禁書厨な俺氏、チート勘違い系オリキャラになる -とある科学の物質誘導- 作:村ショウ
誘導お兄ちゃんが私の前に立って放ったことを思い出す。魔術師と名乗る人達に言い放ったシスター服の少女を軽視するような発言に、私は驚きを隠せなかった。
前に一方通行と対峙した時と同じか、それ以上のレベルで誘導お兄ちゃんの行動は変質しているように感じた。
それは木原としては正しいが、誘導お兄ちゃんにはやって欲しくなかったものだ。誘導お兄ちゃんだけは違うと心のどこかで信じていたのかもしれない。
そうなると、やっぱりあの幻想御手の配布も誘導お兄ちゃんがやったものなのかもしれないと思ってしまう。
それでも、あの木原らしくない誘導お兄ちゃんが真実であると信じたかった。そうでなくとも、木原らしくない誘導お兄ちゃんも本当の誘導お兄ちゃんの一部だと信じたかった。
だからこそ、それを確認するために私はシスター服の少女へと咄嗟に駆け寄ってしまった。金属を多く含む私が傍にいることで、木原らしくない誘導お兄ちゃんのままなら止められるかも知れない。一部でも本当の部分があるなら何かしらのリアクションくらいはしてくれるかも知れないという淡い期待を込めた行動だった。
ここまでしても、誘導お兄ちゃんの物質誘導なら私を対象外にして、シスター服の少女だけを誘導加熱することが出来る可能性も高い。
だけど、私が前に出たのはシスター服の少女をただ守るためじゃなく、誘導お兄ちゃんが本当にそんな仕掛けをしているかどうかも知りたかった。だけど、なんの役にも立ててない私がこんな事を試すべきではなかった。
そう、実際に駆け寄って分かったことは、誘導加熱を利用して人体発火を起こすようなそんな装置は能力を利用していたとしても一切存在しないということだった。私の体に取り付けたセンサーや能力を発動していれば起きるはずのAIM拡散力場の流れも感じられなかったからだ。
つまり、誘導お兄ちゃんが言っていた事はブラフであり、私の考えるようなことはしていなかったのだろう。
そして、誘導お兄ちゃんを信じきれなかったばかりにブラフがバレて、また私が誘導お兄ちゃんの足を引っ張ってしまう。そんな考えが頭を過ぎる。
しかし、その思考と同時に備え付けられたセンサーが誘導お兄ちゃんからの電気信号を捉えた。急いで変換すると『問題ない。そこの少女手当を頼む』という簡単な内容だった。
それは誘導お兄ちゃんの私が動くことをまるで予想していたような、今の私に対して的確すぎるメッセージだった。
私はランドセルの収納スペースから応急手当用の用具を準備する。
そんな私の方を見ている誘導お兄ちゃんと赤髪の男は対峙したまま膠着状態になっている。もしかしたら、これすらも誘導お兄ちゃんの誘導なのかもしれない。だけど、疑うくらいなら、私は誘導お兄ちゃんを絶対に信じたいと強く心に決めた。
「木原、これはどう言う状況なんだ」
赤髪の男と誘導お兄ちゃんがお互いに牽制しあっているそんな時だった。階段の方から声が聞こえたのは。
会ったことは無かったけど、誘導お兄ちゃんの友人がこの階に住んでいることは知っていた。最悪の状態かもしれない。私を含めて、誘導お兄ちゃんの弱点となりえる存在が増えたのだから。
だけど、誘導お兄ちゃんは他の人は気づかないくらいの僅かな笑みを顔に浮かべていた。
「上条、来るな!!」
誘導お兄ちゃんは私が見たことがない、友人だけに見せているだろう強い口調の1面で叫んだ。
だけど、上条という友人は呆然とその場に立ち尽くす。私が手当をしているとはいえ、血まみれ少女が倒れていたらそうなってしまっても仕方ない。しかし──
「おい、テメェらがインデックスや木原にこんなことしやがったのか」
「確かに、その子を殺ったのは僕達魔術師だ。だけど、その男に関してはそちらが先に手を出したと思うけどね」
「チッ、こうなったら上条、お前だけでも逃げろ」
