PREACHTTY   作:ONE DICE TWENTY

8 / 18
第8話 美少女と美人

 グリムジョー達が現世に行った。

 流石に二回目、というのは無理……というかグリムジョーが譲らなかったので、私はお留守番。白い死覇装を改造して可愛くしたり、髪を揃えたり、メイクをしたり。いつもやっている事だけど、いつも以上に念入りなお化粧をして、彼らの帰還を待つ。

 どうなるんだろう、とは。思っている。

 ルピの代替として現世に行くつもりだったけど、それよりも前に第七十刃になってしまった。となれば当然、第六十刃になる、なんて事は出来ない。独断行動による東仙要の私刑。それによるグリムジョーの片腕化と、ルピの参入。これらが無くなって、原作がどう変わるのか……が予測できないのだ。

 誰か他の破面が入るのか、それとも誰も行かずにルピ抜きの再侵攻になるのか。

 

「あの……華蔵様」

「うん?」

「あたし達、本当に何もしなくていいんですか……?」

「その……」

「ああうんうん、いいよいいよ。その場にいるだけでいい」

「アタシは?」

「チルッチもだよ。たとえここに外敵が攻めてきたとしても、出なくていい。全部私がやるから」

「……アンタさ、それ本気で言ってる? 従属官の意味、わかってる? それはアタシ達に存在意義が無い、って言ってるようなものなんだけど」

「虚に存在意義なんかないでしょ、最初から。無いものを無理に虚飾して作り出すくらいなら、無い事を受け入れて美しく振舞った方が得じゃない?」

「……時々、アンタの言ってる事って意味わからないわ」

 

 あんまり、三人はお姫様扱い、というのが気に入っていないらしい。弱いのに、虚らしく戦闘欲求でもあるのかな。美少女が傷つくところは見たくないので、どうしても出ようとしたら縛りつけてでも止める気はあるけれど。

 前にも言ったけど、世界には可愛い美少女と可愛くてカッコイイ美少女の二つがいる。可愛い美少女は戦わなくていいのだ。可愛くてカッコイイ美少女に全てを任せていい。そしてそれを苦に思わなくていい。そういう造形でこの世に生れ落ちた時点で、全てが許されるのだから。

 

「いい? 君達は美少女なんだ。世界から愛され、許される存在。ただし、同じ美少女相手には分が悪い。美少女は美少女にしか負けないし、美少女には美少女しか勝てないけれど、同じ美少女が対峙したらより美少女である方が勝つ。ロリ、メノリ、チルッチ。君達はそれぞれ美少女だけど、ロリとメノリじゃチルッチに勝てないだろ? それはチルッチが芯強い美少女だからなんだ。美少女は外見だけじゃない、精神性まで含めて美少女なんだよ。そして三人がかりでも私には勝てない。何故なら現状私は三世界全てにおいて美少女だから。現世、虚圏、尸魂界。ううん、地獄や断界を含めたって私が一番だ。まだ私は私より可愛い子に会っていない」

「……はぁ」

「私が負けるときは、私より可愛い子に会った時だけだよ。だから安心して、私は負けないから」

「あぁ、はいはい。もういいわ。ロリ、メノリ、こいつに何言っても無駄だから。多少の戦闘訓練くらいならアタシが受け持ってあげるから、いつでも言って」

「あ……うん」

 

 うん、今述べたのは本心だけど、一割くらいは「私に何言われても君達を強くする方法なんか知らないよ」の意味が含まれている。槍もドラゴン化も転生するときに取った能力なので、強いて教えられるとしたら霊力に炎を練り込む手法くらいだ。炎を使えない三人に教えて何の意味があるというのか。

 チルッチが二人をもうちょっとどうにかしてくれるなら、それに越した事はない。

 

「それじゃ、私はちょっと出てくるから。──もっと強くなりたいなら、もっと美少女になればいいよ。どの瞬間でも醜くある事を許さない。それが美少女になる秘訣かな」

 

 そう言い残して。

 私は、第七宮を出た。

 

 

 

 

 

 

