リドルは3年生になった。
選択科目は魔法生物飼育学と古代ルーン文字学を選び、特にどれでもよかったテオとジュードもリドルと同じ科目を選択した。
ちなみに、この夏休みにリドルはジュードの巨大な屋敷で2ヶ月ほど連泊していた。
マグルに虐められてるに違いない、助け出さないと!と妙な使命感に突き動かされたジュードとテオはすぐに両親へ手紙を書き、リドルを孤児院から離すことに成功し、どちらの家で過ごすか…となった時に、やはり広い屋敷を持つレストレンジ家の方が良いだろうという結論に達した。
2ヶ月間、リドルにとってマグルのいない場所で生活できたのは有り難かった。
それが例え、何故か一緒に泊まることとなったテオが居たとしても、だ。
レストレンジ家には大きな書斎があり、好きに読んで構わないというレストレンジ家当主の好意によりリドルはほぼ毎日書斎に籠っていた。中には読んだ事がある本もあったが、ヴォルデモートにとってかなり好ましい種類の本も山のようにあり、わりと充実した日々を過ごしていたのだ。
度々、テオとジュードの2人がリドルの元を訪れ突撃し、無理矢理外に引き摺り出し、クィディッチをしようとせがんだが。
その度にリドルはブラッジャーにテオとジュードを追いかけるよう強い呪いをかけた。
逃げ惑うテオとジュードの悲鳴をバックミュージックに、リドルは優雅に闇の本を読み耽っていたのだ。
3年生になり一回目のクィディッチの練習で、リドルはいつものように面倒臭そうに空高くを飛んでいた。
視界には時々金色のスニッチもどきが姿を現していたが、あまり早く捕まえすぎるとキャプテンが「もう一回練習しよう!」と言い出す恐れがあるため、リドルは早過ぎず、遅過ぎず、絶妙なタイミングでスニッチを捕まえる事にしていた。
──面倒だ。また週に3度も練習をせねばならんのか。どうせ俺様がスニッチを捕まえて試合は終わる。他の奴らの練習など、はたして必要なのだろうか。
リドルは円を書くようにゆっくりと旋回しながら、ふと下の方でバットを振り回し豪速で突き進むブラッジャーを殴り飛ばすテオとジュードに気が付いた。
2年生の末に行われた決勝戦よりも、2人の動きは格段に良くなりフィールドを飛び回る。巧みな箒捌きを見せ、他の選手に衝突しそうだったブラッジャーをすぐに打ち返し、危機を回避する。
──そこそこ動けるようになっているではないか。…まぁ、2ヶ月間常にクィディッチクィディッチ五月蝿かったからな。
リドルは自分の右後ろ辺りを飛んでいたスニッチを振り返る事なく羽音だけで場所を把握し、ぱしりと捕まえるとすぐに地上に降り立った。
スニッチを元のケースに押し込んでいると、キャプテンが杖を空に向け爆竹にも似た大きな音を出す。練習時間終了を示すその音に、空を飛んでいた選手たちはすぐに降りてきて額に滲んでいた汗を拭い、ぐしゃぐしゃになっていた髪を整えた。
「テオ!ジュード!どうしたんだ?見違えたじゃないか!」
リドルが気が付いたのだ、クィディッチ馬鹿でありこのチームのキャプテンである男が気がつかないわけがない。
キャプテンは興奮したようにテオとジュードの背中を叩き、飛行術の向上を心から誉めた。
テオとジュードは顔を見合わせ、少し照れたように笑うと「トムのおかげなんです!」と声を揃える。
数々の選手たちの目がリドルを射抜き、リドルはいきなり自分に注目されるとは思わず、そして全くテオとジュードとキャプテンの話など聞く気が無かったため、何故自分が注目されているのかも分からず、曖昧に笑って首を傾げた。
「夏休みの間、トムがブラッジャーに魔法をかけてくれたんです!」
「へえ、そうなのか、トム?」
「は…。…はい」
「ずっと追いかけてくるようにしてくれて、初めは怖かったですけど…いい練習になりました!」
テオとジュードはにっこり笑って、リドルを何とも言えぬ暖かい眼差しで見つめる。
ヴォルデモートは最近2人がよく見せるこの生ぬるい目がどうも気持ちが悪く、首元にぽつぽつと鳥肌を立てながらもリドルはしっかりと「2人の努力ですよ」と謙遜する事を忘れなかった。
