PREACHTTY   作:ONE DICE TWENTY

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第4話 突入! 死神の世界……じゃなくない?

「行くよ、黒崎!」

「う!?」

 

 踏み込んで斬り上げる。槍とは突くものであると思われがちだけど、斬撃にも長けているからこそのあの全世界シェア率だ。形状は多々あれど、突いてよし斬ってよし、もしもの時は投げて良しと剣より汎用性がある。防御の際も両手で相手の攻撃を支える事の出来る形状だから、力を籠めやすいし。

 剣に劣る点はその威力だろうか。全体重をかけて振るう刀剣に対し、どちらかというと力を籠めるのは足……地面へ向けてである槍では少々差がでる。

 とはいえ今のイチゴは無手に近い状態。未だその名を呼ぶこと無く、未だ私に対して躊躇している様子だから、押し切れる。あ、因みに今のは浦原喜助の反応を見ての感想ね。実際に見えてるわけじゃない。

 

「か、蔵……なんでっ、お前、こんな戦い慣れてっ」

「そらそら、いいのかい黒崎。私みたいな美少女に良いように弄ばれて。ああでも安心して欲しい。美少女の足を舐めて良いのは美少女だけだ。野郎になんか汗の一滴もくれてやるもんか」

「何の話だよ!?」

 

 双頭槍の良い所は攻撃の手を休めなくていい事。弱点は取り回しに若干の難があることと、槍の動きに体を合わせないといけない事だろう。姿勢制御がかなり大事になる。だから結構スタミナを消費する。ま、そのために日々のトレーニングは欠かしてないんだけど。あ、違う。美容用ね美容用。

 ふ、それでも私の腹筋は六つに割れているゼ!

 

 しかし、器用なものだと思う。

 致命傷になりかねないのは意図的にやらないようにしているとはいえ、私の穂先の全てを躱し、時折はその柄で防御し。うんうん、やっぱり目がいいね。

 

「あのー、華蔵サーン。そんな悠長にやってたら日が暮れちゃいますよー?」

「アレ、時間は無制限じゃ?」

「無制限は無制限スけど──殺気が足りない」

「そりゃまぁ、殺す気はないからね。殺す術を持っているからと言って友達を殺す奴ような奴じゃないよ、私は」

「そっスか。じゃあ」

 

 仕込み杖から、剣が抜かれる音がする。

 痺れ切らしたか。じゃあ。

 

「華蔵サンが黒崎サンを殺さないなら──アタシが華蔵サンを殺します」

「──安心しなよ、黒崎。美少女は死なないから」

「啼け、紅姫」

 

 付き合おう。

 

 振り返り、イチゴの前で──肢体を晒す。

 それはまるで、イチゴを守るかのように。

 

「──!!」

 

 見えずともわかるようになった霊圧。

 確実に私の命を刈り取るモノ。例え部分龍化を施した所で生き永らえるかどうかはわからない──それほどに強力な斬撃。見えないはずなのに、赤く見えるモノ。

 

 ああ、けれどそれは。

 

 私の前で剣を突く彼によって──止められた。

 柄も鍔もない、長大な包丁が如き斬魄刀。

 

 ……だと、思う。

 おーいなんでこんな名シーン見せてくれないんだよー!

 イチゴが叫んだ言葉も聞こえなかったし。斬月! に決まってるけどさ。

 

「……何、黒崎。私があんなのに殺されるとでも思った?」

「うるせぇよ」

 

 聞こえない。

 けど、そう言っているのだろうことはわかる。

 

 そうして彼は……私の頭に、手を置いた。

 ようやく、見えるようになるその姿。ああ、やはり、原作通りの。

 

「うるせぇんだよ、てめーはいっつもいっつも。やることなすこと矛盾してんだ。ちっとは有言実行しろ」

「……は? わ──私が何を矛盾したと! それに、言った言葉はちゃんとやってる! 浅野と一緒にするな!」

「そこで啓吾出してくんのはなんかアレだな……。じゃ、なくて」

 

 イチゴの顔は。

 まるで、幼子をあやす近所の兄ちゃん、みたいな。

 

