PREACHTTY   作:ONE DICE TWENTY

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第7話 再会、一護と華蔵

 私がやるべきことは何か。

 それは勿論、美少女を救うことだ。具体的に救いたい美少女は、破面で言えばリリネット、ネリエル、ティア・ハリベル以下従属官、チルッチ・サンダーウィッチ、ロリ・アイヴァーン、メノリ・マリア、そしてロカ・パラミア。

 破面だけど、虚だけど、そんなことは関係ない。美少女であるのならば種族などどうでもいいことだ。

 ゆえに当該者とは仲良くなっておくか、監視しておく必要がある。

 

 なんだけど。

 

「華蔵蓮世。君には第七十刃の座に座ってもらう。司る死の形は陶酔。従属官として好きな破面を選ぶといい」

「え、じゃあロリ・アイヴァーンとメノリ・マリアで」

「いいだろう」

 

 というやり取りがあって、もう二人は私のモノである。

 そう。

 十刃になりました。

 

 ……もう完全に虚扱いらしい。別にいいんだけどね。しかしゾマリ・ルルーは何処へ。

 

 とはいえ、現在着々と虚の破面化……崩玉を用いた破面化が行われている。なのでそれ以前にいた十刃はどんどん代替わりしていて、もしかしたら私もそうなるのかな、と。ゾマリ・ルルーと対峙する日が来るのかな、と思いつつ、その前任者たちとの親睦を深めるような日々が続いてしまっている。

 しまっている、だ。本当に。

 

「吾輩もそろそろ用無しだ。嬢ちゃん(ベベ)、君はチョコラテのように甘いが──同時にどこか、仄暗いものも纏っている。()()()()()()()()()()

「……理解はしているよ。陶酔を与えられたんだ。それがどういうことか、なんてわからない私じゃない」

「それならば良い。さて、吾輩はもう行く。嬢ちゃん(ベベ)、その小さな身体でどこまでやれるか、地の底から見上げさせてもらおう」

 

 なんて言って去っていったのはドルドーニ。最後まで私を女の子だと勘違いしていた……あるいはその精神性でも見抜かれていたかだけど、なんというか、良いオッサンだったなぁ。……死んでほしくないなぁ。

 でも美少女じゃないし……ああでも、もう友達になった気もしてるし。

 

「何暗い顔してんのよ、第七十刃様が」

「チルッチ」

「アンタはいいじゃない。どれだけアンタより強いのが現れても、アンタがそっから落ちる事はないんだから」

「……うん」

「あーあ。どうせならアタシも従属官に」

「それだ!」

 

 それだった。

 

 えーこれ美少女ハーレムです。

 

 

 

 

「あの子、着々と自分の周り女の子で囲っとるなぁ」

「……節制という言葉を知らないらしいな」

「ま、良いのと違う? ボク自身が関わらなければ、あの子見てるの好きやわぁ」

「否定はしない。……本気で虚を仲間だと思っている人間など、道化でしかないからな」

「そういう意味で言ったんと違うのですけど」

「気にするな、市丸。私には私の見えている道がある。お前はお前の見ている道で彼を判断しろ」

「……毎度、あの子のこと『彼』って言われると頭んなかぐちゃっとなるなぁ」

 

 

 

 

 チルッチができたからドルドーニも、と思って声をかけたけど、ドルドーニには「そのようなチョコラテのような空間、吾輩は耐えられまい」といって断られてしまった。確かに私含め見た目美少女のきゃぴきゃぴ空間におっさんはキツいか。絵面的にも、本人的にも。

 

 さて、図らずも十刃になってしまった私には、一応戦闘の義務というものが課せられる。イチゴ達と戦うつもりは欠片も、ミリも、これっぽちもない……んだけど、私は美少女を守るものとして強くなる必要があるのだ。プラス、藍染隊長に抵抗できる力を、ね。殺す力じゃないのは、藍染隊長が必要な人材だと理解しているため。

 ロリ、メノリはあんまり強い破面じゃない。チルッチは十刃落ちということもあって十二分な破壊力を有しているけれど、原作通り燃費が悪い。

 

 残念ながら私は人に戦い方を教えられる程器用じゃない。戦闘中の指示はできても常の指導とか無理なので、彼女らをこれ以上強くするくらいなら私がもっと高みを目指した方が速い。

 

 そして、そのためには。

 

