PREACHTTY   作:ONE DICE TWENTY

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第5話 必滅必倒! 解放された双頭槍

 劇場版は回避された。

 というのも、ダーク・ワンっぽいのが一人もいなかったから。

 ただただ単純に私だけ弾かれて、断界内の小さなポケットに入り込んだ、ということらしい。……うーん、困った。

 

 これ永久封印とかですか?

 

「……とはまぁ、ならない。何故なら私は美少女だから。知っている。美少女がこの空間を繋いで揃えて最終的に霊王宮へ移動したあのシーンを……」

 

 ああやって作り替える、のとかは無理だけど。

 ──力でぶち抜けばなんとかなるって、藍染隊長に習った。

 

 

 

 完全なドラゴンに変身する。

 そして口元に集束させていくのはドラゴン・ブレス。

 鮮やかな赤と緑の混じったその球は、確かに虚の使う虚閃に似ている。

 

 ……なら、どうせ誰も見てないし、ふざけてしまおうか。

 

偽・王虚の虚閃(ファルソ・グラン・レイ・セロ)!」

 

 断界の壁。叫谷の隔たり。

 ぶち抜くは転生チートの極大火力。

 

 ──見えた、光!

 飛び込めーっ!!

 

 

PREACHTTY

 

 

 ドラゴン状態だと虚に見える、との話を受けて、光に飛び込んだ瞬間に元の姿に戻る。その際動けなくなるだとか身体が痺れるだとかはなかった。ちゃんと霊子変換はされてるってことかな?

 それはそれとして、なーんでお空なんじゃろね。

 

「飛べない美少女は! ただの美少女だけど!! それでも、良い!!」

 

 落ちる。

 落ちて──着地する。ヒーロー着地は膝を悪くするのでやめようね!

 

「……さて、ここは……」

「何者だ……と問うて、答えてくれる存在かな、貴方は」

「あぁ、東仙さん……じゃない、東仙隊長」

「なに?」

 

 その声が聞こえた瞬間に、目を瞑った。

 折角の眼鏡が勿体ないけど、仕方ない。

 

「……すまない。私の名を知っているようだが、私は君の霊圧に覚えがない。名を名乗ってはくれるだろうか」

「華蔵。知らないのも無理はないよ。私が一方的に知ってるだけだし。昔西流魂街で東仙隊長を見たことがあるんだよね。その時……えーと、確かあの、でっかい隊長さんと一緒にいて」

「狛村か。……だが、すまない。やはり覚えがない。──それほどまでに強大な霊圧を宿す存在を、私が忘れる事は有り得ない」

 

 殺気。

 ……誤魔化せないか。盲目相手だと、美少女効果も薄そうだし。確か表情とかはわかるんだっけ?

 

「君は、旅禍か」

「どっちかというと、災禍かな」

「ならば──ここで摘み取る!」

 

 その、剣を。

 槍で受け止める。

 

「斬魄刀……いや、違うな」

「流石隊長格……重さが全然違う。けど」

 

 圧し──返す。

 別に、この人相手には何も隠さなくてもいい。どーせ藍染隊長は全てを知っていそうだから。

 

 だから、ハナから全力でやる。

 更木剣八の敵を一人奪ってしまう事になるけど、黙ってたら大丈夫でしょ。

 

 ワンチャン、ここで倒せたら。

 あんな風に──。

 

「鳴け、清虫」

「いきなり始解は聞いてないな!」

「聞かせるつもりも、談笑をするつもりもない」

「なら仕方がない。ブレス」

 

 超音波を発し始めた清虫。これは堪らんと口から炎を吐き出す。

 あまりに突然のことだ、驚いたのだろう。東仙隊長は私から大きく距離を取った。

 

 そして、己の顔を触り。

 

「……今のは……虚閃か?」

「まさか。死神の巣窟に虚持ってくる馬鹿がどこにいるのさ。それとも何か、心当たりでも?」

「……いや。そうだな、どうやら私は無意識に君を下に見ていたらしい。──旅禍ではなく災禍だと、そういった。ならば私は護廷十三隊の隊長が一人として、瀞霊廷を襲う災禍に対処をするとしよう!」

 

 ああ、また。

 発破をかけすぎて状況を悪化させるのは、ホントのホントに悪い癖だね。

 

