漫画的世界の"悪役"になろうと思う。   作:十期

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"黒"と私。

 

 

私はこの世界の悪役になろうと企む小学生六年生、高遠ジゼル。

我が兄であり"地獄の傀儡師"である高遠遙一と犯罪計画を練って過ごし、主人公達の和気藹々の仲間に取り込まれて日々楽しんでいたのだが、気がついた頃には兄が高校生魔術師として名前を馳せていた!

このままでは私は置いてけぼりになるのではと焦った私は全力で駄々っ子をすることにしたのである。

中身が大人だから恥ずかしい?

そんなのこの世界では問題ない。何せ数年後には好きな女と風呂に入るまでしてしまう名探偵が爆誕してしまうのだから。

 

ならばとっととやらなきゃ損損!

原作だろうが何だろうが私と兄さんがいる時点で壊れた"世界"、犯罪脳で生きていこう!

真実はいつも一つ、とは限らない!

 

と某名探偵が劇場版で毎度行う自己紹介もどきを私仕様に変えて脳内で再生しながら、私は兄の了承を取りパスポート片手に海外へ向かった。

学校?そんなもん休んだに決まっている。

ついでに言えば両親はどうしても仕事が休めなかったので兄妹二人での海外旅行となった。まぁ、私は駄々をこねる前にパスポート申請してたから間に合ったが、両親は間に合わなかっただけなんだよね。

ご利用は計画的に!

 

「全く、わざわざついてこなくてよかったんですよ?」

「やだもん! ってかもとはといえば私のコネにコネコネしたからだもん! いく権利あるもん!」

「……それはそうかもしれませんね」

 

高遠遙一が高校生魔術師と呼ばれ始めたのは、元はと言えば私の存在があったからと言える。

 

全ての始まりは三年前、私が小学生三年生の時だ。

私はせっかく仲良くなった園子の誕生日に何をあげるかひたすら考えていた。園子は何故か一般的な学校に通ってはいるがご令嬢。そこそこ良いモノを持っているに違いない。

蘭は幼稚園から園子と仲が良いから個人的な趣向を知っていそうだが、私はそうもいかない。安くて趣向に合うものなんて用意できるわけがなかったのである。

 

ならばと私はお年玉とお小遣いをかき集め、ファンシーな封筒に入れ込んで兄へとスライディング土下座を展開。そしてこの金額でできるマジックの提供を依頼したのだ。

兄さんは必死に頼み込む私から金銭を受け取ることなく了承してくれて、毛利事務所で行われた誕生日会では中学生とは思えないほど立派なマジックを披露してくれたのだ。

私からの誕生日サプライズであったマジックに大変喜んだ園子は自宅へ戻ると両親に兄さんの事をベタ褒めし、その結果一月後に行われた鈴木家の個人的なパーティーに呼ばれることとなったのである。

親族しかいないとはいえ財閥のパーティーに中学生が呼ばれれば大抵はヒビって上手くいかないものだが、そこは前世持ちの兄さんの事だ。何の問題もなく素晴らしいマジックを見せて終了。そして連鎖は続き、鈴木財閥親族系パーティーへ引っ張りだこ。

 

その結果、縁は続いていき三年経った今では海外セレブのパーティーにも呼ばれるほど人気なマジシャンとなったわけだ。そりゃあ英語だろうと何だろうとペラペラだし、資金が豊富になればできるマジックも増えていく。そんな優良株をセレブ達が噂にしないわけがない。

 

それ故に今回のように海外へ招待されることも今では珍しくはなくなっているのが現状なのだ。ただ年齢の問題でそう頻繁ではないが、高校を卒業したら家に来い的なお誘いも来てるそうな。まぁ、誰かの下につく気はないだろうけれど、個人的にマジシャン集団作りそうだけれども。

 

 

そんなこんながあり私は兄と共に初めての海外遠征と決め込んだわけなのだが、やはりというわけかみんな顔が薄い。

骨格云々の問題ではなく、モブキャラ的な薄さなのだ。アジア系とは違う"描き分け"はされているが、主要キャラの様なパックリクッキリな顔立ちではない。

ここには悪役も被害者もいないのだなと思いつつ兄さんのショーの手伝いをこなし、私はただただ海外旅行を楽しんで"いた"のである。

 

そう、"いた"のである。

大事なことだから二回言っておく。

 

「うっわ、マジか」

 

兄さんが高校生魔術師として海外へ行っても問題ないように、私だってそこそこ読み書きもできるくらいにはできる子なのだ。兄の教育のおかげである程度の国の言葉なら話せるし、意思疎通も問題ない。だからこそ両親も私の海外旅行に反対しなかったわけでもある。故にホテル内を一人でうろうろするし、時間があれば近場のお店にだって探検しに行く。

だって海外だよ?街並みだって違うもの、探検するでしょ。

 

そしてその結果発見してしまったものは?

A、血痕。

その先にいたのは?

A、黒づくめの男。

つまり今の状況は?

A、私が主人公!キラリーン!

 

漫画的に不可抗力の接触を果たしてしまったというわけだ。

 

自分が米花の人間であることを忘れていたわけではない。悪役の立場になっていることも理解している。

でもまさか主人公と敵対する銀髪ロン毛が転がってるなんて思わないじゃないですか。

なんでそれも怪我してるんですか、ラスボスポジだろ?

 

「──おにぃさーん、大丈夫?」

 

と声かけるや否や、私の頬を何かが掠れる。

つぅっと伝った赤い血と、僅かな痛みが現状を教えてくれた。

 

「いきなり撃つのは反則なのでは? ってか、まともに当てられないくらいなら撃つなっての。とりあえず救急セットいる?」

「──さっさと消えろ、クソガキが」

「へいへい」

 

消えたいのは山々ですが、多分これも神の思し召しだろう。悪役サイドとして関わっておくのがプラスになるに決まっている。

後数年もすればコイツらを追う主人公が生まれるわけで、その際幼馴染と繋がっていた⁉︎なんて最高にエモい。絶望する顔を拝みたくなるエモさだ。

私はリュックサックから救急セットを取り出し、威嚇してくる銀パロン毛に近づいていく。

どうして救急セットを持っているかって?

嫌だって米花じゃなくても事件は待ってくれないのよ、起こしに行くものなのよ。いざという時にあったほうがいい便利道具は装備しておかないと。いつ爆破が起きるかわからないこの世界じゃあ、持ち物一つで生死も完全犯罪になるかも別れてしまう。

 

「全く、犯罪者が怪我するとか笑えないよお兄さん。ちゃんと目撃者は始末した? 私は幼気な女の子なんで勘弁してねぇ、それにそのうちまた会うだろうし? ここに救急セット置いとくから使ってね、それなりの道具は入ってるから。あ、要らないならポイしておいても構わないよー。じゃあこれにてドロン!」

 

相変わらず威嚇するだけして第二発を撃ってこないドジンさんに救急セットを投げ渡し、私は颯爽とその場を去ることに決めた。

多分私が殺されなかったのはこの世界の神の意志でもあるだろう。流石にドジンでも変な小娘程度片手間に殺せるはず。それをしなかったのはきっと、私がこの世界の悪役にふさわしくなってきているからに違いない。

 

「兄さんにまた救急セット貰わなきゃなぁ。アレ、絶対違法薬物っぽいの入ってるもん」

 

麻酔とか一般人が持ってちゃダメだろうし、だだし主人公を除く。

 

 

 

 

なんて気楽に考えていた私は、私の背中をじっと見つめる瞳には全くもって気づいていなかったのである。

 

 




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