誘導お兄ちゃんは物質誘導を利用して、そこらに散らばっていたプラスチック片を赤髪の男にぶつける。そう、何故か散らばっている金属やガラス片などでなく、投げたのは熱に弱いプラスチック片だった。
たが、それに対応して赤髪の男は炎で燃やし尽くす。
「君は何をやっているのかな。こうなることは分かりきっていただろうに。灰は灰に塵は塵に、吸血殺しの紅十字!!」
誘導お兄ちゃんに科学的にはありえない超高温の炎が襲いかかろうとした瞬間、何故か炎は幻だったように消えさった。
目の前に残されたのは、右手を掲げた上条というお兄ちゃんの友人だった。そして、その右手の周りだけAIM拡散力場消失しているという異様さだけが残っていた。
「上条、助かった!! その右手は魔術とやらにも通用するんだな……」
「一体、何が…」
赤髪の男は動揺しているが、誘導お兄ちゃんはそれを待ちわびていたかのようにわずかに笑みを浮かべているようだった。一見そうは見えないが確認作業のように感謝を伝えているようにも感じた。誘導お兄ちゃんと普段から接しているからこそ、違和感から何となくそう思ってしまった。
「話は後から聞いてやる。歯を食いしばれよ、魔術師」
そして、構えられている右手を引いて赤髪の男に一撃を食えようと殴り掛かる。
「そうさせるとでも思っているのかい。
何か幾何学的な模様が書かれた紙が辺りにばら撒かれた後、炎の巨人が現れた。
「なんだよ…これ」
当然現れた炎の巨人に驚く誘導お兄ちゃんの友人、人型を整形している理由が不明だけど、熱量の凄まじさが義体に搭載されているサーモグラフィーカメラを通さずとも分かる。
「ルーン。神秘、秘密を指し示す24の文字にして、ゲルマン民族により2世紀頃から使われる魔術言語で、古代英語のルーツとされます。
「お前、インデックスだよな?」
「はい、私はイギリス清教第零聖堂区 必要悪の教会所属の魔導書図書館、Index-Librorum-Prohibitorumです」
血まみれになって倒れていた少女は怪我の状態も悪いはずなのに、機械的に淡々と話す。
「神裂さんと言いましたか、上条に不意打ちとか卑怯なことをするつもりじゃないですよねぇ? そこのインデックスという少女にしたように」
誘導お兄ちゃんは態々、ただ見ていたお姉さんを牽制するような言葉をなげかける。上条という友人にシスター服の少女をより強く意識させるように。
「木原、インデックスを頼む」
誘導お兄ちゃんの友人もそれに反応する。
「任せとけ。そこの魔術師とやらからシスター服の少女を連れて退避するくらいはしてやるさ。で、上条。お前はどうするんだ…? まさか、お前だけ突っ込むなんて言わないよな?」
「いやいや、上条さんもそこまで馬鹿じゃありませんって。ちゃんと、逃げますよっと」
「そうか、分かった。囮は任せた!!」
予め動きを決めていたように、誘導お兄ちゃんは友人の背中を押しだした。
「木原さん、いくら上条さんだからといってそれはあんまりじゃありませんこと? って、あの野郎もう飛び出しやがった。なんていうか、不幸だよな」
その言葉が発せられたと同時に誘導お兄ちゃんは剣を構えたお姉さんと私がいる方に飛び出していた。
「あなたに物質誘導が通用しないなら使わなければ良い。そう、あなたにはね」
こちらに向かってきている誘導お兄ちゃんが注目を集めるためか話始めると、突如として私たちがいた地面が崩れた。さらに、その地面の破片はお姉さんの方に向かって壁を形成する。
このままだと地面が無くなった私たちが下の階に自由落下することになるが、そうはならなかった。私が物質誘導を使っている訳では無い。なら、誘導お兄ちゃんが私達を物資誘導で浮かせている事は瞬時に理解出来た。
そして、お姉さんがそれに対応しようと動いた瞬間、連動したかのように予期せぬ落下感覚に襲われた。下を見ると地面の穴は1階まで穴が貫通しており、早めの滑り台くらいの速度で降下している。落下速度は物資誘導で調整されているようだった。
