PREACHTTY   作:ONE DICE TWENTY

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第14話 激突! 炎vs炎

 初手の投擲槍は避けられた。

 けれど、態勢の崩れた所を狙ってスライディング気味に突撃。左手を支点に、自分の肘で突き落とした双頭槍の持ち手が、凄まじい速度と威力を伴って反対側の穂先を突き上げる。双頭槍を回転させることでの顎を削ぐような斬撃。

 硬い感覚。これは、ちゃんと剣で受け止められたか。

 

 まぁ受け止めてくれたなら──止まってくれたなら、それはそれでいい。

 

黒虚閃(セロ・オスキュラス)

「!」

 

 穂先より放つは黒い虚閃。

 流石にこれは受け止められないのだろう、即座に距離を取る──白い男。

 

「中々に容赦がないな。それに、驚いたぞ。てっきり君は、京楽の方に行くものだと」

「生憎だけど、私は浮竹さんの能力知ってるからさ。──私みたいなインファイター、苦手でしょ?」

「……成程、因縁や縁といった感情を一切無視した合理的な判断だ」

 

 浮竹十四郎。

 十三番隊隊長であり、病弱な隊長サン。

 その始解の能力は、鬼道系の能力に対する絶対権に近い。あるいはネリエルに似た……。

 

「……攻撃してこないんだ?」

「うん? だって君は今、考え事をしていただろう? それを邪魔する程オレは切羽詰まっているわけではないからな」

「あぁ、そう。じゃあこっちも不意打ちとかしない方が良い?」

「いや、それは構わない。これはオレがそうである、というだけで、君に押し付けるものではないさ」

「それじゃあ遠慮なく──黒龍の吐息(アリエント・ディ・ダラゴン)

「双魚理!」

 

 だろうと思っていたから、予め距離を取っていた。

 公明正大、とても気のいい人──に見えて、この人もかなり"イイ"性格をした人だ。あるいはどこか甘さの抜けない京楽春水よりも。

 先ほどまで私のいた場所の、さらに少しずれたところを熱風が通り抜ける。

 帰って来た自分の技に驚いて咄嗟に逃げるだろう場所、だ。

 

「どうやらこちらの始解を知っているというのは本当みたいだな! どうやって知ったのかは教えてくれないのか?」

「あの時、一瞬見たんだよ。元柳斎重國殿と戦っている浮竹さんを」

「成程、それだけで見破り、それを覚えていたのかい? 確かあの時の君は、藍染から朽木さん達を守る事で手一杯になっていた覚えがあるが」

 

 よく覚えているのはどっちだ。

 ……けど、まぁ。

 

「信じる信じないはどうでもいいし、私の言葉の真偽もどうでもいいこと。それが、私があなたの始解を知っている事実を覆すものになることはないのだから」

「それはそうだが──」

「そして」

 

 もう一度肉薄する。

 先ほどと同じ要領で、けれど今度は反対側に双頭槍を蹴り飛ばし、双魚理を抑える動きにする。この刀は切っ先から霊圧を吸い取り、五枚の札で調節をした後、もう一本の刀から再度放出する、という能力がある。

 なれば刀を抑えてしまえばどうにもできないだろう。

 双魚理をしっかり槍で抑え──口を開く。

 

「!」

炎痕跡(ルラマ・ラストローズ)

「嶄鬼」

「!」

 

 これは入ったと思った。元より病弱な浮竹十四郎がこの至近距離で炎を食らえば、一気に戦闘不能にまで持っていける、と。

 けれどそれは、スタークと戦っていたはずの京楽春水によって止められる。

 

 更には。

 

「虚閃……おっと、いたのか、アンタ」

「……射線上に入る方が悪い、と言ったのは、うん、確かに私だけどね。今この隊長さん二人と私がまとまっているのを視認してから虚閃撃たなかった?」

「らしくないぜ、卑怯な不意打ちが売りの七番がよ。そりゃ敵が一か所に固まってるんだ、いっぺんに掃除したくもなるだろ」

 

 彼への追撃にか、スタークの虚閃が私達を襲った。

 散り散りになって避ける私達。

 

 ああ、狡猾……というよりは面倒臭がり屋がこっちにもいた。

 