そう。テオとジュードはまさかリドルが自分達に大怪我をさせるためにブラッジャーに呪いをかけたとは思っていない。
これで特訓をしろって事だな、とプラス思考に勘違いし、狂ったブラッジャーと2ヶ月間毎日格闘していたのだ。
──こいつら、馬鹿か。いや、馬鹿だったな。騙されやすいにも程がある。まぁ、…だから扱い易いという面もあるが。
完全にリドルの事を信頼しているテオとジュードはこの先何があっても、リドルを裏切る事はないだろう。真の友情とはそういうものである。
「練習、お疲れ様です」
「トムは相変わらずだけど、テオとジュードも凄く上手くなったんじゃないかな?」
観客席でスリザリンチームの練習風景を見ていたアラン・ノットとルーク・ロジエールがピッチへ降りてきてリドル達に惜しみない賞賛を送る。
「だろ?今年の優勝杯もいただきだ!」
「トムが居れば、怖いもの無しだよね!」
「…みんなの力を合わせれば、きっとね」
リドルは爽やかな笑顔でそう言い、テオとジュードも既に輝かしい勝利を確信し大きく頷いた。
明るい笑顔で笑い合う同級生達を見ながら、ヴォルデモートは懐かしいトム・リドルの一団がようやく揃い、つながりを持てた事に満足していた。
アラン・ノット。彼はジュード・レストレンジと同じく純血魔法族だった。それも、他の純血よりもさらにその血の歴史が深く濃い、上流階級を持つ貴族のノット家の長子であった。
彼は純血を何よりも尊いものだと思い、マグルは羽虫程度にしか思っていない。そして、はじめはどこの血が流れているかわからないリドルの事をあまり良くは思っていなかったのだが、同じ階級にあるレストレンジ家のジュードがかなり慕い、尊敬していると知り興味本位に近づき、今ではそこそこ、話す仲だと言えるだろう。
ルーク・ロジエール。彼もまた純血魔法族のロジエール家の長子であった。
他の純血魔法族と同じく、純血である事に何よりも誇りを持つ彼は、半純血の事はそこそこ認めてはいるが、ふとした時に「マグル臭くない?」と冷ややかに嗤う事もある、強い差別思想を持っていた。彼もまたリドルの事はどこの生まれかわからないのにそこそこ頑張ってるなぁ、と遠くから見ていたが、どうやら純血のレストレンジ家に長期間泊まったこともある程の仲だと知り──アランと同じく興味本位に近づき、今ではリドルの事を陰で馬鹿にする事はない。
トム・マールヴォロ・リドル
テオ・エイブリー
ジュード・レストレンジ
ルーク・ロジエール
アラン・ノット
通称トム・リドルの一団。かなりそのままの名前なのは名付けた本人の高慢さと、何より自分が優れているという気持ちの表れだろう。
リドルを筆頭に、のちに死喰い人となる彼ら4人を見渡し、ヴォルデモートは少しだけ、懐かしさに目を細めた。
──テオ、ジュード、ルーク、アラン。こいつら確か皆死んだな。力を持たぬばかりに。いや、もともとそこまで優秀な奴らではなかったのだ…忠実な奴らだったが。その子供らは一部は裏切り一部は親と変わらぬ忠義を示した。
そう、この4人は第一次魔法戦争で皆死亡する。
ある者は闇払いに、ある者はヴォルデモートの影武者となり、ある者は仲間を逃すために、ある者は拷問の末。
今はまだ何も知らず屈託なく笑う少年たちの顔が絶望と恐怖に染まり死ぬのだと、卒業して数ヶ月後、急に世界中を旅しようと言うヴォルデモートに10年間も付き合った彼らが無惨にも命を落とすのだと、ヴォルデモートは知っていたが。
──まぁどうでもいい。今回もきっと死ぬだろうが、裏切りさえ起こらなければいいのだ。
だからといってその命を助けようとは、微塵も思わなかった。
しかし、それは一回目の人生の話である。
テオとジュードの好感度は前回より高く、ルークとアランも既に好印象を持ち始めている。
トム・リドルの一団が結成されるのは後数年後の話ではあるが、それまでにヴォルデモートが変わらず優しき模範生の仮面を被り続け、全てを騙す限り、未来はどう転ぶかわからない。
名前はどれだけ探しても見つからなかったので適当です。
性格も勿論わからなかったので妄想です。
10年間一緒に旅し続けるとか、普通に考えて凄いですよね彼ら。
追記、少々修正しました。