仮に今の状況で誘導お兄ちゃんがお姉さんに気絶させられると、演算が乱れることがあれば自由落下することになる。
私の体なら自由落下してもサイボーグ部分で衝撃吸収も可能だろうし、Equ.Darkmatterの展開も間に合う可能性もある。実質的に怪我をしているシスター服の少女を人質に取るようなものだ。
「彼女たちを追ったらどうなるか分かりませんよ。私にもそれくらいの覚悟はある。何やら大切そうなその少女の手当はこちらでするから安心して欲しい。
心配というならその武器を収めた上で、ある程度の距離を離れてついてきて貰っても構いませんが。それが守れないなら…」
誘導お兄ちゃんは上条という友人にも聞こえるような大きさの声で話す。
そして、殺意のような何かを感じるレベルで、誘導お兄ちゃんは最後の言葉に感情を込めていた。
──誘導side──
神裂火織andステイル=マグヌスのコンビを別々に離なす事に成功した。上条さんと相性が悪い神裂を一緒にするような原作改変は避けておきたかった。
逃げている途中だが、先程インデックスの映像に使った血糊がEqu.Darkmatterを通り越して頭に掛かったせいで、ベタついて気持ち悪い。
しかも、神裂は依然として距離を離してこちらを追いかけているので、原作のあの場面では本来いなかった筈の神裂とステイルを分断が確実となった。これで上条さんが原作通りステイルに勝利してくれれば、それで良い。もし、原作通りの流れにならないなら、無理やり同じ状態にすれば良い。
プラスチック片を投げる時にどさくさに紛れにスプリンクラーに仕掛けた発火装置もある。那由他ちゃんのサイボーグパーツにある送信機から、電波を発信して貰えれば起動して発火するだろう。
あの学生寮には複数の小型カメラと、俺の部屋に滞空回線ほどではないが遠隔操作可能な1cm角の浮遊型カメラも用意してある。部屋から飛ばす必要があるので、部屋の窓を開けっ放しにしておいて良かった。勝負の行方はそれで確認するとしよう。
上条さんの敗北の心配は杞憂だったようで、インデックスの怪我を物質誘導で応急処置をしながらしばらくカメラの様子を見ていると、そこには上条さんが魔女狩りの王を倒して、ステイルの顔面へと拳をクリーンヒットする姿が映っていた。流石は上条さんである。
「炎を使っていた彼が負けたようだけど、こちらを監視していて大丈夫なのかな?」
追ってきていた神裂にサプライズ情報を伝える。
「まさか、ステイルが…。あの少年は何者なのですか」
「それをバカ正直に教えるとでも? ですが、あれは学園都市の裏などではないとだけは言っておきましょうか」
学園都市の裏と言うよりは学園都市の存在意義レベルの代物だし、ある意味間違ってはいないはずだ。
「後、シスター服の少女についてはこちらで安全確保をさせて頂もらいますよ。貴方にも事情とやらはありそうですが、シスター服の少女は彼に頼まれたのでね。貴方達、魔術師の存在が表の治安維持組織に捕まったら少々面倒でしょうし、迎えにいっては?」
気絶しているステイルを使って、さっさと帰るように促す。京都人ネタのぶぶ漬けでもどうですかと言いたいレベルで帰って欲しい。ただ、科学知識を利用したせいか、ノリノリでヘイトが溜まるような方法論を取りすぎた気がする。
はっきり言って、ここでインデックスをこちら側に任せて貰えるかは掛けだ。だが、神裂も先程のインデックスを盾にする映像を見せられた以上、下手に動けないだろう。
「分かりました。一旦、貴方に預けます」
何とか神裂火織を退けることに成功した。本来は今後のことを考えてもう少し穏便に動くべきだった。このまま挽回出来ないなら、那由他ちゃんを単なる実験体にするゲス野郎を演じる必要もあるかもしれない。
