「そうか、アスランが……いや、ミネルバも沈まず彼の命も残ったというならば機体の一つ安いものだよ。そんな事を言わないでおくれ、タリア。最新機を失った事を咎める気はないとも。彼は自機を犠牲にしてまでもフリーダムを食い止め、被害を最小限に抑えてくれたのだろう? 罰するなんてとんでもない。寧ろよくやってくれた。今後とも君達には期待しているよ。先日の件と言い、忙しい中で迅速な報告をいつもありがとう。今はとにかくゆっくり疲れを取っておくれ。それでは、また」
敬礼を返した彼女の化粧の落ち具合からかなりの激闘だった事が見て取れた。それにしてもアスランがフリーダムに墜とされるとは。恐らく機体性能やパイロットの力量差が原因ではあるまいと考える。
先の大戦の最中、ストライク撃破の一報が届いて直ぐだっただろうか。忙しい合間を縫ってラウが私とレイに会いに来たのだ。突然の訪問に驚きながらも本当に嬉しそうに笑っていたレイの姿が鮮やかに瞼に浮かぶ。彼が寝静まってから他愛無い話をした後、ストライクのパイロットであるキラ・ヤマトとアスラン・ザラは幼い頃からの友人であり、そんな二人が殺し合ったと教えてきた。
「彼さえその気になればこうなると分かっていたのだ。アカデミー在学中からこちらに噂が聞こえてくる程に素質が頭一つ抜けていた。それに加えて私の隊に来てから経験をうんと積んだからな。本人で無いので実体は預かり知らぬがね、理解していたからこそ彼自身もかなりの手加減をしていたのだろう。ニコルを殺してその枷を自ら外させるとは愚かな真似をする。アスランが機体を失う程の激闘になったのは流石というべきかもしれないが、結果は結果、負けは負けだ。
いくらキラ・ヤマトが最高のコーディネーターと言っても才能だけでは限度があったということか。結局、人の夢とは儚いものだ。なら、そんな一時の夢を見るために造られた私達は何なのだという話だよ」
いつもの皮肉混じりで語りながらも珍しくつまらなさそうな顔をしていた。自らを含めた様々なモノを踏み台に産み出された最高のコーディネーターに期待をしていたのか、はたまた友人を撃った部下を案じていたのか。夜も更けたからとそのまま会話が切り上げられ、朝が来たら姿はなかった。そのまま真意は聞けずじまいだ。
懐かしい記憶を思い返しながらどうしたものかと思考を巡らせる。良くも悪くも機体を失ったパイロットは暇になる。レイから普段の勤務態度を聞いている限り、彼がゆっくり休む性分だとは考えられない。人の心配をどの口で言うと返したくなるほど仕事優先で中々の不摂生ぶりだとは面倒見の良い彼の同室の台詞だそうだ。
新たな機体を渡して余計な事を考える暇を無くしてしまおうかとも思うが、まだ例の機体はどちらも完成に至っていない。サジタリウスからアスラン用の試作機のエンジンを用いた検証データは既に送られてきているため、現在は乗せる予定のパイロットに合わせて装備やOSの細かな調整を施している。今から搭乗予定者を変えたら技術局は更に納期を遅らせてくるだろう。
頭を悩ませていると、珍しい人物からの電話が来た。何かあったのかと急いで受話器を取ると先程の懸念事項を解決してくれる内容だった。断る理由は無いので了承しつつも、連絡の早さに驚く。私も先程知ったばかりの情報を既に得ているとは彼に親しい者達の存在によるものだろうか。何にせよ有り難い事だ。
安堵の息を溢しながら報告を聞くために手を止めていた書類に向き合う。今しがた電話のあったフェデラー代表や医療界の重鎮であるローゼンクォイツ氏など、プラント内では各界の重要人物達から理解が得られている。これならば多くの民衆の賛同が得られ、平和な世界が実現するはずだ。しかしながら伝えるべき時は今でない。せめて世界がもう少し落ち着いてからでないとまともに話も聞いてもらえないだろう。機を待ちながら、こんな案を考える切っ掛けとなった愛おしく恋しい彼女を想った。