「卍解──」

弧月槍(ランサ・アルコー・ルーナ)!」

「清虫終式・閻魔蟋蟀」

 

 途端、全ての感覚が途絶えた。

 いや、触覚以外の、だ。耳も鼻も舌も。何も感じない。目は最初から瞑っているけど。

 

「まぁ、それもアリか」

「何?」

「うーん、一応コレは、礼を言うべきなのかな。──これだけ広いドームなら。どんな姿になっても、外から見えないし」

 

 美少女は傷つかない。

 代わりに傷つくのはドラゴンだ。そしてドラゴンは、際限のない破壊を齎す。

 

「私がいいっていうまで、解除しないでね。でないとバレちゃうからさ」

「──やはり、君は」

跳ね回る虚閃(サルタ・ソブレ・セロ)

 

 真黒の世界に、光が満ちる──。

 

 

PREACHTTY

 

 

 護廷十三隊五番隊隊長藍染惣右介の暗殺。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()は、瀞霊廷中に瞬く間に知れ渡った。それと同タイミングで来た旅禍。結びつけないはずがない。

 隊長格二名が同時にいなくなるという事態に動揺を隠せない隊員も多い。

 そして、旅禍への怨恨も──。

 

「って……コトみたいよ?」

「前者は知らないけど後者は私がやったよ。惨殺ってほど無残にはやってないけど、ちゃんと倒した」

「そっかぁ……。ちなみにお仲間の子は?」

「何に因んでるか知らないけど、特に関係ないかな。あぁ庇ってるとかじゃなくて──あれ、私の獲物だから」

「なんだか可愛い顔して怖いねぇ……」

 

 東仙隊長をドラゴン・ブレスで焼き尽くした後のことだ。

 私としては戦闘不能になるくらいで留めたつもりだったんだけど、夜が明けたらものっそい騒ぎになってた。いやそれはもう見るも無残な、語る事さえ憚られる惨殺死体として発見されたのだとか。

 あ、これハメられたな、とか思いながら、でもそうなると二つの可能性に気を取られる。

 一つは、私が既に鏡花水月にかかってしまっている、という可能性。だから戦闘中も東仙隊長が東仙隊長に見えていた、と。

 もう一つは、戦っていたのは正真正銘東仙隊長だけど、見つかった死体は東仙隊長ではない可能性。

 

 前者だったら不味い。

 後者だったら、ちょっと不味い。どっちにしろあそこで戦わずに逃げた方が良かったのは間違いない。

 

「けどびっくりしたよぉ。戦いとかやめてお茶しない? でノってきてくれるとは思ってなかったもん。ねぇ七緒ちゃん」

「……」

「だって七緒ちゃんっていう美少女とお茶できるんだもん。そりゃノるでしょ」

「あれぇ? もしかしてボク、眼中にない?」

 

 とまぁそんな感じで物凄い殺人犯に仕立て上げられたっぽいので、んじゃまぁもう隊長格全員倒すのもいいんじゃね、とか思いながら来たのがここ、八番隊隊舎。

 いやフツーに隊長格全員倒すのは無理だし。ここが一番楽だし。私死神の中で七緒ちゃんが一番かわいいって思ってるし。

 

「ね、七緒ちゃん。この飲んだくれ捨て置いてさ、私のトコ来ない?」

「……」

「ちょ、ちょっとぉ、流石に目の前で引き抜き行為はマナーが悪いよマナーが」

「じゃあ今から七緒ちゃん暗がりに連れて行くんで、それでいい?」

「それもダーメ。……華蔵ちゃん、だっけ? 君さ、君こそ……ウチに来るってのはどう?」

「京楽隊長……!?」

「それは、死神になれって?」

「そそ。君の事はどーにか匿ってあげるからさ。そうすれば毎日七緒ちゃんにも会えるし、ここで痛い思いして戦ったりしなくていいし。旅禍のお友達も、ボクが山じいになんとかかけあってあげるからさ」

 

 正直。

 正直な話をすれば──魅力的ではあったりする。

 別に、現世に拘る必要はあんまりない。私が霊子変換で器子と霊子を行き来できるとわかった以上、帰りたいときには帰れるのだ。ならば──魂魄として。

 この世界で悠々自適に過ごすのも、悪くはない。

 

 ……当面に面倒ごとが無ければ、だけど。

 