 落ち着こう、華蔵蓮世。私の主目的は何か。それはリリネットちゃんを助ける事。そしてそれは、スタークを助ける事と同義でもある。

 たとえ彼が私を敵認定してきていても、彼の排除、などを試みてはいけない。

 

 ふぅ。

 

「……別ちて拝せ、双頭龍蛇(アンフィスバエナ)

「なんだよ、もう解放すんのか?」

「当然。流石にね、破面化したといっても、ただの美少女な状態じゃ君の虚閃は受けきれない。加えて気の抜けない隊長さん達がいるんだ、手数は増やしておいて損はないでしょ」

 

 あと、何回も言ってるけどこれは解放じゃないんだってば。

 

「前々から思っていたんだが、君の斬魄刀……槍は、二槍一対なんだな」

「うん? あぁ、まぁね」

「そういう斬魄刀は破面側には沢山あるのか?」

 

 ……ふむ。

 

「まぁ解放すれば二つになったり四つ六つ八つと増えるのもあるけど、最初から槍の形をしていたり、こうして一対の形を取るのは私のだけじゃないかな」

「そうなのか! それは良いな」

「良いとは」

「知っているとは思うが、オレと京楽の刀も二刀一対なんだ。こういったタイプの斬魄刀は、オレ達以外に仲間がいなくてな。敵ながら嬉しく思うよ」

「浮竹ぇ、お前、そんなこと思ってたのかい? それに、そもそもお前さんの刀は解放前は一本じゃない。ボクのとは違うよぉ」

「──あぁ、でも、そうだった」

 

 スタークの方を見る。

 彼は、後頭部を掻くだけ。見せる気は無い、ということだろう。

 

「十刃の中には、一対の解放を見せる奴もいるよ」

「へぇ」

「……なぁ、結局アンタ、どっちの味方なんだ?」

「だから私は美少女の味方だって」

 

 だから。

 

「虚閃」

十字痕(クルサール・ラストローズ)!」

 

 どさくさに紛れてリリネットちゃんに手を出そうとする奴は、許さない。

 

「ちょ、ちょーっと、いきなり本気になり過ぎじゃない? 君達、今の今まで険悪な雰囲気だったのにさぁ」

「前も言ったけど、私は美少女の味方だよ? あはは、七緒ちゃんや清音ちゃんをここに連れてこなかったのは失敗だったね──おっさん二人に容赦ができる程、今の私は余裕がないんだ」

「余裕が無い? ……それは、各地にいる華蔵ちゃんが関係しているのかな?」

「うん。大いに関係している」

「あぁ本当に素直だねぇ。けどいいのかい? そう簡単に手の内バラしちゃって……ボクらだって慈善事業じゃないんだ、こっそり君の分身を殺しに行くかもしれないよ?」

「それはどうぞご勝手に。けど、私はともかくスタークから意識を反らし過ぎたらだめだよ、京楽さん」

 

 槍で切り裂きに来た私と違い──静かに時を待っていたスタークの、その所在を明かす。

 ギロリと睨まれる。

 

「虚閃」

「!」

 

 京楽春水が真下に目をやると同時。彼は霊圧の極光の中に呑まれていった。

 

 

 

 

「アンタは、俺達の事を理解してるんだよな」

「うん。だから、できれば解放して欲しくない。できれば、私が片付けたい」

「それはリリネットに死んでほしくないから、か?」

「そうだね」

 

 スタークは、「じゃあ猶更だ」と呟いて──剣をしまう。

 

「……止めては、くれないのかな」

「別に解放したからといってリリネットが死ぬわけじゃねぇ。コトが終わればリリネットはまた出てくる」

「そういう問題じゃないんだけどね。──なら、仕方がないか」

 

 槍を、スタークに向ける。

 目を細めるスターク。

 

「俺と敵対するつもりはない。アンタそう言ったはずだぜ」

「君が解放しないのならば、君を守るつもりだった。解放しない分の戦力格差は必ず生まれる。あの二人に負けるかもしれない。だから私がその穴埋めになろうとした。だけど」

「だけど?」

「君が解放するというのなら──君を殺さずに倒し、虚圏に連れ帰る、という使命が発生する。死神なんか関係ない、リリネットちゃんの存続のためだけに、私は君達を攫う」

「……ハナから奴らには勝てっこねぇって諦めてんのか」

「私が美少女を守るからね。必然、決着は着かない」

「あー……やっぱ連れてくるんじゃなかった。……思考のどっかに、アンタなら俺達の大事なものを()()()()()()って認識があったんだけどな。気のせいだったか」

 

