PREACHTTY   作:ONE DICE TWENTY

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第15話 死なない世界

「万象一切灰燼と為せ、流刃若火」

 

 振るわれる高熱の一太刀。

 九番目の太陽(エル・ヌベーノ・ソル)を割断され、ギリギリの所で避けて──己が肌で感じてわかった。

 

 あっちの方が、熱い。

 

 もしかしたら、私の炎は破面の中では最強に近いのかもしれない。ノイトラの鋼皮を融かし貫く温度。少なくとも十刃の中で炎に類する能力を持つ者はいない。虚圏における最強が集まる十刃にいないのだから──その頂点を名乗っても良いだろう。

 けど。

 それでも、その上ででも、あっちの方が熱い。

 

 年季。経験。熟練。

 どれ一つをとってもあちらには満ち足りていて、私には足りていない。

 

「どうした、童。呆けている暇があるのなら、儂に一突きでも入れてみよ」

「悟った。私は貴方に勝つことはできない。恐らく逃げることさえできない。それはこの時点で確定した」

「ほう?」

()()()()()()()()()()()()()()

 

 他の感情なら、失われて困るものもあっただろう。

 喜怒哀楽の内の一つが失われるのは痛いかもしれないけど、後は任せる。怒りを失い、愛を失った先に何が残るのか。

 

 それでも信念は残る。

 

「死ぬ前に一つだけ訂正させてほしい」

「なんじゃ」

「私は本当に、美しい少女を愛している。戯言ではなく、誤魔化しでもなく。だってそれは、私がこの世に生れ落ちた時から持っている存在意義だから」

「……」

「だから──そこを貶されたのなら、私は報復しなければならない。今、幾人かの私が全力で副隊長各位をこの近辺から逃がした。貴方の霊圧を感じ、元から逃げていた人も多かったけどね」

 

 ああ。癇癪を起したくなる。

 なぜ。あれだけ言っていたのに、私が負けるのは美少女でなく、こんなお爺さんなのか。

 私より可愛い子にしか負けるつもりはなかったのに。

 

 本当に残念だ。

 

黒龍化(ダラゴネグロ)

 

 大きな咆哮を上げて、全身を巨大な龍にする。

 可愛くないから勝率の低いこの姿は、けれど負けが確定しているのならば使っても良いだろう。

 長時間打ち合わなくてもわかる。一太刀も交わさなくともわかる。

 

 私では勝てない相手を、本能的に理解している。

 

「双極を……燬鷇王を破壊した時の姿か」

「うん。私にはいくつかの技があるけれど、炎熱系最強に挑んで散るのならば、これにするべきだと判断した」

「……いいじゃろう」

 

 山本元柳斎重國は、その場を動くことなく。

 剣道のような姿勢で、流刃若火を構える。

 

灼柱虚閃(ラヨ・デル・カロール)。……叶うならば──戦場における全ての美少女が、怪我をすることなく、心を病むことなく──健やかに、また、元の生活に戻れますように」

 

 私の出せる限界の虚閃。

 あるいは王虚の虚閃よりも物理的干渉という点では優れてるだろう。

 

「戦場で敵の息災を願うか」

「美少女に貴賤なし!」

 

 溜めが終了し。

 目をも焼く灼熱が、太陽の光線が山本元柳斎重國一人を狙って発射される。

 

 

「その意気やよし」

 

 

 声は、後ろから聞こえた。

 左目と右目。映す光景が次第にずれていく。

 

 両断されたのだと理解する。

 光線ごと、身体を。私の硬い龍皮さえも、すべてを。

 そして炎が焼いていく。身体を、全てを。

 

「ゆえに、餞別じゃ。お主の信念を踏み躙る言葉──誠にすまなかった」

 

 それが、私の聞いた。

 最期の音。

 

 

 

 

「一人死んだようだな、娘子」

「……うん。あそこまで消し炭にされたら、流石の私も再生できないよ」

「それでも、()()()()()()()()()()()()()とは、並の虚でもそうそうない生命力であろう」

 

 どうやら。

 アパッチ達の方へ向かっていた私が、負けたらしい。

 