「そんな発言力ないんじゃない?」

「ガクッ……そういう事言う~?」

「そもそも京楽さんが出てきた事が、山本元柳斎重國の命あってこそでしょ。それを覆す、なんて。しかも私達を……ううん、東仙要殺害の犯人である私の罪を隠し通す、なんて。無理でしょ」

「……それじゃ、どうする? 今更戦う? ちなみにボクは嫌だよ。君みたいな可愛い子となんて戦えない」

「それは当然。美少女を傷つけるおっさんなんて言語道断。美少女は世界の宝なんだから、守らなきゃ」

「うんうんそうだねぇそうだねぇ。……でも、それならなんで──槍なんか出しちゃってるのかな」

「飲んだくれのおっさんから、美少女を奪う。──何か問題でも?」

 

 双頭槍と剣が克ち合う。

 初めから、抜くべき相手だと認めてくれたらしい。ありがたいことだ。

 

「……君みたいな小さい子の膂力とは思えないねぇ。ボクの手が痺れちゃいそうだ」

「お相子だよ。だって、私の腕の骨折れちゃったし」

「そうかい? そりゃ悪い事したねぇ。今すぐ回道を──ッ!?」

 

 踏み込んで斬り上げ。そのまま柄を膝で弾いて斬り下ろし。

 左から横に切り裂きながら、前屈みになって槍を自身の背で滑らせて、回転するように位置を移動。そこから連続突き。──も、双頭槍自体が上に弾かれる。

 いい。別に。だから、右の拳を引く。

 

「凄いね、速い速い。歩法もだけど、攻撃速度と攻撃精度がピカイチだ。威力も申し分ない。これ、さっきは冗談めかして言ったけど、このまま隊に入っても十分戦えるんじゃないかなぁ」

龍皮の一拳(プノ・デ・ピエル・ディ・ダラゴン)!」

「!!」

 

 龍化させた腕は霊力と炎を纏い、ゆえに破壊力と貫通力を持って京楽春水に襲い掛かる。

 

 二本目──抜いたね。まだ解放されてない状態で掻き消されたけど。

 

「おおっと、びっくりしたぁ」

「びっくりした程度で済まされると困るんだけどね」

「いやぁ、これは結構な評価だよ? 槍捌きは相当なものだし、炎の威力も人間にしちゃ申し分ない。けど……」

「なら、これでどうかな」

 

 さて──この双頭槍。

 私はBLEACH世界に行くと知らずにつけた能力だけど、あのカミサマは知っていたはずだ。

 ならば、これが何なのか。これがどういうものなのか。

 

 そんなの、自ずと答えも出る。

 さんざん言われてきたことだしね。

 

 

「……(わか)て、双頭龍蛇(アンフィスバエナ)

「!」

 

 

 霊圧が跳ね上がる。霊力が吹き出す。

 

 私の体を、締め付けるように。巻き付くように。

 双頭槍が伸びて……つながった、二本の槍になる。それを両手に持つ。臍や背中が出た露出度高めのファッションは、私が男の娘であるということを一切感じさせない。むしろ美少女らしさを強調する──どこかエロティックな感じ。

 

 ……どうみても斬魄刀の始解ではないな、と思ったそこのアナタ。多分正解です。

 そういうことなんだろうな、って。

 

 私も馬鹿じゃないからね。

 

「これはホントに驚いたな……君、人間だろう? 旅禍の……さっきまでなんだかコワーイ斬り合いをしてた子と違って、正真正銘の人間だ。ただ、何か能力を発現しただけの人間。それが」

「始解なんてことができるはずない……だよね」

 

 だからこれは、始解ではなく。

 今は誰も知らない解放。

 

「改めて──宣言する。私は瀞霊廷中の美少女を貰う。その中には勿論七緒ちゃんも、朽木ルキアも入ってる。──なんか文句ある?」

「いやぁ……参ったねどーも。ちょっと……ちゃんとやんなきゃいけないみたいだ」

 

 その、刀が。

 十字に交わる。

 

「七緒ちゃん、離れててね。──花天狂骨」

 

 次の瞬間、それはどこか青龍刀を思わせる刀になっていた。

 ……解号、言わないんだ。まぁ卍解習得してるから要らないのはわかるんだけど。ちょっと楽しみにしてたのに。

 

