ガンダムSEED ELPIS   作:明日希

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旧友との再会

 

 腕時計を確認すれば正午になっていた。少し早いが準備を済ませてある。外に出て迎えの到着を待とうかと考えているとインターフォンが鳴った。随分と早い。昨日の電話の後に必要であろう物を入れたカバンを持ってドアを開ける。

 

「アス!! 久しぶりだなぁ!!」

 

 懐かしい声ととともに、頭がぐしゃぐしゃにされた。

 

「ラーナ……ラーナスか?! お前、なんでここにいるんだ!」

 

 思わず昔の愛称を口にしてしまった。頭上の手を退けて顔を上げる。2年前と変わらない、生まれた時から知っている黒髪の悪友が幼い頃のように、嬉しそうに笑っていた。

 

「ふふん、聞いて驚け。本日、アスランのお迎えを任されましたサジタリウス構成員のラーナス・ウィル・フィリアスです。サジタリウスの仕事とお前のお付きは掛け持ち中だから、変わらずよろしく。話したい事もあるから、一旦入れてくれる?」

 

 

「サジタリウスできてすぐ、終戦1年後くらいだな。お前みたいにスカウト受けて、兼業OK、お前が戻って来たらお前優先って条件で受けたんだよ。情報収集とか外部との交渉の手伝いとかしてた。

 で、姉ちゃんから聞いたけど、議長からもスカウトされてんだって? モテモテじゃん、どっちにすんの?」

 

 二人が従姉弟(いとこ)と言うのもあるが、情報伝達が速い。淹れられたお茶で喉を潤してから口を開く。

 

「今回のサジタリウスはスカウト理由が分からないから、純粋に気になってる。その様子だと業務内容は文官業務が多いのか? 

 ザフトへの復隊に関しては……議長は父上を理解して下さっているようだし、無下にするのもな。どちらにするか、決めかねている」

 

 ここのところは迷ってばかりだ。正直な気持ちを話せば嫌味なく苦笑された。

 

「お前らしいねぇ。スカウト理由はボスに聞けよ。

 業務は今まで事務作業が多かったってだけだ。

 俺は白兵戦なら実戦経験あるし、月から帰ったお前とMSシュミレーターで訓練しただろ? 他にいる経験者、ヤキンでクライン派に着いたけど抜けてきた元ザフト兵とかと前から訓練してた。元々議会や議長がヤバい動きしてない内はザフトと協力する。十中八九戦闘には出るだろ」

 

 既に戦争に参加できるだけの戦力はあるらしい。調べた情報では、ユニウス条約に基づき新型MS開発の際には議会承認が必要だとあった。今回の件で不必要にはなるだろうが、現在での承認は二桁程だった。個々の戦力が高いのだろう。全てガンダムOSを積んでいる可能性が高い。

 議長の事に関しては、珍しく言い淀む素振りを見せた後、口を開いた。

 

「パトリック様のことは、開戦前から再評価の動きがプラントで始まってたんだよ。俺らが生まれる前に地球の植民地だったプラントの独立を勝ち取った、ザフトの創始者だしな。その面で尊敬してる人は多い。血のバレンタインで俺達プラント市民の多くがナチュラルを憎んだし、死んじまえって思ったのは事実だ。行動はともかく心情は理解できる。心の底からあの方を憎んでる人はプラントには居ねぇ。オーブで何変なこと吹き込まれたんだよ。

 まぁ、だから、議長だけが特別っつー訳でもない。その理由だけで受けるとお前、本当はそうじゃなかった時にどうすんだ? 議長が特大スキャンダル無い限り、嘘ついたから裏切ります、は通用しないぞ」

 

 オーブでは、正体に気づいた高官達にパトリック・ザラの息子だからと警戒されていた。悪し様に評されることがナチュラル、コーディネーター問わずにあり、父はそれだけの事をしたという認識はあった。

 プラントの意見は、違うらしい。少し視野が狭まっていたのかもしれない。 思考をまとめつつ、気になる発言に対して口を開く。

 

「ザフトに戻るのは辞めておいた方がいいって言うのか」

 

 一言も言ってないだろ、とデコピンされた。この後面会に行くのに顔に傷がつく真似は止めろ。思わず睨めば謝られてから真剣な表情に変わる。

 

「今の議長は、人道主義の結構な人格者だし、今のところは要請なしに進んで協力してる。兼業はできるって俺さっき言っただろ? ザフト兵しながらウチにも所属って真似も出来る訳。橋渡し役っつーか連絡役みたいな感じだな。議長に報告する義務はあるけど、実例も何人かは居る。プラントのために何かしたいんなら、一番いいんじゃねぇの?」

 

 オーブでは警戒され、仕事は殆ど与えられなかった。カガリの悩みを聞くことはあったが、解決策を言うことは出来ない。カガリは熱意はあるものの、政治派閥や長期的な計略についての知識がまだまだ浅い。俺は幼年学校に上がる前から統治者としての教育を受けていたので知識はあるが、実務経験は無い。正しいとは必ずしも言えない俺の提案をそのまま受け入れてしまうと、とんでもない間違いに繋がる可能性があった。また、彼女が俺の傀儡になっているとみなされ、より他の氏族に軽んじられる危険性が高かった。

 

 プラントのために、平和な世界にするために、何かしたいという思いはある。確かに二つの組織を繋ぐのも重要な役割だろう。ただ、プラントのための組織とはいえ両方に属するというのは、なんだか卑怯な気がして返事が出来なかった。

 黙っていると肩を叩かれ、楽しそうに笑いながら告げられる。

 

「今すぐ返事しなくて良いんだよ。まだお前、ボスとの話もしてないし。移動しなくちゃなんないから、そろそろ外行こうぜ」

 

 返事を返しつつ、考えながら、外にあった車に乗り込む。

 選択肢を示されただけだ。それだけなのに、狭くなっていた視界が広がったように思えた。





この頃のアスラン、オーブに馴染めてないところで父親が遠因のユニウス落下が起きて、メンタルが弱ってる解釈です。
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