PREACHTTY   作:ONE DICE TWENTY

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第13話 増殖! 樹に生る果実

 現世は空座町──の、レプリカ。

 本物は尸魂界にあり、このレプリカと入れ替える事で戦闘可能区域にし、藍染の企みを阻止せんとした死神側の作戦は、しかしその要である転送結界……それを織り成す四方の柱での攻防によって、緊迫した雰囲気が張り詰めていた。

 その糸がようやく切れたのは、七番隊隊長狛村左陣がチーノン・ポウを倒した瞬間。

 

 そしてそれは、新たな戦いの幕開けとなる、はじめの一歩であったことなど、言うまでもない──。

 

 

 

 

 

「少しだけ……力を貰っていくよ。ごちそうさ──」

「ごめんね。それを貰うのは、私」

「──ッ!?」

 

 ()()は、突如現れた。

 そこは第二十刃、バラガン・ルイゼンバークの従属官たるシャルロッテ・クールホーンと、十一番隊五席綾瀬川弓親の戦いが終わった場所。

 果たして辛勝と言えるのか。あるいは綾瀬川弓親のプライドさえなければ、とっくのとうに勝っていたのかもしれない戦いは、けれど己の信念のぶつかり合いによって戦いの形を取った。

 

 勝者は確実に綾瀬川弓親だった。

 敗者は確実にシャルロッテ・クールホーンだった。

 

 それは、双方が双方、認めていた。

 けれど。

 

「な……」

「……あんた、どう、やって……ここに」

 

 綾瀬川弓親の始解、瑠璃色孔雀で奪い取ったシャルロッテ・クールホーンの霊圧の一部。それは術者である綾瀬川弓親のもとに、その口に収まるはずだった。

 けれど、それを掠め取った者がいたのだ。

 そいつは弓親から花を奪い、彼が驚く間もなくシャルロッテ・クールホーンの元へ歩み寄る。

 

 霊圧はそう簡単に受け渡しできるものではない。

 ではないが、もし、そういった能力を持つものならば──まずい。

 

 だから、弓親の判断は早かったのだろう。

 

「くっ──咲け、藤孔雀!」

「縛道の六十三、鎖条鎖縛」

「なぁっ、鬼道!?」

 

 より速かったのが、闖入者の動きだった、というだけで。

 そいつは破面の纏う白い死覇装を着ておきながら、鬼道を使った。しかも六十番台の詠唱破棄だ。

 これは弓親の筋力では到底破ることのできない類のもの。素早い束縛に、弓親は捕まってしまう。

 

「──やめなさい」

「うん。手出しはしないよ」

「……してるじゃない」

 

 そこへストップをかけたのは──敵であるシャルロッテ・クールホーンだった。

 これ以上何か、弓親に攻撃が為される可能性を考えたのだろう。ああ、けれど、それは違った。

 

 そいつは、ただ。

 シャルロッテ・クールホーンの霊圧の花を手に、倒れ伏す彼のもとへと歩み、座り込み。

 

黒龍虚食(ボラフィダッド)

 

 ()()()()()()

 

「シャルロッテさん。私は、君を友達だと思ってる。けれど、君は私なんかに救われる事を望まない。それが美しくないと知っているから。だから……最後まで待った。だけど」

「……あら。あんた、それ。取り戻したの?」

「捨ててきた、が正しいかな」

「そ。……はぁ。なんだか、しらけちゃったわね。……いいわ」

「うん」

「──食べなさい」

 

 それは、恐らく、弓親には理解できない光景だったのだろう。

 弓親から見ても美しいと感じるそいつ──少女が、弓親の感性でブサイクとしか思えない破面のその額にキスを落として。

 捕食する、なんて。

 

「なに、を……」

 

 仮にも人型だ。

 双方ともに、虚とはいえ破面となった彼ら彼女らは、確実にヒトに近い形をしている。シャルロッテ・クールホーンなどはもうほとんどヒトだ。

 それを、ぐちゃぐちゃと食べる。それがどんなに恐ろしい行為か。それがどんなに悍ましい行為か。

 