「娘子」

「うん? あぁ、お爺ちゃんか。どうしたの?」

「どうしたも何も、ここは儂の宮だ。何用か、と問うたつもりだったが」

「シャルロッテさんにね、ちょっと用があって」

「そうか。呼ぶか?」

「いいの?」

「構わん」

 

 現十刃の中で最も仲のいい破面は誰か、と問われた時、意外や意外だろう、真っ先に名を上げるのはバラガンだ。他がとっつきにくいというのもあるけど、この人……この虚案外常識人なんだよね。自分の権力さえ否定されなければ、ちゃんと会話してくれる。

 今用があるシャルロッテ・クールホーンに始まり、フィンドールやアビラマといった声を荒げる者、チーノンみたいにちょっとコミュニケーションがとりづらい者なんかを配下にしているあたり、そしてちゃんと忠誠を誓われているあたりがコミュ力の高さを伺わせる。カリスマもあるんだろう。

 自分の能力に胡坐をかいている、みたいな描写が多かったけれど、それなら部下は恐怖政治が如くどこか「逆らえないがゆえの忠誠」になっていたはず。チーノン・ボウを自らスカウトしに行ったり失望こそすれど部下を信頼して送り出していたりと、ちゃんと王様として君臨していたんだなぁ、と分からされる描写も多い。

 

 ノイトラみたいに性別で判断したりしないし、ザエルアポロみたいにマトモな会話ができなかったりしないし、ウルキオラみたいにこっちに一切興味が無かったりしないし、グリムジョーみたいにヤンキー過ぎて会話自体を嫌ってたりしないし。

 他がダメすぎる、という点も確かにあるんだろうけど、めっちゃいい人な気がする。

 

「バラガン陛下第一の従属官、シャルロッテ・クールホーン。ここに」

「娘子からお前に用があるそうだ。儂は席を外す。好きなだけ語らえ」

「え、いいよ。私達がどっか行くよ」

「構わないと言った」

「あ、行っちゃった」

 

 尊大だけど、どこか私を孫みたいな目線で見ているような気がしなくもない。虚にそういう親子概念があるのかどうかは知らないけど。

 バラガンが姿を消すと、ようやくシャルロッテさんが面を上げる。

 

「それで? バラガン陛下を通してまであたしを呼び出した理由……相応のものがあるんでしょうね?」

「いや、お爺ちゃんに会うつもりはなかったんだよ。ホント、そんな凄い理由じゃない」

「……ま、いいわ。あんたは私と同じくらい美しいし。あたしが美女で、あんたが美少女」

 

 十刃で一番仲良いのはバラガンだけど。

 破面で一番仲良いのは、従属官を除くとシャルロッテ・クールホーンである。最近ドルドーニとは疎遠。

 

「で、何用なのよ。早く言いなさいよ」

「シャルロッテさんってさ、蹴り技得意じゃん」

「ええ、そうね。あたしは斬魄刀戦闘以外なら、体術主体な部分も大きいし」

「私も武器以外の戦闘は蹴り主体なんだよね。だから」

「何? 教えて欲しいって話かしら?」

「教えられても体格違い過ぎてわかんないから、体術だけで組手してほしいな、って」

「……フフ、いいわよ、いいわよ。でもアナタ……この前、ウルキオラと一緒に現世に行った後、報告会で言動が咎められた時……言ってたわよね。『この女の子を傷つけるというのなら、私はいとも簡単に離反するし謀反を企てるし、なんなら殺す』、って」

「あぁ、うん、勿論」

「あぁん、言い訳しないところが流石ね。ええ、そこが気に入っているのだもの。同じ美しいもの同士、華麗なる組手、しましょうか」

「ありがとう」

 

 シャルロッテ・クールホーンはその身の美しさも勿論あるんだろうけど、何より美しいのはその精神だ。彼女は紛う方なき美人であると、私も認める。

 そして、その上で。

 彼は救う必要が無いと思う。いや、正確には……私に救われることを、望まないと。

 

 閑話休題。

 

 折角バラガンに外して貰ったけれど。

 やっぱり、当初の予定通り……場所を移動する。

 

 外の砂漠へ。でないと色々壊しちゃいそうだし。

 

