PREACHTTY   作:ONE DICE TWENTY

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ナチュラル女装男の娘オリ主神様転生inBLEACH


第1話 虚を蹴っちゃった日

 私は可愛い。

 神に愛された容姿を持ってこの世界に生まれ出でた。私こそがナンバワン。

 

 ──そう思っていた時が、私にもありました。

 

 それは高校に上がってすぐのことである。

 親の転勤の兼ね合いで中学までにいた土地からは一切離れ、見も知らぬ街空座町の空座第一高校にやってきた。中々に可愛い制服。グレーを基調としたそれは他に類を見ないデザインで、男子のはジャージと見紛うのが中々に残念ではあるものの、うんうん良い良いとか思っていた矢先。

 中学までと同じように女子の制服に袖を通し、登校……いや凱旋したその初日。

 

 私は、このクラスのレベルの高さに目を灼かれる事となる。

 後色々思い出すことになる。

 

 

 

 

 オハヨー、とか、また同じクラスだねー、とか、そういう「オトモダチヅキアイ」な言葉が飛び交う中で、冷や汗ダラッダラに頭を抱えた生徒が一人──。

 

 私です。イッツミー。

 

華蔵(かぐら)さん、大丈夫?」

「うぇっ!? ……ああ、い、井上さん……ウンダイジブダイジブ」

「そう? ……辛かったら保健室行こうね?」

「アアウン、ワカリマシタ」

 

 でかいな……という印象はおいといて、いやなーんでこんな地下遺跡、もとい近い席に座っとんのや、というツッコミは出席番号順で片付けられる。

 彼女の名。私を気遣ってくれた彼女の名は──そうだな、オムーネのでかい井上といえば誰、というクイズがあったとして、多分百人中百人が同じ答えを出すだろう。

 

「織姫、どうしたんだ……って大丈夫か、華蔵。顔色めっちゃ悪いぞ」

「元からこういう顔ダヨー」

「えぇ……?」

「言っても聞かなくて……」

 

 さらに増えたのは、ツンツン髪の少女。胸は小さいがゴンズイに耐えた有沢とクイズを出されたら誰もが答えられるだろう少女。

 

 伸ばす必要はない。

 ここ、BLEACH世界だ。空座町の時点で気付けよ。

 うわーん井上織姫と有沢竜貴だー! 好きー!!

 

 レベルたけー! セクシー! 胸ー!!

 じゃなくてだね。

 

「アイツ……そういうことかよ……!」

「ど、どうかした?」

「あ、ホントのホントに大丈夫だから」

 

 実は私、所謂転生者という奴である。名前は華蔵(かぐら)蓮世(れんや)

 名前からわかる通り、超絶プリチーにして美少女な私の性別はmale──つまるところ男の娘、という奴だ。いやァどちゃシコ男の娘。なんたって私がキャラメイクしたからね!

 そう、つまり、こっちも所謂ところの神様転生。まぁミスだのなんだのじゃないんだけど、真っ白い空間で新たな生を始める際に好きにキャラメイクさせてもらって、そりゃあもう超絶美少女にしましたとも男で。

 そんで能力的な奴も付けましたとも。

 

 だけどもだっけっど、中学までマージでなんもなかった。マージで。

 なんかすんごい事が起きるとか、こうすんごい事が起きるとか、あー、すんごい事が起きるとか。無かった。びっくりするくらい普通の中学生だった。まぁ美少女……美男の娘としてウハウハな生活を送ってはいたんですけどね?

 だから、まぁやらかしたなーとかは思ってたのよ。バリバリに戦闘系の能力足したから。こんな平和な世界への転生ならもっと生活に役立つ奴取っとくべきだったな、って。

 

 バリバリ戦闘系ですねェ!!

 

「しっかし……相変わらず可愛い顔してんなー、華蔵は」

「まぁね」

「認めるふてぶてしさまでがセットだけど。……コレで男ってんだから、世の中不平等というか不条理というか」

「女子の制服着てるとホントわかんないもんね……」

 

 あぁそう、さっきも述べたけど私はバリバリ男なので、ホントは男子の制服を着ないといけない。しかーし昨今のジェンダー問題から世間体などをガンガンに押し通す事で学校側に女子制服の着用を認めさせたのである! 可愛いは正義! 上目遣いは正義!