 弓親は今の今まで命の取り合いをしていた敵に、ブサイクだと罵っていた敵に──同情した。

 

「何をしているんだ、君は……今すぐにやめろ!!」

「道半ば。ここで潰える夢を、先へ連れて行く。食べるって、そういう行為だよ」

 

 制止は届かなかった。

 時間にして一分もかかっていないだろう。ガツガツと食われたシャルロッテ・クールホーンの身体は、文字通り一片たりとも残さず平らげられた。

 そして、彼の霊圧の詰まった花も。

 

 少女がそれを食べ終わり、弓親へ顔を向けて、ようやく。

 彼は、彼女が──彼が何者なのかを思い出す。

 

「──ッ、十刃!?」

「あれ、会ったことあったっけ? ……あぁ、現世侵攻の時か。ワンダーワイスを相手に、よく死ななかったね」

 

 荷が重い。

 シャルロッテ・クールホーンと戦った直後の弓親では、そして五席、あるいは三席の力しか持たない弓親に十刃一人は無理だ。

 十番隊隊長、副隊長が揃って倒せなかった敵でもある。

 

「ああ、大丈夫。君に用はないよ。その縛道も、時間が経てば解けるから気にしないで」

「待て、どこへ行く!」

「どこって……決まってるじゃん」

 

 美少女の所に、だよ。

 

 そう言って。

 彼は、その場から消えた。

 

 

 

 

 

 時は少しだけ遡る──。

 

「ん……」

「どしたのさ、スターク」

「いや……ようやく()()みたいなんでな」

「かえる? 何が?」

「お前の見たがってたもんだよ」

 

 そう言ってスタークが、ようやくその右手を開く。

 あるいはその手は、虚圏においてとある十刃の虚閃を受け止めたもの。誰もがただの牽制弾だと思ったソレに隠されていた物の事など、撃った本人と受け止めた本人くらいしか知らない。知らなくて当然だ。

 

 開かれた右手。

 

「おお、やけに素直じゃん。めっずらしい……って、え゛。……スターク、これ、なに?」

「うるせぇよリリネット……だから、知らねえよ。お前が見てぇっつうから見せてやったんだろうが」

 

 コレ。

 ソレ。

 

 スタークの手にあったもの。リリネットが見て、ドン引きしたもの。

 

「……俺だってこんなもん持ってたかねぇよ……」

「あぁ、じゃあ離してくれていいよ」

「うぉっ!?」

 

 それは肉片だった。

 真っ黒な肉片。無理矢理千切り飛ばされたかのような、断面の露わになっていた黒い肉。

 

 そこに、口ができる。口だ。虚無を覚えさせるような口が。

 思わずそれを放ってしまったスタークは悪くないだろう。それほどまでに気色の悪いものだったから。

 

 ああ、けれど──それは正解だった。

 

双生樹(アンボース)」 

 

 ぐじゅる、ぐちゅると大きな水音を立てて、()()()()()

 まず、腕だ。華奢な腕。そして足だ。艶めかしい足。そのまま腰が、背骨が組みあがり、肉が付き──最後に肉片が膨らみ、口と、その顔が現れる。

 

「……あぁ、やっぱりか……」

「うん。ありがとうね、スターク。ちゃんと受け止めてくれて。ちゃんと持ってきてくれて」

 

 龍の鱗がその身を覆う。白い死覇装が生まれ、そして。

 

 それは──生る。

 

「ふぅ──んんんっ、っはぁ。やっぱりいいね、現世の空気は」

 

 アンフィスバエナ。その名の意味は、「両方へ行く」、「どちらも掴み取る」。

 なれば、スタークの目の前で伸びをする少女のような少年は。

 

「おはよう世界。なんらかのアクシデントで私が現世に間に合わなかった時用の保険──そっくりそのまま、デッドでもない完全なコピーの華蔵ちゃんだよ」

 

 華蔵蓮世。 

 その胸の数字がまだ7である彼が、そこにいた。

 

 

 

 

 説明しよう。

 そもそも双生樹(アンボース)とは、超速再生をする能力、ではない。

 