「まず、初めに……わかっているとは思うけれど、蹴り技のリターンとリスクについておさらいしておきましょうか」

「リターンはリーチとインパクト、そして不意打ちや威力、だよね。リスクはバランスが欠けやすい事と、引き戻すのに時間がかかること、小回りが利かない事」

「ええその通り。だから蹴り技主体というのはあんまり褒められた戦闘スタイルではないわ。斬魄刀戦闘のオマケ、格闘戦闘に取り込む、なんかが有効ね。相手も蹴り技主体で戦ってくれるなら話は別だけど、そんな悠長で寛大な相手、中々いないでしょ?」

「うん」

「あんたは一応その双頭槍がメイン武器で、そのサブとして蹴りを主体にしたい、ってことよね」

「そう。でも、私は小柄で、力も無いから」

「ええ。打撃には向かない。狙うべきは相手の関節や頭部と言った弱点……そして、」

「龍化による斬撃。けどこれは今はいいや」

「そこまでわかってるなら、もう言葉は必要ないわね。んじゃ始めるわよ──あんたとあたしの、華麗なる舞踏会(フィエスタ・ディ・バール)をね!」

 

 瞬間、目の前の靴を屈んで避ける。顔面を狙ったハイキック。がら空きの軸足は、けれど続けざまの踵落としによって体を移動せざるを得なくなり、狙うことができない。

 

「そう! 残された足が弱点になるのなら、それを狙われる前に相手を動かし続ければいいの。蹴り技はどれだけ攻撃を続けられるかがキモ。ただしそれでも弱点は存在するわ」

 

 避ける。避けに徹する。龍化をしない私の体躯では、彼の蹴りを受け止める方法が無い。その威力もリーチもかなう事がない。

 だからこそ、間合いを外さない。常に密着する。そのためによく見て避けて、けれど退かない。

 顔面狙いのキック。ここ!

 

「せ、ぁっ!」

「いいわ。そう、蹴り技の弱点は自分の想定していないタイミングで止められる事。今のあんたみたいに上手く相手の内側に入り込んで伸びきった足を蹴り上げれば、相手は態勢を立て直さざるを得なくなる。それこそがス・キv」

 

 シャルロッテ・クールホーンの横っ腹に鋭い蹴りを入れる。今の状態の私じゃコレはダメージにならないけど、本来は龍化して行うので斬撃になる。だから、シャルロッテ・クールホーンは実戦想定で避けてくれる。

 ただし、伸びきった足を崩された後の回避だ。となればバックステップ、とはいかない。上体を反らしての、更に態勢を崩す形での回避。

 

そこ(デビリダッド)!」

 

 小柄である、ということは、身体の伸縮に多少の短縮がかかるということでもある。成人男性な骨格の多い死神や破面戦闘において、それは差はかなりのアドバンテージになる。

 しゃがみ、蹴り払うはシャルロッテ・クールホーンの軸足。どれだけ体重が重くとも、"一本である"という事実はバランス崩壊の一助となる。

 

「いいわ。でも」

「ッ!」

 

 後頭部を狙った襲撃。防御は、ギリギリ間に合った。けれど身体が前方に吹っ飛ばされる。

 何度か回転し、ようやくブレーキがかけられた時には──シャルロッテ・クールホーンの足が眼前にあった。

 

「……参りました」

「ええ」

 

 足が戻され、手が差し伸べられる。

 それを取って立って砂を払えば、さぁ反省会だ。

 

「自分で、何が悪かったのか言えるかしら?」

「……無理な姿勢からでも出せる蹴り技がある」

「正解。その通り、命のかかった戦いだもの。多少体に痛みが走るからといって、己の隙を埋めない戦士はいないわ。軸足を払われても、身体が空中にあって踏ん張れなくても、"足を引き戻す"という動作だけで十二分の威力を発する事ができる。腰に結構クるけどね」

「あとは、挟まれたりとか?」

「そうねぇ。挟まれる、だけで済めばいいケド、そのままねじ切られるとか、へし折られるとか……」

「想像に易いね。加えてここから斬魄刀の斬撃とか、その能力とかが入ってくるんだし」

「それを言うなら、あんただって蹴り以外の技は持ってるでしょ?」

「うん」

 