 主人公であるイチゴの地毛を認めなかったのは、イチゴが可愛い女の子じゃなかったからだと思われる。だって初期の井上織姫とかパーペキにオレンジ髪だし。途中から茶髪になってったけど。

 

 ちなみにルッキーニ……じゃない、ルッキーアはまだ来てない。確かルッキーアが来るのってそこそこ日数経ってから、且つイチゴの家にトラック(虚)が突っ込んでのうんぬんかんぬんがあってのようやく本編開始、みたいな感じだったはず。

 ルッキーアとの邂逅。ファンなら見たい。見たいよ。ちゃんとBLEACHファンだよ私は。けど、けどだね!!

 いくら戦闘系の能力を持っていると言っても大前提の大問題がある……。

 

 そう。

 

「……」

「ん? なんだよ、華蔵」

「視線に敏感なことで……」

「そりゃお前、そんだけじっと見つめられたら誰でも気付くだろ」

 

 私には──イチゴみたいな霊媒体質がない。

 見えないのだ。ユーレーが。少なくとも中学まで、そして空座町に来てから一度たりともユーレーやホローを見たことが無い。これは由々しき大問題である。

 死神側として最初からいるならともかく、人間側になったのならユーレーを見るスキルは必須だ。でないと戦えな……くもない能力は取っているけど、やっぱり見えた方が良い。

 

 でも霊感ってどうやってあげたらいーんだろ。

 

「……手っ取り早いのは、一篇死んでみる、か」

「人の席の前で物騒な事呟いてんじゃねーよ。つか、なんだ? 何か悩んでんなら相談乗るぞ?」

「のーさんきゅー。黒崎に相談しても『ぶん殴ればいい』とかしか返ってこなそうだし」

「おまっ、もしかして俺の事不良かなんかだと勘違いしてねぇか!?」

「違うの?」

「ちげーよ! そりゃ、まぁ、ちっとは喧嘩したりはするけど……」

 

 霊感を上げる方法。思いつくのは三つ。

 一つは、ゆーたいりだつ~だ。まぁできなくもない。一度霊体を経験しておけば、色々簡単に見えるようになりそう。

 もう一つはホローと戦ってみる、とかかな。見えないけど、見える奴と一緒に戦えばなんとかなりそうではある。

 そして最後は、まぁ二つ目と被るんだけど──。

 

「黒崎」

「なんだよ」

「ちょいと今日の放課後付き合ってくれない?」

 

 瞬間、ざわつく教室。

 途中から出番が完全に消えた事で有名な本匠千鶴や、浅野啓吾、小島水色なんかがこっちを見てヒソヒソと噂話を……。アレ君らイチゴとは高校からの付き合いなんじゃないっけ。ただノリがいいだけ?

 

「別にいーぜ。なんだ、話の流れ的に喧嘩か?」

「みたいなもの」

「あんまし自分から首突っ込むのは避けてきたんだけどな。お前が困ってんなら、ちょっとくらい付き合ってやるよ」

「一護……オレも、行くか?」

「ん? うわ、チャド!? ……あー、どうだ、華蔵」

「戦力は多いに越した事はないからね。ありがたく」

「んじゃーアタシも行こうか? このデカいの程じゃないけど、そこそこやれるよ」

「竜貴ちゃん、喧嘩はダメだよ……。黒崎くんも、茶渡くんも。華蔵さんも、ダメ」

「んじゃ今の話ナシで」

「切り替え早っ!? いーのかよ、なんか大事な事なんじゃねぇのか?」

「いいのいいの。こんな可愛い井上さんにストップかけられたんじゃ、どーしようもないからね」

 

 というか人数多くなりすぎててやばかったから止めてくれて助かった。

 

 そう、三つ目の方法は単純。

 主人公、黒崎一護と共に行動する、だ。彼と一緒にいれば、ホローやユーレーとの遭遇率が上がり、霊圧知覚もできるようになるだろうと踏んだ。

 今その野望は打ち砕かれたけど。

 

 ……まー。

 なるようになるかなー。

 

 一応、浦原商店だけ探してみるかぁ。

 

 

 

 

 

 あった。タウン○ージ最強!

