魔法生物使い、ホグワーツ魔法魔術学校にて 作:Mr.メトロノーム・改
今回時系列がかなり飛び飛びです
こうでもしないとなかなか話が進まないからね、しょうがないね
色々ありすぎて脳がパンクしかけた入学式の日の翌日…つまり今日は、様々な授業のオリエンテーションみたいなものが行われた。ハリエットとロンが初っ端から遅刻したり、ハリエットとレイシアが思い出し玉――マジックアイテムの1つで、忘れていることがあると中の煙が赤くなるらしい――を巡ってひと悶着あったり、ハリエットがよりによって魔法薬学の時間に話を聞いていなかったせいでなじられたりと色々あったが、割と平和な日だった――
(なんであんなのが校内をうろついてるんだよ…!)
先程、用を足して男子トイレから戻ろうとした際に、巨人みたいな何かと遭遇したのだ。咄嗟に柱の陰に隠れたから気づかれてはいないようだが、どう考えても何かしらの非常事態が起きている。
(……さっきの悲鳴はやつが侵入したのが理由か)
俺がまだトイレにいた頃、ホールの方からやたらと大きな悲鳴が上がったのだ。その時はてっきり魔法界特有のすごく大きな虫かなにかでも出没したのかと思ったが、まさかあんな怪物が出没していたとは。
「……よし、行ったか」
やつが角を曲がっていなくなったのを確認し、急いで寮の方へと向かう。皆が避難するとしたら、おそらくそれぞれの寮だろう。
「あっぶね…なんとか切り抜けられ…!?」
向こうから走ってくる人影が二人。服装からして、おそらく生徒の誰かだろう。体格から察するに、同級生かもしれない。怪物が侵入してきたという知らせを受けて、見物にでも行くつもりだろうか。だとしたら、危機感がなさすぎる。
「おい、そっちは怪物が…ってハリエットか!?」
なんとハリエットとロンだった。全力疾走してきたらしく、少し汗をかいている。
「レイ! ちょっと手伝って、ハーマイオニーが!」
「ハーマイオニー? ……ちょっと待て、まさかあっちにいるのか!?」
「そう、だから助けに行かないと!」
「了解、手伝わせてもらう!」
彼女らが物見遊山に来ただけだったら首根っこつかんでグリフィンドール寮にぶん投げてやるところだったが、ハーマイオニーを助けるためと言うなら仕方あるまい。
向き直り、再びトイレ方面に向かおうとしたその時。
「きゃああああ!」
「……っ! まずい!」
ハーマイオニーの悲鳴とともに、何かが破壊される音がした。どうやら、もう見つかってしまったらしい。
「行くぞ!」
3人揃って全力でトイレまで突っ走る。到着すると、件の巨人と、瓦礫の下にいるハーマイオニーが見えた。
「二人はハーマイオニーを助けろ、こいつは俺がなんとかする!」
「そんな、無茶だ!」
「忘れたのか? 俺にはこれがある!」
『魔法生物誌』を開き、アビスの魔術師・水の杖を取り出す。本来なら自寮以外では使用してはいけないのだが、こんな緊急時だ。
「しばらく溺れてろ!」
魔力を溜め、杖先から泡を放つ。泡は怪物にあたった瞬間、巨大化して怪物を覆い尽くした。
「よし、今のうちだ!」
おそらく個室の破片であろう欠片をどけ、ハーマイオニーを救出する。幸い、見たところ大きな怪我はしていないようだった。
「無事か?」
「ええ、怪我はないわ。それより早く逃げましょ!」
「だね、あいつが溺れてるうちに」
ハーマイオニーを連れ、今度は四人で廊下を走り抜ける。しばらく走ると、後ろから咆哮と共に足音が近づいてきた。
「拘束がきれたか…って待て、足早くないかあいつ!?」
「そりゃあ歩幅が大きいんだから、早いのは当然でしょ!」
とハーマイオニーから的確なツッコミが入る。そうこうしているうちに、怪物はかなり近づいてきていた。
(このままじゃ追いつかれる…なら一か八か!)