 息を整えて。

 シャルロッテ・クールホーンが斬魄刀を抜いたのを見て、私も双頭槍を出現させる。

 

「じゃあ、第二回戦ね。今度は武器有の蹴り技」

「虚閃や能力は無しね」

「当然じゃない。それを使われたら、あたしに勝ち目なんか無いし」

「あはは。──じゃあ、行くよ」

「ええ」

 

 剣戟が響き渡る──。

 

 

 

 

「ふぅ、いい汗かいたぁ」

「本当にね。あんたが解放使った時は違う汗もかいたけど」

「まぁ、私の解放はみんなと同じラインに立つ、くらいのものだし」

「その状態だと、たとえ身体が引き千切られても再生するんだっけ? ホント、不思議な身体よねぇ」

「まぁね」

 

 ──サウナ。

 何を言っているんだと思われると思う。虚夜宮に何作ってんだと。

 でも、耐えられなかったんだ。何日もお風呂に入らない生活。死神としての生活が長い市丸ギンや東仙要は特になんとも思わないとか言ってたし、藍染隊長は「そうだね」しか言わないし。虚には当然、お風呂に入ったりサウナで汗を流す、なんて文化はないし。

 私も霊子状態だから入らなくていい事は確かにそうなんだけど、気分というものがある。メンタルコンディションというものが存在する。

 

 だから第七宮に作った。お風呂とサウナを。

 そして、私のサウナ仲間がシャルロッテ・クールホーンなのだ。なんならここきっかけで仲良くなったと言っても過言ではない。

 

「しっかし……」

「なに?」

「見れば見る程、美少女よね、あんた。服着てなくともそうなのが羨ましいわ」

「シャルロッテさんだってすんごい美人じゃん。私の腹筋、ここまで綺麗に割れてないしさー。この広背筋とか、四頭筋とか……流石すぎる」

「触る?」

「さわるー!」

 

 こういうやり取りをほぼ毎度やってる。

 ここにエロスなど存在しない。美少女と美人が互いの筋肉や体格を称え合う──ただそれだけの場。

 

「……ね、華蔵」

「ん」

「さっきも聞いたけど……あんたは、あくまで人間側のつもり……なのよね」

「うん。今更自分を人間である、とは定義しないけれど、味方するのはあっちだよ。あ、でも別に積極的に虚を攻撃する事も無いかな。私の敵はわからないけど、いつだって私は美少女の味方だから。その敵に回るのなら、容赦はしない」

「そ。本当に潔いのね」

「でも、私は友達も大事にするよ」

「知ってるわ。だってあんたは美少女だもの。友達を大事にしない美少女がいるはずがないわ」

 

 シャルロッテ・クールホーンは、私の美少女観に理解を示してくれている。同時に私も、彼の美醜の概念に賛同を示している。

 気高くあるものが美しいと。それは人間だろうが死神だろうが虚だろうが変わらない。

 

「あたし、もうすぐ死ぬんじゃないかって。そう思ってるのよね」

「……え?」

「ほら、藍染様が今何か画策しているでしょう? あの方の考えてることなんてこれっぽちもわからないけれど……所詮破面はあの方の駒でしかない。あたしはバラガン陛下のために死力を尽くすけれど、それを込みで多分あたしは死ぬ。死神、人間、滅却師。どれに勝っても負けても……ね」

 

 シャルロッテ・クールホーンの顔は。

 それでも、悲しいものではなく。寂しいものでもなく。

 

「でもね、あたしも同じ」

「……シャルロッテさん」

「あたしも……あたしより美しいものにしか、負けるつもりはないわ。美しいと、そう認めなければ……どれほど身体を潰されようと、どれほど格差を見せつけられようと、負けてやるもんですか」

「……大丈夫。シャルロッテさんは、美人だから。それは私が保証する」

「ええ、美少女のあんたが保証してくれるなら、あたしの自信もより強固なものになる。……お互い、頑張りましょ。あんたは美少女のために。あたしは己の美しさのために」

「うん。……また遊ぼうね」

 