「旅禍……華蔵ちゃん。藍染隊長と東仙隊長の殺害容疑で……大人しくお縄についてくれると助かるなぁ」

「七緒ちゃんへの数々のセクハラ、その他女性死神へのセクハラ、痴漢行為多数──大人しくお縄についてくれる?」

「ちょっと、ソレ今言うの無しじゃない?」

「残念だけど──私は、全ての美少女の味方だから」

 

 激突、する。

 

 

 

 

「そろそろ、夜だねぇ……ねね、終わりにしない? ボクもう疲れちゃったよ」

「京楽さんの言う終わり、って。私がお縄につく、ってコト?」

「ま、そうなるよね」

「なら無理かなぁ」

 

 激突した。それはもう激突した。語るに惜しいくらい激突した。ここでは余白が足りないくらいの激突だった。

 それが、夜まで続いた。

 

 ……ホントは、ルッキーアのトコで行われる朽木家のアレコレとか、今丁度行われているだろうシロちゃんギンちゃんイヅちゃん雛森ちゃんのトコとかに行きたい欲はある。イヅちゃん言いづらいな。

 けど──京楽春水が逃がしてくれそうにない。

 背を向ければ。

 簡単に、ズサっと。

 

 流石未来の総隊長だ。単純に強いし、速いし、何より狡猾。

 ホローみたいに私を馬鹿にしていないのも大きい。最初から認めてくれていて、だからこそ──崩せない。

 

「もういいじゃない。何をそんなに頑張るのさ。こうやってちょっと会話しただけでわかるよ。君はむやみやたらに人を殺すような子じゃない。何か理由があったんだろ? 別にボクらに捕まっても、スグに処刑される、ってわけじゃないよ。ちゃんと取り調べして、ちゃんと色々調べて。その上で刑が決まる。本当にやむを得ない理由があったなら、あるいは──()()()()()()()()()()()()、ボクらが口利きできるかもしれない」

「殺人を正当化する理由が?」

「……そうだね。ホントはそんなものあっちゃいけないけど……前提が違えば、全てがひっくり返る」

「それは、たとえば」

 

 大きく距離を取る。

 

「私が──そもそも彼を殺していない、とか?」

「ああそうさ。弁明しないだけで、そういう事にしておいた方が動きやすいとか、そんな理由だけで……君は負ってもいない罪を被っている。そんな可能性もゼロじゃあない」

「じゃあ、見逃してくれる?」

「ここを通らないのなら」

「うん。そうする。どの道朽木ルキアを今救う気はないからね。救っても意味が無いというべきか……」

「そりゃまた、いきなり手のひらを反すね。今の今までそのために戦ってたんじゃないのかい?」

「ううん。私はすべての美少女の味方であって、特定個人の味方じゃないよ」

「そうかい。んじゃさ、こっちから提案、一ついいかな」

「なに?」

 

 京楽春水が、花天狂骨を消す。

 合わせて私もアンフィスバエナを双頭槍に戻す。

 

「ボクと一緒に来ない? ──ルキアちゃんの、処刑の場に」

 

 それは。

 あまりに、願っても無い申し出だった。

 

 

PREACHTTY

 

 

 朝。

 色々な話を詰めた後──双極の丘に向かう。

 ふと見た遠くに、十一番隊と共に走る茶渡を発見する。

 

「どしたの?」

「……いや、なんでもない」

「んじゃ行こうか」

 

 さぁて、やっぱり。

 正念場だ。

 

 

 

 

 

 

 

「──朽木ルキア。何か、言い残しておくことはあるかの」

「はい、一つだけ」

 

 ルッキーアの願い。

 それは、自身の処刑後、旅禍を無傷で解放する、というもの。

 その約束を認可した山本元柳斎重國だけど──ま、嘘だよね。罪人の最期の言葉は聞き届けるものであって、守るものじゃあないから。

 

 そして、双極が解放される。

 

 磔となり、その身を晒されるルッキーア。

 双極はやがて炎の塊となり──巨大な鳥の形を取る。

 名を、燬鷇王。

 

()()()()()

「はい」

 

 その巨大な鳥の出現に、誰が気付いただろうか。

 場から一人、伊勢七緒が姿を消した事に、など。

 

 処刑は行われる。この炎鳥が罪人を貫く事で処刑は終わる。

 

 ゆえに。

 当然に。

 

「さよなら」

 

 ──そんなことは、させない。

 それがジャンプ主人公である。

 

 

 

