リドルはクィディッチにあまり興味が無かった為、レイブンクロー対ハッフルパフの試合を観に行くことは無く、ホグワーツの図書館を訪れていた。
殆どの生徒が競技場に集まって居るからか、図書館には司書が1人いるだけで誰も居ない。
リドルは高い本棚を幾つか通り過ぎ、図書館の奥にある書棚で足を止めると杖を振り幾つかの本を腕に抱えた。
『確実に魔女を惹きつける12の法則』『真実でニッチな愛と生について〜上級者向け〜』『魔法界における恋の病100例』「愛と恋の魔法、これを知れば全てあなたの虜!魔女を落とす為のテクニック!』…などなど、どの本もピンクや紫の鮮やかな色彩をしていて、リドルが持っているだけで二度見してしまいそうな本だ。
ヴォルデモートは愛について、本から学ぼうと考えた。分霊箱についても載っている本があったのだ、きっと愛の魔法についてもどこかにあるだろう。
それっぽいタイトルの本を無作為に選び、日のあまり当たらない図書館の奥にある席に座り、とりあえず開いた。
机に頬杖をつきながら書かれている内容を読んでいく。速読が出来るリドルは、無表情のまま次々とページを捲り、すぐに一冊を読み終わるとまた別の本に取り掛かった。
──理解できん。胸がきゅんと締め付けられる、とは一体どう言う事だ。締め付け呪いかクルーシオでもかけられているのか。
ヴォルデモートは前回、全くもって愛を理解出来ず、愛の魔法など存在するわけがないとたかを括っていた。だが、その代償はあまりにも大きかった。
そうならないために、そして──なによりも理解し難く嫌悪感のある愛とかいうものであっても、それが魔法であるのならば──自分が知らない魔法があるなど、ヴォルデモートは耐えらず、それを知りたかった。
しかし、使えるかどうかは、また別問題だが。
──愛している人物との性行為が何よりも満たされ幸福?ただの性処理だろう。
ヴォルデモートは勿論、童貞では無い。
何よりも美しかった学生時代、幾らでも股を開く女が居たため、ヴォルデモートは特に性処理で困ることは無かった。まぁ、彼女面されるのは面倒で全ての女に忘却魔法をかけていたが。
数十分で全ての本を読んでしまったリドルは無駄な時間を過ごしてしまったと思いながら杖を振り、本を元の場所に戻した。
しかし、在学中に何とかして愛の魔法を知らねばならない。このホグワーツにある図書館ほど蔵書が多い場所はないだろう。
リドルは仕方がなく、面倒臭そうにさらに数冊の本を抜き取った。
そろそろクィディッチの試合が終わる頃だろう。他の生徒たちに何を借りているのか知られるのも、厄介だ。
そう考えたヴォルデモートはカウンターにいる司書に借りたい本を数冊を渡し、無事に借りることができた本を鞄の奥底に押し込む。
──まぁ、一年程度で愛が何たるかを理解出来るとは思わぬ。前回は愛の持つ魔力を過小評価し、大したものではないとたかを括り理解する気などさらさら無かった。…しかし、今回は違う、俺様が自ら愛を理解しようとしているのだ、この俺様が!その差は大きいといえるだろう。
リドルはスリザリン寮へ続く廊下を歩き、窓の外から競技場を見る。
遠くから生徒たちの歓声が聞こえることから、どちらかのチームが勝利したのだとわかった。
リドルは全くクィディッチに興味がなかった。
いや、全くないわけではない。前回はそれなりに箒を使って空を飛ぶ事にも憧れるまだ少年らしい気持ちを持っていた。
しかし、途中で姿現しの存在を知り、箒に乗って移動する意味が見出せず──結局、それから箒をわざわざ使って移動する魔法使いを愚かだと思い箒に乗ることはなかった。
姿現しで一瞬で移動できる方法が有りながら、何故時間をかけて箒で移動するのか、全く理解できなかったのだ。
とは言っても。勿論人並み以上に箒を乗りこなす才能はあるのだが。
「…そういえば…本には、同じ経験をする程に愛が深まるだとか書いてあったな…」
ぽつりとリドルは呟き、窓枠に腰掛け競技場の方をじっと見る。
先ほど読んだ本の中には共通の経験があるほどに愛は深まるという記載があり、ヴォルデモートは自分にないのはその経験かと首を傾げていたのだ。
どこかに蛇語を話せ、闇の魔法を使いこなすことが出来、尚且つ魔力も自分と同等の力を持ち世界征服を企んでいる者がいるのなら別の話だが、そんな存在いるわけがないだろう。
