなってきている。調べ物をしている暇は無いし、そんな素振りも無かった。第一、あの情報を知ったアスランが大人しくしているはずが無い。同じことを考えたのか、目の前の姉も知らないでしょうね、とクスクス笑っている。 ノックが響いて数瞬の後、話題の相手が入ってきた。

「ただいま。スエズ前線の指揮官と話してきた。随分とこちらに期待しているようだな。……姉様。どうしたんです? 最近はおかげさまでよく眠れているので俺なら今日は大丈夫ですよ」

 微妙に警戒心が見え隠れしているが、半分照れ隠しのようなものだ。最初の話題が話題なのもあるが、随分と話し込んでしまっていたらしい。せっかくなので、気になることだし先程の話題を本人にふってみる。

「お前さ、今の国防委員長、誰だか知ってる?」

「……そういえば、カナーバ前議長のユニウス条約引責辞任に伴って総入れ替えがされたんだったか? オーブにいた頃はプラントの情報には大きなもの以外は滅多に触れられなかったからな、知らない。調べてもいいか?」

 どうぞと笑ってパソコンの前に座らせる。数秒後、結果を見たアスランが目を見開いた後……更新ボタンを連打しだした。耐えきれずに笑ってしまう。分かる分かる、俺も初めて情報聞いた時、持ってきた部下を小一時間質問攻めにしたからな! 更新しまくっても、検索ワードを変えても出る結果が同じで諦めたのか、ノロノロと顔が上げられる。

「出来の良いフェイクニュースとかでは無いんだよな? パソコンに細工したなら弄ったって言ってくれ」

 切実な口調が余計に笑いを誘う。あまりの衝撃でパニクった可愛い弟の行動は、相変わらず愉快だ。ヒーヒー言ってしまうのは許してほしい。なんなら姉さんもさっきまで少し肩が震えていた。

「俺も驚いたけど、事実なんだよ。我らが師匠、アレン・アルフリードが現国防委員長ってのは!」

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