「いいか、黒崎。私は美少女なんだ。美少女は間違わない。認識を、」

「美少女の自覚あんなら、自分の身の安売りはやめろ。井上の時も、チャドの時も。そんで今も。二人とも気にしてたぞ。まるで自分は盾だって、盾として使ってくれと言わんばかりに前に立って、見えない敵に突っ込んでいった、って。それでホントに怪我して帰ってくるんだ、守られた側は堪ったもんじゃねぇ」

 

 おまいうが過ぎる。

 イチゴだってそうじゃないか。原作において、そればっかりじゃないか、イチゴは。

 私は良いんだ。自力で治す術を持っているから。

 

「華蔵」

「ぅ……」

「お前は可愛さとカッコよさを両立してーみたいだが……そりゃ無理だぜ。なんたって」

 

 イチゴが私の頭から手を離す。

 見えなくなっていくその身体に──惜しさを覚えて。

 

 耳と瞳を、縦に割る。

 

「カッコよさは、オレが貰っていくからな!」

「ちょ、警告とか無しスか!? ッ、血霞の盾!」

 

 白光が飛ぶ。

 修行部屋を激震させる威力のソレは、真っすぐに浦原喜助へ向かい──。

 

「ストーップ! 今アタシ帽子無いんスよ、わかってますか黒崎サン!?」

「ああ、わかってる。だけど、アンタコイツを殺すんだろ? なら、オレも覚悟を決めなきゃなんねぇ」

「いやいや、さっきのはアナタ達を本気にさせるための言葉の綾であって──あ、聞いてもらえない感じスね、これ」

「そこで麻酔針の登場である」

 

 プスッと刺す。

 さっき握菱鉄裁が「絶望の縦穴」から昇って来た時、「もしもの時はこれを」と渡されたものだ。曰く某名探偵の奴より威力が高いらしい。なお、ドラゴンになった時の私を眠らせたのもコレだとか。

 

「ナイスです華蔵サン!」

「まぁ身内に対してが一番警戒薄かっただろうし。……これでレッスンは終わりだよね」

「……はい。どうやら丁度、あちらのお二人も終わったようですし……これで」

「うん」

 

 ジン太と雨ちゃんが眠りについたイチゴだろう霊圧を運んでいくのを後目に、急にシリアスになった浦原喜助、握菱鉄裁と対峙する。

 

「最後は──アナタだけっス」

「……うん」

 

 

 

 

 まぁ、簡単な話だ。

 霊圧知覚ができるようになったとしても、見えなきゃやっぱり意味が無い。

 尸魂界は全てが霊子で出来ているんだ。それが見えないとなると、盲目よりも悪い状態……つまり全てが荒野に見える、みたいな事態になりかねない。建物の霊圧を一個一個覚えるなんて狂気の沙汰だし、そうでなくとも尸魂界には無数の魂魄がいるんだ、それをかぎ分ける、なんてのは何百年とそれを行ってきた東仙隊長くらいにしかできないだろう。

 

 だから、最後。

 私が霊的存在を見る事が出来るようになるまでの、修行。

 

「龍化、でしたっけ。アレは無しッス。あれ無しで、アタシたちの波状攻撃を避け切ってみてください」

「武器はアリ?」

「ああ、あの槍は構わないスよ」

 

 うん。

 じゃあ。

 

「お願いします」

「まずは軽く行きますぞ! 破道の四 白雷!」

 

 なーにが軽くか。ソレ人体軽々と貫けるヤツじゃん──とか思いながら、足を開いて姿勢を低くし、双頭槍を回しながら背後へ斬撃。その最中、浦原喜助の口が破道の十一、綴雷電を紡いだことを確認。斬り上げた方ではない方の穂先を地面について、全身を持ち上げる形で跳躍。

 尚も地面を、そして槍を伝ってくる雷撃に、しかたなくコレを蹴り飛ばす。

 

「破道の五十八、闐嵐!」

「いきなり飛ばすじゃん! っ、防ぐけど!」

 

 蹴り飛ばした槍を消し、再度出現させることで竜巻を防ぐ。四、十一からのいきなり五十八はびっくりするでしょ。

 

「……おかしいッスね」

「何が?」

「ホントに見えてないんスか?」

「うん」

「……なら、どうして」

 

 浦原喜助の目が暗く光る。

 

「どうして……鬼道の効果を知ってるんスか? まるで範囲も威力も速度もわかっているかのように避けるし防ぐ……見えていないとは到底思えない」

 

