ヴォルデモート卿、人生をやり直す。   作:八重歯

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05 ヴォルデモート卿、組分けされる。

 

 

 

9月1日。

ヴォルデモートはホグワーツ特急に乗り、ついにホグワーツ城にやってきた。

 

ホグズミード駅に到着し、小船に乗り込み広い湖を渡る。

夜の闇の中に浮かび上がるようなホグワーツ城を見た時、ヴォルデモートは思わず「…ああ、」と感嘆にも似たため息をはいた。

 

 

全てはホグワーツから始まり、ホグワーツで終わった。

死に場所でもあったそこは、唯一、心安らぎ深呼吸が出来た場所。何よりも思い出が多く、離れ難かったその場所に──今、俺様は帰ってきたのだ。

 

 

前回の学生生活は、ヴォルデモートにとってなかなか楽しいものだった。

 

沢山の本があり、様々な知識を得た。輝かしい魔法の世界に触れた。自分のルーツを探す事だって出来た。穢れた血を呪い、秘密の部屋を開いてバジリスクを散歩させた事もあった。

それに、不死の方法を探し──分霊箱を作る方法もこの時に知る事ができた。

 

あの老いぼれジジイ(ダンブルドア)には疑われ、警戒されていたが、かといって──俺様の邪魔をしたのは、卒業後の就職先の一件だけだろう。この優秀な俺様が教師になれなかったのは、きっとアイツがディペッドによからぬ事を吹き込んだからに決まっている。

 

 

ヴォルデモートは新入生達と共に、魔法生物飼育学の教師に引率されながら大広間へ続く大理石の階段を上がっていた。

 

 

ふと、気がつく。

 

 

──そうだ。ジジイが俺様を警戒していなければ、卒業後にここで教師をする事が出来るだろう。闇を求めて旅をした年月は沢山の魔法を知る事が出来、無駄では無かったが…2度、経験せずともいいだろう。

 

 

教師が組分けの説明をしている間、リドルはぐるりと新入生達を見渡した。

 

 

──エイブリー、レストレンジ、ロジエール、ノット…いやはや、懐かしい。

 

 

彼らはやや緊張した表情で他の新入生と同様、身を寄せ合うように歩いていた。将来死喰い人になり、闇に堕ちる彼らも──今はまだ11歳の少年だ。

純血思想が強い彼らはスリザリンに組分けされ、将来、トム・リドルの一団を結成する。

 

優等生で模範生であるトム・リドルが作り上げたそのグループは、表向きにはただの仲良し友達同士の勉強会グループのように捉えられていただろう。だが、実際は闇の魔法を学び、使用する。時には穢れた血を呪い粛清する、そんな死喰い人の前身組織でもあった。

 

 

 

レストレンジは俺様に真に忠実だった。──誰が裏切り者になるかがわかっている今。もう俺様は間違わぬ。それに、敵の息のかかっているものを内部に取り入れてたまるか。

 

それに、今思えばたいした力もない死喰い人が多かった。今回は限りない忠誠を誓い、裏切ることの無かったもの達だけを集め──少数精鋭の軍団を作ろう。まぁ、どうしても死喰い人になりたいというのなら、俺様の肉の盾になればいい。

 

前回の俺様はぬるかったのだ、恐怖で支配できると思い込んでいた。純血の尊い血がながれる者を手にかける事は避けていたが──それ程、服従の呪文にかけられたというのなら、本当にかけてやれば良い。

 

特に、マルフォイ家の奴ら!神秘部で予言を失うという痛恨のミスを犯したルシウス。禁じられた森でポッターの死を偽ったナルシッサ。…あの一家は骨の髄までしゃぶりつくしたあと、必ず根絶やしにしてやる。

 

ふむ…マルフォイ家は俺様の金庫だとして、やはりレストレンジ家に近付くのならば、スリザリン寮に入るしかないか…別寮になれば、心底陶酔させる事は叶わぬかも知れん。

 

 

 