 

「おや、お客さんとは珍しい。いらっしゃいませ」

「あ、こんにちは。……駄菓子屋さん、ですよね?」

「はい、そうですよ」

 

 出迎えてくれたのは浦原喜助……ではなく、高身長眼鏡エプロンお化けこと握菱鉄裁サン。

 あんまり出番らしい出番の無かった彼だけど、いや、いや。

 私が低身長なのは勿論あるんだけど……でっけー。

 

 とりあえず店内に入る。おー、おー。

 浦原商店だー。滾るー。

 

 なんて観光をしつつ、ちっちゃな買い物かごに駄菓子を詰め込んでいく。こっちもこっちで単純に懐かしい。この爪楊枝で食べる餅とか。ねじりん棒とか。人参の形した奴とか。なんだっけこれ、ポップライスっていうんだっけ。

 いや、作中じゃ駄菓子屋としての描写は無いに等しいものだったけど、カモフラージュのためとはいえ品物の充実具合が凄い。なんかこだわりあるんだろうか。……ありそうだよね。凝り性なのは浦原喜助もマユリ様もおんなじだし。

 

 あ、ココアシ○レット。買わなきゃ。

 この歳じゃ煙草吸えないからね。口寂しいんだよね。

 

 そんなこんなしている内に、買い物かごは駄菓子でいっぱいになった。

 ……流石にお会計かな。

 

「はい、27点で1700円になります」

 

 高い。駄菓子屋で支払う金額じゃない。

 でもお金はある方なのでヨユーで払える。高校生にしては財力潤沢な方だよ私。あ、転生者あるあるな株とかはやってないよ。宝くじとかも年齢制限でできないし。単純におバイトですわウフフ。

 

「ありがとうございましたー」

 

 駄菓子のいっぱい詰まったビニール袋を持って、帰路に就く。

 浦原喜助に会えなかったのは残念だけど、良い場所だったな浦原商店。次は下心なく駄菓子を買いに来る事にしよう。

 

「剃刀紅姫」

 

 聞こえない声が聞こえた。感じられない圧が眼前に迫る。

 ──けど、知覚できないのだから無いのと同じ。たとえそれが私の体を真っ二つに切り裂けるものであっても、たとえそれが私の命を容易く奪い得るものであっても。

 

 私は、反応しない。

 反応せずにチュッパ○ャップスを舐め続ける。

 

 その、血色の刃は。

 私の髪の毛、毛先の数mmを切った時点で──消えた。

 

「……危ない危ない。杞憂のしすぎスね……。焦っちゃダメッス、こういうのは……」

 

 聞こえない声と、見えない男。すれ違っても反応しない。ただ、ちょっと切れた髪に違和感を覚えるように触るだけ触って、そのまま去る。

 彼の視界から外れるまで。見えなくなるまで。

 否、家に着くまで──油断はせずに。

 

 

 

「ふぅ~」

 

 夜。お風呂。

 ま、流石にね? 流石に覗いちゃ来ないだろうという意味を込めて。

 

「こっっっっっっわ……。いや怖いわ。マジでギリギリまで当てる気だったやんアレ。私がちょっとでも反応したらザクゥ行く気だったやんこーわ……。リスクヘッジのためとはいえ怖すぎんかソレは。でもこれで近づかなくなったら怪しすぎるのでまた行く私であったぶくぶくぶく」

 

 えー、浦原喜助。

 やばすぎです。

 

 

PREACHTTY

 

 

 そっから結局イチゴと共に行動するとか、心霊スポットに行く、とかはなく──転校生が来た。

 一目でそうと分かる容姿をした少女。そしてどこかそわそわしているイチゴ。

 

 原作が始まったのだ。

 

「黒崎、転校生と随分と仲が良いじゃん。何、一目惚れ?」

「バッ、ちげーよ! つかどっちかというと疫病がm」

「なんですかぁ黒崎くん。失礼なコトは口にしてはいけませんわよオホホ」

 

 で、出た。初期ルッキーアだ! 第一高校の生徒の時且つ序盤も序盤にだけ見られる棒読みルッキーアだ!!