 それは意外な信頼だった。

 そんな風に思ってくれていたとは露とも知らず。

 

 だけど、それなら余計に安心してほしい。

 私は本気で君を圧倒し、リリネットちゃんごと虚圏に連れ帰るつもりだから。

 

「それをして、アンタに何のメリットがある。虚圏に連れ帰られた所で、俺達がアンタに従属する事はねぇぞ」

「そんなこと求めてないよ。ただ私は、美少女が世界から失われる事が許せないだけだから」

「……リリネット! 来い!」

 

 説得は虚しく。

 私の横をリリネットちゃんが通り抜けて──スタークの元へ向かう。

 

 その頭に、手を乗せて。

 

「蹴散らせ──群狼(ロス・ロボス)

 

 解放を行った。

 

 霊圧が跳ね上がる。吹き上がる。渦巻き、物理的な圧となって私に圧し掛かる。

 ……さて、正念場だ。

 動揺の無い状態の第一十刃、コヨーテ・スターク。未だ藍染隊長に恩義と借りがあると認識している、他の十刃を仲間だと認識している状態での──圧倒。

 それは何よりも難しい事だと思う。彼の心にこびり付いた孤独の陰は、濃くて大きいものだから。

 

 もし私の提案を受け入れるのならば、それは、この環境を捨て──また孤独に戻る事を示している。あるいは、先ほど冗談めかして言っていた言葉にも少しは本気が含まれていたのかもしれない。

 従属する気はない。

 だけど、一緒にはいてほしい……とか。

 

 自惚れかな、これは。

 

「華蔵ちゃん、ボクら、どうすればいいかな」

「遠くで見ててほしい。最初に浮竹さんの言っていた通り、ここから先は内々の事なんで。もし私が勝ったら、彼らは虚圏に連れて帰る。たとえ私が負けたとしても、かなり弱っている彼を相手取るのは造作も無い事でしょ。これは互いに利益のある提案だと思うんだけど、どう?」

「うーん……でも、それをするくらいならさぁ」

「ああ。彼らを殺さず連れ帰る──それが目的だというのなら、話は別だ。協力しよう、華蔵蓮世。オレ達も君を手伝って、彼らの命を拾い上げる。……君の言う美少女云々を抜きにしても、彼らはここで命を散らすべきだとは到底思えないからな」

 

 言って、私の両脇に並び立つ二人。

 ……。

 

「──ごめん、余計なお世話」

 

 それは、スタークを刺激する結果にしかならないから。

 

(へだ)て」

 

 私も、それを解放する。

 

 

 

 

「別ちて拝せ、双頭龍蛇(アンフィスバエナ)!」

「討て、皇鮫后(ディアブロン)

 

 ハリベルとの闘いは、初手解放だった。

 破面同士なのだ。ノイトラのように素の状態で敵を殺す自信があるならともかく、解放した方が早く済むと考えるハリベルならば、そうするのは必至。

 対して私もわざわざ生身で戦う必要はないと、双頭龍蛇を展開する。

 

 そして起こるのは斬り合い──などではなく。

 

豪雨の射槍(ランサドール・ルヴィア)

断瀑(カスケーダ)!」

 

 己の最も得意とする分野。その撃ち合いだ。

 ハリベルは水と斬撃を。

 私は炎と刺突を。

 

 彼女の放つ大瀑布を前に、高熱を纏う双槍でこれを散らしていく。

 能力には相性がある。初めにハリベルが言った通り、私の炎は水に弱い。

 

 けれど、それならば藍染隊長はハリベルを山本元柳斎重國に当てればよかったはずだ。わざわざワンダーワイスなんてものを作らずとも、恐らく流水系最強に数えられるだろうハリベルで事足りた。

 それをしなかった理由はただ一つ。

 

 あまりに強すぎる炎は、水を消し飛ばす──と。

 ソレに尽きる。

 

戦雫(ラ・ゴータ)!」

九番目の太陽(エル・ヌベーノ・ソル)

 

 大水には太陽で。

 高波には炎幕で。

 