 相手は、山本元柳斎重國か。そりゃ負けるよ。格上だもん。

 

「お爺ちゃん……私を、殺さないの?」

「恐怖を覚えさせ、逆らえなくすると言ったはずだ。娘子、お前はまだ儂の恐怖知らなんだ。ゆえに歯向かってきた。だが、これでわかっただろう。……儂は虚圏の王に君臨する者。恐怖を知らぬ者への扱いは心得ておる」

 

 死。

 早々に解放したバラガンを相手にするには、準備不足が過ぎた。

 炎も虚閃も、いつしか消えるものだ。龍とて生物だ。高威力の槍も、速度を削がれたら意味が無い。

 

 彼の前に立ちはだかるには弱すぎた。

 

 死の息吹(レスピラ)

 元々そこまで速いワケじゃない私の響転は簡単に足を捉えられ、首の下までを朽ちさせられてしまった。

 

 だけど、意外なことに──そこでバラガンは滅亡の斧で私の首を斬り、鎖で頭部を縛りつけ、自らの横置いた。

 老いの力に及ばないくらいの距離で。

 

「娘子。お前には目上を敬う礼儀がある。ボスへ向けるものよりも深い敬意を時折覚える。それは何故だ?」

「え……それは、だって、お爺ちゃんは……王様だから。ちゃんと部下を信じて送り出せる王様。自分の力が一番だと思ってたら、全部自分が出て潰せばいい。他者の事を塵だと思っていたら、雑兵の兵団なんか作る意味が無い。……お爺ちゃんは、ちゃんと。従属官のみんなを愛していた。そうでしょ?」

 

 何度も言うけれど。

 バラガンは独裁的ではあるにもかかわらず、部下から慕われる良い王様なのだ。

 藍染隊長のようなやり方ではなく、信頼を築く方法を知っている。

 

 今この状況もそうだ。

 圧倒的な力を見せつけて、けれどまだ殺さない。隷属するのなら生かす。それは一見して恐怖で縛り付けているようにも見えるけど、違う。

 バラガンは対話をする。あるいはそれは、死神に対してまでも。

 初めから自分に対してしか話していない藍染隊長とは、天と地ほども違う。彼は確かに天才だし社長っぽい気質があるのだろうけれど、それは決して王の器に類するものではない。

 

 支配ではなく統治。

 強いからこそ弱きものがどう行動するかを知っている。

 

 老いとは時間。そして時間とは経験だ。

 

「私は、ほら。シャルロッテさんと……親友、ってくらい、友達だったから、わかるよ。お爺ちゃんの事。ううん、だからこそ疑問ではあるかな。一度身内になっておいて、こうやって裏切って……貴方の前に立った私を、どうして()()()()()()()()()()()()()

「……ふん。此度の戦いで、儂は愛用の従属官をすべて失った。であれば、次なる部下が必要だ。そこで……クールホーンの霊圧を少しでも引き継いだ娘子ならば、奴の意義もあったのであろう。そう考えたまでだ」

 

 継ぐ。

 ……ああ。それは、いい考えだ。良い概念だ。

 死を、老いを司るバラガンの口から出る言葉となれば、尚更に。

 

「そこで大人しく見ておれ、娘子。これより儂は、儂のこの絶対の力で奴らを滅し、堂々と虚圏へ凱旋する。安心しろ。お前が気にしているハリベルやハリベルの従属官も、必ず連れ帰る。癪だが、第一十刃(プリメーラ)の小僧共もな」

 

 嬉しい言葉だった。

 ちゃんと見てくれている。ちゃんと私がやりたいことを理解してくれている。

 

 別にバラガンはそもそも人間や死神が嫌いなわけじゃない。自分に逆らう者が嫌いなだけだ。だから、虚圏の王になって、そうでありつづけることができたら──わざわざ現世へ行く事もなかったのではないだろうか。

 藍染隊長さえいなければ。

 虚夜宮で、王として、末永く君臨し続けていたのではないだろうか。

 

 ……ああ、ダメだな。

 砕蜂を無事に帰したいと願うのなら、バラガンをどうにかしないといけないのに。

 バラガンに生きていて欲しい、なんて。また、身に余る願いを。

 