 身体を斬られたり穿たれたりした際に、()()()()()()()()()()()という強い催眠を掛ける能力だ。いや転生キャラメイクの時点ではただの再生スキルだったんだけどね。

 私が常日頃言っていた、手が足りない。分身したい。猫の手も借りたい。立っている者は親でも使う。

 アレは何も、ただの願望、というわけじゃなかったのだ。

 

 まぁなんでやらなかったかって言えば、それなりのデメリットがあるからなんだけど。

 

「──で、だ」

「うん?」

 

 後頭部に突きつけられるは、スタークの指先。

 そこから撃ち出されるものが何かなど、わからない私じゃない。

 

「何をする気かは、聞いておくぜ。俺も自陣に敵を引き入れた戦犯扱いはごめんだからな」

「ああ、それは大丈夫。私は死神の味方でも、虚の味方でもないから」

「……美少女の味方って奴か」

「正解」

 

 だから、と。

 身を翻して、ちょっと機嫌悪めのバラガンの元へ行く。

 

「……娘子か。どうした、隠れてついてきたのか」

「うん。それでね、お願いがあるんだ」

「聞くだけは聞いてやる」

 

 お願い。

 それは。

 

「……構わん。だが、そうなることを予想している、という事実が儂の機嫌を損ねている事を忘れるな」

「ごめんね」

「……良い。行け」

 

 もし、シャルロッテ・クールホーンが敗北した場合。

 その亡骸を、頂けないか、というもの。

 部下が負ける事はないと、一切の疑いを持っていないバラガンにとっては侮辱にも等しいお願いだっただろうに、彼は頷いてくれた。

 

 だから言葉少なに──彼のもとへ向かう。

 私の大事な友達のもとへ。

 

 

 

 

 そして時は今に至る。

 

「──華蔵蓮世か」

「はい。こうして対面するのは初めましてですね、山本元柳斎重國殿」

「……」

 

 恐らく最初に藍染隊長を炎で閉じ込めた以外は何もしていないだろう山本元柳斎重國。

 そんな彼の前に降り立てば、真っ先に彼の副隊長、雀部長次郎が前に出てこようとする。それを制す山本元柳斎重國。

 

「何用か」

「──宣戦布告を」

 

 途端、ざわつく護廷十三隊。

 それはそうだろう。そんなことをこんな至近距離で言う者は中々いない。

 

「ただし、私は藍染隊長のもとで動く、ということでもありません。既に第九十刃、第五十刃を殺し、彼らからも離反しています」

「ほう」

「ゆえ」

 

 目礼。

 

「私は私の目的のもと動きます。都度、虚にも、死神にも敵対する事があるかと思いますが──」

「容赦などせん。──聞きたいことは、それだけかの?」

「……なれば、問題なく」

 

 響転で消える。

 

 これから私がやろうとしていることは、戦場をひっかきまわしまくる、ともすれば戦闘を長期化させ、さらには悪化させかねない悪逆非道な行為だ。

 それをすることに。

 一応、人間だったものとして、許可を取った。ただそれだけ。

 

 更に移動する。

 

「何用だ、華蔵蓮世」

「退いてほしいと言ったら、聞いてくれるのかな、と思って」

「はぁ!? いきなり何言ってんだてめェ、んなことあり得るわけねぇだろうが!」

「アパッチ、そう一々切れないでくださいまし。耳が取れてしまいます」

「だが、今回ばかりはアパッチの言う通りだ。藍染様に連れてこられたわけでもないのに、突然現れて『退け』、だなんて……アタシらが頷くと本気で思ってんのか?」

「ううん、思って無いよ。でも、みんなに死んでほしくないからさ」

 

 ティア・ハリベル以下従属官。

 原作を省みると、彼女らがこれから戦う相手は私にとって複雑な二人だ。

 乱菊さんと雛森ちゃん。

 美少女vs美少女の構図。それは、私が最も恐れているもの。

 

 だけど──。

 

「どうしても戦いに行く、というのなら──私を倒してからにしてよ」

「上等だよ、てめェにゃハナから苛ついてたんだ!」

「ちょっとは待てってアパッチ」

「……ハリベル様」

 