「艦長、失礼します。艦内のクルーの負傷状況についてこちらの報告書をどうぞ。あの、議長は何と?」
「ありがとう、アーサー。この件でお咎めは無いそうよ。それどころか今後も期待しているだなんて、あの人ったら甘いんだか厳しいんだか……流石に人的被害がゼロとはいかないわね。これでもまだマシな方なのかしら。自己鍛造弾のシャワーなんてまともに浴びていたらもっと酷かったはずだもの。パイロット達の様子はどう?」
報告を終えたのを見計らったかのようにノックをして入ってきた副官から書類を受け取る。先程話したギルバートの事を思い返しながら目を通していく。失ってしまったものを数えていたら何も出来なくなってしまうため、手痛い結果だが最悪では無いと気分を切り替える。船を護ってくれた功労者達の具合を問うと、ホッとした顔つきで返事が来た。
「アスランは既に目を覚ましています。シン達も大きな怪我が無いからって四人全員揃って復旧の手伝いしてますよ。シンのレスキューが目を見張る程速かったのもありますけど、奇跡ですよねぇ。フェイズシフトダウンしたセイバーが海面に沈んでいった時はもう駄目かと思ってしまったので無事で本当に良かった」
喜ばしく笑みを浮かべたアーサーを眺めながら軽く頭が痛んだ。アスランが墜とされた直後なのはもちろんクルー全員知っている。目に見える怪我が無いからといって体調が普段通りな訳が無い。誰か止めなかったのかと訊きたいが、頑固な彼の事だ。簡単に言う事は聞かないだろうし、もしかしたら何かしていないと落ち着かないのかもしれない。
心の傷があまりにも深いと自覚しないように却って普段通りに振る舞ってしまう人もいるとはもうすぐ再会できる軍医がいつだったか溢していた話だ。今回の相手が彼に親しい人物だったため、そうなってもおかしくない程に心労が大きいことは容易に察せられた。いくら人は変わるものとはいえ、かつて共に戦った相手だと知りながら躊躇いなく傷つけられるフリーダムのパイロットは何を考えているのだろう。顔も名前も知らない事も相まって得体が知れない。
考え込んでいると不安そうな顔でアーサーが呼びかけてきたため、アスラン達に休んでもらうよう伝えに行ってもらう。断られたら艦長命令にしてちょうだいと付け足せば意図を察したのか苦笑して部屋を後にしていった。
パイロットは身体が資本だ。ゆっくり休んでもらいたいところだが、アスランは責任感が強い。先程考えたような心の防衛機能に加えてミネルバが今回負った被害は自分のせいだと考えてしまっているかもしれない。いくら彼が優秀だからといって全ての責任を負う必要は無いのだから私達のミスでもあると言うのは折を見て伝えなければならない。損傷のせいで自慢の足を存分に発揮できないため時間はかかってしまうだろうが、ジブラルタルに着いたらラーナス達と合流する予定だ。アスランの心も少しは休まるだろう。今回の件で酷く傷ついたであろう彼が一刻も早く癒やされる事を祈っていると、小さく震えた端末が知らせてきた内容に眼を見開いた。
「おい、ラーナス。いい加減そろそろ教えてくれ。何があった?」
少し前に突然けたたましい不協和音を鳴らした黒い携帯電話に飛びついたラーナスが戻ったと思ったら自動操縦でジブラルタルへと動いていた舵を掴んで強引に進路を変えた。慌てて声をかければこのままミネルバに向かうと一瞥すらくれずに宣言してからは何も話さない。レーダー画面を凝視したまま舵を細かく操作している。速度も上げているようで波飛沫が時折ここの窓まで散ってくる。
いつもの飄々とした余裕のある態度をすっかり崩して無茶な操舵を行う年若い青年を諌めようとした瞬間、彼の胸ポケットに放り込まれていたままの端末が小さな音を立てた。乱雑に引っ掴んで画面を見た後、遅いんだよと舌打ちをしながら舵の傍らの操作パネルを叩き壊す勢いの速度で何かを打ち込むと、ようやく手を離された舵が再び独りでに動き出した。