『魔法生物誌』からファデュイ先遣隊のハンマーを取り出し、怪物に向き直る。
「レイ!? 何してるのさ!?」
「ちょいと転ばすんだよっ!」
『――ッ!!!』
怪物がひときわ大きな咆哮を上げ、こちらに迫ってくる。逃げ出したくなるのを踏ん張り、相手の足を追う。そして、怪物が棍棒を振りかぶり、右足が地面から大きく離れた――その一瞬を狙う。
「ここだぁぁっ!」
怪物の左足に向けて、雷を纏わせて思いっきりハンマーを叩きつける。上手いことバランスを崩せたようで、そのまま怪物は顔から倒れ込んでいった。
『…………』
頭から倒れ込んだせいか、それとも雷を纏わせたせいかはわからないが、気絶しているらしくピクリとも動かない。――どうやら、俺たちは助かったようだ。
◇ ◇ ◇ ◇
その後、グリフィンドールとスリザリンにそれぞれ加点されたり、非常時に限り『魔法生物誌』の使用が認められなど色々あったが、俺たちが先生たちの質問から開放されるまでそう時間はかからなかった。
スリザリン寮に戻ると、レイシアが話しかけてきた。
「良かったわ、無事で。まぁライビアードの末裔たるあなたなら、トロールくらい楽に倒して見せるでしょうけど」
「やたらと買われてるな、俺。……というか、あれトロールだったのか。てっきり巨人のたぐいかと」
「確かにトロールも図体は大きいけど、あれはもっと馬鹿よ。馬鹿すぎて行動が予測できないくらいにね」
「えぇ…? いや、まぁ確かに頭悪そうな顔はしてたけどさ…」
「ところで、なぜトロールと戦う羽目に? あれから逃げるのなんて簡単でしょうに」
「いや、実際逃げることはできたんだけどさ。途中でハーマイオニーを助けようとしてたハリエット達と出会ってな。それで……」
そこまで言ったところで、レイシアは急に驚いたような嫌がるような顔をした。
「ハーマイオニーって、あの? 『穢れた血』じゃない、別にあなたが助ける必要なんてなかったのに」
『穢れた血』とは初めて聞くワードだ。……だが、なんとなくあまりよろしくないワードであることは分かる。
「……その『穢れた血』ってのは始めて聞くな。どういう意味なんだ?」
「あぁ、あなたはこの間まであちらにいたものね。『穢れた血』っていうのは完全に魔法族の血が入っていない血、すなわちただのマグルのことを指すのよ」
要するに、魔法族以外の人間のことを指す用語らしい。まぁ、『穢れた』なんて形容詞が入ってるんだから、差別用語に近いニュアンスなのだろう。にしても、ハーマイオニーが魔法族ではなかったとは。にしては優秀すぎないか、彼女。
「…彼女、そうだったのか。意外だな。そうなるとただの人間も才能さえあれば魔法を扱えるのか?」
「才能だけでどうにかなる話ではないわ。彼女が魔法を扱えるのは突然変異みたいなものよ。あとはまぁ、だいぶ前の先祖に魔法族がいたとかね」
「なるほどね…なぁ、レイシア」
「どうしたの?」
「別にそうやって言うのをやめろって言うわけじゃないが…できるだけ俺の前では控えてもらっていいか? ほら、俺の中にも半分はその血が流れてるんだしさ」
「…まぁ、それもそうね。気を悪くしたならごめんなさい」
「いや、別にいいんだ。それはそうと気になったんだが、逆に純粋な魔法族はなんていうんだ?」
「『純血』よ。私達マルフォイ家や、他の『聖28一族』は皆純血よ」
また聞き慣れないワードが出てきた。いや、今の俺からしたらこの世界の大抵の言葉が聞いたことないものなのだが。現に今日の授業なんか、レイシアに教えてもらわなければはっきり言ってほとんど理解できていなかっただろう。
「……なぁ、重ね重ね聞いててほんと悪いんだけど、『聖28一族』ってのは?」
「間違いなく純血である欧州魔法界の名門よ。私達以外には、ブラック家やゴーント家、レストレンジ家なんかが入っているわ」
「なるほど、感謝」
「しかし、あなた本当にほとんど魔法界のことを知らないのね。カイニスはあなたに何も残してくれなかったの?」
「まぁ、あの手紙で存在を初めて知ったぐらいだからな。残してくれたのもこの本一冊だけだし」
「もう少し残してあげてもいいのにね…あら、どうやらもう就寝時間みたいよ」
「どうやらそうらしいな…悪いな、また話につきあわせちゃって」
「いえ、あなたに教えるのは私も楽しいもの。それじゃ、お休みなさい」
「おう、おやすみ」
◇ ◇ ◇ ◇
「…おーい」
スリザリン寮に帰ろうとしていたところ、ハリエットに呼び止められた。
「どうした? というか、あれ大丈夫だったのか?」
先程までクィディッチの試合をやっていたのだが、その途中でハリエットの箒がひとりでに暴れだしたのだ。一応すぐに収まったからいいものの、あれだけ振り落とされそうになれば怪我してもおかしくはない。