 ……ふむ。

 やばいな、言い訳が思いつかないぞ。

 昔、野良の死神に会った事がある……は、なんで見えてんねんって話だし。

 昔、鬼道衆に会った事がある……は、ンなわけないし、なんで見えてんねんって話だし。

 昔、死神代行だった人に会った事があってー……は、地雷過ぎるし。

 

 えーと。

 

「浦原さん、知っているかな。美少女の衣服は──傷つかないし、汚れない」

「またそれスか」

「故に汚れそうなものには敏感だし、傷つきそうなものの気配は肌でわかる。浦原さんが美少女になればこの感覚も──」

「縛り紅姫」

 

 出ているのだろう網を避ける。そういえば斬魄刀抜いたままだった。あぶなー。

 

「火遊紅姫──数珠繋!」

「ッ、ブレス!」

 

 至近距離での連鎖的大爆発。それに、炎のブレスで対抗する。

 

「──アタシの斬魄刀の能力までも、美少女だから、とかいう誤魔化しで通ると思ってますか」

「えーと」

「一応、もし、わかってないと困るんで言っておきます。──今、アタシらはアナタを疑ってるんスよ。妙に戦い慣れていて、自身の能力も十全に使いこなしていて、それでいて霊圧に対してとんと無知なアナタを。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……みたいだと、アタシは思ってます」

 

 ああ。

 あー、そうか。そうだよね。

 そういうことか。

 

 藍染隊長の手先だと思ってるんだ!

 いや、うん。うんうん。怪しいよね。わかる。

 

「うーん、じゃあ白状するけど」

「はい」

「こう、イメージが見えるんだよね。ああこれは、実際に視覚情報として見えてるんじゃなくて」

 

 アニメや漫画で知ってるから、その鬼道がどのような範囲・効果・速度で襲い来るのかわかる。強度や威力も、何もかも。

 そのイメージが脳裏にこびり付いている。

 

「……言霊を読み取る力」

「成程、それならば納得が行きますな。斬魄刀の始解や技も言霊といえば言霊です。そうあるように、それを放つように斬魄刀へ伝えるための霊的な言葉。鬼道の詠唱は言わずもがな、あるいは一部の虚の能力でさえもそうでしょう」

「だから、たとえば無言で鬼道使われたりすると全く反応できないんだよね」

 

 言葉の最中に放たれた這縄に、何の抵抗も無く捕まる。

 ……実は音で気付いていたけど、これで説得力は出たでしょ。

 

「……とりあえずは納得しました。それで……結局見えないんスよね」

「うん」

「でも、自分の体は見えている」

「あ……確かに」

「その龍を思わせる能力。明らかに霊子体になる力だ。正直肉体から直接霊子になっていく様はアタシとしては見ててヒヤヒヤするんスけど、それは置いておいて……少なくとも自身の体が霊子になったとしても、アナタは見えなくなったりしない。目や耳を龍にしていなくとも、ス」

「ということは、華蔵さんは霊子が見えないのではなく、認識できていないだけ、かもしれませんな。あるいは霊圧を音として感じているように、何か別のものに見えている、とか」

 

 這縄を解いてもらって……自分の腕を見る。

 一度ドラゴンにして。……うん、見える。戻しても、やっぱり見える。

 

 何が違う?

 這縄と、腕。

 見比べる。霊圧の縄は、どこか……透明度の高いゼリーみたいな感じ。大して腕は、しっかりとした作りの漆黒。

 

 違いは。

 

「薄い……んスねぇ」

「うん。多分」

「成程……」

 

 三人が三人わかった。

 これは。

 

「華蔵サン、アナタは己が能力である龍化に慣れ過ぎてしまっている。その身体は霊子密度が果てしなく高い。だから、それが基準になっている。……しかし、フツーの人間の魂魄はもっと密度が低い。鬼道もそうだ。ゆえにアナタの目に映る魂魄や霊的存在は、それこそ大気のように小さな粒にしか見えない」

「ということはさ」

「ハイ。ご想像通り、アナタは視力が悪いんス。暗い部屋でずーっとゲーム機の画面見続けて生きてきた、みたいなもんスからね。近くのもの、遠くのもの関係なく、強い光でも発していないと見えなくなってしまっている。なら」

「眼鏡をかければいい」

「そうス。そして……なな、なんと! ここに霊視用メガネが!!」

 

 ホントに持ってた。

 かけさせてもらう。

 

「おお……。……? 特に、何も変わらないような」

「そりゃそうスよ。だって今霊的存在ここにいないし。けど──縛道の二十一、赤煙遁!」

 

 ぼふん! と、赤い煙が出る。

 おおおお!