 そんな感じの、現世侵攻の裏っかわ。

 破面にできた、私の友達の話でした。

 

 

PREACHTTY

 

 

 グリムジョーが敗衄して帰って来た。連れて行った破面らは全員死亡。私が見に行く前に、彼は右腕を失くしていた。原作通り、東仙要に斬られたのだろう。

 

 ここから私がやれることは少ない。

 原作で言う現世侵攻のメイン、ヤミー、ルピ、グリムジョー、ワンダーワイス、そしてウルキオラ。ここにどーにか入れないかなーって思ってるんだけど……どうかなぁ。ルピがいない枠にどーにか入れないものか。

 入れなかった場合、本当にやることなくなっちゃうんだよな。

 

「構わないよ」

「……私が離反する、とか考えないんだ?」

「それでも構わない、と言っている。華蔵蓮世。君がどう行動し、何を思い、何処へ転ぼうとも構わない。私が君に求めている事は、まさにそれだからね」

「あぁ、そう。じゃあありがたく。織姫誘拐はウルキオラがやるんでしょ? んじゃ陽動隊にねじ込ませてもらうよ」

「ああ。ただし、指揮を執るウルキオラの言う事はある程度聞くように」

「はいはい」

 

 やることできました。

 うーん、風通しのいいというか、なんというか。

 

 何しても構わない、と来たか。

 ……確か、私は"崩玉の自然発生例"として、その実験材料としてここにいる、んだっけ。

 だから、思うままに振る舞って、それが起こす事象を観察できればそれでいい、とかなのかな。

 

 ま、藍染隊長の考える事を、原作以外において私が予想できるとは思えない。

 好きにやって良いと言われたんだから好きにやろう。

 

 

 

 

 さて、決行の日。

 黒腔を通るは四人。グリムジョー、ヤミー、ワンダーワイス、そして私。これは余談なんだけど、グリムジョーは片腕を斬られただけで、番号は失っていない。後釜は見つからなかったらしい。だからグリムジョーは復讐心に燃えこそすれど、焦ってはいない。ちょっとイチゴとルッキーアの方が危険かな、とも思うんだけど、ヒラコがいるから大丈夫だろうという信頼もある。

 

「しっかし、十刃三人使って陽動作戦とは、ウルキオラも中々慎重だよなぁ」

「まぁ解放ができないし、尸魂界の補充戦力もそれなりにいるみたいだしね」

「……」

「あああー」

「なぁ、オイ。ここだけの話、俺はこの変なの苦手なんだよ。相手、頼んでもいいか?」

「実を言うとね、私も苦手なんだ。言葉が通じないし、私が話しかけると逃げられるし。でも……」

 

 ヤミーと一緒にグリムジョーを見る。

 

「あァ? なんだ?」

「なんでもないよ、グリムジョー」

 

 溜め息。

 

「無理だよね」

「無理だなァ」

「まぁ……多分、相手にしなくても勝手に何とかすると思うし。気にしなくていいんじゃない?」

「そうすっかぁ」

 

 ヤミーとは、別に仲良くはないけど。

 こいつも割と話せるんだよな。雑魚と思った相手は雑魚としてしか取り合わないけど、一度認めたら普通に仲間として扱ってくれるというか。

 

 そろそろ出口だ。

 さて――ちょっとぶりの現世。

 

 美少女傷つけない程度に、楽しく行こうか!

 

 

 

 

 

「──久しぶりだな、華蔵蓮世。あの時は雛森が世話になった。その事そのものについては、礼を言う。お前の応急処置と助けが無かったらと思うと……ぞっとしねぇ」

「ああ、良かった。雛森ちゃん無事だったんだ。ごめんね、ホントは刺される前に助けたかったんだけど、間に合わなかった」

「いや、大丈夫だ」

 

 えー、凄く友好的です。

 私についているのは二人。シロちゃんと乱菊さん。美少年と美女だ。あーけど美少年は範囲外なんだよねぇ私。

 班目一角と綾瀬川弓親はそれぞれヤミーとワンダーワイスと対峙している。原作とは違う展開だけど、然程大した差にはならないだろう。あ、グリムジョーは当然のように単独行動ね。