 私の技とハリベルの技がぶつかり合うたびに、周囲に白い蒸気が満ちていく。

 完全に相殺しているのだ。ゆえに互いに決定打はなく、技を撃ち合いがただただ続く。

 

 その均衡が崩れたのは、意外な所からの攻撃だった。

 

「氷輪丸!!」

 

 氷の竜。

 蒸気の詰まった場所にそんなものが登場すれば、私とハリベルは相当な距離を置かざるを得なくなる。

 

「……日番谷さん。どうして、ここに。あっちの私は、まだ負けてないはずなのに……」

「てめェの弱点を突いただけだ」

「私の弱点……?」

 

 なんだろう、それは。

 私にそんな明確な弱点があっただろうか。強いて言えば藍染隊長の完全催眠を始めとした幻覚系の斬魄刀だけど、ヒラコや東仙さんもまだ戦場に出てきていない以上、そんなものに遭遇するとは思えないし。

 私の弱点?

 

 ……うーん。

 

「まぁ、いいや。それで、日番谷さんは何をしにここへ?」

「十刃を討ちに来た。他に何かあると思うのか?」

「つまり──私とハリベル、どちらもを相手にすると?」

「そうだ。当然だろう」

 

 ふむ。

 弱点、とやらが気になるけど──随分となめられたものだ。

 

 乱菊さんとシロちゃん、そのどちらもがいて破面化前の私にも敵わなかったというのに。

 

「らしいけど、ハリベル。どうする?」

「お前が私に敵対しないのなら、初めから共闘して死神を倒せばいいだけのこと。違うか」

「んー。ま、そうだね」

 

 では、と。

 シロちゃんに向き直る。

 

「……卍解。大紅蓮氷輪丸」

 

 私達を相手に迷うことなく卍解するシロちゃん。

 うん。なら、こちらも遠慮はいらないだろう。

 

 ハリベルを助けるために、それを阻止する輩を倒す。

 躊躇はない。

 

太陽の射槍(ランサドール・ソラル)

灼海流(イルビエンド)

 

 炎と水と氷。

 自然界においてあまりに密接な関係を持つ三つが、意思を持ってぶつかり合う。

 

 ただそれは、氷にとってあまりにも険しい苦難の始まりであった。

 

 

 

 

「いや……あの、あのね。乱菊さん。その……私はさ、美少女が好きなのであって」

「何よ~、固い事言いっこなしでしょ~? ねね、アンタ、美少女が好き美少女が好きっていつも言ってるけど、本命は誰なワケ? やっぱり織姫? そうよね、あの子のおっぱいでっかいし……」

「だからその、私は下心とかなく単純に美少女の味方なだけで……」

「またまた。アンタだって男の子なんだから、女の子を見て多かれ少なかれ何か思うトコはあるでしょ? ……それとも不能だったりする?」

 

 えー、今生で最大の敵かもしれませんねこれは。

 

 最初は、良かった。

 乱菊さんとシロちゃん。その両方が臨戦態勢で、緊迫した雰囲気が流れていた。だから私としては良い感じに二人を倒して、縛道とかで縛っておく……あるいは相手をし続けて、ハリベル達を虚圏に返す。そういう手段を取るつもりでいた。

 

 しかし。

 

『松本。オレに作戦がある』

『はい隊長。……はい? え、隊長それ本気で……』

『恐らくは、一番効く。普段からお前がオレにやっている事だ。できるだろ?』

『そりゃできますけど……』

 

 何て作戦会議があった、すぐあとの事。

 

 瞬歩で私の目の前に来た乱菊さん。刀も抜かず、解放もせず、あまりにも無防備な姿で私の傍にきて。

 

 ──私に、抱き着いたのである。

 

 ああ、これは紛う方なき弱点だ。

 私の弱点。いつも公言している、最大の弱点。

 

 ……美少女、美女に手が出せない。

 

 特に乱菊さんは救いたい人の一人だったから、尚更。

 

 そうやって抱き着かれて、酔っぱらってもいないだろうにダル絡みされて、シロちゃんを逃がして。

 今に至る。これは多分演技なんだろうけど、それがわかったところで無理矢理剥がすことはできない。今の私の膂力は、人間の首を簡単にへし折り得るのだから。

 

「……まぁ、実のところを言えば、私は本当に好きな子とかいないんだよね」

「本当に? 誰も?」

「うん。本当に、誰も」

 

