漫画的世界の"悪役"になろうと思う。   作:十期

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望まれた"未来"

 

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「くっどうクーン! 今度こそギャフンって言わせてやるぜ! 新作だ受け取れ!」

「早ぇな、おい。オメェいつ寝てんだよ?」

「人間、睡眠なんてたぎってればどうにかなる!」

 

 そんな事、前世のオタ活で何度もあった。間違いない。

 

 工藤新一と親しくなることに努め早二ヶ月、週一ペースに私は描いた物語を彼に読み解いてもらっている。最初こそ面倒くさそうにしていたからだが、四作目あたりから嬉しそうに受け取ってくれているところから察するに私との謎解きゲームにハマってくれてるようだ。

 私は私で主人公に関わる回数が増えたからかやけに頭が回るようにもなった。じゃないとこんなにバンバン物語を描けるはずがない。

 きっとコレが"悪役"としての補正なのだろう。きっと関わるたびにこの世界の人間に相応しい知識や技能を身につけていくに違いない。全くもって主人公様様である。

 

「──最近、ジゼルと新一仲良いね」

「うへ? 仲良いってか私が一方的に挑んでる感じだけどね?」

「そーそー。"ジゼル"が俺に挑んでくるだけだっての!」

 

 アイヤー。コレは違うんだよ蘭チャン。

 このところこのミニマム主人公さんは私の事を呼び捨てにするようになってきた。今更ながら彼らには名前呼びするのが気恥ずかしい時期もあったわけで、その過去から新一氏が私を呼び捨てにするのがあまりお気に召していないらしい。

 そりゃそうだよね、今は蘭新一呼びに戻ったけど、園子も呼び捨てだけれど。私と彼は仲良くなって二ヶ月で、一方的な呼び捨て。そりゃぁ幼心から嫉妬心も芽生えるわけで。

 

 そのおかげで私は何この子、可愛い。状態になってしまうではないか。

 両片思い、美味しいジャンルですハスハスと思わず思わずにいられない。

 それにもし、このどちらか一方の片割れが無様な肉塊になった時どんな顔をするのかなと想像するのも一興だ。可愛い子はリョナられろ。惨殺された遺体見つけるのが幼馴染とか何このエモい状況、けしからんやってみたい。

 

 ブスってする蘭に私は"悪友ポジ"だから安心しろと耳打ちし、ついでに蘭の邪魔はしないと宣言しておくことも忘れない。その言葉に真っ赤になった蘭に少しこづかれたが、子供同士のじゃれあいを問題になるわけがない。それにまだ空手習い始めてないしね、痛くもないのだよ?

 

「そういやジゼル、お前今日暇か? ウチこねぇ?」

「──ジーザス」

「ッ私も行きたい!」

「あ? 蘭はいつも来てんじゃねぇか」

「ほんっと君は、空気読まないね工藤君」

 

 せっかく蘭の機嫌が治ったのに何言ってんだ。まぁ、小学生に男子に女の子の気持ちを察しろいうのも無理難題かもしれないが。

 

「で、くるよな?」

「──蘭チャンと園子チャンと一緒ならいいよ? 流石に一人で有名人の家に行く度胸はない」

「んじゃ決まりな! 忘れずにこいよ!」

 

 そう言って走り去ってしまう新一の背中を見ながら私はため息をついた。後ろでは園子がニヤついてるし、蘭は少し挙動不審。

 安心しろ、君の未来の旦那を苦しめる予定はあっても、色恋沙汰にはならないから。

 

 

 そしてやってきてしまった放課後。

 一旦家に帰り母にお友達の家に行くからと折り菓子を用意してもらい、それを持って待ち合わせ場所である毛利事務所前へ。そこから三人で工藤家に向かう。

 初めて目にした工藤邸はやはり大きく、テレビなどで知ってはいたが場違い感がパない。住宅地にどどーんもでてくる洋館なんて、ある意味事件現場としか思えなかった。

 

 門についているインターホンを鳴らせば可愛らしい声が蘭の前を呼び、そのままなされるがまま館の中へと足を踏み入れる。

 一応玄関で靴を脱ぐシステムに日本を感じるが、何故だが違和感があるものだ。

 

「来んのが遅ぇよ! さっさと上がれ」

「いやいや、流石にハジメテお宅に寄り道感覚で来れんわ。はい、コレお菓子」

「んなのいいのに」

「一応、通過儀礼みたいなものだよ、うん」

 

 急いで母さんが買いに行ってたからそんなに高いお菓子でもないが、子供がご迷惑をお掛けしますって大人のアレだ。私たちがどうこう言うやつでもない。

 勝手知る蘭と園子はまだしも、私はコレが初訪問なわけで、念には念を入れておかなければならないのだ。

 工藤夫妻にあの子常識ってものないのかしら?なんて思われてしまえば、今後の計画が全ておじゃんになってしまうかもしれない。工藤新一が主人公である故に、彼の両親に嫌われたら世界の望む悪役になる前に当て馬雑魚キャラにならないとも限らないのだ。

 ここは礼儀正しい良い子を装わなければ。その後のギャップも花丸満点になるはず。

 

「父さん、この前言ってやつきたぞー」

「そうか、さぁさぁ座って座って! おや、蘭君達もきたのかい、いらっしゃい」

 

 新一に声をかけられリビングから現れたのは彼の父である工藤優作で、何故だが私は手招きされて呼ばれている。一体どう言うことだと頭を悩ませていると、その疑問を蘭が口にしてくれた。

 そしてその結果分かったのが、今日私が招かれたのはどうやら工藤優作氏からのお呼び出しだったようである。何故?