「──お爺ちゃん」

「なんじゃ、娘子」

「ごめんね」

 

 波状延焼虚閃(セロ・ルラマーズ)

 

 首一つになっても、生きている。

 なら虚閃が撃てる。単純な話だ。

 

 ああ──これは、本来発生してはならない天秤だ。

 美少女と、友達。それを天秤にかけた時、どちらに傾くか、など。

 

 ──私が持ってきた感情は苦悩。

 ここで私が死んでも、まぁ。

 苦悩がなくなるくらいは、いいだろう。

 

「……理解し得ぬか」

「うん。それでも私は、あっちの隊長さんに傷ついてほしくない」

「幼いな……あまりにも」

 

 バラガンが、その骨の手で波状延焼虚閃を止める。

 

「……なに?」

 

 止めた……ように見えたのは、一瞬。

 回り込んだ波状延焼虚閃がバラガンの身体に纏わりつかんとし──けれど、バラガンが大きく退いた事でそれは回避された。

 

 されてなお、広がり続ける波状延焼虚閃。

 

「これは……」

波状延焼虚閃(セロ・ルラマーズ)。……粘性を持った炎の虚閃。その本質は、全てを巻き込んで大きくなり続ける事にある。この波はね、減衰しないんだよ。止め方はいくつかあるけど、少なくとも老いじゃ無理。むしろ時間が経てばたつほど、回転すればするほど──育つ」

 

 死の息吹(レスピラ)に触れた波状延焼虚閃が。バラガンに近づいた波状延焼虚閃が。

 その部分だけを巨大な刈り取り機にして、さらに彼へと迫っていく。

 

「……何故だ、娘子。何故、儂に逆らう」

「できることなら。此度現世に来たみんなは、誰も死んでほしくなかったよ」

「それは、叶わん願いだな」

「うん。だから──多重波状延焼虚閃(アルヴィオン・セロ・ルラマーズ)

「──なんだと」

 

 バラガンの背後。バラガンの横。バラガンの足元。バラガンの頭上。

 正面のものを止め、なおも絡みつくソレに対処している最中の彼のその周囲に、追加で波が花を開く。

 

「──この世には、衰えないものが存在する。その中でも波は、条件さえ整えてやれば……どこまでも、どこまでも飛んでいくものなんだ」

 

 太陽。

 光の下にある、髑髏面に告げる。

 

 割れた。バラガンの骨の一部が、波状延焼虚閃に巻き込まれて破損を引き起こした。

 折れた。指先がへし折れた。零れた。

 

 それは、溜息が。

 

「問うぞ、娘子」

 

 砕け散りながら、バラガンは言う。

 

「誰のために戦う」

「自分のため」

 

 言葉に、バラガンがニヤりと笑う。

 同時、トン、と。

 

 私の頭を撫でる硬質な感触。

 

「それは……なんとも──」

「弐撃必殺」

「──虚しいもの、よ……」

 

 その金色が、視界に入った時。

 

 私の生も、終わっていた。

 

 

 

 

 

 そこは、白い靄のかかった空間だった。

 時折ぶつかり合う衝撃も、靄を晴らすどころか増やす結果になる。

 

 水と炎と氷。

 

 ここが戦場において最も激しく、最も長いぶつかり合いでありながら──三人が三人とも千日手という珍しい状況。

 

「群鳥氷柱!」

「トライデント!」

炎痕(ルラマ・ラストローズ)!」

 

 まただ。

 立ち昇る氷柱を霧の斬撃が切り裂かんとして凍らされ、そこへ炎が入ってまた蒸発する。

 どの順番だろうと同じ。

 ある意味で実力の拮抗した三人では、決着というものが付けられない。

 

「埒が明かねぇな……」

「お前もそう感じていたか」

「それじゃあ、どうかな。ここらで一つ、勝負をしよう。全員で最大威力の技を撃ち合うんだ。それで、一番強ければ勝ち。そのまま相手を殺すも良し、慈悲をかけてやるも良し。簡単じゃない?」