携帯電話を取りだして電話しようとするが、ふと思い出した。上条さんの携帯は原作開始の今日の朝時点で破壊されている筈なので、浮遊型カメラから音声を出す形で連絡を取る必要がありそうだ。
「おい、誘導。あいつらは何なんだ?」
「それはこっちの台詞なんだが…。明らかにそのシスター服の少女は上条の部屋の前で倒れていた訳だし。まぁ、推測レベルではあの非科学的な力に思い当たる部分はあるが」
全く知らないフリをすると逆に不信感を与えかねない。案外、こういう事には鋭かったりするのが上条さんなのだ。そもそも、インデックスとの関わりが原作通りなら半信半疑でも魔術の話を聞いているし、上条さんがこちらに聞くのも少し違和感がある。多分だが、意識的かはともかく魔術との関わりがないかの探りも含まれている気がする。
「それもそうだな。誘導、巻き込んで分かったな」
いつも通りといったら可笑しいのかも知れないが、木原誘導として、同級生としての顔でこれ以上巻き込まないとしているのか、上条さんが返してきた。
「待て待て、上条さんよ。親友を巻き込んでおいて、はいそこで解散とか言うのは可笑しくないかなぁ。シスター服の少女はこちらで応急処置をしている訳だし、事情くらい話してくれても良いんじゃないか」
既に原作通介入をしてしまった以上、魔術に関わるためにここでの解散は愚策でしかない。
あと能力で止血をしているが、負傷の治療が出来るわけじゃない。カエル医者に連れていくというのもなくはないが、魔術を近場で確認しておきたい。
「事情は後で話しますから、その親友である木原さんは見逃してはくれませんかね」
「分かった。見逃そうじゃないか。だが、上条。そこのシスター服の少女が助かるまで同行するぞ」
「とうま…、どうかした…?」
「インデックス、人の心配している場合か、その怪我何とかしないと」
どうやらインデックスさんのお目覚めらしい。上条さんが目覚めたインデックスに話しかけている。こちらも魔術拝見のチャンス獲得といかないとな。
「初めまして、インデックスさん。上条の友人の木原というものだ。治療だが非科学…魔術による回復とかは出来ないかな」
「おい、木原。魔術じゃなくて科学的な手段での回復方法はないのか。それだとIDの方で問題があるのか…?」
流れが多少変わっても原作通りにIDによる諸問題には上条さんは気づいているか。
「IDに関しては知り合いに腕の良い医者が居るし、那由他ちゃんに使われているサイボーグ技術も役に立つだろうが、その少女の知識である魔術という非科学的現象と化学技術の反発が怖いな。魔術でどうにかなると言うのなら、それを利用してからでも良いかもしれない。幸い少しの間なら能力での止血は可能だ」
「そうか。インデックス、お前の持っている10万3000冊の中に傷を治す魔術はないのか?」
「ある…けど、君たちには無理」
「またかよ、またこの右手が邪魔をするのかよ」
「誘導お兄ちゃんの友人さん、その右手じゃなくて能力者が駄目なんじゃないかな」
魔術と超能力の掛け合わせを、身をもって知っている那由他ちゃんが口を挟む。
「うん、超能力って言うのが駄目なの。才能のない人間が才能のある人間と同じことがしたいと言うのが魔術だから」
「学園都市は学生の街なんだぞ…。才能のない能力開発を受けていない人間なんて…。いや、待てよ。学生じゃなければ」
「上条も気づいたか。学園都市には能力開発を受けていない人間がいる」
原作通り小萌先生の家に突撃する形になりそうだ。
そういえば、創約8巻読んでたらほんの少し本作に活かせそうなネタがありました…。というより、結構本作のソレに近い表現…?
(厳密にはP.286~287あたりとか …)
なので、プラスで創約9巻表紙公開で創作熱が再燃した形になります。
追伸:更新休止期間の間に評価・お気に入り・感想を下さった方、ありがとうございます!!