 だから、この拘束を諦めるしかない。

 諦めてこのダル絡みと対話するしかない。

 

「乱菊さんが思っているより……私の中には、他者に向ける感情が無い」

「あれだけ美少女美少女言っておいてそれはないでしょ」

「美少女が好きでも、美少女である彼女らが好きなわけじゃない。それは結局、個人に対する感情に乏しいことに他ならない。私にとって美少女とは記号で、アイコンで……私はそれを守りたいだけ。個人に対して劣情を持った事も……ううん、感情を持ったことすらないよ。美少女と友達は守る。それは単純に、私の使命だから」

 

 なんか、喋らなくていい事まで話してしまっている気がする。

 そんなつもりじゃなかったのにな。

 

 ……私は。

 

「ごめんね、乱菊さん」

「え──……ぅっ!?」

 

 それは、未だに隠し持っていたもの。

 黒龍化した私を、そして虚化から戻ったイチゴを眠らせた麻酔薬。

 元の名を、穿点。

 

「ここまで来て、こんなことまでして」

「あ……んた、まちなさ──」

「私を人間として扱ってくれて──ありがとう」

 

 寝ておいて。

 大丈夫。

 

 やるよ。市丸ギンは、私が、必ず──間に合ってみせるから。

 

 

 

 

 

 さて、各地で起こる華蔵蓮世との闘いの中で、最も早く決着がついたのはここ、ティア・ハリベルの従属官との闘いだった。

 それも当然、従属官と十刃では隔絶した力の差というものがある。それは己の仕える十刃の番号に遠く及ばない下位の者であっても同じ。

 

 三人が三人解放を行い、それでも勝てなかったとあって──三人は決意の表情を見せる。

 それは、己らの片腕を用いて合成する彼女らのペット、アヨンを作り出すこと。

 

 果たしてそれは、成しえない。

 華蔵蓮世は美少女である彼女らを救いたいのだ。腕を斬り飛ばすなんてもっての外。それが美少女ではない怪物になるなどあり得ない。

 よって三人は早急に対処された。

 少しばかりヒリヒリする、炎の練り込まれた霊力の鎖。それで彼女らの全身を縛り上げてしまったのだ。こうなっては斬り飛ばすことなどできはしない。

 

 そうして無力化されたアパッチらハリベルの従属官たちは、直後。

 

 とんでもない身の危険に巻き込まれることになる。

 

 

 

「いや、いや! 山本元柳斎重國殿が出てくるとは聞いてないって!」

「儂に名指しの宣戦布告をしておいて、聞いていないとは異なことを言う。突如戦場に現れた複数体の十刃。それが同胞(はらから)へと向き直り、戦闘を行うことで之を救っているとなれば、その真意を測らんとすることは不思議ではなかろう」

「だからって──」

 

 炎が迸る。

 火。火。火だ。

 否、熱そのものかもしれない。

 

 近くにいるだけで喉が枯れ、肺が焼かれていく灼熱は、しかし双方から発されるもの。

 

「華蔵蓮世。藍染からの離反を企て、その意思に逆らい破面を庇う者。故に問う。なぜ、今も尚、藍染を頭と仰ぎ見る。お主の本当の目的はなんじゃ」

「……そんなの決まってる。私は美少女の――」

「戯け」

 

 轟、と。

 周囲、レプリカの空座町が焦げ融け落ちていく。

 既にその刀は抜かれている。炎。炎。

 

 これなるは炎熱系最強の斬魄刀、流刃若火。

 

「本当の目的を聞いた。お主の戯言に付き合うつもりはない」

「……戯言だって? 私の、美少女への気持ちが……戯言?」

 

 ああ、けれど、些細な一言は枯れ葉を山火事へ変える。

 少しばかり逃げ腰だった彼が──山本元柳斎重國に向き直る。

 

 その目は、怒りに燃えていて。

 

「──お爺さん。君、美少女じゃないから。容赦はしないよ」

「来い、(わっぱ)

九番目の太陽(エル・ヌベーノ・ソル)

 

 言葉と共に生成されるは太陽。

 流刃若火が炎熱系最強の斬魄刀なら──何の因果か、華蔵蓮世は炎熱系最強の破面であると言えるだろう。

 炎対炎。

 

 ぶつかり合いは、いとも容易く周辺域に地獄を齎した。

 

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