「……ううん、薄味」

「そりゃそうでしょ。ギリアンなんか食べたって、得られるものがあるワケないし」

「でも、私はチルッチ達と違って食べて育ってきたわけじゃないからね。今更だけど、共食いをする価値はあるよ」

「……する価値があるヤツは全員虚夜宮に集まってると思うんだけど?」

「それはそう」

 

 こうして虚夜宮の外に出て、虚食……本来は巨大虚とかがメノスになるためにやるような、虚同士の共食いをする必要がある、と考えた。

 もう認めてるけど、私のこのドラゴンになる力は虚化するようなものだ。どこぞのファンタジー世界に行っていれば違ったのかもしれないけど、BLEACH世界でこの能力を解釈すると、そうならざるを得なかったんだと思う。

 となると、この共食いにも意味が出てくる。つまり、進化だ。進化を目指すことで新たな扉が開ける。

 

 そう思っていたんだけど。

 

「……ん-」

「言っておくけど、アタシは別に強い虚のいる場所、なんて知らないからね。知ってたらまず藍染様が掘り尽くしてるだろうし」

「だよねぇ」

 

 普通の虚かギリアンしかいない。

 一応虚の先輩として連れてきたチルッチの言う通り、金の鉱脈は藍染隊長が掘り尽くしてしまっているようで、アジューカスの一匹もいないと来た。仕方なくギリアンを食べているけど、燬鷇王を捕食した時のような充足感は得られない。あぁ、ルピもそれなりに美味しかったね。

 

 ……でもなぁ、流石に虚夜宮内の破面食べると藍染隊長が怒ると思うんだよなぁ。あんまり争うの禁止、みたいな事言ってた気がするし。

 だから、薄味でもチリツモチリツモ。

 ギリアンが数百喰らいあってアジューカスとなり、アジューカスが喰らいあって進化を続けてヴァストローデになるというのなら、ギリアンを数億くらい食べればアジューカス一匹分くらいにはなるんじゃないかと。

 

「そのようなことはない」

「ッ、誰!?」

 

 静かな声。

 即座に反応し、手元のワイヤー付きチャクラムを投げるチルッチ。けれどそれは、いとも簡単に止められた。指先で。ただ、彼以外の部分……つまり足元の珪砂は大きく巻き上がる。

 

「華蔵。部下の躾はしっかりしておけ」

「だってさ。矛を納めて、チルッチ」

 

 その砂が晴れた時。

 

「ウル……キオラ……!」

 

 大人気第四十刃様は、そこにいた。

 

 

 

「そう警戒するな。藍染様の命で、お前の勘違いを正しに来ただけだ」

「私の勘違い?」

「そうだ。……たとえ、今のお前が数億、数十億、さらにそれを超える量の虚を食べた所で、進化も変化も起きん。無駄なコトだ」

「そうなんだ」

「だが──」

 

 ウルキオラは、彼方。

 珪砂の砂丘のその彼方を指差した。

 

()()()()()()()()()。得るものも、あるはずだ」

「同じだと、思ってくれてはいるんだ?」

「知らん。俺は藍染様の命を受けたに過ぎない」

 

 話の最中に、ドラゴンになる。

 黒いドラゴン。黒龍。

 

「チルッチ、先に帰ってて。私、行く場所ができたから」

「え、ええ。それはいいけれど……」

「……それが」

「うん。──嫌な記憶でも思い出す?」

「いや。そのような記憶など、ない」

「そっか」

 

 大きく翼を広げる。巻き上がる砂。吹き上がる暴風。

 皮膜の裏まで真っ黒なこの体は、夜の闇よりも深い。闇に紛れる、なんてことはできないだろう。あまりにも黒が目立ちすぎるから。

 

「じゃあね、ウルキオラ。情報提供ありがとう」

「……」

 

 返事を待たずに飛び立つ。

 大丈夫。

 

 私はそこを、知っているから。

 

 

 

 

 日単位で日が過ぎた頃のことだ。

 ようやくそれが、見えてきた。

 

 この世界に点在する石英の木。石英はパワーストーンとして有名だ。紫水晶、紅水晶、黄水晶、レモン水晶、煙水晶に黒水晶。他にも人工物であることが多いけれど、カルセドニーの各色。カーネリアン、クリソプレーズ、アゲート、オニキス、サードニクス、ジャスパー。