「双極の一撃を……止めた?」

「馬鹿な、斬魄刀百万本に値する攻撃力を持つ双極の矛を……」

 

 止めた。

 止められた。

 四楓院家の紋のついた装具を纏う、たった一人の旅禍に。双極の矛が止められた。

 

 そして。

 

「な──なんだ、アレは!」

「龍……」

 

 炎鳥の横に──巨大な龍が出現する。

 漆黒の龍。真黒のドラゴン。燬鷇王に勝るとも劣らない大きさのソレは、迷うことなく鳥に食らいつく。

 

「華蔵!」

「あれ、サプライズだったのに。もしかして霊圧でバレてた?」

「バレバレだ!」

 

 いやぁ、熱い。熱いけど、でもそれだけだ。

 ドラゴンは熱に強いとモンハンで教わらなかったのかな!! あ、弱い竜もたくさんいるけど。

 

 私が呑んだ提案はたった一つ。

 双極の破壊。浮竹サンが間に合わなかった場合──というか、イチゴが間に合った、間に合わなかった場合、そのどちらもに出て行って、双極を壊す。それが私の役目。

 願ったり叶ったりだ。

 丁度お腹もすいていたし。

 

「やるねぇ……ボク達、要らなかったかな」

「そのようだ。だが、完全に破壊するにはやはりコレが必要だろう」

「遅いじゃないの、色男。ちょっと本気で遅刻だよ?」

「すまない。解放に手間取った。だが、これで──」

 

 翼をもぐ。もいでもぐもぐする。

 その首に黒い縄のようなものが巻き付く。ああ待って、まだ食べてる途中。

 

「いいかい、華蔵ちゃん! 壊すよ!」

「了解。黒崎、アレ味方。じゃあコレは?」

「当然──オレが壊すものだ」

「待て一護! 何をする気だ! というか何を当たり前のようにあの怪物と話をしている!?」

 

 ルッキーアのことはイチゴに任せる。任せて、私は大きく翼を広げる。

 向かわないといけない場所がある。だから。

 

「私は行くべきところがある。美少女が泣いている。引き留める理由は?」

「ねェな。やりてェ事やれよ。オレもそうする」

 

 言葉は十分。

 一瞬京楽春水に視線を向けて──彼がその笠を上げて、目線を下げたのを境に急加速する。ちなみにさっきまでいた七緒ちゃんは私です。変装です。最後の最後まで反対してきた七緒ちゃんを心苦しいながらに縛りつけてここに出席してました。

 

 そしてまぁ、向かうべき場所はただ一つ。

 

 待っていろ薄幸美少女。君の体は私のものだ!!

 

 

 

 

 高速で空を駆ける黒龍の姿は瀞霊廷中に見られたことだろう。中には当然虚だ虚だと騒ぐ者もいたが、追い縋る事は出来ず。

 私はそこへ、辿り着く。

 

黒龍の吐息(アリエント・ディ・ダラゴネグロ)

 

 辿り着いて開口一番ブレス!!

 その勢いのまま身体を元の形にまで縮め、中の二人に斬りかかる。

 

「おや……一番に来るのが君だとは思っていなかったよ。それに、そんな鬼気迫る表情でどうしたのかな──旅禍の華蔵蓮世くん」

「美少女を救いに来た」

 

 双頭槍は受け止められている。だけど、これなら──雛森ちゃんを引っぺがせる。

 

「そうか。雛森くんが目当てだったか。だけど、少し遅かったな」

「──!」

 

 ぬるりとした感触。

 ……雛森ちゃんが薄幸になるのは止められないとでもいうのか。……いや、傷は浅い。原作程深くない。間に合わなかったけど、遅れてはいない!

 

「──君臨者よ。血肉の仮面・万象・羽搏き・ヒトの名を冠す者よ。蒼火の壁に双蓮を刻む、大火の淵を遠天にて待つ」

「……七十番台の破道。君は、使えるのかな」

「破道の七十三! 双蓮蒼火墜!」

 

 言いながらぶっぱなすは普通に赤い炎。

 うん、やっぱり使えない。

 鬼道ちゃんと習いたいね。

 

 けれど──それは、ちゃんと。

 彼と、そして市丸ギンをぶっ飛ばすに足る火力ではあった。

 

 

 

