ヴォルデモート卿、人生をやり直す。   作:八重歯

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13 ヴォルデモート卿、偽る。

 

 

三年生の後半、リドルは最近行動を共にするようになったテオ、ジュード、アラン、ルークとスリザリン寮の談話室にいた。

ようやく寒い冬が終わり、暖かな春が訪れ外で健康に遊ぶにはもってこいの季節だったがリドルは外で元気に駆け回ることなどしない。

テオとジュードはともかく、アランとルークもどちらかといえばインドア派だった為、多数決が行われれば大体室内で過ごすこととなった。

外に出ようとしないリドル達に、ジュードは「日影ばっかいてるとキノコ生えるぜ?」と嫌そうに文句を言ったが、それでも彼はテオと2人きりで外に行くよりはリドルと共に居ることを選んだ。

 

 

「あーー!!もういいだろ?これ以上詰め込んだら覚えたこと全部忘れるって!」

「ジュード、あなたが学年末テストが大変だからといって、わざわざトムが教えてくれてるんですよ?」

 

 

羽ペンを投げ出し羊皮紙の上に突っ伏したジュードに、アランは呆れたような声を上げる。

学年末にはテストがある。ジュードは馬鹿ではないが、純血魔族に求められる知能までは及ばない。その為両親にこれ以上成績が下がればクィディッチの選手である事をやめるように言われてしまい──仕方がなく、かなり早めからテストに向けての勉強を始めていた。レストレンジ家の者がクィディッチにうつつを抜かし過ぎて穢れた血共よりも馬鹿であることを、勿論両親も世間も許さない。

 

かれこれ2時間は机に向かっていたジュードだ。彼にしてはかなり頑張った方だろう。

リドルは壁にかけられている時計を見てまぁそろそろ休憩くらいは挟む方がいいか、と薬草学の教科書を閉じた。

 

 

「じゃあ。10分休憩で」

「じゅっ…10分…」

「あー僕ももう、教科書見たくない」

 

 

ジュードはあまりの短すぎる休憩時間に愕然として言葉を無くし、テオも教科書と羽ペンを投げ出して怠そうに天を仰いだ。

 

 

「あなた達、腐っても聖28一族に名を連ねているのでしょう?将来は魔法族を率いる存在になるのですから、そんな当主達が知能の足りぬ馬鹿だなんて…私は嘆かわしいです」

 

 

アランはノット家の次期当主としてその中では最も教養と知能があった。リドルには及ばないまでも、学年で次席を誰かに譲ることは無い。

 

 

「わかってるって…」

「いいえ、わかってません。トムが優しいからといってあなた達は──」

 

 

嫌そうな顔をしたジュードとテオに、アランの苦言は止まらない。ガミガミと口煩いアランに、2人はちらりと視線を見合わせ肩をすくめた。

 

 

「これって、トムの本かい?」

「ああ。…そうだけど?」

 

 

アランにガミガミと怒られる2人を見ながら何気なく机の上にある教科書をペラペラとめくっていたルークは、最後のページにある名前を見て手を止めた。

いくつも書き込みされ、わかりやすい注釈がついているこの教科書、きっとトムのだろうとは思っていたが書かれていた名前が「T.M.R」というイニシャルだった為、一瞬古本屋で買った誰かの名前だろうか、と思ったのだ。

 

 

「トム…なんていうんだい?」

 

 

ルークは「M」のアルファベットを見て首を傾げる。

ヴォルデモートはそういえば──わざわざ名乗る事もなかったな、と思いつつ「マールヴォロ。トム・マールヴォロ・リドル」と自分の正式な──あまり名乗りたくはないその名前を告げた。

 

 

「マールヴォロ?…どこかで聞いた名だね」

 

 

ルークは首を傾げ、暫く小声で「マールヴォロ…」と呟いていた。テオとジュードに苦情を言っていたアランもその何処か聞き覚えのある名前に2人を責めていた声を止め、首を捻った。

 

4人とも、その名前に聞き覚えがあった。

どこで聞いたのだろうか、と思い出せそうで思い出せない何とももやもやしたものを感じている彼らに、ヴォルデモートは今言うべきかを悩んだ。

 

 

──前回は俺様がゴーント家に関わりがあると…こいつらは気が付かなかったが…。いや、そもそもマールヴォロという名をこいつらが知ったのはもっと後だった。こいつらにはサラザール・スリザリンの血を引く唯一の家系であるゴーント家である事を伝えたが…。いつだったか、少なくとも…こいつらが自分から気付いた事はなかった。

 

 

前回、ヴォルデモートは母親がマグルで父親が魔法族なのだと信じていた。

魔法族であるなら、母親は哀れな身なりで死なずに済んだはずだ。きっと、トム・リドルという自分の父親が魔法使いなのだと思い込んでいた。

しかし、自分の父親らしき『トム・リドル』という名前はどれだけ探しても見つからなかった。歴代の監督生の名前の一覧表や、輝かしい栄光のトロフィーなどを探したが──ついに見つかることは無く、ヴォルデモートは哀れに死んでしまった母親が魔法族だったのだと認めざるを得なかった。

