「よし、全員揃っているな。今日は少し違う訓練を行う。ラーナス、例のものを3人に配ってくれ」
はいはい、と返事しながら昨日2人で夜通し作った物を渡すと首を傾げられた。最後に受け取ったシンが不思議そうに聞いてくる。
「なんです、コレ。制式の銃なら全員持ってますよ?」
たぶん言うだろうなと話した言葉が飛んできて笑いそうになる。
アスランもクスリと笑ってシンに返した。ここしばらくコイツらの質問責めに律儀に答えていたおかげで、慣れたものだ。
「見た目と重さは制式採用の物と同じだが、中身が違う。今からやるのはより実践に近い形だからな。ペイント弾に変えてある。オールレンジの訓練でよく使う」
キョトンとした顔のシンに説明を付け加えてやる。
「白兵戦の複合版だよ。オールレンジ戦って呼んでんの。ナイフ、銃撃、組み手の何でもあり。訓練場でやったら弾の後片付けが面倒だから外にしたってわけ。遮蔽物とかあれば隠れ場所として使えるから難易度も変えれて良いけど、今回は見晴らし良くしてる。お前ら3人で組んで、アスランと対戦な。勝利条件はコイツの頭か胸にナイフか銃で当てれたら良し。逆に全員そこ撃たれたら負け。俺は審判やるから」
攻撃を受ける攻め手側とそれをかわして反撃する守備側に分けてやるものだ。屋敷にいた頃、師匠と3人で訓練としてよくしていた。小さい頃のアスランには回避専門で叩き込まれていたが、月から帰ってきた後コペルニクスの国際会議場爆破事件があったことからパトリック様の方針で俺と同じ白兵戦カリキュラムをスパルタで叩き込まれていたのだ。これも、その一環だった。あの頃、俺達は攻め手側だった。あの人の強さはまだ遠くて白星を取れたことは無いけど。 アスランが守備側に回るのをなんだか懐かしく思いながら見つつ、アスランが月に行った後に言われた師匠の言葉を思い出す。
「良いか、ラーナス。護衛は難しい。禁止事項が二つある。まず避けてはならない。お前が避けたら後ろの護衛対象に弾が当たると思え。アイツも目をかけているからアスランにはありとあらゆる回避方法を叩き込んだが、それでもだ。もう一つは対象から離れてはならない。お前と相手との間に距離が空いたら、アスランの眼前に刺客が入り込んだ時に守りようがない。絶対に自分から仕掛けようと思うな。アスランが安全なところに行くまで銃だけで応戦しろ。ジンのようなモビルスーツを相手にする場合は話が逆になるが……今はそんな可能性はあり得ないから、気にするな。もしその時が来たら教える。……話を戻すぞ。念のため近づかれた時用にナイフの扱いも教えるが、その際は一撃でやれ。動く隙を与えるな。……あぁ、お前には特別にもう一つ追加だ。何が何でも死ぬな。アスランが泣くどころではすまないぞ。あの事件であそこまで取り乱したんだ。親しい者が死亡したらどうなるか分かったもんじゃない」
そう言って護衛としての訓練開始とともに渡された防弾チョッキは幾度かの仕立て直しを経て今も着ている。想い出に浸っている間に準備が出来たようだ。ザフトレッドの連携とやらを存分に見るとしよう。
「用意……はじめ!」
「シン、攻撃後の隙が大きい! 当ててもいないのに気を抜くな! レイ、精度は良いが位置取りを考えろ! 今回のように遮蔽物が無い場合は立ち止まるな、撃った後すぐ移動しろ! ルナマリア、動いているものに当てるのが苦手なら強制的に相手を止めろ!」
ナイフでの攻撃をいなされた後、忠告と共に襟首を引っ掴んで投げられたので受け身を取ってからもう一回掴みかかると、よし、と呟かれた後に蹴りが来た。身を捻ってかわそうとしたけど間に合わずにモロに喰らう。吹っ飛ばされて思わず咳き込むと胸に一発ペイント弾が当たった。失格! とラーナスさんの声が飛んでくる。アスランさんは困ったように笑って気を抜くなと言っただろう? と冷静に言ってきた。アスランのアドバイスを聞いてなのか、ルナが俺と入れ替わるようにアスランさんに飛びかかっていく。格闘戦はルナが一番得意だ。レイも助言通り動きつつ撃ってアスランさんを牽制している。
失格したら戦闘参加は禁止と言われていたので、手招きしているラーナスさんの隣に大人しく座る。
「お疲れさん。最後の攻撃は、結構良かったんじゃねぇの? アスランも褒めてたし」
「まだまだです。あの人、速すぎ」