 第三十刃、ティア・ハリベルと目が合う。

 沈黙。

 

「一つだけ、問う」

「うん」

「死神と破面、その双方を敵に回すに足る理由は、なんだ」

「信念」

 

 即答だった。

 だってもう、それ以外残されていない。双生樹(アンボース)は単なる分身能力なんかじゃない。双方を私だと認識する能力は、つまるところ──意図的に起こすスタークとリリネットのようなもの。

 ただし分割されるのは能力でなく、人格でもなく。

 

「それが、存在意義」

「……そうか。相手をしてやれ、お前たち」

 

 あちらの私は多分、死を選ぶだろう。誰と戦うかはわからないけれど、最期の最後には死を選ぶはずだ。

 だってあの時、私が切り離したのは──愛情。

 美少女を愛する感情。己を愛する感情。そう、双生樹(アンボース)で分割されるのは、感情だ。

 

 そのままくっつけば、問題は無いけれど。

 切り離したままどちらかが消えれば、その感情は私の中から失われる。

 

 あちらの私は愛を失った。

 こちらの私は陶酔を失った。

 

 ゆえにあちらの私こそが真の第七十刃であり、私にはもう司る死の形なんてものは残されていない。

 ただ残ったのは、各種陣営の敵である、という事実のみ。

 

「場所を変えるよ」

 

 響転で遠くまで移動する。

 直後、ついてくる三人に笑みを零し。

 

「別ちて拝せ、双頭龍蛇(アンフィスバエナ)

「突き上げろ! 碧鹿闘女(シエルバ)!」

「食い散らせ、金獅子将(レオーナ)!」

「絞め殺せ、白蛇姫(アナコンダ)

 

 四者が同時に解放を行った。

 

 

PREACHTTY

 

 

「一体なんなのよ……仲間割れ?」

「さぁな。だが、好機であることは事実だ。仕掛けるぞ、松本!」

「それはやめて欲しいかな」

「!!」

 

 シロちゃんと乱菊さんの前に現れる。

 

 こちらを警戒しながらも、慎重にある方向を向く乱菊さん。そちらでは、確かに……私と、ハリベルの従属官が戦っていた。

 

「あんた……なんで」

「後先を度外視した結果、って奴かな。ま、見ての通りあっちの三人はどうにか抑えるからさ。ここで休んでてくれない?」

「断る。部下をお前が引き留めているのだとして、親玉が残ってる。あいつを片付けなけりゃオレ達は──……」

 

 シロちゃんが彼女を親指で指して。言葉を吐きながら、目を見開く。

 乱菊さんも同じだった。

 

 遠く。

 ティア・ハリベルの――眼前。

 

 そこに、いた。

 今彼ら彼女らの目の前にいるのと、同じ存在が。全く同じ霊圧が。

 

「彼女も勿論抑えるよ」

「……前々から思ってたが、何者だてめェ。既に人間の領域じゃねぇぞ」

「え、だから虚なんだって。破面だよ、私。ほら、ここに仮面あるでしょ?」

「前と違う仮面……前のは明らかに偽物だったけど、アンタまさか」

「あれ偽物ってバレてたんだ……。じゃ、なくて。……うん。正式に、破面になったよ」

 

 ちょっと恥ずかしい。

 偽物の、つまりお飾りの仮面だってバレてたんだ……。そうだよね、信じるの織姫くらいだよね。純粋だし。

 うわ恥っず。

 

「なら、殺さないといけねぇな」

「……やっぱり?」

「ああ。離反して尚も十刃を名乗ってやがるんだ、その本質は藍染の手下なんだろ?」

「うーん、そういう事じゃないけど、そういうことでもあるかなぁ。藍染隊長次第というか」

「何より」

 

 槍を出す。

 瞬時に燃え盛る槍に、氷が直撃する。

 

「未だにアイツを『隊長』と呼んでいる奴を、信用なんてできるか」

「──だよね。それじゃ、やろうか。日番谷さん、乱菊さん!」

 