わかるのはマールヴォロという名前だけであり、暫く探したのち──割とすぐ、マールヴォロ・ゴーントという名前にたどり着いた。

 

ゴーント家は聖28一族にも入っている由緒正しい純血魔族であるが、どうも衰退しているらしいと聞き、5年生になる前の夏休みに、会いに行き…そして魔法族である母を捨てたマグルの父が生き残っている事を知り、殺害した。祖父に罪を重ねて。

 

 

今回も殺す気はある。

いや、殺す気があるというよりも、生かす気がないと言った方がいいだろう。時期は様子を見るとして、今このタイミングでゴーント家との繋がりを彼らに伝えていいのか──ヴォルデモートは数秒悩んだ。

 

 

 

──どうせ知る事になるか。早いか遅いかの差だ。

 

 

 

「…僕の母方の祖父の名前がマールヴォロっていうみたいなんだ。変わってる名前だよね」

「マールヴォロ…マールヴォロ…、…あっ!!マールヴォロ・ゴーントかい!?」

 

 

呟いていたルークが大声を出し、ジュード達も「あっ!」とモヤモヤが晴れたような顔をした。

 

驚愕し僅かに動揺している彼らを見て、リドルは全くその驚きの意味がわからないという表情で首を傾げ、困ったように笑う。

 

 

「マールヴォロ・ゴーント…?」

「ゴーント家は、聖28一族なんだよ!って事は、トムもきっと純血なんだ!」

「確か…家には娘が居ましたが行方不明になっていると聞いています。名前は…ちょっと待っていてください」

 

 

アランが「アクシオ」と唱え聖28一族の書物を呼び寄せる。自室に置かれていたのであろうその本は少ししてすぐにアランの手に飛び込んできた。

アランは机の上に乗せると、パラパラとめくる。沢山の純血魔法族の名前が枝分かれするように書かれていてレストレンジ家、ブラック家、マルフォイ家などの中にゴーント家もたしかにあり、その一番下にはメローピー・ゴーントと書かれている名前があった。

 

 

ヴォルデモートは母親の名前を見て、目を細める。

 

 

──前回は、純血だったら良いとそれに焦がれこの本を読み、そしてマールヴォロ・ゴーントの名を知った。彼奴に辿り着くまでにそう時間は掛からなかったが…ふむ、コイツらが自分から気がつくとこんな反応になるのか。

 

 

「メローピー…確か、孤児院で僕を産んで死んだ母の名前と同じだ」

「まじかよ…いや、トムはめちゃくちゃ頭いいし、魔法も凄いし…有名な血筋なのかなって思ってたけど…ゴーント家か…」

 

 

すでにゴーント家で存命を確認されておるのはマールヴォロ・ゴーントの息子であるモーフィンだけだ。メローピーは行方不明のまま、居所がわからないとされている。

 

ゴーント家が、スリザリンの血筋であるのはかなり確かな情報だと噂されている。ゴーント家の者ならばスリザリンのように、パーセルタングが使えるはず。

 

 

「…トムって動物と話せたり…?」

「言ってなかったかな?蛇となら、話せるよ」

「…ゴーント家ですね、間違いありません」

 

 

テオの言葉にリドルは困惑しながら頷く。その頷きを見た4人は視線を交わし、真剣な顔で頷いた。──間違いない、ゴーント家の者なんだ。

血を守るために従兄弟同士のや近い親族の近親相姦を繰り返したゴーント家は粗暴で知性もなく、没落しているといっても過言ではない。

衰退し、貴族の品性のかけらもないゴーント家と誰よりも美しく優しく教養のあるトム・リドルが親戚──それもかなり血が濃い親戚だと言う事実に、4人は、ゴーント家が現在どうなっているのか知っているゆえに、この事実をリドルに伝えていいのか悩んだ。

 

ゴーント家の衰退ぶりは、純血魔法族なら晩餐会やちょっとしたパーティでよく話題になるのだ。

嘲笑と、僅かな畏怖と、尊敬も、確かにあるだろう。ゴーント家は純血性を守るために、滅びゆくのだと、誰もが思っていた。

 

 

「…という事は、僕らみんなとおーい親戚だね」

 

 

テオがぽつりと呟く。

魔法族の聖28一族はだいたいどこかで繋がると言っていい。純血である魔法族はすでに少なく、純血を保つ為に血のために結婚し子を成すのだ。

 

彼らはきっとトムはメローピー・ゴーントと、リドルとかいう()()()()()使()()の子どもなのだろうと思った。

半純血である可能性もある、しかし、リドルはかなり魔力が高く優秀だ、純血であればあるほどその力が強くなると信じる魔法族は多く──スラグホーンが良い例だ──彼らもまたそう思っていた。

 

 

ヴォルデモートは自分の父親はマグルである事を勿論知っていたが、わざわざ自分のとんでもない欠点でありコンプレックスを他人に伝えるわけがない。

ただ、遠い親戚、その言葉にヴォルデモートは家族を知らないリドルらしく嬉しそうに微笑んだ。

 

 

 





よく考えたらリドルが半純血って知らなそうだな?と思って少々修正しました。
おともだち紹介パートようやく終了です。
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