ガンダムSEED ELPIS   作:明日希

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守りたいもの

 

「君はどう思うんだ? ラクスの名前と歌姫の地位。どちらが先で、重要だと?」

 

 直ぐには答えられず、質問に質問で返してしまう。

 平和の歌姫という称号と、ラクス・クラインの名前。どちらが重要視されているかという話を軽く考える事は絶対に出来ない。

 返事を待っていると、不安気に揺れる声が耳を打った。

 

「ええっと……やっぱり、ラクス様が先なのかな……

 ラクス様が優しい歌を歌ってくれたから、誰かが平和の歌姫なんて呼び始めたんじゃないの? 

 でも、大事さは違うみたい。【平和の歌姫】はラクス様じゃなくてもみんな良いみたいなの。

 だって、私とラクス様じゃ、曲のテンポもパフォーマンスも全然違うでしょ? それなのに、プラントの人達ったら私が本物のラクス様じゃないなんて思いつきもしない感じ。

 ディオキアでね、ザフトの人に言われたのよ。私が本物だって、ラクス様の方が偽者の歌姫だって。本当は逆なのに。まるで癒してくれたら誰だっていいみたい。

 それに、今のラクス様がしてる事はまるで本当に……ううん、やっぱりなんでもない! 

 さ、私はちゃんと答えたわ。今度はアスランの番よ。アナタはどう思うの?」

 

 しっかりした考えが述べられた後、こちらの解答を促された。少し待ってもらうよう改めて頼んでから、先程示されたプラントの人々の見解に暫し言葉を失ってしまう。

 

 ラクス・クラインは平和の歌姫である。しかし、平和の歌姫は完全にラクスのように振舞わなくてもプラントの癒しであれば良い。

 

 実際に彼女の言うとおり、明るく地球にまで歌を届けてくれる【ラクス・クライン】に人々は充分勇気付けられ、癒やされている。

 

 

 一人の人間に背負わせるには余りにも酷だ。しかし、その責務をこれまでラクスが果たしてきたからこそ、大きな力を得ている。高性能のモビルスーツや戦艦を修復させる程の一個人が持てるとは思えない力だ。

 大戦後、一度もプラントには帰っていないのに。

 

 しかし、今の話でミーアと出会ってから心に刺さっていた棘が一つ抜けた気がする。

 

 ラクス・クラインと平和の歌姫は完全に同じではない。ラクスから平和の歌姫への矢印は繋がるが、その逆は完全には成り立たない。

 

 これまでのラクスの行動を振り返る。

 先の大戦では、フリーダムという自らは使わない武器を手に取って他人に渡し、戦艦であるエターナルに乗って戦場に立った。

 

 戦後、彼女はキラと共にオーブに居た。あんなに傷ついていたキラを支えてくれた事には感謝している。

 しかし、核が撃たれた時、プラントの民に寄り添い、その怒りを鎮めたのはラクスの名前を使ったとはいえ、彼女ではないミーアだ。

 

 直近では言葉による説得を行わず、力によってシャトルを強奪した。

 

 そんな今のラクスは果たして平和の歌姫と呼ぶに相応しいだろうか。

 

 ラクスだって事情があるのは分かる。刺客を差し向けたかもしれない相手をそう簡単に信じられない気持ちは理解できなくはない。だが、いつまでも疑ったままだと見るべきものも見えなくなってしまうのではないか。

 

 今、プラントにいない貴女の代わりにミーアが必死にその責務を果たしている。その事について思う事はないのだろうか。薄情な人では無かったはずだ。

 

 考え込んでしまっていると、俺の名前を呼ぶミーアの声が聞こえた。上手くまとめられないまま、思ったことを口に出す。

 

「悪い。そう、だな……確かに君の言うとおり、ラクスがそう行動したから平和の歌姫の名が生まれた。ただ、重要なのは名前なのか? ミーアがプラントの人々のために懸命に行動しているから、認められているんじゃないのか? 名前や肩書きなんかよりどう行動するかがの方が重要だと俺は思うんだが……どうだろうか?」

 