「待て、華蔵。そのルールではそっちの隊長格にとってフェアとはいえない。それに、お前の最大威力の技は炎ではないだろう。ぶつけ合いとしてあまり益のあるものとは思えない」

 

 真面目か。

 炎と水で結託して、プラス私の槍でシロちゃん倒しちゃえば良かったのに。ちゃんと急所外すからさ。

 それで勝ち、でよかったのに。

 

「おい、オレは情けをかけろと言った覚えはねえぞ。ここは戦場だ、不平等くらいある。その上で勝てばいいだけだからな」

「だってさ、ハリベル。仲間にかける情けは君の良い所だけど、敵にかける情けは侮辱とおんなじだよ」

「世界で一番お前に言われたくはないが……まぁ、いいだろう」

 

 ハリベルが、皇鮫后(ディアブロン)を構える。

 私がぐぐいと身体を絞る。

 

 シロちゃんは。

 

「──だから、これも卑怯とは言わせねえぞ」

 

 氷天百華葬。

 小さな呟きと共に──彼の身体が、氷のように砕け散る。

 

 同時。

 

 周囲、何も見えない程にかかっていた白靄の、その全てが凍り付き。

 

 私達は。

 

 

 

 

 

 

「……(へだ)て」

 

 

 感じていた。

 各地の私が散って行くのを。

 

 土台、無理な話ではあった。

 美少女を守るために原作の大筋を変える。それは可能だ。

 だけど、だからといって。運命を変えられたからと言って──私が強くなるとか、そんなことはない。

 

 チート能力は結局この世界用にコンバートされてしまった。それは絶対の力ではなく。

 

 この世界における最強達に対しては──こちらも最強で挑まなければ、無理だ。

 だから、各地へ行った私は、己の最強を封じた。

 

 目的の遂行がメインだ。

 決して、現れた障害を取り除く事をメインにしてはいけない。

 

 

「──蓮華蔵世界(ティル・ターンギレ)

 

 

 槍が消えていく。

 同時、空を黒が覆う。シロちゃんの天相従臨とは違う、あるいは隣にいる京楽春水やどこかにいるだろう浦原喜助の卍解を思わせる、黒。

 真っ黒な霊圧の、海。炎で出来た水が満ちる海。

 

 そこに、幾本もの蓮の花が咲いている。

 

 私の足元にも、巨大な花が一つ。

 

「これは……」

「卍解……いや、帰刃(レスレクシオン)って奴かい、華蔵ちゃん」

 

 雨が降る。

 黒い雨だ。

 

 けれどそれは──非常に高い粘性を持つ雨だ。泥、に近いのかもしれない。

 泥中の蓮とはよく言うけれど、蓮の上に泥の降る世界は、果たして何を意味するのか。

 

「っ、く!?」

「うわわっ、ちょ、ちょっと華蔵ちゃん、こんなのやるなら事前に」

「……! 京楽、不味い! この雨は!」

 

 炎痕。

 小さく、口から──ライターくらいの火を出す。

 

 瞬間、世界が爆炎に飲み込まれた。

 

 

 

 

「……随分と荒っぽい解放を使うな、七番。アンタが今まで見せてたソレとは明らかに違う……途中までしか解放してない、みてぇな事かと思ってたが、とんだ勘違いだったようだ」

「ああいや、それであってるよ。ただ途中も途中、序盤も序盤だったってだけで」

 

 浮竹十四郎も、京楽春水も。

 爆炎に呑まれて落ちた。泥の溜まった蓮の底。あるいはそれを突き破った現世の地上へ。

 

 今ここにいるのは、第一十刃(プリメーラ・エスパーダ)のコヨーテ・スタークと。

 第七十刃(セプティマ・エスパーダ)の私だけ。

 

「ああ、そいや、一応通達だ。藍染様曰く、アンタは第四十刃に昇格だそうだ」

「へえ。別に強さを決める数字でもないのに、数字が上がる事を昇格っていうんだね」

 

 7の数字に傷が入り、反転する。

 このエスティグマ、どういう仕組みなんだか。

 

