魔法生物使い、ホグワーツ魔法魔術学校にて 作:Mr.メトロノーム・改
知り合いに見せたら意外と反応が良かったので初投稿です。
「あー……なるほど、そういうことね」
目の前に立つ、ドアを破壊しかねない勢いで入ってきて、現在は姉さんに質問攻めにされている毛深い大男――ルビウス・ハグリッドと、眼鏡をかけた少し巻き髪な
◇ ◇ ◇ ◇
俺は俗に言う転生者だ。と言っても、最近のラノベのテンプレみたいにトラック事故の犠牲者でもないし、女神様に色々とチートをもらったわけでもない。物心ついたと同時に蘇った記憶によれば、高校でうとうとしながら授業を聞いていたときに急に地震が起き、そのまま崩落に巻き込まれて――という感じで前世を終えたらしい。
そして現在はごくごく普通の、一般家庭に生まれた
俺の母方のいとこであり、育ての親でもあるレリア・レクティア――レリア姉さんは、なんと俺と十五歳しか離れていない。どうも、独り立ちがかなり早かったらしく、さらに大の子供好きだったことも相まって、当時三歳で物心ついたばかりの俺を引き取ったらしい。初めて聞いたときはかなりびっくりしたし、「両親はよく許してくれましたね」みたいなことを言ったら、
「自分で言うのも何だけど、私結構しっかりものだからね。大学も飛び級したし。」
と、さらっとかなりの秀才であることをカミングアウトされたので、更にびっくりしたことをよく覚えている。
しかし、俺自身はそれなりには頭が回るものの飛び抜けて秀才というわけでもなく、きっとレリア姉さんに世話になりながら普通の第二の人生を送るんだろうなぁ、とそう思っていた――
◇ ◇ ◇ ◇
あの日は、鳥の鳴き声で目が覚めた。おそらく、ふくろうだったろう。折角の休日に早起きしてしまった事を後悔しつつゆっくりと階段を降り、玄関の方に目を向けると、何かが落ちていた。
「…ん?」
手にとって見ると、それはどうやら手紙であるらしかった。そして宛先には、
『セレスティア通り15番地 2階北西の子供部屋 レイ・ライビアード様』
と書かれていた。
「俺宛て…? 珍しいな…」
とぼやきつつ、中身を読もうとダイニングに向かう。かなりの秀才である姉には学術関係者だの記者だのから山ほど手紙が来るが、俺宛というのはめったにない。
ダイニングに座って封蝋を開けて中身を取り出そうとし――おかしなことに気づく。
「――なんで、俺が2階の子供部屋にいることを知ってる?」
そう、何故かこの手紙の送り主は
基本訪ねてきた人達は玄関先、もしくはどこか別の場所に行って話すし、姉さんが知り合いを家に上げたことは何度かあったが、俺の記憶の限りでは2階に上げたことは無かったはずだ。
「…まさか、誰か忍び込んだのか?」
姉さんはかなり有名な人物であるため、悪質な記者が追跡してくることもたまにある。最も、大抵はすぐに俺か姉さんに気づかれるのだが。
「…とにかく、まずは開けてみよう」
改めて封蝋を剥がし、中から手紙を取り出す。二つ折りにされた中身を広げてみると、こんなことが書いてあった。
『ヴァニア州クリスタルアイルズ セレスティア通り15番地 2階北西の子供部屋 レイ・ライビアード様
親愛なるレイ・ライビアード殿
この度、あなたがホグワーツ魔法魔術学校の生徒として選ばれましたことをお知らせいたします。
生徒は到着時に、受付となる商工会議所に報告する必要があり、その日付は正式に通知されるものとします。
ここに添付されている要件リストを注意深く確認してください。
ホグワーツの偉大なる歴史に、あなたを新しく迎え入れることを、我々一同大いに楽しみにしております。
敬具
教授 ミネルバ・マクゴナガル
ホグワーツ魔法魔術学校
校長 アルバス・ダンブルドア
追伸 振り子時計の右上の端にあるボタンを押してみてください。あなたの叔父が残してくれたものがあります』
「……は?」
唐突すぎて理解が追いつかなかった。しばらく呆然としたあと、ふっと我に返った。
「いや、え、マジで?」
真っ先に「イタズラではないか」という考えが頭をよぎるが、イタズラにしてはあまりに質素すぎる上に、こんなイタズラをして誰が得するのかさっぱり分からない。それに、イタズラなら最後の文章があまりにも謎すぎる。
「俺の叔父……名前なんだっけ?」
姉さんから数回だけ、俺の父方の叔父に当たる人物の話を聞いたことがある。なんでも、わりかし有名な生物学者だったようだ。なんでも、辺境や未開の地に行っては珍しい植物だの新種の生物だのを引っさげて帰ってくる、半分冒険家のような人物だったらしい。名前は確か――
「…カイニスか」