 実際、父上のことを持て囃していた人々はヤキンの後、手の平を返したように批判してきた。名前よりも行動が重要視されている何よりの証拠だ。

 少しだけ苦々しくそんな事を考えていれば、柔らかくて優しい声が届けられた。

 

「そうね。ねぇ、アスラン。もしも、もしもの例え話よ? 私がラクス様じゃなくなって平和の歌姫でもなくなったら、どうする?」

 

「どうって……なにも変わらないと思うが。毎日連絡して、こうして偶には電話するよ。あぁ、でも仕事が無くなるならそばに居てくれる時間が増えるから直接顔を見ながら話せるな。

 というか、いいか? 君がラクスじゃないから、ミーアだから俺は好きなんだ。性格まで彼女に似てたら、こんなに好きになっていない。毎日メールなんて返さないし、回数増やすように催促なんか絶対してないよ」

 

 ラクスの事が嫌いなのかと問われたら違う。ただ、そうしなければいけないからといって進んでできる訳ではなかった。

 おかしな話だが、婚約を解消してから漸くラクスといる時に肩の力が抜けたものだ。

 

 今となっては夢のように思えるオーブでの穏やかな一時を思い返していると、噛み締めるようなミーアの声が聞こえた。

 

「そっか、そっかぁ……ね、アスラン。ラクス様の婚約者だったのはただのきっかけで、強いからとかじゃなくてアスランがアスランだからこんなに好きになったのよ。このままずっとお話ししてたいけど、そろそろ着いちゃうみたい。それじゃまたね、アスラン! 大好きよ、愛してるわ」

 

 もう時間らしい。名残惜しい気持ちで指をボタンにのせる。やっと返せた同じ言葉にミーアが幸せそうに笑った声が聞こえてから、電話が切れた。

 

 

 

 携帯を机に置いたタイミングを見計らったように部屋のブザーが鳴る。

 モニターを見た瞬間、驚きで思考が停止した。我に返って急いでドアを開ける。慌てて敬礼をすれば小さく苦笑された。

 

「楽にしていていいわ。突然ごめんなさいね。大切な話があるの。お邪魔してもいいかしら?」

 

 グラディス艦長と、無言のままの師匠……いや、アルフリード国防委員長が目の前にいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「作戦については了解いたしました。ですが、配置については異論があります」

 

「待って。本当にいいの? だってあの船には貴方の……」

 

 反対される事を想定していたため、驚いて確認してしまう。静かな頷きが一つ返され、遠い何処かを見ているのか目線が合わないまま言葉が紡がれた。

 

「ダーダルネスとクレタに介入していた頃の彼等はアスハ代表の言葉もあり、やはりオーブを戦わせたくない故の行動だと感じました。しかし、ベルリンでの介入はオーブのためではなかった。先日お話ししたディオキアでのシャトル強奪に至っては世界のためとも思えない。確かに仲間でした。てすが、彼等が何を考えてどう動くつもりなのか、今はもう分かりません。あの日言葉を交わした時には確かに同じ平和への想いがあったはずなのに。

 虎の子だったはずの大型モビルスーツを撃破された地球軍が漁夫の利を狙って出てくる可能性は低く、こちらに優先すべき目標も無い。今のうちに不安要素は取り除くべきだと理解しています。作戦に反対する理由はありません」

 

 泣き出しそうな顔でかつて命を預けた相手が分からないと告げられる。言いたくなかっただろう事を言わせてしまった自分に歯噛みしていると、突然強い視線が横に投げかけられた。

 

「そのうえで、アルフリード国防委員長。俺に出撃を禁ずるとは、いったいどういう了見ですか? まさかとは思いますが同情だとでも言うおつもりですか? 加えて、インパルスがフリーダムへの攻撃の主軸など……」

 

 声に温度があったなら今頃凍傷になっているに違いない。そう思わせる程に冷たい怒りを宿した声が部屋に響く。

 説明会は未だ先だと言うのに来た国防委員長は、既にモビルスーツの配置を決定していた。こちらが頼むより先にアスランが前線から外されていたのは有り難いが、何故だろうか。

 思わず怖々と目線をやってしまえば、眼前の刺し殺さんばかりの鋭い視線を全く意に介さないような大きな舌打ちが為された。

 