 私達に課せられた任務はただ一つ。

 織姫誘拐のための時間稼ぎ、だ。殺せ、とかそういう命令は入っていない。

 

 だから、楽しもうと思っては来たけど、別にこのまま雑談でもいい。

 

「……華蔵蓮世」

「あ、華蔵でいいよ。華蔵ちゃんでも」

「お、おう。あー……華蔵。今からでも尸魂界に戻ってくる気はねェか? お前は……連れ去られただけだろう。藍染には敵対してたはずだ」

「アンタに対して、尸魂界は罪に問うつもり自体ないわ。結果的にアンタは何もやってない。どころか雛森や一護達を守り続けたって誰もが知ってる。藍染側についたとされている今でさえ、こっち側の戦力に致命傷を与えた事は一度も無い」

「ゆえに、今。尸魂界側に戻ると──お前が言うなら、それで終わりだ。勿論死神として、じゃなく、現世の人間として日常に戻り得る。多少の封印や制限はかかるが、人間として生きていく分には何も問題の無いレベルだ。……どうだ?」

 

 物凄い温情措置だ。

 裏切ったに等しいのに、現世へ返してくれる、なんて。

 

 ああ──まぁ。

 私が原作を知らなければ、勢いよく頷いていたんじゃないかな。

 

「ありがとう。でも、ごめんね」

「……そうか」

「私は美少女の味方だから。人間の味方でも、死神の味方でも、虚の味方でも、滅却師の味方でもない。美少女在る所に私はある。あっちにも、私が守るべき美少女がいるんだ」

 

 双頭槍を──向ける。

 笑って。

 

「だから今は、ここで散ってほしい」

「なら、仕方ねえ。──松本!」

「はい! 唸れ──灰猫!」

「霜天に坐せ、氷輪丸!」

 

 まず、一歩。

 二人の中間に入り込んで、シロちゃんへ突きを放つ。

 

「速い──」

「くっ!」

 

 双頭槍の良い所は、前後どちらにも攻撃が放てることだ。普通の槍より威力に劣る分、フェイントなどの小技は長ける。

 シロちゃんの刀が双頭槍に触れた瞬間、こっちの槍が氷出す……けれど、残念。

 瞬時に燃え盛る槍に、シロちゃんが大きく退いた。

 

 相性は最悪だよ。大紅蓮氷輪丸の最終形態になられると困るけど。

 

「唸れ、灰猫!」

黒龍の吐息(アリエント・ディ・ダラゴネグロ)

 

 灰の斬撃。付着したが最後、刀身の無い柄を振るうだけでそこ斬撃が走るとかいう結構凶悪な斬魄刀。その弱点は、灰を付着させなければどうしようもない、ということ。防御にもそこそこ使えはするものの、こうやって吹き飛ばされると苦しい。

 

 背後からの氷撃に、槍で対応。私の炎熱はしっかり彼の氷を溶かしていく。

 

「……随分と余裕だな。解放しねぇのか」

「いやだって、解放したら霊圧上がっちゃうじゃん。ヤだよ、霊圧で一般人気絶させるとか。中に友達とか美少女混じってたらどうするのさ」

「あんた……ほんっとに美少女ありきなのねぇ。あ、そうだ。一応聞くけど、もしここに雛森がいたらどうしてたの?」

「絶対攻撃してないよ。縛道とかで縛っとく。ああでも雛森ちゃん相手に縛道は悪手か。うーん、どうにか雛森ちゃんだけ引き剥がして、日番谷さんと乱菊さんの相手をする……とかかなぁ」

「あたしを傷つけるのはいいのね」

「いや全然良くない。美女だって勿論守りたい。けど、美女は自分の身を護る術を心得ている人が多いからね。美少女と違って私が守るまでも無いって感じ」

「あら、嬉しい事言ってくれるじゃない」

「松本ォ! 無駄口叩いてないで、合わせるぞ!」

「はぁい隊長」

 

 私の周囲を囲うように、灰と氷が回転を始める。

 全方位攻撃かな。

 

