ディオキアの街にあるホールから、今いる基地の近くまで歌声と歓声が漏れてくる。それを聞いたアウルが、フンと鼻を鳴らした。
「なーんか、楽しそうじゃん、ザフトの奴ら。
で? 俺らまだあの艦追うの?」
「ネオはその気だな。ま、俺らも黒星続きだし、きっちり堕としておきたい」
「はぁ? 負けてはないだろ!」
肩をすくめたスティングにアウルがキッと眉を上げる。嗜めるように名前を呼ぶと、大人しくなった。サンキューとこちらに返したスティングが、言葉を続ける。
「勝ってもいないだろ。やれなきゃ駄目なんだよ。俺達に負けは許されねぇ」
夕日に輝く海を目にしてはしゃぐステラの頭をぎこちなく撫でながら、軽く頷いて口を開いた。
「あの艦が動く様子は今のところ無い。少しは羽根を伸ばしても構わないと大佐の仰せだ。あの人もゆっくりするそうだし、お前達も好きなことをすると良い」
我ながらもう少し柔らかく言えれば良いと思うが、口調や性格は日々の積み重ねで染み付いたものだ。そう簡単には変えられない。しかし上にいるあの男がその気になれば、この子達は自らを構成する記憶すら奪われてしまうことにふと気づき、あの技術に恐怖を感じているとステラがこちらに顔を向けた。
「ね、ナタル。ネオは? ネオは、どこ?」
「ホントだ。今日は朝から見てない。まさかネオのヤツ、一足先にバカンス気分ってワケ? 僕らに一言あっても良くない?」
「お前ら落ち着け! ネオは書類仕事……の筈だ。だよな、ナタル?」
不在の上官に対し、置いて行かれた子供のように騒ぐ彼等に軽くため息が出そうになる。何も言ってないあの人に対しても、だ。憂鬱を振り払うため、深呼吸をしてから問いかけに答える。
「スティングの言う通り、大佐は溜めていた書類を片付けるらしい。私では見れない物もあるからな。明日の晩には終わるそうだから、全員一緒に食事に行きたいそうだ」
しょうがないなとスティングが呆れたように笑い、ネオの奢りだ、高いの食ってやろ! とアウルがニヤリとする。ステラ、海が見えるところが良いなぁと微笑んで溢した末っ子の頭から手を離すと寂しそうにされたので慌てて手を繋ぎながら、先刻泣きついてきたのを一刀両断したあの人に思いを馳せる。以前から仕草や口調が似ていると思っていたが、仮面を外した姿を見てから確信に変わった。しかし、今の彼には、あの彼の記憶がないどころか別人のネオ・ロアノークとしての過去がある。むやみに暴いて余計な混乱を引き起こす真似は避けたい。そんな接し方を少し迷う上司からは、書類仕事を手伝わない代わりのように、明日の店を探すよう頼まれている。子供達を寝かせてから行くとしよう。何故か探しに行く時間を指定されているのが気にかかるが、考えても理由が分からない。戻ったら聞くことを脳内のリストに入れつつ、こちらを気遣いながら手を引くステラに頷いた。昔のように走れないし、手も細かな動作は難しくなったが、沈んだ艦に残っていて生き残っていただけで奇跡だ。留めたもう一人は跡形も無く死んだのだから。そんな昔を少し思い出すと、先に待つアウル達が声をかけてくる。今行くと返して、ゆっくりと歩みを進めた。
「さて、まずは久しぶりだね、アスラン。それと……」
「あ……シン・アスカと申します、議長!」
頷いて挨拶した横で、視線を向けられたシンが紅潮した顔で名乗ると、議長は穏やかに微笑んだ。
「もちろん知っているよ。オーブでもミネルバの窮地を救ってくれたし、先の作戦でも大活躍だったそうじゃないか。叙勲申請が来ていたね。結果は近日届くだろう」
「ありがとうございます! でも、スエズではアスランさ……ザラ隊長の作戦があったからこそです、自分一人じゃ何も……」
「いいや。君達全員の活躍があったからこそ、この街も解放された。本当に良くやってくれたよ。
とにかく今は世界全体が混乱していてね」
功績を褒められ、謙遜したシンを再度誉めた後、議長が困ったように眉を下げる。対照的に、艦長が眉を上げて口を開いた。
「
深刻な顔での問いかけに、赤毛の国防委員長がいつも変わらぬ顔で答える。