 灼熱と霜氷が覇を唱える──。

 

 

 

 

「成程。どういう仕組みかは知らないが、お前は私達に明かしていない能力がいくつもあるらしい」

「まぁね。初めから仲間だとは思って無かったし」

「アパッチ達の所に一人。あちらの隊長格の所に一人。地上に一人。スターク達の所に一人。上空に二人。……これ以上はいるか?」

「うん。まだまだいるよ」

「そうか。──それで、私も抑えるか」

「そのために残った。……第三十刃(トレス・エスパーダ)、ティア・ハリベル。第七十刃(セプティマ・エスパーダ)華蔵蓮世がお相手仕る。私とダンスを踊ってくれるかな?」

「フッ、お前では些か身長が足りんな」

「あ、酷い。……いいんだよ、美少女はこれで。これ以上高くなったら美女になっちゃうもん」

「そう拗ねるな。いいだろう、第三十刃(トレス・エスパーダ)ティア・ハリベルが、第七十刃(セプティマ・エスパーダ)華蔵蓮世からの挑戦を受けて立つ。──ただし、私は水で、お前は火。何もできずに終わっても文句は言うなよ!」

「水って高熱で蒸発するんだよ、知らなかった?」

 

 ここでも。

 

 

 

 

「娘子。儂は機嫌が悪いと言ったはずじゃが」

「うん。聞いた」

「……ならば何故、()()は儂の前に立っておる」

「あなたの相手が、美少女だから」

「既に覚悟はしているらしいな」

「うん」

「──待て! 貴様、横槍の上になんだその理由は! 私を愚弄しているのか!」

「ちょ、ちょーぉっと隊長!! いいじゃないスか折角仲間割れしてんスから! なんで声出すんですか!!」

「うるさい黙ってろ脂煎餅!」

「いいだろう──まとめて相手をしてやる。娘子。その身に確と刻め、儂に逆らってはならぬ──その恐怖を」

「お爺ちゃんこそ、この世に絶対は無いってことを知ってもらわないと」

「くっ、行くぞ大前田! あの破面共をまとめて始末する!」

「ど、どっちかが倒れてからでいいと思うんスけど……」

「ならば来なくていい。邪魔だ」

「えぇ……わ、わかりました、行きます、行きますよぉ!」

 

 ここでも。

 

 

 

 

「ただいま」

「……お前さん、よくしれっとしてられんな。ここまでの混乱を戦場に撒いといて……」

「なんなんだよオマエ! 何人目だよどんだけ分裂するんだよ!!」

「君達も他人のこと言えないでしょ」

 

 ここでも、私が現れる。

 

 ……いやぁ、私もここまで大量の双生樹(アンボース)を出したのは初めてだ。おかげで、今私の感情はすっからかん。かろうじて美少女への信仰が残っているから問題ないけど、その他、悲しいとか楽しいとかそういった感情は消えてしまっている。

 各地で戦う私がちゃんと勝利を収めて帰って来れば、私も元通りになるんだけど……はてさて。

 

「で、ここにいるアンタは、俺達と戦うのか?」

「ん-、スターク次第かな。私はリリネットちゃんを助けられたらそれでいいし」

「やっぱり目的はソレか……」

 

 むしろそれ以外に何があると。

 

「んで……そっちの隊長さん達は、どうするんだ」

「いや、こちらを気にせず話を続けてくれて構わない。君達同士に何か蟠りがあるというのなら、それについてオレ達が口を挟む理由はないからな」

「や、久しぶりじゃないの、華蔵ちゃん。双極の件ではどーも」

「あ、久しぶり、京楽さん。そうだ、私ね、最近正式に破面になったよ」

「おや、今までそうじゃなかったのか?」

「うん。えーと、浮竹さんでいいんだよね?」

「ああ。十三番隊隊長の浮竹十四郎だ。華蔵蓮世くん。君の事は、京楽からよく聞いているよ」

「ん。で、そう。つい最近まで私、虚モドキだったんだけどさ。日番谷さんと朽木家当主……朽木白哉さんがあるきっかけをくれてね。ようやく破面になれたんだー」

「そうかい。ボクらはそれを喜んでいいのかどうかわかんないけど、華蔵ちゃんが嬉しそうだから、おめでとうとは言っておくよ」

「ありがと、京楽さん」

 