「俺が他人への情で作戦成功率を下げる阿呆だと? 勘違いするな。馬鹿もいい加減にしておけ、この馬鹿弟子が。例えお前がアークエンジェルやフリーダムに身内の四肢を捥がれていようが、親友や恋人を撃たれていようが、同じ判断を下している。

 良いか? 出なくても良いとは一言も言っていない。出るなと言ったんだ。お前がどれだけ熱望しようが今回の作戦での出撃は認められない」

 

 淡々と告げられたアスランが、耐え切れなくなったように激昂した。

 

「俺に、フリーダムとインパルスが、よりにもよってキラとシンが戦うのをただ黙って眺めていろと?! 最悪な光景を前に何もするなと、そう仰るのですか!?」

 

「そうだ。フリーダムを討つならインパルスが最適だ。そのパイロットと合わせてな。操縦を変わってもらおうと思うなよ。他の機体にも全て役目を与えている。一機たりとも拝借したら作戦に支障が出るからな。

 それにしても、シン・アスカは大したものだ。コレは伸びると思ったが、予想以上に成長している。能力だけでなく精神も。アイツがインパルスの扱いにザフトで一番長けているとはお前の評価だろう? ラドルを労った際に上機嫌で話していたぞ」

 

 叫ばれた言葉を黙って聞いていた赤毛の彼が躊躇いなく頷いた。諦め切れないのか、アスランがもう一度叫ぶ。

 

「必ずしもインパルスである意味は無いんですよね? なら、俺が撃ちます! 大事な二人が戦うなんて、そんな最低な悪夢が現実になるよりも遙かにまだマシだ!」

 

 悲痛に歪んだ頬が思いっきり殴られた。よろめいた彼に慌てて駆け寄ろうとすると、片手で制されてしまう。燃えるような長い髪を揺らした男が吠えた。

 

「馬鹿が! 何が過ちか見定める眼まで機体と共に海の藻屑と死に絶えたのか?! 

 我々の本来の敵は連合、ひいてはそれを指揮するブルーコスモス、さらには奴等を牛耳っているというロゴスだ。アークエンジェルもフリーダムも敵への集中を妨げる障害物に過ぎん! お前は従来の装備で勝てる相手に内密にしていた最新兵器を出すか? 見ているだけで損害もない奴等に態々対策してくださいと情報をくれてやる馬鹿がどこにいる?!」

 

「ですが、アイツは分かっていないだけです! ロゴスの事も、自分達の行いが世界にどう見られるかも!」

 

「なお悪いわ! 分からぬから事態を静観するのではなく、思うがまま好き勝手に振る舞うなど、そんな無茶苦茶な道理が通るのは幼子ぐらいだぞ! 無理立てをして庇うぐらいなら奴等のところに行くがいい。

 だが、それならばお前は何のためにザフトに戻ってきた?! 奴等を守りたいならオーブに留まっていれば良かっただろう? 

 アスラン・ザラ。お前の守りたいものはなんだ? いったい何の、誰のために此処にいる?」

 

 答えようとしたアスランが愕然とした顔をした。眉を釣り上げていた国防委員長が静かに問いかける。

 

「どうした? キラ・ヤマトの顔が真っ先に浮かばなかったのか? それなら、お前の唯一無二はソイツではなくなったという事だ。

 アイツはお前の手を離した。お前も未練からは手を離せ。

 もう一度言うぞ。出るな。プラント全体の不利益になる。

 全く、良いか? なにも俺はフリーダムのパイロットを殺し、アークエンジェルのクルーをも皆殺しにしろと命じたわけではない。行動不能にしろとそう言った。もう一度作戦指令を読み返してみろ。戦艦とモビルスーツさえ動かなくなれば、人は生きていても構わない」

 

 意外な真意に目を見開く。確かに撃墜しろとは書かれていないが、単なる表現の違いだと考えていた。

 

 しかし、モビルスーツを行動不能にしつつパイロットを生存させるのはただ撃墜するのとは難度が段違いだ。運や周りの友軍も絡んでくる。以前セイバーの四肢を落とされた事はあるが、アレだってアスランが無事かどうかは賭けだっただろう。考えていれば、大きなため息と共に踵が返される。