探査結果を頼りに人力で移動するミネルバを追っていたらしい。合流ポイントの再指定すら待たずにそんな真似をするなんて余程余裕を失っている。いったい何が起こったともう一度語気を強めて問うと、不機嫌そうに睨まれ溜め息をこぼされてからぶっきらぼうに返された。
「アスランがやられた。アイツにとって初めての黒星だ。身体は無事だからってちんたら待てるか」
「アスラン・ザラが? アイツ相当強いだろ? 誰にやられた?」
思わずフルネームで呼んでしまった少年との記憶が思い起こされる。中々言わない名前を聞き出した時は彼の父親が真っ先に脳裏に浮かび、あの苛烈な男の血を継いでいるとは思えないほどの端正な顔と争い嫌いな性格に大層驚いたもんだった。そんな風貌と性格に反して戦闘力はバカみたいにあるのは身に染みて知っている。やはり船を制圧された時の冗談じみた強さは鮮烈だ。
着地を失敗したら確実に死ぬ高さから躊躇なく飛び降りて蹴りを決めると同時に不安定な体勢で引き金を引いて複数人を床に沈め、次の瞬間には降りる前に居たよりも高い位置に跳び上がってマシンガンの銃撃を避けていた。点と線の攻撃は回避されるからと囲んで面で制圧をしようとすれば瞬間移動でもしたのかという速さで迫り、包囲網を崩していた。何をしても弾薬と人員の無駄遣いとなり、最早見惚れてしまうほどの理不尽さでこちら側の立っていた兵士の数は一方的に減らされていった。おかげさまで追い立てられて脱出させる奴の多くはすっかり怯えて戦意をへし折られていた。麻酔弾なんて非殺傷武器じゃなけりゃ、物言わぬ人の山が積み上がっていただろう。モニター越しに見ていた俺も内心引いて笑うしかなかった。
救い出してもらってから、以前インド洋で顔も知らずに対峙した赤い機体のパイロットだと聞いた際には何か苦手な分野は無いのかとキレそうになったのも記憶に新しい。今しがた耳にした撃たれたのは今回が初だという嘘のような話もあり得なくは無い。その分ショックが大きいだろうという事は同じパイロットとして充分に察せられた。 機体を失うのはいつも突然で、大抵が敵に撃たれる。別れを告げる暇なぞある訳が無く、文字通り生死を共にした機体を乗り捨てたとしても帰ってこれる人間は少ない。そんな戦時下で自分の意思によって離別を決める事が許されるのは余程の実力者だという証だろう。そんな簡単にやられると思えない男が撃たれたなんて対峙したのは誰だと問うと、苦々しく吐き捨てられた。
「またしても戦場しっちゃかめっちゃかにしたフリーダム。パイロットはアスランの幼馴染。アイツが殺す気になんてなれる訳ないの分かってたはずなのに……クソッ、やっぱり時間惜しい。もう良い? 自動操縦だと速度制限されるから自分で動かした方が速い」
フリーダムのパイロットの情報に驚いて肩を掴んでいた手を緩めてしまうと、鬱陶しそうに払われた。そのまま再び白浪が唸り出した窓辺を見ながら茫然とする。アスランが三隻同盟に所属してフリーダムと背中を預け合っていたのはもちろん知っている。その上幼馴染であれば余程信頼していただろう。そんな相手に撃たれるなんて裏切られたようなものだ。ラーナスが急いでいるのは弟のような彼を心配しているからだとようやく納得できた。
ステラ達のブロックワードが解除できた祝いと再度の礼を兼ねて飲みに誘った事がある。遠慮するなと勧めて酔っ払ったコイツはアスランが如何に凄くて良い奴なのかを滔々と語り出した。中々に愉快な絡み酒だったし、アスランがとても大切で護ろうとしている事が分かった。理由は酔い潰れながら少し溢していたが、中々に業が深かった。仕方がないかと腑に落ちたのでナタル達の様子を見に行こうと踵を返す。