「うん、怪我はしてないしね。それで、それについての話なんだけど…」
「スネイプがやったのよ、あれ!」
「……フェルシア先生が?」
…確かに、ネビルが飛行訓練で失敗したときとは違う感じがした。「あれは人為的なものだった」と言われれば、そう思えないこともない。ただ、それとフェルシア先生がつながるのはどういう理屈だろうか。
「そう、あのときハリエットに対して呪文を使ってたのよ!」
「……呪文、か。見間違いって線は?」
「いえ、それはないわ。だって、実際に私がスネイプの邪魔をしたら収まったんだもの」
「邪魔って…何したんだよお前」
「…それは言えないわね。ただ、スネイプがやったってことだけは断言できるわ」
「……正味、信じることはできんな。まぁ、気に留めては置くよ」
「まぁ、見てないから信じられないのも無理はないわ。ただ、これに関しては信じて。たしかにスネイプは、あのとき魔法を使ってた」
「……了解」
◇ ◇ ◇ ◇
「……」
談話室のソファーに座り、ハーマイオニーが言っていたことについて考える。ハリエットとフェルシア先生の絡みというと、せいぜい魔法薬学の授業の時のあれぐらいしか思い浮かばない。確かにハリエットをなじってはいたが、いくらなんでもそれだけで邪魔をするとは思えない。何しろ、ハリエットが落ちそうになったのはかなり上空の方なのだ。そんなところから落ちればどうなるか、フェルシア先生が想像できないはずが――
「――まさか、ハリエットを殺そうと?」
自分でつぶやいた後、即座にそれはないと否定する。いくらなんでも、流石にホグワーツの先生ともあろう人物が私怨で生徒を殺そうとするなんてことがあるはずがない。
「……考えても仕方ないか、これは」
自分がその魔法を使っている現場を見ていなかった以上、俺が推測しても仕方ない。時間も時間なので、もう自室に帰って寝よう。
「……フェルシア先生」
と思って帰ろうとしてたら、ばったりフェルシア先生と会ってしまった。
「おや、ミスター・ライビアード。これから自室に戻ろうと?」
「…ええ」
どうも例の説が頭にあるせいで、まともに顔を見れない。
「どうした? 顔色が悪いぞ、熱でもあるのか?」
「いや、そういうわけじゃないんですけど…」
……よし、ここは思いきって聞いてみることにしよう。
「……あの、一つ聞きたいことが」
「何だね、ミスター・ライビアード?」
「……ハリエットについて、どう思ってます?」
「…………ほう、ミス・ハリエットについてか。まぁ、正直あまり好印象は持っていないな」
「……!」
「ただ、好印象を持っていない、というだけだ。安心したまえ、
「……なら、良かった…って」
ちょっと待て、さらっと今心読まれなかったか?
「開心術――相手が何を考えているのかを知ることができる術だ。少し思うところがあったのでね、使わせてもらったよ。気を悪くしたならすまない」
「いや、それはいいんですけど…っていうかすごいな、魔法ってそんなこともできるのか」
「まぁ、本来この術は授業では習わないのだがね。――そうそう、最後に一つ教えておこう。確かに私はあのとき魔法を使った…しかしそれは彼女を
「……! つまり、やっぱりあれは人為的に起こされたと?」
「おそらくは」
「……なるほど、しかしなぜそれを俺に?」
「誤解を解いておくためさ。あの三人組に疑われるのは別に構わないが、自寮の生徒に疑われたまま、というのは嫌だからね」
そう言って、フェルシア先生は去っていった。
「ハリエットが狙われてる、か…まぁ、かなり重要人物だし間違いないだろうな。そもそも本来主人公のはずだし」
おそらく、これ以降もハリエットは命を狙われるだろう。ひょっとすると、原作よりも強い敵が出てくるかもしれない。
「そういうときは、それこそ魔法生物達で彼女を守らないとな」
そういうのと同時に、緊張が解けたせいかどっと眠気が襲ってきた。
「……よし、今日はもう寝よう」
時間も時間なので、自室に帰って寝ることにした。
今回は武器の補足
・『深淵の杖・水』
アビスの魔術師・水が持っている杖と同じ形をした武器。杖の先から水弾を放てる他、泡を放って相手を一定時間拘束できる。また、自身にのみ水のシールドを付与することも可能。魔法でほぼ同じことができるものの、素人でも無詠唱で使えるのが強み。
・『紫雷槌』
ファデュイ先遣隊・雷ハンマーが持っているハンマーとそっくりな武器。結構重そうな見た目だが、持ってみると驚くほど軽い。雷を纏って攻撃できる他、今回は使わなかったが、魔力を消費して所持者の身体能力を一定時間強化することもできる。