褒められたのは嬉しいけど、やっぱり勝ちたい。大分目が追いつくようになってきたけど、身体がついてこない。一緒に考えてもらった自主訓練メニュー、もっと頑張ろう。横から差し出されたスポドリにお礼を言って口をつける。運動の後もあって、めちゃくちゃうまい。そういえば、お互いバタバタしててちゃんとあの件のお礼を言ってなかったなと思い当たる。
「あの……遅くなったけど、ありがとうございました。インド洋での時、アスランさんと仲直りさせてくれて」
この人が居なかったら、和解が遅れていたのは間違い無いし、もし和解しても今みたいに仲良くなれてない気がする。俺一人じゃアスランさんの過去とか考えもしなかった。改めて頭を下げると、わしゃわしゃと撫でられる。
「別に良いよ。俺がアスランが変な空気の職場で働くの嫌だから勝手にしただけだし。俺がいくら頑張っても、そっちが反抗したら何の意味もなかった。お前も偉いよ。それに、ちゃんとアスランのこと知ろうとしてくれてるのは本当にありがたいから。こっちがお礼を言いたいぐらい」
こっちが言うのはともかく、ラーナスさんが俺にお礼を言う意味が分からず不思議に思うと、顔に出ていたのか苦笑される。アスランさんとルナの格闘がまだ続いているのを眺めながら、隣にいる俺でようやく聞き取れるような声でつぶやくように説明された。
「アイツは、家がデカいから変な色眼鏡とか噂が一人歩きしちゃって。近づいて来る奴が地位や財産目当てだったり、父親へのご機嫌伺いだったりするのはしょっちゅうで、会ったことのない相手に勝手にイメージ作り上げられてそれと違うだけで文句言われるなんて事もよくあってさ。お前はオーブから来たっていうのもあって、アイツに対して変な先入観とか無いだろ? アスランも最初はお前が突っかかってったから警戒してたけど、敵意は無いって分かったみたいだから、分かりにくいかもしれないけどお前のことは結構可愛がってるよ」
「それ、あの日にも言ってませんでしたっけ」
「あれはただのきっかけ。同じ境遇持ちのやつがいてもお前ほどじゃないと思うぜ? わざわざ専用の自主練メニューまでもらっちゃって……めちゃくちゃ考えてたんだからな」
金持ちだから偉いなんて言葉が冗談でも言われてしまうくらいあの人は強いし知識もあるけど、俺達には分からない、金持ちだからこそ経験する嫌な事もあると言うことだろう。生まれてくる家なんて誰も選べないのに、大変だ。とにかく、家がどうとか関係なく尊敬している人が可愛がってくれている事実が嬉しい。負けた悔しさがどこかに行くほど機嫌が良くなるのが自分で分かる。緩みそうになる頬を必死に口の中で噛んで止めていると、ラーナスさんが唐突に聞いてきた。
「そういや、話は変わるんだけど、ルナマリアって格闘戦の方が明らかに上手いよな。反対に射撃……というか動いてるやつに当てるのはアスランがさっき言ってた通り苦手みたいだけど。なんでザクの装備があぁなってんの? あれ、明らかに遠距離戦用じゃん?」
見てて気になったのだろうか。そういやヨウラン達からチラッと聞いた話を思い出しながら答える。
「んーと、発進が急だったので、換装用のパックがちゃんと積めてなかったらしいんですよ。なので出撃時着いてたのをそのまま。カーペンタリアはオーブから逃げ込むみたいに入って出発前にも色々あってバタバタしてたんで、そういう話は出なかったですね」
「……まぁ、本人から希望が無きゃ、装備パック交換とか滅多にされないもんなぁ。この状況下だし、わざわざ言うことでも無いってあの子が考えてもしょうがないか。本人が遠距離戦好きとか、そういうんじゃないんだな? ……あ」
言葉を止めたラーナスさんの視線を追うとレイとルナの胸の服のところがペイント弾で汚れていて、発砲音が連続で響いた。
「うっわ、早撃ちで二人まとめてやった!? えっと、好きかどうかは分からないですけど射撃よりは格闘が上手いです」
話しながらだけどしっかり見てたはずなのに、見切れなかった……! 驚きながらも答えると、肩をすくめた後、また頭を軽く撫でられる。
「アスランのやつ、大人気ねぇなぁ……たまには負けてやれよ、あの負けず嫌いめ。オッケー、サンキューな、シン。
そこまで!! アスランの勝ち!! ほれほれ、全員飲み物あるぞー」