アイツにとっての一番がアスランであるように、俺にとっての最優先事項は可愛い子供達と不器用な女房役だ。それだけはどうしても譲れない。お互いそうだろうなと脇目も振らず懸命に船を進ませる、年長ぶりながらまだまだ必死なガキだった奴を振り返ってから艦橋を後にした。
「また加速した、あのおバカさんめ……すいません、突然。狭いですけどまだ揺れが酷いですからこのままで」
再び揺れ出した室内で断ると、目の前の可愛らしい子達は気に障った様子もなく返事を返してきた。
「別に良いよ。またステラがこけそうになったら嫌だし。けどさぁ、怪我はしてないんだろ? こんなに急ぐ事?」
「きっとラーナスの奴、アスランが心配なんだろ。しかし随分と強かったアイツでも負けるんだな。なんか昔フリーダムと一緒に戦ったらしいし、敵だった俺達も助けてくれた甘い奴だからつい手を抜いたんじゃないか?」
「こら、二人とも! 身内の前だぞ、口を慎め! ……すまないな。気持ちは分かるから私達の事は気にしないでくれ。しかしヤマト少尉……いや、キラ・ヤマトがあんな真似をしているとは……」
「いえいえ、気になるのは分かりますから。余程の事情が無い限りやるべき事はこなしますよ、あの子は。むしろこうすべきだと思ったら死にかけだろうと動きます。たとえ両腕取れても操縦桿握ってそうですよ」
シン君が緊急通信で入れてくれた内容を聞いた瞬間、ラーナスは必ず暴走すると見越して一緒に海を見ていた彼等と船内に戻って正解だった。たまたま補佐していたネオさんが少し落ち着かせてくれたかと思ったけれど、この短さは状況説明しかしてないなとアスラン第一の従兄弟に呆れながら、やはり私もあの子を案じてしまう。
アスランは心が弱ると絶対に本調子を出せない。単に身体に反映されて動きが落ちる時もあれば、思考回路が変に繋がってどう考えても有り得ない理屈があの子の中では通ってしまう時もある。今回は特に相手が相手だからどうなるか予測がつかない。
キラ・ヤマト君。月に避難したアスランと出会い、長い時を共にしてくれた男の子。ザラ家の名前が重いせいで中々個人的な付き合いが出来なかった弟に初めて出来た外の世界のお友達。月から帰ってこられたアスランが宝物を見つけたみたいに嬉しそうな顔でキラ君の事を教えてくれた記憶はしっかりと脳裏に焼きついている。
家の評判や的外れな噂に左右されず、ありのまま出会えたのは奇跡と言っても過言では無い。今はアスラン個人を見てくれている、シン君を初めとしたミネルバの優しい人達やミーアちゃんだって最初は肩書きに惑わされてしまっていたのは確かなのだから。
アスランは親しい人が多くない分、良くも悪くも一人一人に向ける感情が重苦しくなる癖がある。その中でも特にかけがえの無い相手に酷いことをされたなんて、どれだけ傷ついているだろう。
あの子は下手に優秀な分、弱っている事を隠してよく見ないと気づかせてくれないのも輪をかけて厄介だ。まだザラ家に人が多かった頃、新入りの人がいつも通りだと報告してきたアスランの顔を直接見れば高熱を出していた事は何回あったか。一度その状態でその日の習い事と課題を終わらせ、評価もほぼ満点を取った事がある。あんなに我慢させてしまうなら、いつか私達が居なくなって置いていく事なんて考えずにうんと甘やかしてもう少し弱くしてしまえばよかったんだろうか。酷い事を考えていると、煙を上げている黒い戦艦が丸い窓越しにうんと遠くに見える。あの中にいる弟にどうか誰か寄り添っていてほしいと切に願った。
「あぁもう! 何やってんですか、アンタって人は! その状態で良く作業ミスせずに出来ましたねぇ?! 寝ろ、良いから寝ろ! 艦長命令あったでしょ! 作業はヨウランとヴィーノが引き継いだから!」
「うるさい、押すな。その、ボイラー前に長い間いたから体温上がっただけだ。もう休憩できた。大丈夫だから、戻らせてくれ」
いつもより顔の赤い上官と心配でなりふり構っていない同室の押し問答を見る。今の言い訳は目も泳いだから確実に嘘だ。最初に気づいたのは自分だという事もあり、どうにか休んでもらおうとラウ仕込みの少し意地悪な手を使うことにする。