「偶に小競り合いがあるだけだ。最初に撃たれたアレはどうやら前大戦の残り物のようで、以降は全く撃たれていない。地球での活動に手一杯で造る余力が無いのか、被害を出して前のような報復を受ける事を恐れているのかは分からぬが、大人しいものだ。地上の方がよっぽど混迷している。オーブのように地球軍に従う地域もあれば、ガルナハンのように抵抗してザフトに協力を求める地域もある」
オーブの名前を聞いたシンが思いっきり眉を顰める。アスハの野郎と小声で毒づくのが聞こえた。名前を呼んで叱ると会議の妨げになるため、テーブルの下に置かれた手を軽く叩く。ムッとした顔で分かってます、大人しくしてますよと言われた。フェデラーさんが呆れたような顔で苦々しげに発言した。
「報復を恐れるなら、最初のアレを撃つまいよ。単にその暇が無いだけだろう。これまでの大西洋連邦の行いへの反発で、反乱する地域の方が多いとの話だ。
議長。停戦、欲を言えば終戦に向けた動きは無いのかね?」
「残念ながら。外交官同士で話し合いの場が持たれていますが、何一つ譲歩されない。せっかく勝ち得た独立を捨てろと言われたら、こちらとしても引けません。軍人の君達の前で言う事では無いかもしれないがね、誰だって戦いたくて武器を手にする訳じゃない。しかし、戦わない事を選択する事は矢張り途方も無く難しいものさ。出来ればそうしたいがね」
困ったように再度笑う議長を見て、深く頷いてしまう。誰も戦いを望んでいない筈だ。人殺しが好きで軍人になった奴なんて、俺も見た事が無い。シンがでも、と言葉を溢す。つい口から出たのか、戸惑って言葉を止めた彼を議長が促した。
「遠慮は要らない、言ってくれたまえ。今回は、前線の君達の貴重な意見を聞くことも目的の一つだからね」
「あ……はい!
確かに、戦わないようにする事も重要です。でも、戦わない道を選ぶだけじゃ、いざ戦わなきゃいけない時が来た時に何も守れない! 何かを守るためには力も必要です。あんな風に、普通に、平和に暮らしている人達は守られるべきです」
言いながら、シンの目線はテラスから見える街の人々に向けられる。つられて視線を動かすと、一組の女性と少女が仲良く手を繋いで歩いているのが見えた。少し先では、少女より少し上の少年達が待っている。あの女の子のお兄さんだろうか? 父親は仕事なのか、近くに見えない。そんな何処にでもありそうな家族の光景を羨ましく思って眺めていると、議長が笑ったため、慌てて視線を正面に向けた。
「そうだね。確かに戦わなくていけない時に守りたいものを守るための力は必要だ。アスラン、君はどう思うかい?」
ゆっくりと頷いて答える。戦争について考える時に浮かぶのは、あの時の言葉だ。
「確かに、何かを守るための力はシンの言うとおり必要です。しかし、無闇矢鱈に振るえば、守るために手に入れた筈の力で誰かを泣かせてしまう。殺したから殺されて、殺されたから殺して、それで最後は平和になるのかと以前問われた事があります。私は未だその答えを見つけられていないまま、今また戦場にいます」
あの言葉があって、戦争そのものに対して向き合う事が出来た。カガリには感謝している。議長が深く頷く。
「そう、大事なのは、そこだ。何故我々はこうも争わなければならないのか。何故戦争は無くならないのか。今日はそれについて話しに来たのだよ。君はどう思う、シン?」
再度問われたシンが驚いたように目を大きくして、戸惑いながらも答えた。
「え……それは、やっぱり、地球軍や大西洋連合みたいに、いつの時代でも身勝手な馬鹿な奴らがいるからじゃ……」
言っている間に自信が無くなったのか、すぼんでいった言葉がゆったりと肯定される。
「そうだね、それもある。相手の持ち物が欲しい。もしくは、自分達と違うから怖い、全部無くしてしまおう。そんな理由で人間が戦い続けてしまうのもある。しかし、もっと根本的な問題もあるのだよ。戦争のどうしようもない一面、とでも言うべきかね」
言葉を切った議長が、例えばアレだと基地の奥側を指し示す。そこには一機のモビルスーツがあった。