 

「朽木さん。よろしくね」

「ええ、よろしくお願いしますわ」

 

 ……特にアクションは無し、か。

 やっぱりあのマッドサイエンティストの警戒心が異常なだけで、早々気付かれるもんじゃあない、はず。何故かあの日からずぅっと黒猫が近辺にいるとかそんなことはない。おかげで迂闊に本心も話せない。

 

 一応、イチゴとの関係性はそれなりのものになったと自負している。なんなら井上織姫よりも。まぁこの時期の井上織姫ってイチゴとあんまり仲良くないんだよね。仲良くなるのはおにーたん倒してからだし。

 あ、ちなみに色恋沙汰はないよ。私は私が大好きなので。どちゃシコキャラクリ華蔵ちゃんは、主要キャラ以外の女の子には負けないのである。男? ナイナイ。

 ただ死神に関しては話は別。下心なしでお近づきになりたいおにゃのこがわんさかいる。いやホラ、私カプ厨でもあるから、カップリング破壊とかはNGなんだよね。ごめんな乱菊とか絶対壊したくない。でも公式カプの無い……たとえば七緒ちゃんとかは、是非……とか。

 え、きょーらくさん? いやきょーらくさんは浮竹サンか藍染隊長とのカプでしょ????

 

「ね、華蔵ちゃん」

「うぇっ?」

「聞いてなかったのかよー。今日織姫ん家来ないかって話」

「……忘れてるかもしれないけど、私男だよ?」

「別にそんなの関係ないって。というかアンタ、アタシらにキョーミないじゃん。自分が大好き、って感じでさー」

「そんなことはある」

「あるんだ……あはは」

 

 いやいや、嬉しい事に、中学時代と同じくこうやって女子コミュニティの中に混じっても拒否されないという、美少女男の娘キャラクリの特権がここでも生きている。実際私から一切の下心が感じられない──それはキャラとして見ているため──から一緒にいて楽だとか、見た目がどう見ても女子だから何も気にならないとかのお声を頂いております。

 だからこーやって女子会みたいなものにもお呼ばれしたりするのだ。

 

「んじゃお言葉に甘えて。なんなら夕飯私が作るけど」

「それを狙ってた、って言ったら来なくなるか?」

「まさか。それじゃ、適当にお肉でも買っていくかー」

「え、悪いよ!」

「いーのいーの。まぁ袋持ってくれるとかなら歓迎するけど。勿論竜貴が」

「オッケー、それくらいならお安い御用ってな!」

「……じゃあせめて、お金は」

「織姫がお金出すなら肉買うなんて言わないってー」

 

 尚、井上織姫と有沢竜貴とは名前で呼び合う仲になっている。もっとも私が名前呼びをあんまり好かないので名字呼びをお願いしてはいるが。いやだって、レンヤは男の娘っぽくないでしょ。キャラクリはねー、こっちの手でどーにかなったけど、名前はフツーに親のセンスだからさ。まぁ親も息子がこんな美少女になって、フツーに女装し始めるとは出生時には想像だにしてなかっただろうし。

 女の子っぽい名字だっただけラッキーってことで。

 

「織姫も一袋持ってくれたらいーからさ」

「……うん」

 

 そんな感じで。

 今日の高校生活も、恙なく終了した。フフン、高校の授業などおちゃのこさいさいである。

 

 

 

「おっと」

「きゃっ!?」

「わ、大丈夫かよ織姫ー」

「う、うん。華蔵ちゃんが守ってくれたから……」

 

 こんな街中で大爆走してやがった車から井上織姫を守る。具体的には引き寄せる形で。

 転生者舐めるなよ。ナンバープレート覚えたからな。危険運転のナンバーリストにアップした上であとで警察に通報してやる。フフン、色も車種もタイヤのメーカーも乗ってる人数も何もかも詳細に覚えられてるとは露とも考えないだろう。

 

「おーい大丈夫かー? って、井上に竜貴に華蔵? 何してんだ?」

「夕飯の買い物。そっちこそ、朽木さんと一緒なんて……手の早いことで」

「ちげーよ! お前、そういうのに興味ない癖に他人をくっつけるの好きすぎなんだよ!」

 

 カプ厨ですから。

 

「ごきげんよう、華蔵さん」

「あれ、名前覚えててくれたんだ。こんにちは朽木さん」

 

 初期ルッキーアって一般人の名前全然覚えない印象あったんだけど、やっぱアレなのかな。霊圧が凄いとかなのかな。まだ知覚できないからわかんないんだけど。

 