 中でも無色の石英──その表面にバーコート状のギザギザが出ているものを、レムリア大陸からの叡智であるとしてレムリアンシードと呼ぶ。

 レムリア。その名は"レムレスの世界"の意であり、レムレスとは亡霊の事。つまり"亡霊の世界"から漏れ出でたもの、がレムリアンシードだ。かつて原作で石田雨竜が観察していたように、この世界の至る所にレムリアンシードがある。

 

 そしてこれ──この世界に生える石英の木の、その生まれるところ。

 森や林というには密集しすぎている。もはや海か光に近い、無。

 色も無く、音も無く、香りも無く、何に干渉するでも無く、ただそこに在る。

 

 亡霊の始原。

 

 その眼前に降り立つ。

 

「……確かにこれは、壮観だ」

 

 これほどの無は現世にも尸魂界にも存在しない。断界にさえない。

 静かで、苦しい程停まっている虚圏にしかないだろう。

 

「……別て、双頭龍蛇(アンフィスバエナ)

 

 人間の体では不義理だ。

 前に進む。

 

 私の体に仮面はない。私の体に孔はない。

 私は虚ではない。私はその悲しみを経験してはいない。

 

 けれど。

 

「私も、死者だから」

 

 この世界とは違う法則のもと、死んだ。

 この世界とは違う法則のもと、新たな生を受けた。

 

 それはこの静けさを受け止めるに足る器を示し得る。

 魂は。

 

 とうの昔に、

 

 

PREACHTTY

 

 

 現世侵攻が企てられ始めた。

 私がいようがいまいが関係なく藍染隊長は織姫に目を付けたらしく、なんなら「旧知もいることだしね」みたいな事を私を見て言っていたので、ワンチャン織姫も私の手元における可能性がある。ロリメノリが絶対なんかやらかすから置かないけど。

 それはともかくとして、私は猛アピールだ。竜貴をヤミーの大雑把魂吸に巻き込むのはNG。ゆえにイチゴの映像記録係のウルキオラと共に現世へ向かうのは私がいいと、藍染隊長にお願いした。

 

 したら。

 

「……いや! いやぁ、久しぶりの現世! うーん空気が……あぁ薄いなぁ。うーん、器子……生身じゃないからかぁ。うーんうーん、こう、息を吸ったら全身に酸素が満たされていく感覚が無い……」

「当然のことを叫ぶな。お前は虚だ。藍染様も、俺も、他の十刃もそれは認めている。お前自身もだ」

「あのね、私は美少女だよ? 空気を吸って、『きゃぁ、空気美味しい~』って言ってメルヘンワールドに突入しないでどうするのさ。でもまぁなんというか、色のある世界ってやっぱいいね。虚夜宮の天蓋みたいな偽物じゃないしさ」

「どうでもいい」

 

 したら、すんなり通った。

 ……いや、なんか。めっちゃ意見通るというか。風通し良くない? 私別に実験材料らしいこともされてないし。良い組織なんじゃない?

 

「な──なんだなんだ? 隕石か?」

「でも隕石なんかどこにも……」

「つかホントに隕石だったら火災になるぞ!」

 

 おお。

 原作通り人が集まってきた。そして最後に言葉を発した君、正解だ。マジの隕石だったら近づいちゃダメだ。しかもこんな森の中、一瞬で火の海に包まれるぞ。

 原作との違いは、やはりヤミーがいないこと。これに尽きる。

 私は魂吸なんかしないし、ウルキオラもターゲット以外殺す気がない。人が集まってこようと私達には関係ないので、完全に静観状態。このままやり過ごしてイチゴが来てくれたら、「場所を移すぜ」とか言って一般人への被害も無くて済む。

 

 ……だったはず、なんだけど。

 

「──か……華蔵?」

「あぁ、そっか。多少見えるんだっけ。……久しぶり、竜貴」

 

 寄って来た一人。

 ジャージ姿の竜貴が、私に気付いてしまった。

 

「なんだ。その塵は」

「現世での友達。あ、手は出さないでね。出したら普通に離反するから」

「構わん。目標以外に興味はない」

 

 えーと。

 そうそう、まず霊圧を抑えて、と。

 

「本当に……華蔵、なのか?」

「ああ、服とか変わってるから見えないよね。これでも可愛く見えるよう改造したんだけど、藍染隊長が『改造は構わないけれど、ある程度の統一性は欲しいね』とか言って、これ以上を許してくれなくてさ。白、あんまり似合わないよね」