 眼鏡を外す。何もない! うおおおお!!

 

「今赤煙遁の致命的な欠陥が見つかった気がしますが、これで解決ですな」

「いやぁ良かった良かったァ……所でですねェ」

「でもお高いんでしょう?」

 

 何か言われる前に、問い返す。

 これは欲しい。必須アイテムだ。これでようやく盾舜六花とか斬月が見れる!

 

 けど、良いものには対価がいる。

 

「いえいえ、お金は取らないッスよ。ただ……」

「まさか……美少女のカラダを……? い、言っておくけど私一応男だからね!」

「はい、そのまさかッス」

 

 大きく後退する。

 

 って、アレ、眼鏡は。

 

「逃げちゃダメッスよ。逃げるならこれはあげない」

「ひ、卑怯な!」

「公正な取引でしょう。……といっても、今のアナタに何をする、ということはありません。アタシが興味あるのは、アナタが龍と呼ばれるものになった時だ」

「どちらにせよ身の危険」

「その時の細胞をちょーっと貰いたいんスよ。それで、それだけでこの眼鏡はアナタに上げます。どうです、良い取引でしょう」

 

 言えない。

 ドラゴンになる能力は転生者チートなので多分調べても何もわからない、なんて言えない。

 浦原喜助の好奇心を満たすものではないですよ、なんて言えない!

 

 言えないし、言わない方が……私に得かなって。

 

「わ……かった。それで手を打つ。だから、眼鏡をください」

「毎度ありッス~♪」

 

 こうして。

 散々の修行とか関係なく、便利アイテムによって私は霊的存在の視覚情報を手に入れたのだった。

 

 

PREACHTTY

 

 

 八月一日、夜。

 

「帰んないんスか」

「メールはしたし。別れの挨拶は、済ませてあるし。あ、遺書も書いてあるよ」

「……死ぬ気スか? そんな人がいると、全体の士気まで下がりそうだ……」

「美少女が死ぬとか本気で思ってるの? さらに男の娘だよ? 尸魂界だって、喉から手が出る程欲しがるって」

「……その言い方だと、尸魂界から戻ってこない、みたいなカンジになっちゃいますけど……」

「確かに。あぁ、美少女はつらいね。二つの世界からモテモテの板挟みだ」

「アタシも……話してると疲れる、って言われる方スけど。華蔵サンも調子いい時はなーに言ってるか全然わかんないッスねー……っと」

 

 浦原喜助と他愛のない雑談をしていると……歩いてくる影があった。

 長身。巨体。

 

「や、茶渡。久しぶり」

「ム……ああ。久しぶりだな、華蔵。腕はもういいのか?」

「前見せたでしょ。あの時点で治ってたよ」

「そうか」

 

 そして更に。

 

「ん、華蔵と……チャド? なんでここに」

 

 イチゴ。すんごいラフな格好で来たな。

 

「朽木ルキアにも、華蔵にも借りがある。……俺も行く」

「ちょ、え……何?」

「なんだ、聞いてなかったのか黒崎。……と、初めましてだね、えっと……」

「華蔵。初めまして、この前空座町を未曽有の危機に陥れようとした滅却師さん」

「うっ……!?」

「ダメだよ華蔵ちゃん。石田くん、反省してるって言ってたし……。ね、石田くん?」

「あ、ああ。……そうか、あの時の襲撃で、直接の被害を被ったのか。それは……すまなかった」

「おかげで私はこの変態店主の実験体にされてるんだよー織姫ー」

「何……?」

「ちょ、華蔵サンややこしくなること言わないで! 正当な取引でしょ、その眼鏡! 結構材料費高いんスからね!?」

「眼鏡? って……ホントだ、華蔵。お前眼鏡かけるようになったのか」

「コレかけてればユーレーが見えるんだよ。あと不思議な壺と、幸運の絵画も買った」

「華蔵さん、それは騙されているよ……」

「だーからややこしくなること言わないで! 売りつけてません、売りつけてませんから! だから黒崎サンも石田サンも茶渡サンもそんな目向けてこないで!」

 