 ……いや。

 灰が、礫の形を取り始める。それに引っ付いていく氷。これは。

 

大龍硬殻(エンセーラス・エラ・カスカラ)!」

 

 避ける事、溶かすことを諦めて全身に龍皮を纏い、丸くなる。

 射出音。ズガガガガという工事現場みたいな音が周囲に響くけれど、ダメージはない。ただ、引っ付いてくる氷が段々と広がって……。

 あー。

 

「別て、双頭龍蛇(アンフィスバエナ)

 

 そのまま動けなくなりそうだったので、解放した。

 もう少し縛りをしていたかった。結局蹴り技も使えてないし。折角シャルロッテ・クールホーンと修行したのになぁ。

 

「よく溶かそうとしなかったな」

「今の、名付けるなら真空氷礫(ひょうれき)って感じ? 灰猫で鋭い礫の形を形成して、その周囲に薄い氷を這わせた後に灰猫を抜いて、中が真空の氷礫を作る」

「隊長、あたし達の合わせ技、簡単に見抜かれちゃいましたけど」

「うるさいぞ松本。見抜かれたって言わなきゃ見抜けたと確信できなかっただろ」

「あんな確固たる口調で言われたら頷かざるを得ないでしょ」

 

 原作読んでたからわかった。

 日番谷冬獅郎は他のキャラクターに比べても斬魄刀での技が多いからね。しかも漢字と技の内容が一致しててわかりやすいし。あとすぐ説明してくれるし。だからOPtBで負けること多いんだけど。

 

「だが……解放したな」

「さっき言ってたことと違うけど、いいのね?」

「いやだって、そっちが限定解除してる時点で尸魂界側が大丈夫だって判断したって事でしょ。だったらまぁ、同じくらいの力は出すよ」

「そうか。──だが、同じじゃない」

 

 霊圧が集中する。

 空気が冷えていく。

 

「──卍解」

 

 噴き出る。溢れ出る。

 彼の霊圧に、大気の水が怯えている。

 

「大紅蓮氷輪丸!!」

 

 その、姿に。

 

黒龍化(ダラゴネグロ)

 

 あぁ──感化されてしまった。

 

 もしかして、これが狙いなのかな、藍染隊長。




初期十刃の考察。

 初期の十刃は10人ではなく7人だった、と師匠が言ってましたね。名前も十刃ではなかったし、モチーフも人間の死因ではなく七つの大罪だったと。

 そこで、じゃあ誰だったんだ、っていう考察です。
 まず判明している初期メンバーがバラガン、ザエルアポロ、アーロニーロ、ヤミー。

 これを七つの大罪に当てはめると、
憤怒 ヤミー
傲慢 バラガン
強欲 ザエルアポロ
暴食 アーロニーロ

 ……に、なる気がします。諸説あり。
 で、残りの
嫉妬
怠惰
色欲
 なんですが、元々これら十刃の源流はバラガンの配下にあるとされていて、そんなら現バラガンの配下が幾人か入ってるんじゃないかと考えました。まだ破面もどきしかいない時代ですからね。
 なんで、
嫉妬 シャルロッテ
怠惰 チーノン・ボウ
 になるんじゃないかな、と。(シャルロッテが色欲ではなく嫉妬なのは、より高みを目指す=上に嫉妬し続けるの意。色欲というわけでもないですしね)
 で最後の色欲ですが、これは判断が難しい。バラガンの配下に色欲らしい破面はいないし、なんなら作中に登場した破面全てに色欲っぽいのはいません。
 なんで色欲は「いたけど死んだ」か「別に色欲っぽくないけど人数合わせであてはめられた」のどっちかになると思うんですよね。まぁ後者はないです。
 多分、「いたけど死んだ」「いたけど殺された」が正しいんじゃないかなーと。ノイトラ程顕著ではありませんが、女性の破面を嫌う破面は多く、色欲が女性だったら襲われてそうだなー、と。あるいはチルッチとかドルドーニとか、十刃落ちが前任してた可能性もありますが……やっぱりどっちも色欲っぽくはないので、死んじゃったんじゃないかな、と。

 以上煮え切らない考察でした。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。