「ZGMF-X2000グフイグナイテッド。つい先頃、軍事工廠からロールアウトしたばかりの機体だ。今は戦争中だからね。より良い物をと新しい機体が次々と作られる。戦場ではミサイルが撃たれ、モビルスーツが撃たれる。故に工場では次々と新しい機体やミサイルを作り戦場へ送る。両軍ともね。生産ラインは要求に負われ追いつかないほどだ。そして、その一つの価格は莫大だ。一般の個人では到底一つでも買えないそんな物が大量に造られる。これをただ産業として捉えるのなら、これほど回転がよく、また利益の上がるものは他にないだろう」
驚いて微かに声をあげてしまう。でもそれは、と呟かれた声に頷きが返される。
「戦争だから、仕方ないものだ。しかし、人というのは強欲でね。これで儲かると分かると、その逆を考えてしまうものさ」
その言葉を聞いて、思い当たった事に息を呑む。
驚きを顔に貼り付けたシンが途方に暮れた声で、逆ですか? と聞き返した。
「あぁ。戦争が無くなれば儲からない。しかし、戦争になれば儲かる産業はあるものだ。そんな彼等にとって戦争は是非ともやって欲しい事となるのではないかね? 人類の歴史の中で、あれは敵だと人々を扇動し、戦争を産業として考えて自分達の利益のために起こしてきた組織がいるのだよ。その名をロゴス。この戦争の裏にも、間違いなく彼等がいるだろう。彼等こそ、あのブルーコスモスの母体なのだから」
そんな、金儲けのために人の命を奪う戦争を起こす奴等が、本当に……!?
議長の横にいたローゼン医師が沈痛な面持ちで口を開いた。
「我々医療産業界では本番は終戦後ですね。生き残った兵士や巻き込まれた民間人が日常に帰るための義肢製作、リハビリやメンタルケア……もちろん今でもやってはいますが、落ち着くと需要は増える。確かに利益となるのは事実です。実際、戦争を待っているのではと揶揄する人々がいない事もない。しかし、そんな惨状を知っているからこそ、少なくとも私は、絶対に自らの利益のために争いを起こしたいとは思いませんよ。我々を集めたのは、そのロゴスとやらの存在の周知と関係者を炙り出すためですか?」
この人が、そんな金銭に目が眩むような人で無いのは知っている。そのロゴスの一員と言うのはあり得ない。議長も、慌てたように頷いた。
「もちろん、貴方は誰よりも患者を優先する高潔な人物だ。申し訳ない、言葉が足りなかった。何も利益を得る人全てがロゴスだと言うわけではない。ただ、戦争を起こして喜んでいる者は関係者の可能性が高い。そう言った人物に心当たりがあれば、皆さんに是非情報の提供をお願いしたい。貴方のような方がそうだとは、誰も思いませんよ」
その場にいる全員が頷いた。ローゼン医師は柔らかく微笑む。
「もちろん、疑われたとは思っていませんよ。こちらこそ確認の言葉が足りずに誤解させてしまい申し訳なかった。言われるまでも無く、ご協力しますよ。直近のシャトルでプラントの本社に戻り、交流のある人物のデータを纏めて洗い出すとしましょう。話し合いは以上で?」
「ありがとう、ご協力感謝します。彼等をどうにかしない事には、永遠に地球とプラントで争いが続いてしまう。何か分かれば是非ご報告をよろしくお願い致します。
それでは、皆さん、お忙しい中誠にありがとうございました」
一礼する議長に慌てて礼を返し、続いて立ち上がる。艦長に顔を向けて楽しそうに笑った。
「そうそう、君達ミネルバのクルーにはホテルを用意してある。ここのところの活躍に対してと考えると、細やかなものだがね。ゆっくりしていってくれたまえ」
ルナマリアが嬉しそうに聞いた。
「本当に、よろしいんですか!? ありがとうございます、議長」
「久々の休暇だもの。議長からの褒賞だし、彼の言うとおり、ゆっくりさせてもらいなさい」
やった、とシンに駆け寄って手を合わせる彼女に笑ってしまう。
「そうさせていただけ。艦には俺が戻るから」
誰もパイロットが残っていないと、有事の際に不味い。何か有れば嫌だしなと申し出ると、後ろから声がかけられた。
「いえ、隊長もお泊まりください。今回の作戦での最大の功労者は作戦を立案された貴方と砲台を破壊したシンです。ルナマリアも、大型MA破壊という戦果を挙げていますし、順当だと思われます」
残りの部下2人にも頷かれ、艦長にも、貴方もよくやったわと言われる。有り難く頼む事にした。何か起こっても、レイなら落ち着いて対処ができるだろう。