「で、さっきすげー音したけど、まさか轢かれたりしてねーよな」

「織姫がさっき轢かれかけて、華蔵が助けたんだよ」

「へぇ……大丈夫かよ、二人とも」

「私も織姫も大丈夫だけど、腸は煮えくり返ってるからさ。ほい」

「ん?」

「今メール送っといたから。私達をひき逃げしようとした車の詳細情報。私達はこれから夕飯作りで忙しいから、そっちで通報しといてくれる?」

「え、いやこういうのってされた本人か目撃者じゃないとダメなんじゃ」

「お願いね~」

 

 織姫と、そして竜貴の手を強引に引いてその場を去る。

 あの二人が一緒にいるってことはパトロール中だ。死神の体じゃないときだから違ったような気もしなくもないけど、ルッキーアにあんまり無理な口調使わせるのも不味い。私が笑いそうになる不味さがある。

 だからとっとと退散退散ってね!

 

 さぁて今日は特に記念日でもないのにすき焼きだぞー。

 

 

 

 

 

 ふぅ。

 落ち着け、私。

 

「華蔵ちゃん?」

「どうしたー? 嫌いなモンでも……って自分たちで選んでアンタが作ったんだからそんなものあるはずないか」

「ああ、ダイジブ、ダイジブ」

 

 いやー。

 

 いやー、馬鹿だねー私。私ってホントばか。

 

 コレ正にそれじゃん!

 そうじゃん!

 織姫がひき逃げにあって、竜貴と夕食一緒に食べてて!

 

 ──クマのぬいぐるみが、その額を裂いて落ちる。

 ズシン、あるいはパシン、という音。

 

「な……なんだ?」

「何?」

「二人とも、身を伏せて、固まって……私の後ろにいて」

「う、うん……」

 

 さて、落ち着いたので、正念場だ。

 結局霊圧知覚は育たないままだった。だからどこにいるかはわからない。わからないけど、わかることもある。

 

 例えば。

 

「斬撃──にはちゃぶ台返し!!」

 

 勿体ないけど、すき焼き等々が乗ったテーブルを蹴りあげる。

 すっぱりと切れるテーブル。すき焼きの鍋ごと斬ったか。あとで弁償しよう。

 

 考える。

 ここで織姫が魂魄状態にならなかったら、盾舜六花って開花するのかな?

 

「……なんてこと考えてられる程、私は冷酷じゃないんですねー」

 

 回避する、という選択肢はない。後ろに二人がいるから。

 まぁ盾舜六花が発現しなかったら藍染隊長も彼女に興味を持たないだろう。ワンチャン破面編が発生しないとかあり得るんじゃなかろうか。こう、空座町には何も起きず、私は楽しい高校生活を送りましたちゃんちゃん、が。

 爪には水筒で対処。勿論垂直に受けたらスッパリいかれるので、爪が滑るような角度で受けて、受け流しつつグリンと捻る。

 ……ソードブレイク。失敗した。水筒が凹んだだけに終わる。まぁ耐久力がなー。

 

「か……華蔵、ちゃん?」

「何をやって……」

「まーまー、安心してよ。私、二人が思ってる数十……数百倍は可愛いし──」

 

 拳。面での攻撃はもう逸らしようがない。

 なのでシフトチェンジ。もとい方向性を変える。ゲッツアンドターンで姿勢を切り替え、後ろで怯える二人をゲッチュ。抱き締めてから跳躍し、見えない拳に、その腕に乗る。

 すぐに振り落とされるけど、もうそろ安心時間だ。

 

「数千倍、カッコイイからさ」

 

 今度は尻尾の横薙ぎ。

 家財がバキバキゴロゴロと壊れて行くけれど、それは軌道を読んでください、と言っているようなものだ。ただ、今度は空中に逃げない。逃げたらパンチが飛んでくるだろうから。

 

 だから──少しだけ、笑って。

 

 高速で動く尻尾を踏んで──その顔面を、蹴り、飛ばす!