3人揃って寄ってくる。飲んだ後、アスランさんはいつものように訓練中より丁寧に改善点を俺達に伝えてきた。これまでに俺達が分からないところを質問したおかげで、そこを踏まえた解説になっているから分かりやすい。その後は、すぐにお疲れ、と言ってラーナスさんと帰って行った。一番に俺が脱落してしまったけど、それでも今日はレイのフォローとかもあって結構粘れた方だ。かなりの時間3人同時に相手どって、流石に疲れたんだろう。後ろ姿に3人揃ってお礼を言うと、明日もやるぞ、と返ってきた。改めてルナとレイにもお疲れ、と声をかける。
「体力を使うが、良いな、この訓練は。最初は戸惑ったが、実際の戦場は、より激しいのだろうから慣れるには最適だ」
「そう、ね。にしても、アスラン流石だわ。私が、動いてるのに当てるの苦手って、バレちゃうんだもの」
「ルナ、前にあの人に自分で射撃苦手って言ってたんだろ、メイリンから聞いた。そーいや、ラーナスさんからルナのザクの装備について聞かれたけど、なんかすんのかな?」
「さぁ、そしたら、また、アスランから、話が、あるんじゃ、ない?」
一番前でやり合ってたルナの息切れが酷い。俺はラーナスさんと話しながら少し休めたから、スポドリ買ってくるよ、と駆け足で自販機に向かうと、珍しくレイからも頼まれる。動きながら撃つのはアカデミーで片手で数えられるほどしかしてないけど、狙いがブレやすいし相当疲れる。返事して二人分買いに行った。
「お疲れ。最後の早撃ちはズルかったんじゃねぇの?」
「訓練で手を抜く方が悪いだろう。連携は大したものだ。攻撃力の要となるシンを早めに潰しておいて正解だった。それにしても、ルナマリアはやはり近接戦闘が合っているな」
師匠が教えてくれた後ろに防衛目標を置いての訓練だったら、俺が被弾するか、防衛物を壊されるか、どちらにしろ負けていた可能性がある。まだ荒い所もあるが良い連携だった。とはいえ、負けるのは嫌なのでシュミレーターで後でやっておこうと考えていると、楽しげにニヤつかれる。
「やっぱり先に潰したのは戦術だった訳だ。シンが一番厄介だから先にやっとこうって。そんな期待のエースに聞いたところ、ルナマリアの装備は、成り行きみたいなものらしい。本人さえ良けりゃ換えても問題ないだろ。遠距離なら俺がカバーできるしな。つーか、聞こえてたから早めに切り上げたんだろ?」
「全部聞けるほど余裕は無かった。大分長引いたから、後一戦できはするが精度は落ちる。夕方に呼び出すので良いだろうか?」
今回の訓練では彼らの得意距離や適性を見る目的もあった。攻め手側はどの距離で攻めるかの選択肢が増える。それぞれが一番得意な距離を選びやすいから適性を見るのに良い訓練だと教わった。日頃の訓練から予測はしていたが、ルナマリアは格闘戦が上手い。動くものに当てるのが無理なら近接で止めろと言うと向かってきたから、本人も自覚はあるようだ。幸い、彼女の搭乗機であるザクの装備パックの交換は容易だ。今日から始めたフライトユニットの後でやっても、明日中には出来るだろう。バタバタと足音が聞こえ、振り返るとシンがいた。
「あ! アスランさん、お疲れ様です!」
「シンか、お疲れ。さっきも言ったが、最後の攻撃は良かったぞ。どうした?」
「……どーも。ルナとレイに追加で飲み物買いに行くところです」
「そうか、お前も休めよ」
「アンタもバテないでくださいよ、明日もやるんでしょう? 今度は負けませんよ」
はいはい、と軽口の応酬を交わすと、続けてラーナスがルナマリアへの伝言を頼んだ。確かに艦内放送で呼び出すほどの事でもない。分かりました、帰りに言いますと休憩室に走っていくシンに声をかけると嬉しそうな返事が返ってきた。険悪だった相手からとは思えない声に遠ざかる背中を見ていると、横から小突かれる。
「後輩に慕われてて良かったな〜。シンの言うとおり、お前もしっかり休めよ。訓練用の銃作りで徹夜したの姉さんにバレたらマズい」
「お前のおかげだよ。艦長とエイブス班長にザクの装備パック交換の話、通さないとな。承諾書類の作成もある。今から行くぞ、心配しなくても夜は寝る」
実際、こいつが居なかったら、母上の話をシンにすることは無かった。似た過去を持っているとアイツに伝わらないと、ここまで心を開かれなかっただろうから。まぁ、盗聴という手段はどうかと思うが。真顔ですぐ休めと突っ込まれたので顔を背けると、仕方なさそうに提案される。俺のやりたい事をさせてくれるから有難い。