ヴォルデモートは長い時をかけてどの寮を選択すべきか悩んでいた。

スリザリンに入れば前回同様、幼き少年たちを自分の手に落とし、死喰い人に引き込むのは容易い。それに、莫大な資金を持つ純血魔族達と交流が深める事ができる。

スリザリンはどうしても他寮との交流が少ない為、レイブンクローになれば彼らと仲を深めることは些か困難かもしれない。だが、ダンブルドアの疑いを晴らす事ができるだろう。

 

 

──あの帽子は本人の望みを叶える傾向にあるとは聞いている。…だが、まぁ、スリザリン以外に組分けられるとは、微塵も思わないのだが。

 

 

 

組分けは静かにヴォルデモートが思案している間にも着々と進み、半数の生徒がそれぞれの寮生が待つテーブルへとついた。

 

 

「リドル・トム!」

 

 

教師がリドルの名を読み上げ、リドルは静かに壇上に上がり古びた椅子に座る。

頭の上にぽすんと組分け帽子が乗せられ、リドルの視界は暗く覆われ──。

 

 

「スリザリンっ!!」

 

 

 

──る前に、スリザリンだと帽子は叫んだ。

 

 

すぐに帽子がとられ、視界がクリアになる。

スリザリン生からの拍手が送られる中、リドルは微かに微笑みすぐにスリザリン生の居るテーブルへと向かう。

 

 

──やはり、こうなったか。いや、それも当然だろう。俺様はヴォルデモート卿。どれほど外面を取り繕うとも、心は微塵も揺るがない。

 

 

リドルは同じスリザリンに組分けされた新入生の隣に座りながら、ちらりと教師達が座る上座を見た。ダンブルドアは、特に変わりなく微笑みながら手を叩いている。──そうか、今はまだ俺様がスリザリンに組分けされたとはいえ、今後微塵も怪しまれる行動さえしなければ、監視されずに済み、彼奴の信用を勝ち取る事だって出来るのか。

他の教師と同様、騙してみせよう!俺様は偉大な闇の魔法使い、ヴォルデモート卿なのだ!

 

 

「やあ、俺はジュード・レストレンジ、君は?トム…なんだっけ?」

「リドル。トム・リドルだ」

 

 

ジュードはにこやかに微笑み、たまたま隣に座ったリドルに手を差し出す。リドルも笑顔で手を握り、名前を名乗った。

 

 

「そっか、よろしくな!君は純血かな?俺は勿論、由緒正しき高貴なる血が流れる純血だ!」

 

 

胸を逸らし誇らしげに言うジュードに、リドルは少し困ったように笑いおずおずと口を開いた。

 

 

「わからないんだ。僕は両親の事を何も知らない。孤児院で暮らしているから…」

「おっと、それはごめんね。…まぁ、でもスリザリンに組分けされたってことは、純血じゃなくともどちらかが魔法族に決まってるさ」

 

 

ジュードは本心ではちっとも申し訳なく思ってないのだろう。軽く謝るとすぐに見定めるような目でリドルを見た。

 

──そういえば、こんな出会い方だったような気がする。単純で自分の思想を持たぬ馬鹿。なによりも扱いやすい男であり、だからこそ俺様に忠義を誓ったのだ。

 

 

ルームメイトは確か、この男とエイブリーだったな。

 

リドルは少し離れた席に座り、他のスリザリン生と楽しく話すエイブリーを盗み見る。

 

 

学生生活は今日から始まったばかりだ。暫くは優等生トム・リドルとして振る舞い、ゆっくりと、アイツらを取り込めば良かろう。

 

 

しかし──7年間か。

ホグワーツの図書館にある蔵書は膨大な量だ。前回全て見ることは不可能だった。読み逃している書物を全て網羅するのもいいだろう。

愛について、など。気が進まないとはいえ、前回その魔法で勝機を逃したのは事実。少々愛とやらについても学んでみるか。心から嫌だが。

 

 

愛について理解できず、愛を知らないヴォルデモートはこの日、トム・リドルとして愛を学ぶ事を心に決めた。

 

その決意が、この先にどういった影響を及ぼすかは、まだ誰も知らない──。

 

 

 

 





短くてすみません。
この後わりと早く進むと思います。
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