 

「手応えあり──と。けど、後は頼むよー、幽霊!」

 

 聞こえない声で、誰かが言う。「誰が幽霊だ誰が」と。そして、「だけど……任せろ」と。

 

 まーったく、これっぽちも聞こえていないけれど。

 私達とホローの間に、彼が降り立ったのを感じ……てない。霊圧知覚ゥ……ですかねぇ。

 

 ふむ。

 

「……よーし、疲れた。寝る」

「え!? ちょ、ちょっと、華蔵ちゃん!?」

「大丈夫……じゃない、華蔵、足変な方向に曲がって……!」

「治療とか、病院は、任せた……」

 

 いやね。

 能力はつけたよ。キャラクリの時に。

 でも身体は割とフツーなんですね~。身体がフツーじゃなかったらとっとと殴りに行ってるし蹴りに行ってるんですね~。

 ……ま、これでもし本当に盾舜六花が発現しなかったとしても、問題は無いだろう。原作崩壊も良い所だけど、世界が少しだけ平和になるってだけだ。あーでもどうだろ。藍染隊長に斬られたイチゴとか、盾舜六花じゃないと治せなかったりするんだっけ。いやーでも卯の花隊長がいればまーまーまー。

 

 あー。

 感情に身を任せて行動したけど……これで良かったのかなぁ。

 

 ……ま、友達は見捨てられませんわ。もしダメだったら、近づき過ぎたことが原因ってコトでFA。

 

 頑張れよー、イチゴ。

 私は……少し、寝る、から。

 

 

 

 

 翌日。

 

「ホントだってー。家に横綱が来て、ピストルで穴を開けて帰ったんだって!」

「まーたこの子はトンデモ世界の話を……」

「ホントだよ! ねぇ竜貴ちゃん!」

「あー……うん」

「有沢まで認めるの!?」

「それに、華蔵ちゃんも……ってアレ、華蔵ちゃん?」

「華蔵なら購買にパン買いに行ったよ」

「あ、そっかぁ」

 

 なんか一応万事うまく行ったらしい。

 意識落ちた後の事は知らないけど、原作通りにはなってる……っぽい? 今は身を隠してストーキングナウだけど、会話内容がほぼ原作のソレなので、記憶置換が正常に行われてはいるんだろう。私にはされなかったか、効かなかったみたいだけど。

 

 おにーたんを蹴り飛ばした右足は、治ってる。

 

 ……鬼道つえーよなぁ。アレって人間には覚えられないのかなぁ。滲み出す混濁の紋章したいよなにかにかけてかこつけて。

 

「華蔵」

「うん?」

「その……足はもう、いいのか?」

「足? 何が?」

「あ、いや……なんもないなら、いいんだ」

 

 どこかぎこちないイチゴ。

 対比するように、鋭い目つきで私をみるルッキーア。

 

「ねね、黒崎」

「あ、お、おう。なんだよ」

「私、朽木さんになんかしちゃった?」

「え! い、いや、……ほらルキア、その目つきやめろって! 華蔵が怖がってるだろ」

「怖がってはないけど、なんかしたなら謝らないとなーと思って」

「そこは聞こえないフリをしろよ!」

「おめーとは違うんだよ」

 

 気軽な軽口を叩く。男の娘とはいえ男同士だからね。というか前世フツーに男だからね。イチゴは明るい性格だし、とっつきやすいから話してて楽しいし。

 あと初心だから揶揄いやすい。これがデカい。

 

「一つ、聞きたいのですが……よろしくて?」

「あ、うん」

「では……華蔵さんは、幽霊を見た……といったようなご経験はありまして?」

「あー、黒崎みたいな? ナイナイ。からっきし。見えたら面白そうだなーとは思ってるけど、お腹かっ裁かれた死体とか電気椅子に焼かれた死体とかそういうグロいの出てきたら食欲無くなりそうだし、別に見えなくてもいいかなって」

「いやそんなのオレも見えねぇけど……って、アレ。オレ華蔵に幽霊が見えるって話したっけ?」

「え、こないだ聞いたばっかだけど」

「そ……そうか。いや、悪ぃ、最近あんま物覚えがよくなくてさ」

「あー。わかるわかる」

「わかるわかるってなんだよ。何がわかんだよ」

 

 ルッキーアの目は。

 未だ、鋭いまま──。

 

 ま、別にバレてもいーんだけどね。その方が霊圧知覚育ちそうだし。

 でもまだ、ひーみつv。

 

 

PREACHTTY

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