「はいはい、しょうがない。せめて二人いるんだし、分担しよーぜ。艦長は俺が行く。班長にはお前が行けよ。色々話して仲良いんだろ?」
「先に艦長に通してからが良くないか? あの人が首を縦に振らなかったらダメになるぞ」
ザフトはオーブと比べてかなり緩いが、それでも階級がある。艦長の顔は立てておかないといけない。そういった人間関係の機微は俺よりこいつの方がよっぽど上手いんだが。不思議そうにしたからか苦笑して言われる。
「先に現場の了解取れてます、ってしたら話通りやすくなんの。悪いようにはしないから、安心して話しといで。俺が交渉で失敗したことあった?」
無い。サジタリウスでフェデラーさんの外交補佐として勤めていたと話していたから、更に腕は上がっているはずだ。頷き、ちょうど通路の分かれ道だったので、そのまま別れて整備ドックに向かった。
「ルナマリアのザクのウィザードをガナーからスラッシュに? もちろん、構いませんよ! マハムール基地に装備もありますし、直ぐにかかれます」
「ありがとうございます。本人は訓練の疲れもあるでしょうから夕方に話をする予定です。了承が取れたらご連絡しますので、今は準備だけよろしくお願いします」
言われた話に快諾すると、目の前の少年はホッとした顔でお礼を言ってきた。本人に断られることは無いと思うので、すぐ換装できるようにしておこうと考える。若いのが話していたのだ、ルナマリアは近接が得意だからウィザードを変えたら良いと思うが自分達が言うのはどうなのだろう、と。隊長である彼が言えば問題ないだろう。
「分かりました。ところで、ザラ隊長。この前話したマークオンの新作が届きまして、使ってみたらかなりの品でした。長く続く店の物は良いですね。新シリーズ、貴方の使っているのと同じ規格もあるそうですよ。かなり使い勝手が良くなってます」
彼は、工業界ではハロを代表作とする電子工作の天才として有名だ。かなり丁寧に仕事をするため、若い奴らだけでなく職人気質の自分とも話が合う。頼まれごとは一区切り着いたので、趣味も兼ねた工具の話に移ると、楽しそうにのってきた。
「やはり工具と言えばあの店ですよね。ハズレ品もほぼ無いですし、精度も良い。老舗ブランドにあぐらをかかずに改良品を出すところも好ましいです。造りたいものがあるので作戦が終わったら早速頼んでみます。ところで、この周辺で良いパーツ屋ってご存知ですか?」
「それでしたら、おすすめの店を後で送りますよ。ディアキアの街は景観も美しいですが、裏路地にある店も面白いのが揃っている。地球軍から解放して早く行きたいものです。ちなみに、何を作る気なんです?」
彼の頭には多様なアイデアと豊富な知識が詰まっている事は日々の会話で知っている。最初はMSのことまでは自分達ほど詳しく無いだろうと思っていたが、かなり正確に理解した上でこちらに質問しにくる姿勢に好感が持てた。今では自分達が助言を頼む事もあるほどだ。そんな彼が造りたい物は気になってしまう。好奇心で思わず聞いてしまうと、少し照れたように笑って答えてくれた。
「ありがとうございます、助かります。まだ詳細は詰めていないんですけれど、久しぶりにペットロボットを造ろうと思いまして。護衛機能も付けたいので余り部品を拝借するかもしれないですが、よろしいでしょうか?」
「もちろんです。欲しいパーツが有れば、なんでも遠慮なく言ってください。協力は惜しみませんよ」
ペットロボットに護衛機能など、どう付けるか検討もつかない。興味もあって協力を申し出ると、少し眉を下げて礼を言われる。挨拶とともに去る彼を見送った後、近くにいた整備兵を集めてルナマリア機の装備換装がある可能性を伝えると、前列にいたデュプレがガッツポーズをした。咳払いをして咎めると横にいるケントに小突かれている。フライトユニットの接続作業は、パーツを持ってきた作業員が仕事をしっかりしているため順調だ。サジタリウスの人間だと聞いて最初は驚いたが、良い奴らだ。整備の仕事は丁寧にするほど信頼される。肩書きは、関係ないのだ。
シンからの伝言通り、夕方頃にアスランさん達の部屋を訪ねる。シンがチラリと言っていたザクの話かしらと思いながらノックをすると、すぐにロックが解除された。
「悪いな、わざわざ呼び出して。そこにかけてくれ」