念のため周囲を警戒しながら歩みを進めると、パタパタと楽しそうに走る音を耳が拾った。こちらに近づいてくる。敵意は無さそうだが、いったい何だろうと思案に耽っていると、思いっきり衝撃が加えられた。
「アスラン!! 会いたかった!!」
ミーアが、俺に、抱きついていた。
婚約者のラクス・クラインが走った勢いそのままに横のアスランさんに抱きついたのを驚いた目で見ていると、軽くため息をついた後、少し身体が離される。少し困ったような顔で口を開いた。
「……走ったら危ないだろう? 怪我はしていないか?」
「あら、アスランがちゃんと受け止めてくれたから、問題ありませんわ。それにしても、抱きつくまでボーってしてるんですもの。お疲れなんです?」
アスランさんの言葉をサラリと流して、また顔を近づけている。照れたように慌てる人を少し茫然と見ていると、議長が苦笑して彼女に声をかけた。
「これは、ラクス・クライン。本日は基地でのライブの後、ディオキアの町の皆さんにも歌を歌ってくださり、ありがとうございました」
「いいえ、こちらこそありがとうございます、議長。
アスラン、基地のライブ、観てくれていたでしょう? いかがでした?」
「え? ……っと、良かったよ。それより、俺が来ていたのに気づいていたんですか?」
「本当に!? 嬉しい!! 急いで来て良かった! ふふっ、大好きなアスランが来ているんですもの、何処にいたって分かるわ。お仲間と何か話していたみたいなので、声はかけませんでしたけど、次からよそ見はダメですよ?」
少し怒ったように言われ、すまないとシュンとしている。そんなアスランさんを見て、ラクス……さんは楽しそうに笑った。少し羨ましく見ていると慌てた足音が聞こえ、俺達の目の前で止まった。
「ラクス! いきなり走るのは止めてください、アスランが心配しますよ……あ……」
視線を動かすと、灰色の髪に黒い眼の女性が軽く息を弾ませて立っている。背はアスランより少しだけ低い。女性にしては、かなりの高身長だ。名前を呼ばれた歌姫が笑って向き直る。
「ごめんなさい。アスランがいるって聞いて、つい。アスラン、本当に、本当にありがとう! フォリィ、貴方にお願いされて来たんでしょう?」
驚いたように目をパチパチさせていたアスランさんが、ちょっとの間を置いて、あぁ、と答えた。
「君に何かあったら嫌だからな。俺が勝手にした事だ、礼を言われるような事じゃない。もう、仲良くなったのか?」
「それでも、ありがとう。本当に嬉しかったの。うん、たくさんお話ししたから! 凄いのよ、護衛だけじゃなくって、マネージャーのお手伝いもやってもらってるの! スケジュール調整、とっても上手で! お陰で私、基地の人の前でも街の人達の前でも歌えたし、その後ボランティアの皆さんのお手伝いもできたのよ!」
テンションが上がっているのか、楽しそうに話している彼女がつんのめって転ばないようさりげなく支えながら、微笑んで話を聞いている。なんだ、普通に仲良いじゃんなんて思っていると、議長から、お二人でお食事でも、と言われ、またテンションの上がった恋人に腕に引っ付かれて慌てている内にアスランさんは連れて行かれた。フォリィさんが、護衛は任せるから、二人っきりでごゆっくりと声をかけた後、俺たちに向き直った。
「ミネルバの皆さま、初めまして。私、アスラン・ザラの世話役で今はラクス・クラインの護衛兼マネージャー補佐を務めております、フォリア・ウェル・ファリアスと申します。以後お見知り置きを。議長、お久しぶりです」
議長とも面識があるらしく微笑んで挨拶を返していた。
「久しぶりだね。君の辣腕は聞いている。面接の際、アスランの世話役だとは聞いていたが、まさか彼直々の頼みだったとはね」
「それだけではありませんわ。彼女は我々プラントの癒やし、守るべきものの象徴です。今はとても頑張っていますし、あの子から頼まれなくても力にはなりたいと思っていましたので。体調管理にも気を配っております、議長もご自愛くださいませ」
少し硬い面持ちで握手を交わしている。やっぱり、議長相手だと緊張するよなぁ。見ていると、カツンと硬い足音が響いた。フィル先生が歩いていく。そっか、この二人って……!!