 

「頭を冷やしてしばらく考えろ。答えが決まったなら訓練場に来ると良い。久しぶりに稽古でもつけてやる」

 

 ゆるゆると顔が上げられる。迷子の子供のように所在なさげな顔をしたアスランに何と声をかければ良いのか戸惑っている内に何も言えないままドアが閉まる。歩きながら呟かれた。

 

「アークエンジェルの彼等と故郷、どちらを取るかは既にアイツ自身が選んでいる。オーブを優先するなら、あの娘のように帰ってくるわけがないのだから。そこさえ思い出させれば決着はついたも同然だ。八つ当たりはこちらで相手をする。苦労をかけてすまないな。アイツは気にせず、作戦準備に注力してくれ」

 

 既に答えは出ていると言われて面食らう。確かに、世界が不安定になりかけていた頃、彼はオーブではなくプラントを案じて宇宙に来てくれた。あの時点で選ばれていたのかもしれない。しかし、だからといってこのまま放っておくのはあまりにも無責任だ。なるべく彼を独りぼっちにさせないようクルー達に頼もうと企みながら、とうとう矛を交える事になった船へ思いを馳せる。

 

 あの船には恐らくオーブでミネルバが世話になった人物も乗っているはずだ。アスランの事を差し引いた上でも撃つ事に躊躇いが無いと言い切ってしまえば嘘になる。

 あの船の艦長もフリーダムのパイロットも今頃何を考えているのか、少しだけ気になった。

 

 

 

 

 

 

「そうね。あんまり痩せてたらムウが帰ってきた時、心配されちゃうわ。私もご飯一緒に食べようかしら。誘ってくれてありがとう、カガリさん」

 

 通路の向こう側でマリューさんが嬉しそうにカガリと話している。ムウさんが生きている事が分かった途端に見違えるほど生き生きとしはじめた。それ自体は良い事だ。会釈してから部屋に戻る。

 

 

 暗くなった一人の部屋で、絶対に人前じゃ言えない本音が思わず口から溢れた。

 

「良いなぁ……」

 

 信じられないけど、ムウさんは生きていた。あの時僕を守ってくれたストライクがムウさんも守ってくれたんだろう。

 いいなぁ、ともう一度つぶやく。フレイはどんなに願っても帰ってきてくれやしないのに。

 

 フレイが乗っていたのは何の特別な装備もないありふれた脱出艇だった。一瞬で跡形もなく炎に包まれていった彼女の顔が今も焼き付いている。

 生きていてくれたら、とは思うけど。もしあれで本当に生きてたら、他の人もみんな生きている。あのアラスカでのザフトの人も、トールも、あの小さな優しい女の子も、世界中の誰も死んでなんかいないはずだ。

 

 会いたいけど、今行っても許してもらえない。そういえばカガリをオーブに帰すことが決まったみたいだけど、その後はどうなるんだろう。

 ボンヤリと思考がまとまらないまま考える。カガリが呼びに来てたのなんか、これっぽっちも気づかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「やはり反応速度が桁違いだな。出力が高いフリーダムをこうも自在に操るとは……シン、あまりやり過ぎても身体に毒だ。そろそろ一度休憩を取った方がいい」

 

「ありがと、レイ。でも、あともう少し、もう一回だけ。あとちょっとで何か掴めそうなんだ。レイこそ休んで。もうこんな時間だぞ? 俺は大丈夫だけど、レイまで寝坊したらアスランに叱られる」

 

 声をかけてきてくれたレイに返事して休むように促す。普段ならとっくに消灯時間で横になってなきゃいけない時間だった。艦長から特別に許可をもらったとはいえ、俺に付き合ってくれてるレイがしんどくないかと心配になっていると、小さく笑ってエナドリの缶が手渡された。

 

「お前のあと少しは今ので両手指の数よりも多くなった。せめてコレを飲んでおけ。シミュレーションとはいえ、フリーダム相手では一瞬の油断も出来ない。本番前にはよく寝ることだ。俺の事なら気にするな、俺は気にしていない」

 

「レイが気にしなくても俺が心配なんだよ。これ飲んで次の一回で本当に終わりにするから」

 