「……何言ってんだよ、華蔵。何か月も行方不明で……私も織姫も、華蔵の家族だって、どんだけ探したと思って……!」

「あれ、遺書はちゃんと書いたはずだけど。部屋のさ、机の引き出しの中。なんならメールで別れの挨拶もしたし」

「遺書? ……遺書?」

「そう、遺書」

 

 竜貴は、物凄く感情を荒げて、心配している、という事を伝えてきてくれている。

 嬉しい。入学してからの付き合いなのに、こんなにも。

 

 だけど今は、ダメだよ。

 そろそろ来るし。

 

「帰ったら探してみてよ。あぁ、そっか。気付いてないのか。──今の私、他の人には見えてないよ。ユーレーだからね」

「う……そ、だろ? なんで、そんな急に。行方不明になる前まで、元気だったのに」

「まぁそういうこともあるよ。美少女だし。美少女は儚く脆いものだからね。いつの間にか死んでる事もある」

「ないだろ、そんなこと!」

「あるんだよ。……それより、そろそろこの辺の人たち連れて逃げてほしいな。じゃないと巻き込んじゃう。この人数は守りきれないよ」

「何言って……」

 

 持ってきた仮面を、お祭りのソレのように頭にかける。ちなみにこれ別に破面の仮面、とかじゃなくて、虚圏に数多存在する骨からいい感じのものを取って来ただけだ。それでもそれっぽく見えるし、藍染隊長対策の目を瞑る、がコレで代用できるのが大きい。

 ただコレつけるとホント完全に十刃の一員なんだよねー。

 

「なんだよ……その、仮面」

「オシャレだよ。美少女だからね」

「ち──違うだろ。だって、それは……あの幽霊たちと!」

 

 時間だ。

 来たのは。

 

「たつきちゃん!」

「有沢、下がれ!」

 

 その拳には、躊躇があった。

 だから、蹴り止める。私の華奢な身体でも、これくらいはできる。

 

「ッ、華蔵……」

「華蔵ちゃん……」

「久しぶりだね、二人も。でも、今は再会の喜びとか分かち合ってる暇ないんだよね」

「何を」

「黒崎だ」

 

 手のひらを、上にして。

 笑う。

 

「黒崎を連れてきて欲しい。そうしてくれたら、他には何もしないから。ね? ウルキオラ」

「……」

「そうだって」

 

 元より一切に興味が無いウルキオラなら、イチゴ以外はフツーに見逃してくれるだろう。

 問題は、私が。

 

 彼ら彼女らにとってそれなりにマストであり──引き戻すために戦闘が行われる、という可能性を考えてなかった事。

 折角ソレ対策に遺書書いたのに。……というか、もしかして、浦原喜助か?

 確かに彼にだけ遺書の存在を明かしている。それで……士気を上げるため、とかで、隠された?

 

「黒崎くんを……って、華蔵ちゃん……何、言ってるの?」

「織姫。今の私は君たちの味方じゃないって事。こっちにも美少女がいっぱいいてね。私はほら、美少女の味方だから。あ、勿論織姫や竜貴が窮地に陥ってたら助けるよ。美少女だし。──だけど、今はこっちにかかり切り。だから──黒崎を連れてきて欲しい」

「……それはできない。華蔵。今ここでお前を倒し──目を覚まさせる!」

 

 ああ。

 やっぱりそうなるんだ。いや別にイチゴを渡せ、と言ってるわけじゃないんだけどなぁ。連れてくるだけでいいのに。

 ……やっぱりこの仮面外した方がいいのでは? これのせいで完全に虚側だと勘違いされている気がする。全然離反謀反の心ありますよ私。

 

「少し、痛むぞ──オオオオッ!」

龍皮(ピエル・ディ・ダラゴン)

 

 ただの部分龍化だ。ただし、皮膚のみの。

 でも、それだけで……霊力砲くらいは防げる。無傷で。

 

「散逸する戦禍、冥庭の難行。妻殺す狂気の涯にて八つに嘆く。縛道の六十 八凱罰元(はちがいばつげん)

 

 そのまま適当縛道で捕縛。効果は小さい百歩欄干って感じ。霊力を編んで作ってあるだけなので、実際の拘束力はそこまででもないけど、私の炎を練り込んであるのでちょっとピリピリするかもしれない。今はこんなので十分だろう。