 和気藹々とした空気は、けれどスタークの溜息によって破壊される。

 あとリリネットの癇癪も。

 

「なんでもいいけどよ、アンタら、俺達を殺したいんじゃなかったのか」

「いやぁ、平和的に行くならそれでいいよ? 痛いの嫌だしね」

「京楽はこう茶化して言っているが、オレも同意だ。特にそっちの子なんか、どう見ても戦える体つきじゃないだろう。君達がどういう上司と部下なのはわかっているが、非戦闘員はどこか安全な所へ置いてくるべきだ」

「おお浮竹さんわかってるぅ。そそ、リリネットちゃんは美少女なんだから、切り傷でもついたら大変大変。その点私が都合の良い存在。なんと今ならタダでリリネットちゃんを遥か彼方まで連れ去ってあげましょう」

「……生憎だが、俺達は上司や部下の関係じゃねぇ。そんでもって、リリネットは非戦闘員じゃねぇ。だから遠くへ引き剝がす必要はねぇし、誘拐犯の手を借りることも無い」

「まさかとは思うけど、誘拐犯って私のこと?」

「他に誰がいるんだよ」

 

 失敬な。

 私にはもう下心なんて高尚なもの残ってないんだ、ただ純粋な気持ちで美少女をここから遠ざけようとしているだけなのに。

 

「しかし、戦うにしても五人じゃ収まりが悪い。やはり初めに君達の蟠りを解いてから事を運ぶべきだ。仲間内に悩み事があると、戦闘にも集中できないだろう」

「白髪の隊長さん、そりゃ余計な世話って奴だ。悩み事も何も、とっくのとうに解消してる」

「そうなのか?」

「ああ」

 

 スタークは、浮竹サンと京楽春水を指差す。

 指して。

 

「まず、アンタらが敵で」

 

 私を指差して。

 

「コイツも敵だ」

 

 ……。

 やっぱりそうなるか。

 

 スタークとだけは、話し合いで解決できたらいいな、って。思ってたんだけどね。

 孤独。仲間が付いてこられないなら、私の一人でも上げるからさ。どこか遠くで安全に、って。

 

 ハリベル達もそうだ。戦いを望まないのなら、どうか虚圏で安らかに、って。

 そう思ってた。

 

 でも、そうか。

 そうだよね。だってまだ──藍染隊長への恩義と忠義がある。

 

 それを解消しない限りは、無理か。

 

「だそうだけど……華蔵ちゃんどうする? 敵の敵は味方っていうし、ボクら共闘しない?」

「しないよ。敵の敵は敵。それに、私はスタークとリリネットちゃんを敵だとは思って無いから」

 

 スタークの横に立つ。

 第一と第七。それが並ぶことなんて、あり得ないことだけど。

 

「いいのかい? 彼、君の事を敵だと言っていたけれど」

「味方からの誤射なんてあるあるでしょ。射線上に入った方が悪いよ」

「虚閃」

「流石にそれは容赦なさすぎでしょ! ッ、龍皮(ピエル・ディ・ダラゴン)!」

 

 肩口からノーモーションで撃たれた虚閃は、溜め無しとは思えないレベルの威力。

 流石は霊圧最高クラス、虚閃馬鹿とまで称されたプリメーラ……。

 

「まぁ、冗談だ。アンタを倒すのは最後でいい。今は隊長さん達を片付ける。いいな?」

「勿論。ああリリネットちゃんは任せて。ちゃんと守るよ」

「ちょ、勝手に決めんな! アタシも議論に混ぜろー!!」

 

 私は槍を、スタークは刀を取り出して。

 渋々と言った様子で、リリネットちゃんも剣を抜いて。

 

紅の射槍(ランサドール・ローホ)

「虚閃」

 

 ここでも──戦いの火蓋が、切って落とされる──!

 

 

 

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