「シン、落ち着け。アスラン、蒸気に当たっただけでそれ程の高熱が出たならミネルバの管理システムに不具合がある可能性がありますね。精査をエイブス班長にお願いしましょう。かなりお忙しいそうですが、貴方からの提言だと伝えれば無下にはされない。構いませんか?」
「え、あ、いや……すまない、やっぱり気のせいかもしれない……」
誰かに迷惑をかけるのを嫌がる彼だからこう言えば引くと確信がある。目論見通り、慌てた表情をしたアスランはバツが悪そうに自室のベッドへ戻っていった。
得意の工学知識を活かして整備班の作業を手伝っていた彼と休憩が重なり、何気なく触れた手は思わずこちらが引っ込めてしまいそうになる程熱かった。あんな事があった直後なので体調を問えば大丈夫だと返ってきた。どうしても不安が拭えずによく見れば息も荒く、ひどく汗をかいていた。体調不良だと判断してシンとルナマリアの手を借りて渋る彼を医務室に引っ張っていけば疲労由来の風邪だろうと診断された。医務室は満床だからと自室での療養を命じられ、今に至る。
横になっても寝付けないのか、ゴソゴソと動いていたアスランはとうとう端末に手を伸ばそうとした。咄嗟に取り上げれば不満そうに見つめられるが、今作業したら余計に眠れなくなる。念のために部屋に居座らせてもらって良かった。一人にしたら更に悪化させてしまうところだった。少しでも休んでほしい。後ろを向いていたシンが取り出した薬を渡してあげれば、いつも出されている薬が効いたのか直ぐに瞼は閉じられた。やはり限界を迎えていたらしい。
普段からシンの話を聞いたり彼と直接言葉を交わしていて良かった。そうでなければ彼の肩書と能力に彼個人が覆い隠されて、あの大丈夫を信じてしまっただろう。そんな事を考えていると、シンが声をかけてきた。
「あのさ、レイ。友達の話って普通は楽しそうにするよな」
脈絡の無い話題に不思議に思いながらも考える。
ギルに折を見て通信を繋げるように言われていた。機会を見て連絡すると普段の様子を問われたので話していると、良い顔をしているねと嬉しそうに言われた。
ちょうどシンやルナマリアの話を聞いてもらっていた時だったと思う。大切な人に好きな友達の話をするなんて幸せな事をしているのに嫌な気持ちにはならないだろう。
思い返して頷くと、だよなぁとため息を吐かれる。深い眠りの中にいる碧い髪の人を見ながら悲しそうな声をこぼしてきた。
「この人さぁ、辛気臭い顔して親友だって人の話するんだ。楽しそうな想い出も辛そうに話してた。その上、ソイツにこんな事されるなんて。 あんなに苦しめる相手を友達って呼んでいいのかな?」
「それは……どうだろうな。俺なら思いたくないが。しかし俺達がどう思おうと、アスラン本人が決める事だろう」
考えを述べつつ考えるのはキラ・ヤマトの事だ。
いつかの真夜中に目が覚めてしまうとラウが側に来て頭を撫でてくれていた。ギルと何の話をしたのか聞くと、教えてくれたのだ。アスランとキラ・ヤマトの二人は親しい友人なのだ、と。
そんな大切な友人であるアスランよりも戦場に出てきて泣いていたオーブの姫が彼には重要だったのだろうか。
キラ・ヤマトは最高のコーディネーターと言われている。
しかし、友人の命を、心を軽く扱うような人物が最高の人間なのか。少なくとも製作者にとってはそうだったのだろう。俺達や彼を産み出した相手への侮蔑をより深めていると、来客を知らせるベルが鳴り響いた。
食堂で今の彼でも食べられそうな物を見繕ってくると言っていたルナマリアだろう。確認もせず開けると人目を引く色の長い髪が目の前に現れる。
「レイ! アスランは?! 今食堂でルナマリアさんから熱出たって聞いたけど、大怪我したの? 無事なの? ねぇ!」
泣きそうな顔のミーアが来ていた。