「久しぶりですねー、可愛いフォリィ!! 元気にしてました、怪我は? 必要なお薬とかある? 任せて、何でも用意できますから、無ければ創れば良いんですし!」
輝くような笑顔で背伸びして頭を撫でようとしている。少し屈みながらフォリアさんが困ったように、でも嬉しそうに笑った。
「久しぶり、姉さん。ちゃんと元気だから。良かったらご飯一緒に食べよう? ミ……ラクスの護衛はアスランがいたら大丈夫だから。二人っきりにしてあげたいし。材料は買ったから」
「ぜひ! ふふ、可愛い妹の手料理、久々ですね! それでは、皆さん。お先に失礼します」
姉妹揃って礼をする。妹さんの方が背が高いのに少し驚いたけど、とても仲が良いみたいだ。ローゼン社長とフェデラー代表を送ってきたアルフリード委員長が戻ってきて首を傾げ、近くにいたラーナスさんに問い詰めた。
「おい、ラーナス。あの馬鹿弟子は? 先にホテルに行ったのか?」
ラーナスさんが肩をすくめて答える。声が少し、笑っていた。
「残念でしたね。婚約者と鉢合わせて、一緒にご飯行くみたいです。議長からのご提案です。そうじゃなくても、まさか、久々のデートを邪魔する気じゃないでしょうね?」
変わらない仏頂面の赤い人が心なしか沈んだ声で喋り出した。
「それは野暮と言うものだろう? 無粋な真似はしないさ。
む、しかし、参ったな……港町なだけあって海産物の旨い店を3名で予約したし、アイツの食べられない青魚は入れないよう頼んでいるから、少ない人数で行くと店に迷惑がかかる……お」
律儀な考えを口にしつつ辺りを見回した人と目があった。なんか嫌な予感がした瞬間、ガシッと掴まれる。痛くはないけど腕がびくともしない。ジッと見つめられた後、話しかけられる。
「確か……シン・アスカと言ったな? 酒は飲めるか、アレルギーは?」
「え? ……あ、はい、シン・アスカです、国防委員長! えっと、お酒は少しなら飲めますし、アレルギーはありません!」
嫌いなものなら沢山あるけど。もう一方の腕で敬礼しながら返すと、満足そうに頷かれた。
「良し。今話していた通り、久々に約束していた弟子にすっぱ抜かされてしまってな。店に悪い。19時にラーナスと来てくれ、旨い飯を奢るぞ。
ではな、ラーナス。連絡先は変わっていないだろう? 後で店の場所を送る。念のため、軍服で来るなよ」
肩を叩かれ、立ち去って行く人を愕然と見送る。ラーナスさんからすまなそうに、悪い、でも旨いタダ飯だぞ? と言われる。
レイやルナ、果てには議長からも行っておいで、と言われてしまった。
俺、魚介類、苦手なんだけどなぁ……!!
長くなりましたが、お読みくださり誠にありがとうございます。
次回、楽しいお食事会の予定です。