 気遣いに嬉しくなりながら、レイのためにもこれで終わりにしようと気合いが入る。シミュレーターの起動スイッチに手をかけた瞬間、訓練室のドアが開く音が静かな室内に響き渡った。皆寝ているはずなのに誰だろうと振り返ってギョッとする。糸の切れた人形みたいに光のない眼をしたアスランさんが居た。

 

 ダーダルネスでアークエンジェルが初めて現れた時を思い出す。あの時も今と同じ感情が抜け落ちた顔で甲板に佇んでいた。

 何だかゾッとしてしまって、慌てて側に駆け寄る。名前を呼べば、のろのろと此方を向いてゆっくりと瞬きが繰り返される。不安で焦ったくなってもう一度強く声をかけるとやっと眼の焦点があった。

 

「……シン? レイまで……もう消灯時間は過ぎているぞ。君達も寝れない……という訳では無さそうだな。そんなモノを飲んで……こんな夜遅くまでいったい何をしているんだ?」

 

 ぼんやりとしていた声が段々とハッキリして、いつもの調子に戻ってくる。その事がただただ嬉しくって頷いていれば、後ろのレイにため息をつかれた。

 

 しっかりした足取りのアスランがモニターを覗こうとしているのに気づいて咄嗟に手で遮る。先読みしていたレイの手によって電源が落とされていたから真っ暗だった。俺の慌てようで察したのか、アスランが静かに息を吐く。大きな大きな深呼吸の後に、手の平から血が出るぐらい強く握られた。

 こうなるのを避けたくて夜中に特訓してたのに。自分のミスに後悔していると、絞り出すような声で言葉が押し出された。

 

「アイツはアカデミーで正式に習った上で戦場に出た訳じゃない。だから、俺達の知っている定石が通用しない。盾は滅多に使わないし、捨てるのに躊躇いが無い。追い詰められたらどう動くか読めない。コクピットを狙わないのは確実に仕留めなくても対処出来るからだ。油断するな、気をつけておけよ。負けた奴の言う事なんか、当てにならないかもしれないがな」

 

 不快だろうから怒鳴られると思ったのに。俺達への助言が訓練規定をこなしている時のように伝えられる。ヘタックソな作り笑顔をした人へ震える声で思わず問いかけてしまった。

 

「どうしてですか。だって、アンタ……本当はあの人のこと、まだ……」

 

 大切なんじゃないんですか? と最後までは怖くて言えなかった。静かな部屋が痛いぐらいの沈黙で満たされていく。重さを増すばかりの空気を振り払うようにアスランが小さく呟いた。

 

「キラだって、アイツの思う平和のために戦っているはずだ。守りたいものの中に俺達の大切なものが知らないから入れられていないだけで……アイツを殺してほしい訳じゃない。だからって、お前に撃たれてほしい訳でも無いよ……本当は争いなんて一つもないのが一番いいのに……すまない、邪魔をしたな」

 

 哀しそうな顔のまま後ろを向かれる。あのまま一人になんて出来なくて、走って追いかけた。やっぱり、あんな事をされてもまだ好きなんだ。

 フリーダムの設計図をもらってから考えていた事がある。難易度はうんと上がるけど、アスランをこれ以上苦しめないためにはアレが一番良い。そうしなきゃいけないからじゃなくて、そうしたいからそうするだけだ。確実にやれるかは怪しいけれど。どうにか安心してほしくて伝えてからシミュレーターの前に戻る。

 

 大丈夫だったのか? と聞かれて頷けば、心配そうに寄っていた眉間の皺がなくなった。再起動を待ちながら決意を言葉にする。

 

「フリーダムはあの人じゃなくて、俺がやる。絶対に」

 

 俺がやられたら、きっとアスランさんが出撃する。ラーナスさんとの話でも思ったけど、親友と殺し合うなんて俺だったら一回もしたくない。二回目があるなんて下手な悪夢よりも最悪だ。絶対にさせない。

 

 聞いてくれていたレイがしっかりと頷いてくれる。ランプの灯ったシミュレーターに乗り込んで、日が昇るまで特訓を続けた。

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