 

「茶渡くん!?」

「殺してないよ。大丈夫。ああ、でも、そうか。黒崎を呼ぶなら──二人に頼むより、早い方法があったね」

 

 さっき。

 竜貴のために抑えた霊圧を、解放する。

 

 虚圏で暮らし、多少の変化があったとはいえ私の霊圧はほぼ変わっていない。ちょっと成長したくらいか。

 だから、感じるはずだ。わかるはずだ。

 イチゴなら──。

 

 ほら。

 ちょっと──槍を出せば。

 

「……変わったな、華蔵」

「やぁ黒崎。変わったなんてとんでもない。私はいつだって美少女の味方だよ」

「そうか? オレには虚の味方をしてるようにしか見えねぇよ」

「虚にも美少女がいるからね。そこは許してほしい」

 

 振るうつもりなんかなかったけど、身体の前にもってこようとした槍が、巨大な包丁のような斬魄刀に止められていた。

 見るのは初めてじゃないけど。

 向けられるのは、初めてだね。

 

「許すも何も、そっちの奴も、お前も。俺がぶっ倒して……目ぇ覚まさせてやる!」

「ッ、別て、」

「──卍解」

 

 それを見るのは。

 君が、ぼろぼろだった時以来だ。

 

 ああ。

 

「天鎖斬月……」

双頭龍蛇(アンフィスバエナ)

 

 物凄い霊圧と共に、それは成る。

 黒い刀。朽木白哉が「ただの斬魄刀」と称したのもわかる。多少の装飾がついているくらいで、浅打と見紛うほどにシンプルで小さい。

 私の双頭龍蛇も大きさこそないけれど、ちゃんと特異な形をしているのに。

 

「戦うのは初めてだな」

「そりゃそうでしょ。私、友達に向ける刃なんか持ってないし」

「その割には笑ってるぜ、お前」

「当然でしょ。──久しぶりに友達と遊ぶんだ、楽しくないはずがない」

 

 槍を、突く。

 止められる。何度突いても変わりなく止められる。

 たった数回しか攻撃してないけど、わかる。

 

 迅い。それも、圧倒的に。

 

「解放する必要があったのか?」

「君達なんか勘違いしてるけど、フツーの時の私はフツーに人間の強度だよ。多少死にづらいけど、それだけ。美少女だからね、そんじょそこらの人間とは違うのは確か」

「そうか」

 

 興味ないなら聞くんじゃない。

 こっちはそれなりに頑張ってるんだぞ。イチゴを傷つけないように斬魄刀だけ狙って、且つこっちが怪我しないように避けて。

 これがどんだけ精密な作業か。

 

「……悪い、華蔵。一瞬で決めるぜ」

「それは無理だよ、黒崎。何故って君は、美少女じゃないからね」

「そうかよ」

 

 イチゴが、その額に手を当てる。

 掻き毟るように。

 

 そこから、仮面が。

 

 ──……生成されない。何か、驚いたような顔をして。

 

「っ……!」

「ちょっとは、痛いよ」

「ぐっ!?」

 

 その腹を、思いっきり蹴る。

 ……弾き飛ばさないとウルキオラがなんかしそうだったし。

 イチゴは美少女じゃないからこれくらいの蹴りは耐えられるはずだ。ちなみに美少女も死なないのでこれくらいの蹴りは耐えられるけど、私が美少女なので美少女力のせめぎ合いでちょっと傷つく可能性がある。

 原作はOPtB……通称オサレポイントバトルを導入していたけれど、こと私の周囲に限ってはBSptB、美少女ポイントバトルが基本だ。

 

 なんて冗談を言っていると。

 

「ハァイお久しぶりです、華蔵サン──剃刀紅姫」

「い、きなり攻撃は! びっくりするって!」

 

 二人が──来た。

 

 さて。

 ごめんね、イチゴ。

 今回は、こっちが正念場なんだよね。

 

 

 

 

「浦原さん。そして、知らない女の人」

「夜一じゃ。……そうか、お主の前では猫の姿でしか自己紹介していなかったか」

「ええ、はい。知ってましたけど」

 

 ウルキオラは、まだ帰る気配を見せない。

 ひーっ、この二人相手に一人はキツい。なんたって夜一さんがいるんだ。美少女というよりは美女だけど、十分。私、この人傷つけるの嫌です。

 