カイニス・ライビアードだったはず。確か、父の弟だったか。しかし、俺が生まれた頃にはすでに行方不明になっていたらしく、顔を合わせたことなど一度もないはず。なんでそんな人物が、俺のために何かを残すのだろうか。
「…とりあえず、試してみるか」
振り子時計というのは、おそらくリビングにある2m近くある大きな振り子時計のことだろう。なんでも、父の遺品だとか何とか。
振り子時計の右上の方を見てみるが、高すぎてよく見えない。転生前の高校生である俺なら普通に届いただろうが、いかんせん今は11歳、絶賛小学生なのだ。なので、椅子を持ってきて、その上に登って見てみる。すると、確かに少し違和感を覚える箇所があった。
「ここか…?」
試しに指で押してみる。すると、急に振り子時計の内部から音が聞こえだした。
「大丈夫かこれ…!?」
振り子時計の側面についている植物の装飾が複雑に動き出し、やがて中から引き出しが現れた。まさか、本当に叔父がなにか残していたとは。
「…まさか本物なのか、あの手紙」
少しドキドキしつつ、金属のリングが付いた取手を掴んで引き出しを開ける。中には、ひし形の星が持ち手にあしらわれた鍵が入っていた。
「…鍵?」
どこかの扉の鍵なのだろうが、さっぱり見当がつかない。家に開かずの扉なんてものはないし、前に行ったことがある両親と物心つく前の俺が住んでいた家にもなかったはずだ。とすると、叔父の家にでも開かずの扉があるのだろうか。
「…いや、そんなもの残されてもなぁ…叔父さんの家なんて俺知らないし…」
魔法の杖だのマジックアイテムだのが出てくるんじゃないかと割りかし期待していたがゆえに、不満をこぼしつつ椅子から降りる。そして、ふざけて中空で鍵を回した瞬間――
「――――え」
目の前に、唐突にドアが
何か前触れがあったわけでもなければ、魔法っぽいエフェクトも音もなく、本当に唐突に。
「…おいおい、これは流石に予想外がすぎるぞ」
反対から見てみるが、相変わらずそこにドアは存在していた。ハリー・ポッターシリーズはあまり見たことがないのだが、この世界の魔法ってこんな素っ気ないものなのだろうか。
「…入るか」
意を決して、ドアノブに手をかける。金属特有のひんやりとした感触を感じながら、俺はゆっくりとドアを開けた。
ドアの向こう側は、レンガ作りの部屋だった。上から灯りが吊るされており、わりかし明るい。そして、部屋の真ん中に本がおかれた机があった。足元に気をつけつつ、ゆっくり入る。
本を手に取り、ホコリを払って表紙を見てみる。金色の枠の中に、『魔法生物誌』と書かれていた。
「…これが『残してくれたもの』か…?」
割と手順をふませておいて本一冊かよ、と落胆しつつ、パラパラとページをめくる。が、その落胆はすぐに驚愕に変わった。
「――このスライム、まんま原神じゃねぇか」
そう、乗っている魔法生命体とやらが、どう見ても原神の敵にしか見えないのだ。ちゃんとスライムは7元素全ているし、後半の方にはヴィシャップや獣域ウルブズ、果ては無相系や雷蛍なんかまでいる。あと、最後の方には何故かアビスの魔術師の杖だったり、デットエージェントの刀だったりといった武器だけが載っている。
「…まさか、叔父さんも転生者だったのか?」
ここまでそっくりだと、そんな気がしてならない。それとも、完全な偶然の一致か。万に一つどころか億に一つぐらいの確率でしか起きないだろうが。
「しかし、これ手書きか? だとしたらめちゃくちゃイラスト上手いな…」
絵の上手さに感心しつつ、イラストに触れる。すると――
今度は、描かれていた武器が
「うおっ…!」
唐突に現れたがゆえに取り落としそうになるが、なんとか持ち手を掴んだ。金属製にしては随分と軽い。そのあたりは、魔法でなんとかしているのだろうか。
「…だとすると…ひょっとして?」
武器のページから比較的近いプカプカ水キノコンのページを開き、そのイラストに触れてみる。すると予想通り、水キノコンがひょっこりと出現した。ただし、今度は出現時の効果音付きだが。
「いや、すごいな…」
すると、召喚されたばかりの水キノコンは自分が褒められたと思ったのか、目を嬉しそうに細めた。実装された当初から思っていたが、やはりかわいい。かの悪名高きフライムたちにも見習ってほしいものだ。
「こいつはすごいもの残してくれたな、叔父さん」
とりあえず本を持ち、召喚した水キノコンと一緒に部屋を出る。すると、それと同時にドアが消滅した。さらに、階段を降りてくる足音が聞こえた。どうやら、姉さんが起きたらしい。
「やっべ、お前どっかに隠れて…」
そう言い終わる前に、水キノコンは自ら本の中に飛び込んだ。どうやら、そのページを当てることでしまえるらしい。
「…ふぁ〜、おはよう。 …ん、どうしたの、その本?」