「しかし……これがアンタの世界。アンタの本性ってワケだ」

「うん。ちょっと珍しいよね。虚でこういう風に世界を変える系、あんまりいないでしょ。どっちかというと卍解に近いけど、でもまぁこれが私の帰刃だよ」

「……俺達の帰刃ってのは、俺とリリネットのような例外を除き、刀剣に込められた虚としての核……つまり元の自分の力を取り戻すモンだ。……それが、こんなカタチになるってことは」

「まぁ、そうだね。……散々名乗っておいてアレだけど、私は虚じゃないよ。虚に似ているもの、という表現が正しいかな」

 

 絶えず降りしきる雨は、当然スタークにもふりかかる。

 だというのに彼が濡れていないのは、偏に虚閃を撃っているからだ。

 

 撃ち続けている。自身の頭上に向けて、連続の虚閃を。

 

「いやまったく、虚圏より息の詰まる世界があるとは思わなかった。……蓮華蔵世界(ティル・ターンギレ)、だったか。そりゃどこの話なんだ?」

「死後の世界だよ。尸魂界でも虚圏でもない、ただただ清く、ただただ静謐な世界」

 

 龍の爪を、両側五本の爪を重ね合わせる。

 手のひらの境。

 

 そこに出現するは、小さな小さな太陽。

 

 降りて触れた泥が太陽に当たるたび、小さな爆発を起こす。

 そう、この泥なるは可燃性の泥。オイルやニトロなんかの爆発物が色々混じったものだと考えてくれたらいい。

 ゆえの爆炎だ。

 この世界で大きな火が立てば、忽ち爆炎が全土を走り抜ける。

 

「お話はこれくらいでいいかな、スターク」

「ああ。……行くぜ」

 

 片方を天に、もう片方を私に。

 それは剣でなく、銃。

 

 お願いだからリリネットちゃんの弾頭は使わないでくれ、と願いながら。

 

無限装弾虚閃(セロ・メトラジェッタ)

金輪光冠短矢(ダルドス・ソラルズ)

 

 細いダーツの形に形成した太陽を、スターク目掛けて投げる。

 迎え撃つは無限に思われる虚閃の軍勢。それは泥を吹き飛ばし、私に向かい。

 

 爆炎が世界を包み込んだ。

 

 

 

 

「……無傷かよ。ったく自信失くすぜ」

「そっちこそ、どうやって避けたの? この世界全体を覆う爆炎なんだけど」

「……別に、泥さえ体に付着してなきゃ自分の身体が燃えることはねぇんだ。だったら、全部の泥を回避して、ダーツから連鎖的に爆発する爆炎に対して自分の虚閃で壁を作って相殺してやればいい。爆発の起点が自分に近い分対処はしやすかったよ」

「ふぅん。やっぱり目が良いね、スタークは。ああ、私が無傷な理由は簡単だよ。フツーに全身散り散りレベルにぶっ飛ばされたけど、再生しただけ。蓮華蔵世界はね、死なないんだ。常若の国だからね」

「……イヤな予感がしてるんだが、確認いいか?」

「うん。勿論君にも適用されるよ」

「あー……もう、確認はしなくてよくなった」

 

 だからこの世界は、確実に助けるための世界でもある。

 傷を負っても治る。死ぬほどのものでも、だ。

 

 ただし、リリネットちゃんを使った弾頭だけはどうなるかわからないから、使う事は控えてほしい。あれは魂を裂いて撃ち出すもの。原作では明言されてなかったけど、アニメ版では「そんな自滅技ある?」ってものになってたから。

 

「さぁ、一番。確実に殺し合おう。絶対に死なない世界で、絶対的な力を使い合おう。そして教えてあげるよ──」

 

 今度こそ、本気の。

 手に湛えるは1600万度の塊。

 

 炎槖の槍(ランサ・デル・フューゴ)

 

 それを出しただけで、世界が明るくなる。燃え続ける。燃え盛る炎の槍。

 少なくとも、何もない虚圏ならともかく──現世で出すべきじゃない槍を。

 

「君達に勝る存在が、こんな身近にいるんだってことを!」

 

 投げる。

 射出する。

 

「──……ああ」

 

 その声は、あまりにも悲痛な。

 

PREACHTTY

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