「ありがとうございます。お話って?」
「あぁ、君のザクのウィザードパックの事なんだが……」
何故だか言い淀まれたので、こちらから話題を振ってみる。
「シンから少しだけ聞きました。変更、するんですよね?」
「……うん。今の遠距離型のガナーから君の得意な近接用のスラッシュに変えようかと考えているんだが……その、構わないだろうか?」
とても申し訳なさそうに言われた。元々ガナーウィザードはレイとシンとのバランスが良くなると着任先を知ったアカデミーの教官に言われて付けただけだ。自分の得意分野を活かせるスラッシュに変わるのは嬉しい。どうしてアスランさんがすまなそうにしているかが分からなくて考え込んでしまう。そんな私を見て、そうだよな、やっぱり……とアスランさんが手元にある書類を仕舞おうとした時、私達の様子をベッドに腰掛けてみていたラーナスさんがアスラン、タイムと声をかけた後、私に訊いてくる。
「ルナマリア。ザクの装備変えるの嫌じゃない?」
「え、もちろんですよ! 近接戦得意なのでとってもありがたいです!」アスランの辛そうな顔が不思議で返事を忘れていた。
「そっか、そりゃ良かった。コイツ、やっぱり自分の機体に人から口出しされるの嫌じゃないかって、準備終わった後だって言うのに思考が変なとこ行っちゃったんだよ。
ほら、大丈夫だってさ。ウジウジせずに、サイン貰おうぜ」
私の返事を聞いてホッとしたアスランさんの背中がバシバシ叩かれる。
「すいません。あんまり申し訳なさそうに言うからなんでかなって考えちゃって。もう、気にしすぎですよ。嫌ならフライトユニット付けた時に怒ってますから。むしろ言ってくれてありがたいくらいです」
憧れの人がそこまで気にしてくれるのに嫌がる訳がない。彼の考えに笑って言うと、謝りながら書類が差し出された。装備の変更願いだ。既に艦長とエイブス班長のサインがされている。署名して返すと、明日中に作業は終わる、と言ってくれた。話はこれで終わりのようだ。退出の挨拶とともに、しっかりと言いたいことを言っておく。
「本当にありがとうございます。憧れている貴方に気にかけてもらえて、とっても嬉しいです。今度、私とレイの自主練メニューにもアドバイスくださいね! では、失礼します」
この前レイに言われたとおり、アスランの人柄はきっと優雅な環境だけじゃなくて、生まれついての性格もあるんだろう。あんなに他人を気遣える人は珍しい気がする。同期の退学した人に生まれが良いだけでに傲慢さが目に余るのがいたから、あの言葉には納得がいった。
さて、せっかく装備を自分に合ったものにしてもらえるのだ。かっこ悪いところは見せたくない。期待に応えるため、追加で訓練しようとシュミレーターに向かった。
ルナマリア機、装備を近接用に変更しました。
原作で格闘戦得意な描写があったのに装備を変えなかったのは指揮官のレイ、前衛のシンとバランスの良い遠距離型にするよう原作開始前に助言があったか、色々起こって慌ただしいミネルバで自分の装備変えたいとか言い出しにくかったのかなと考えてます。
以下、各々の得意距離や戦闘スタイルについて
アスラン: 近距離戦が最も得意だが、先の大戦での経験もあって、どの距離での戦闘も高水準でこなせる。基本的にはカウンター型、武術でいう後の先(めっちゃザックリ言うと後出しジャンケンみたいなもの)が得意。疲労が溜まって余裕が無かったり、ブチ切れたりした場合は自分から攻める。
シン: インパルス各種シルエット扱うため、どの距離も平均以上には出来る。突撃が多く前に出すぎるところは改善の余地あり。若さもあって色々と視野が狭くなりがちだが、アスランとの信頼関係ができているため無鉄砲さは少し落ち着いてきている。
レイ: 空間認識能力を有する事もあり遠距離戦が得意。後方に位置してシン達への支援砲撃や遠距離狙撃を行う。飛べるようになった事で移動が容易になり、被弾しにくくなった。
ルナマリア: 近距離が得意だが、遠距離は苦手。ゴリゴリの格闘型。今回、空戦能力の追加と近接装備への換装によって前線に出られるようになった。
ラーナス: 護衛としての経験から中〜遠距離が得意。近距離も出来なくはない。状況判断力が高く、遊撃手として全体のフォローに入る。
今回、本編も含めてかなりの長さとなりましたが、お読みくださりありがとうございます。