「……嫌な予感、当たっちゃったみたいッスねぇ」

「ああやっぱり。私の能力見た時点で、こっちにつくかも、とか思ってたんだ」

「はい。アナタの考え方は人間や死神のそれよりも、虚側だ。その在り方も、霊圧も。だからもしかしたら、と思ってたんスけど……」

「つまり虚はみんな美少女の思考を有してるってこと?」

「その常識の通じない感じがそうだって言ってるんスよ~」

「それはそうかもしれない」

 

 ウルキオラさんまだですか。お喋りで終わりじゃダメですか。

 これもしかして、私の観察も含まれてる? だからすんなり許可下りたのかな。

 

 それなら……夜一さんはヤなので、浦原喜助ともうちょっと遊ばないとダメかな。

 

「で、やりますか? アナタは、アタシ達と」

「やらないって選択肢あるの? そっち側に」

「無いッス。──啼け、紅姫!」

弧月槍(ランサ・アルコー・ルーナ)!」

 

 赤い斬撃を槍で切り裂く。その場を動く気配のない彼に、こちら側から踏み込む。更に右足を深く入れて、前傾姿勢に。そこから弓なりにした右手を一気に解放し。

 

紅の射槍(ランサドール・ローホ)!」

 

 それを、射出する!

 

「血霞の盾」

噛みつく槍頭(ウナ・レヴォルフィオン)!」

「おおっとぉ!」

 

 これは練習してできるようになった、射出した双頭龍蛇の遠隔操作。今はまだ簡単な操作しかできないけど、いつかはファンネルみたいに自分で動いてくれないかなって思ってる。

 

 左の槍で蹴りをガード。

 

「ほう、気付いたか」

「ダメだよ夜一さん。私、美少女や美女の気配には聡いんだから。絡みつく槍頭(セルピエンテ)

「むっ」

 

 思ったより重くない蹴り。その接着面から槍がぐにゃりと曲がり、足へと絡みつこうとする……けど、逃げられる。

 

 ……あれ、もしかして……ちょっとはやれる?

 なんて驕りはダメ。それで藍染隊長に身体両断されたの忘れたのかって話ね。

 

跳ね回る虚閃(サルタ・ソブレ・セロ)

 

 再度手に戻した槍から放つのは、弾性のある虚閃。スーパーボールみたいに周囲を跳ね回り、跳ね回るほどに速度を増していく。ただし小さいのが難点。

 けど、掻き消さない限りはそれなりに面倒な攻撃である上火傷の状態異常付きなので、そっちにつきっきりになってくれるだろう。ああ一般人に当たらないように計算はしてるよ。

 

 それでも、夜一さんと浦原喜助はイチゴや茶渡を抱えて安全圏まで逃げた。賢明な判断だね。なんかのミスで当たる可能性もあるし。

 

「……もういい」

「ん」

 

 ようやく見限りをつけてくれたのか、ウルキオラが空間に指を置く。

 そこに開かれるは黒腔。私は開けないのでありがたい。

 

「逃げるか!」

「あぁ、夜一さん。コレ、自然には消えないから! 上手く攻撃当てて消してね!」

「うっ、お、おう……ではなく」

「んじゃーねー。ああ、藍染隊長にはちゃんと報告しておくよ。みんな頑張ってたって」

「取るに足らない塵でした、と。報告はしておく」

 

 黒腔が──閉じた。

 

PREACHTTY




鬼道考察&適当鬼道解説

縛道の六十一 六杖光牢 雷鳴の馬車、糸車の間隙、光もて六つに別つ

雷鳴の馬車=雷鳴を運んでくるもの=雷霆、雷雲
糸車の間隙=オムパレーの手元
光もて六つに別つ=光で別けて縛る。
上記からヘーラークレースとオムパレーの伝説に準えた縛道かな、と。
ゼウスによって奴隷となったヘーラークレースがオムパレーの元で恋に落ちる伝説

適当鬼道
縛道の六十 八凱罰元(はちがいばつげん) 散逸する戦禍、冥庭の難行。妻殺す狂気の涯にて八つに嘆く。

上記の感覚でヘーラークレースの最初の妻メガラーとの神話を参考に、十二の難行から帰って来たヘーラークレースがリュコスから妻メガラーを救い出すものの、狂気に陥ってメガラーと八人の子供を殺してしまい、嘆くシーンから。
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