 

「いくら短編とはいえ、あんなに小説を書ける子に会ってみたくてね。今日は来てくれてありがとう」

「えと、お招きありがとうございます?」

「それで二、三聞きたいことがあるんだが──」

「ほどほどにしとけよー」

「って、ちょっま! 工藤くん⁉︎ 私単品にされる⁉︎」

「まぁ、呼んだの親父だしな」

「ちょいまて、待ってください! ひとりにしないでェェエエ⁉︎」

 

 当たり前のように蘭と園子に菓子でも食おうぜと笑っていた新一を必死に引き留め、大の大人と子供の二人にするなと懇願する。私のあまりにも悲惨な表情を見た蘭は新一に一緒にいてあげなよと頼んでくれて、そのまま同席することになった。そしてその間彼女らは工藤有希子氏と女子トークに花を咲かせるらしい。

 私も出来るなら興味ないけどそっちに行きたかった!

 

 一体全体私が何をした。まだ何も重犯罪なんて犯してないぞと思考しつつ優作氏と対面に座ると、当たり前のように新一は父親の隣に座る。そこは私を庇って隣に座れよと思ったが、まぁそんな深い関係ではないから致し方がない。

 

「あのぅ、それで私何かやらかしましたか? あ、工藤君は勉強が忙しいから余計な時間取らせるなって話ですか? それならもうしないんで許してくださいごめんなさい。今後一切ご子息には謎解きはさせませんのでご安心を──」

「ンなことあるか! 俺はジゼルの謎解きにハマってるっつーの⁉︎ 勝手に決めつけんな!」

「そうそう、別に新一でよければいくらでも知恵試しに使ってもらっても構わないよ」

「……では、何ようで?」

「私は君がどのようにしてこれらを生み出しているのか知りたいだけだ。これでも私は小説家でね、息子と同い年のお嬢さんが書いてるとは思えなかったのだよ」

「えーと、つまり──?」

「なかなか良い出来だ。トリックにはまだ粗があるが、短いストーリーの中にきちんと人間味が出ている。ジゼル君といったね、君は将来小説家希望と言ったところかな?」

「いえ全然。趣味です」

「──、趣味?」

「ハイ、趣味です。なりたいものは、なるべきものは、ならなければならいものはもう遠い昔に決まっているので」

 

 小説等の活動は本当に趣味の一環だ。勿論そこにはこの世界の悪役に必要なトリックを閃く脳を生み出す訓練の意味もあるが、おおよその部分を占めているのは趣味。どうあがいても欲望の吐き出し場所なのである。

 

「趣味で、小説を?」

「ハイそうです。あの、こんな時じゃないと聞けないので質問させていただきたいのですが、私のような子供が殺人ミステリーを書いたとして情操教育が云々とか思いますか? 本当はそっちも書きたくて、でもそれを人に読ませるのもどうかと」

 

 匿名ならまだしも、今のところ読者は新一ただ一人だけど。同世代が書く殺人ミステリーなんて親としては読ませて良いものなのだろうか。

 私が何も知らない大人だったら、将来を見据えた話でなければ頭大丈夫かと疑いたい。まぁ、オタクは別だが。アレは治らない病のようなものだからね。

 

「──ジゼル、そっち系も書けんのか? じゃあ書いたら読ませろよ! ぜってぇに解いてやるから!」

「ん、あ、うん」

「新一のことは気にしなくていい、書きたいことを書くといい。それに、時間があれば私もトリックについては助言しよう。ジゼル君がよければうちの書庫から資料を貸してあげよう」

「そんな、いいんですか?」

「未来のある子に投資しているだけだからね。趣味だとしても、伸ばせるところは伸ばした方がいいだろう?」

「ありがとうございます!」

 

 いや有難い。実にありがたい申し出だ。

 お小遣いだけじゃトリックに使いたいものの資料集なんてどうあがいても集めきれなかったし、流石に兄さんなら兎も角あの両親に小二には難しい参考書買ってくださいなんて言いにくかったもので。

 やはり主人公たるものの父親。

 彼があんなに推理能力に長けるのはこうやって好奇心を殺さずに成長できたからに違いない。親の育てから一つで人生って変わるから、この父あっての新一だったのだろう。

 

「──いつかきっと、工藤君も工藤君のお父さんも驚くような偉業を成し遂げて見せますね! 首を長くして待っててくださいね?」

「勿論、待たせていただくよ」

 

 

 

 その言葉、忘れるんじゃねぇぞ?

 

 

 

 




オタ活とは違い工藤氏がでばる。きっとからは才能は伸ばす教育するよなと思って。その結果地獄を見ればいい。

息抜き。たのしい。
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