──そういえば、選手同士で恋人になる者が多かったな…。
ヴォルデモートは前回の学生時代を思い出し──全く自分には興味がなかったが──周りの生徒たちはクィディッチの選手同士で付き合ったり離れたりしていた。その他にもクラブ活動が同じ者で恋人関係になっていたものもいただろう。
広いようで狭い子どもたちの社会では、やはり共にいる時間が長ければ長い程に深い仲になりやすい。
ヴォルデモートは前回、秘密の部屋を探し出す事に5年を費やし、トム・リドルの一団を作り上げ闇の魔法について議論していた。そこに女の影は一切なく、また必要ともしていなかった。
そのため、本人は特に気にしていないがヴォルデモートは青春など、送っていない。
「…クィディッチか…」
トム・リドルの一団に女を入れようとは思わない。愛を知らないヴォルデモートでも、男女間のトラブルにより、ドロドロとした滑稽で馬鹿な事が起こることは知っていた。
将来、死喰い人にさせる軍団なのだ。面倒な色恋が起こりうる可能性を少しでも引き入れる事は出来ない。
ならば、自分から既に出来上がっている男女がいる空間に飛び込むしかない。
──まぁ、俺様が選手になれないわけがないだろう。
ちょうど、1週間後に一年生にとってはじめての飛行術がある。
確かな才能を見せつければ、きっと簡単に選手に選ばれる事だろう。一年生は参加できないと聞いているが、それならば二年生の時に選手になれば良い。
リドルは立ち上がり、スリザリン寮へと向かった。
数日後。
図書館に立ち寄ったダンブルドアは司書から生徒の貸し出しリストを受け取り、自分の研究室に戻った後、ふかふかとしたソファに座り目を通していた。
何を誰がいつ借りたか。プライバシー的なこれを閲覧出来るのは教師だけであるが、闇の魔術に関する怪しげな書物ばかり借りている生徒がいないか見張るため必要な事であり──教師だけが知る、隠れた仕事の一つであった。
そして、前回のヴォルデモートはかなり闇に深い本ばかり借りていた為、ダンブルドアに信用されなかったという隠された事実がある。
とはいっても、ホグワーツの図書館にある本は閲覧禁止棚以外は誰が見ても一応は、責めることは出来ない。あくまで闇に染まるかどうかの可能性の指標にしかならないが。
「…トム、ほぼ毎日、本を借りているんだな」
長いリストに、気にかけている生徒の1人であるトム・リドルを見つけ、ダンブルドアは目を止めた。
何を借りているのだろうか、あまり本は買えない環境だが、どの科目でもかなり優秀だと評判だし、きっと色々先を見て予習する為の本か何かだろうか。
ダンブルドアはトム・リドルの名前を杖先で軽く叩いた。
「──これは…」
『愛され魔法使いより愛する魔法使い!?』『愛されボディメイク魔法、流行の最先端に追いつこう!』『愛とエロスの先にあるものとは』『愛の呪文1000種』『あの子の命を虜にしよう!愛の呪文の恐ろしさと素晴らしさ』
ダンブルドアは無言でもう一度リドルの名前を杖先で叩き、彼が借りている本の題名の羅列を消した。
「…ふふ、トムは甘酸っぱい青春を送っているようだ、うん。良かった良かった…」
誰よりも秀でた才能を持つあの美しい少年が、年頃の少年らしく愛に悩みいじらしい青春を送っているのかと思うと、何だかダンブルドアは嬉しかった。
ダンブルドアは、一つでも愛が世界に多く生まれる事を何より──誰より喜ぶ。
自身がその愛を、持たぬからだ。──正しくは、1人を愛する事を選べなかった、ともいえるだろう。
──トムとは、愛の持つ力について…いつか語り合える日が来るかもしれない。
魔法族にとって、愛は長年研究されているひとつの分野として確立している。尤も、それを過小評価している者が多いのもまた事実だが。
ダンブルドアは何よりも愛の尊さと、それがもつ力の偉大さを知っている。
ダンブルドアは薄く微笑み、目を輝かせるままに他の生徒たちが何を借りているのかを、ゆっくりと紅茶を飲みながら調べていった。
勿論、ダンブルドアの考えは全くもって勘違いも甚だしい。
しかし、ヴォルデモートにとってはかなり、都合良く解釈してくれたと言えるだろう。
ホグワーツって、結局図書館が正しいのか、図書室が正しいのか…原作ではどっちも出てくるんですよね…。
ヴォルデモートは果たして選手になれるのか!?