「あ〜、この本ね……。 ……姉さん、今から俺の言う事は信じられないかもしれないけど、本当のことなんだ。」
ホグワーツから入学許可証が来たとなれば、多分誰かしらが迎えに来るだろう。いずれバレるのであれば、先にバラしておいたほうがいい。
「…うん、わかった。レイがそういう大事な話のときは嘘つかないって、姉さんはちゃんと分かってるよ」
姉さんも俺の真剣な表情を見て、すっと話を聴く状態に切り替える。こういう切り替えがすぐにできるの、かなり羨ましい。
「それじゃ、落ち着いて聴いて欲しい。まずこの手紙が…」
その後、俺は三十分ほどかけて姉さんに朝起きてからのことをすべて説明した。姉さんは最初ポカンとしていたが、話が終盤になるにつれ、段々と目を輝かせ始めた。
「へぇ~、魔法学校からの招待状に叔父さんが残した不思議な本かぁ… 面白そう!」
「…面白そう、か。いかにも姉さんらしいコメントだなぁ」
「だってさ、興味わかない? 魔法学校ってだけで興味をそそられるのに、なんと親戚がその学校の関係者だったかもしれないんだよ?」
「うん、俺も興味は湧くよ。ただ、知的好奇心旺盛な姉さんらしい反応だなぁって」
レリア姉さんは知的好奇心に溢れた人物で、自分が気になったものはすぐ飛びついて研究する。まぁ、その影響もあって大学飛び級とかを成し遂げられたんだろうと思う。
「それで、いつ迎えに来るの? 私、それまでに色々と聞きたいことをまとめておきたいんだけどさ」
「それまでに準備もしとかないとなぁ。えーっと、要件リストによれば…」
と、そんなこんなで二人揃って準備を進め、ついに当日がやってきた。
ドキドキしつつ、ドアがノックされるのを待つ。
「…………」
何十分、それとも何時間ぐらい経っただろうか。突然、常人の3倍ぐらいの強さでドアがノックされた。
「…! 開いてます!」
緊張しているせいか、大声で反応してしまう。すると、それに負けないぐらいの音とともに、勢いよくドアが開かれた。
「――悪い悪い、ちょいともう一人のお迎えに手間取っちまってな。俺はルビウス・ハグリッドだ。迎えに来たぜ、レイ・ライビアード」
少し訛のある話し方で、
「…あれ、入学者は3人もいるんですか?」
てっきりハリー・ポッターを迎えてから来ると思っていたのだが、その姿が見当たらない。となると、俺と眼鏡少女を含めて3人も入学することになる。
するとハグリッドは不思議そうな顔をして、
「いや、お前とこの嬢ちゃんの二人だけだぜ」
と言う。
(…ひょっとして、ハリーとは違う世代に生まれたのか?)
これまでずっとハリーと同じ世代だと思っていたが、よくよく考えるとその可能性のほうが少ない。しかしハグリッドが迎えに来たということは、割と近い世代ではあるはずだ。
「そういえば、その娘の名前は?」
ハリー・ポッターシリーズは正直ほとんど知らないのだが、登場人物だけはわりかし知っている。もしその少女の名前が俺の知っている人物であれば、そこからなんとなく世代を割り出せるはずだ。そう思って質問したのだが――
「あぁ、嬢ちゃんか? この娘はな――」
「――『ハリエット・ポッター』です」
――その答えは、予想を遥かに飛び越えていった。
「………なんて?」
「だから、『ハリエット・ポッター』ですって」
(…おい、まさか)
一つの考えが頭をよぎる。聞こえてくる声から察するに、姉さんがハグリッドへの猛烈な質問タイムを開始したみたいだが、声が聞こえるだけで内容は頭に入ってこない。
「…なぁ、ポッター…一つ、質問いい?」
「…? はい、どうぞ」
「失礼なこと聞くんだけどさ……君ってさ、ひょっとして…両親、いなかったりする?」
「…なんで分かったんですか?」
…なんてこった。
「…いや、俺も実はそうでさ。なんとなくそんな気がしたもんで」
誤魔化しつつ、悪い予感が的中してしまったことに頭を抱えそうになる。
「あー……なるほど、そういうことね」
どうやら俺は――ハリー・ポッターが少女だった世界に転生してしまったらしい。
少しキャラクターの補足をば。
・レイ・ライビアード
知り合いにハリポタオタクがいたため、主要キャラの顔と名前ぐらいは分かる。しかし本編の方はyoutubeに投稿されているような有名所しか見たことがないため、ストーリー面での知識はほぼないに等しい。
・カイニス・ライビアード
マグル界でも魔法界でも生物学者をやっていた男。第一次魔法戦争の際に自作の魔法生物を率いて活躍したため、魔法界では英雄扱いされている。ホグワーツ出身で、かつてスリザリン寮生だった。
・レリア・レクティア
かなりの天才。物覚えも良い上に機転が利くため、彼女が主人公枠に入ってたら多分闇の帝王は原作よりだいぶ早く倒されてる。レイにはかなり甘い。