 一気に騒がしくなった夜に、少しだけ笑う。

 ……大丈夫。

 

「それで?」

「うん?」

「茶渡と石田と井上が尸魂界に行く理由はわかったよ。でも……華蔵。お前は何のために行くんだ?」

「え?」

「別にお前、ルキアと特に関係性無いだろ。その……あんまし学校でも喋ってなかったし、虚とやり合ってる時はお前から逃げてたし。お前は何のために行くのか、って聞いてんだよ」

 

 ……。

 ふむ。そういえば、考えたこと無かったな。

 当然の流れで行くものだとばかり。

 

 確かに私、ルッキーアに関りはない。避けられていたような気もするし、避けていたし。

 

 けど、至極単純だ。

 

「だってこれから美少女が処刑されるんでしょ? ──行かない理由、ある?」

「ああ……お前はそういう奴だったよ。久しぶりに痛感した」

 

 それ以外にも、美少女が沢山傷つくし、沢山泣く。

 私は全美少女の味方である。美女も含む。

 

「ハイハーイ歓談はそこまで。尸魂界への門は中で開きますんで、ささ、どぞどぞ」

 

 ぞろぞろと浦原商店に入って行く皆。

 私も、何を言うことなく入って行く。織姫とイチゴの決意の話は、二人の大切な話だから。流石の美少女といえど空気を読む。

 

 そうして入った浦原商店の、その地下。修行部屋。

 織姫が120点のリアクションをした後──ようやくの本題に入る。

 

 浦原喜助が指パッチンして形成するのは、穿界門……にしておこう。今は。

 

「いいですか。アタシたちがこの門を開いてられるのは最大四分。引き伸ばして引き伸ばして四分ス。だから、君達はそれまでに向こう側に辿り着かなければならない。辿り着けなければ現世と尸魂界の狭間で永遠に彷徨うことになる」

「ところがどっこい私がいるんだなーこれが」

「……華蔵サン?」

 

 全身を。

 黒い黒い、ドラゴンに変化させていく。

 この門を通り抜けられるくらいにはスリムに、背は広く、そして速く飛べる姿へ。

 

「わぁ……」

「な……なんだ?」

「これは……」

「ナルホドナルホド……それならば確かにイケそうですね」

 

 そこにはもう、世界一可愛い天使ともいえる美少女華蔵蓮世たんは、いなかった。

 漆黒のドラゴンが、ただ、静謐に首を降ろしているだけ。

 

「何やってるの? 早く乗ってよ」

「あ、声は華蔵ちゃんのままなんだ」

「シュールだな……」

「そこの黒猫も。夜一ちゃんだよね。あんまり爪は立てないで欲しいけど、乗って乗って」

「……一つ、問題がある」

 

 しゃがれた声で、黒猫が喋る。

 もう「キェァアアアアネコガシャベッタァァアアア」の件は済んでいる。

 

「問題?」

「その姿で飛べば確かに早いだろうが──尸魂界に出た時、どうする気じゃ?」

「……」

「死神共は口々に言うじゃろう……虚だ、虚が来た、とな」

「……」

 

 確かに。

 単純にドラゴン型の虚が攻めてきたって思うよね。

 

「しょーがない、走るかぁ」

「それがいいじゃろう」

「あ、元の華蔵ちゃんに戻ったー」

 

 ちょっとは体力消耗を抑えられるかと思ったのに。

 ままならないな。

 でもぶっちゃけ旅禍になるんだから虚の一匹引き連れてても良くね? とか。

 

 ダメか。

 

「話し合いは終わりましたか? んじゃ、開けますよ。──開けると同時に突っ込んでください。いいですね?」

 

 そういえば。

 なーんも聞かなかったけど、私に霊子変換器って効果あるんだろうか。能力で霊的存在になれる体は、果たして器子でできていると言えるのだろうか。

 

 探検隊は何もわからないままアマゾンの奥地へと向かう──。

 

 

 

 

「あれ」

 

 光の中に飛び込んで。

 気付けば……なんか、谷みたいな場所に。

 周りには誰もいなくて。

 

 もしかしてここって。

 

「叫谷……?」

 

 オイオイオイオイオイ。

 もしかして、劇場版デスカー!?

 

 




(劇場版には行か)ないです。
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