「ッ、市丸!? それに……藍染!?」

「おっと。色々と想定外が重なるね」

「すんません。あの子が来るってわかってたら、もうちょいスムーズに進められたんですけど」

「……どういうことだ」

「どういう事も何も」

 

 藍染惣右介が、その刀を抜く。

 それを──日番谷冬獅郎、ではなく、背中に向けた。

 

 そこに大口を開けて噛みついてくる黒い龍。

 

「な、なんだ!?」

「僕は今、虚に襲われていてね。助けてくれるかな、日番谷隊長」

「藍染……今までどうやって、」

 

 口から炎を吐き出せば、シュンと消えた二人が別の場所に現れる。

 

 わかってたことだけど、全然通じないなぁ。

 顔を美少女に戻して、と。

 

「お前は……東仙を殺した旅禍!」

「そうかもしれない。でもそうじゃないかもしれない。そして、ほら」

 

 心苦しいけど、投げて渡す。

 できる限りの応急処置を施した、雛森ちゃん。その、けれどグッタリとした身体を、シロちゃんはちゃんと受け止めた。

 

「……雛森!」

「気絶してるだけだよ。傷は、まぁ浅いとは言えないけど、深すぎる事はない。今すぐ治療すれば無事なはず。だから、その子と一緒に逃げてほしいな。私、この二人を食べなきゃだから」

「おぉ、こーわ。食べるとか、もうヒトの言う言葉じゃないやん。ホントのホントに虚なんちゃうの、君」

「さて、どうだか!」

「わお」

 

 槍に炎を纏い、斬りかかる。受けたのは市丸ギンの方。藍染に手を煩わせることなきよう、上手く受け流される。

 そんな最中、更にもう二人。

 

「──旅禍に、市丸隊長、傷を負った雛森副隊長と、日番谷隊長。そして、死んだはずの藍染隊長」

「おや、これは。卯ノ花隊長」

「いえ……四十六室を壊滅させた大罪人、藍染惣右介と……そう呼んだ方がいいでしょうか」

「構わないよ。好きにするといい」

 

 ええい埒が明かない!

 このままじゃ原作通りだ。いや、雛森ちゃんは軽傷で済んだし、後はシロちゃんが納得してくれたら少しはマシになるけど、空間転移で逃げられて、その先でイチゴのお腹ぱっくり事件とかになられると困る!

 

「別て、双頭龍蛇(アンフィスバエナ)!」

「──……やはりか」

 

 なーんか不穏な言葉を吐かれた気がするけど知らない知らない。

 原作通り卯ノ花隊長に藍染隊長がネタバラシをしていく中、全く動かないでいるシロちゃんが凄く気になる。逃げもしない、加勢もしない。一体どうしてしまったんだろう。

 

「ボク相手に余所見とか、傷つくなぁ」

「美少女が近くにいないと気が乗らないんだよね」

「そらまた、現金やなぁ。でもあそこに乱菊がおるよ?」

「乱菊さんは美少女じゃなくて美女!!」

「なんか面倒な子やねぇ君」

 

 藍染隊長の話が東仙要にまで差し掛かる。

 そういえば結局アレどういうことだったんだろう。と思ってたら、ちゃんと説明してくれた。

 

「つまり……最初から。東仙要は僕の部下だ。……もっとも、アクシデントによって少しばかりの休養と治療をしなくてはならなくなったからね。表舞台に上がれなくなった彼と僕の繋がりに気付かせないよう、旅禍への憎しみの増幅を助長させる、という計画変更を余儀なくされたけどね」

「東仙隊長、全身火傷してて、そない炎熱系の斬魄刀総隊長の以外にあったかなぁとか思てたんやけど、こういう事だったんやねぇ」

 

 こういう事、と指さすのは私の槍。

 燃え盛る槍に、熱さを感じる素振りもなくニヤニヤ対応する様は、いやはやなんともなんとも。

 

 市丸ギンの狙いは知っているけれど。

 それでもなんか煽られてる感あるのは、もう才能だよね。

 

「さて……頃合いだ。ギン」

「はい」

()()()()()()()

「え?」

 

 突然、身体に何か──縛道のようなものがかかる。

 そして、白布が私を含む藍染隊長と市丸ギンを包み始めた。

 

 え。え。

 なんで。

 

「──さようなら。君達とは、もう会うこともないだろう」

「ま──待て!」

 

 あの……え?

 

 

PREACHTTY

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