禁書厨な俺氏、チート勘違い系オリキャラになる -とある科学の物質誘導- 作:村ショウ
幻想御手事件はあのUSBデータがうまく流れたようで、解決に向かいそうだ。とはいえ、すり替えたデータにはバックドアを仕掛けさせてもらったので、経過観察は必要だろう。
あの子たちのために他の人間にリスクを背負わせているのは、倫理的にどうかとは自分でも思う。だが、原作通りにテレスティーナ・木原が動くかどうかもわからないし、能力体結晶──体晶のデータが手に入らない可能性もある。木山先生の方法論も残しておくべきだろう。
さて、神裂と上条さんの直接対決がまかり間違って大事に至らないように観察と洒落込もう。介入しずきた結果、本気出して上条さんが殺されないにしても、インデックスの記憶を消すリミットまでに上条さんが立ち上がれない可能性は拭えない。
「これでよかったのかな…。誘導お兄ちゃん」
機材を収納し終えたとき、いつの間にか隣に立っていた那由他ちゃんが問いかけてくる。
「前にも言ったかもだけど、あれではやっぱりダメなんだよ。やるべき道筋がある」
幻想御手にバックドア的な保険をかけておいてどの口が言うか、といった話だが、那由他ちゃんには正しい道を歩んでほしい。そのためなら、いくらでも誘導しよう。
さて、この後どうしようか。
ー神裂 sideー
「───うるっせえんだよ、ド素人が!!」
上条当麻のインデックスについての説教に過剰に反応する神裂。
そして、さらに刀に力が入っていた。
「知ったような口を利くな!! 私達が今までどんな気持ちであの子の記憶を奪っていったと思ってるんですか!? 分かるんですか、あなたなんかに一体何が! あなたはステイルが殺人狂だとか言いましたけどね、アレが一体どんな気持ちであの子とあなたを見てたと思ってるんですか!? 一体どれほど苦しんで! どれほどの決意の下に敵を名乗っているのか! 大切な仲間のために泥を被り続けるステイルの気持ちが、あなたなんかに分かるんですか!!」
そして、追撃を加えられ倒れる上条当麻。
「だとしても、こっちも友達を傷つけられるのは困るなぁ」
誰もいなかったはずの空間から突如現れ上条当麻を支える青年。
「あなたは…この前の…!? しかし、ステイルが見張っていたはずですが」
本来は人払いだけで済むはずだったが、念のために周囲を監視していた同僚を心配する神裂。
「あぁ…彼か」
ボトッという鈍い音が響いた瞬間、黒いローブに赤髪の魔術師が突如現れて倒れた。
「なぜ…」
「いやさぁ、相手するつもりはなかったんだけどね。こっちの透明化を蜃気楼を利用されて看破されたから、仕方なかったってやつなんだよね」
気楽に、ちょっとしたアクシデントだったかのように語る青年。
「しかし、あなたがステイルを倒す必要はあったのですか?」
上条当麻を対象にしていた神裂は、警戒を青年──木原誘導に向ける。
「君と違って本気の殺意を向けるタイプの人間だったからね。どうやら、そちらも仲間のために必死だったみたいだけど」
「だとしても…今回ばかりは私も引けません」
刀に手をかける神裂。
「おおっと、これはまずい。それにしても、こんなのに絡まれるなんて、上条の奴はいつも不幸だな」
「不幸…?」
刀に手を掛けたまま、誘導の言葉に耳を傾けてしまう神裂。
「そう、上条当麻という人間は不幸なんだよね。あの右手には超能力や非科学…魔術を打ち消す力がある。あのシスター服の少女曰く、君たちで言うところの神の奇蹟すら打ち消しているんだそうだ」
「なるほど。彼の生い立ちはわかりましたが、邪魔をするならあなたはここで止めます。手加減はしますので、あまり抵抗しないで下さい」
「おー怖い。どうしても…? とはいえ、君は幸運だよね。そこの赤髪の魔術師はこんな状態なのに、君は相性が良い上条当麻と当たっているなんて」
「確かに、私の聖人の力にはそういった副産物はありますが、今はそれは関係ないでしょう。それとも、話を伸ばして何かを待っているのですか?」
「やっぱり、せいじん…性人か…。痴女みたいなカッコしてるし」
「そっちの性人ではありません。もういいですね?」
「いやはや、時間稼ぎはこれ以上は無理かぁ。そうだ、神裂さんといいましたか。こんな状況になっているのは貴方が悪いのでは?」
「何を言って…?」
また、時間稼ぎをするつもりかと考え、今度は七閃により捕縛しようと準備をしようした瞬間だった。
「だって、さっきの話聞いてたらさ、魔導書図書館だっけ? その子とか今倒れてるお仲間の赤髪の魔術師もそんな幸運の効果があっても助けられていないし、貴方の力は相対的に幸運なだけなんじゃないかって。周りを不幸にすれば、自分は幸福でしょ。そうすれば、不幸と幸運の収支も合う。貴方の幸運の火花が誰かを襲っているのでは?」
「そんなことは…」
「ないと言えるかな? 上条の右手は神の加護すら打ち消し不幸に見舞われるだろうが、彼は周りを巻き込んで不幸にはしない。なんなら、周りに起こる悲劇すら打ち消してきた。その証拠に彼の両親や友人である俺も比較的幸せな部類だ。たが、君の仲間はどうなんだろうか」
神裂が反論しようと口を開いた瞬間、割って入る木原誘導。
「特にインデックスという少女は仲間なのに君が切ったんだろ? そのせいでステイルとかいう赤髪の魔術師は上条当麻が戦うことになり、負けた」
現実を突きつけるように淡々と口にする。
「この一連の流れだけでも君が周りを不幸にしているのは分かるかな? いや、まだまだ不幸にした人間がいるんじゃないのか? 日本人なのにイギリスにいる理由も気になるし、それを考えると日本人の仲間も不幸にしてるんじゃないのかな」
「っ……」
青年の煽りに対して、噛み殺したかの様な音を漏らす神裂。
「まぁ、それは俺には関係ないし、これ以上貴方が動けば貴方は確実に不幸を撒き散らすことになるとだけ言っておきましょう。上条の奴はこっちで手当てしますから、この赤い髪の方を引き取って下さい。貴方が望む血を出さない戦いですよ?」
戦わずして、上条当麻のダメージを原作以下に調整する誘導の最終段階に入る。
「しかし…」
「しかし? そこのステイルの命を犠牲にしてでも、本題でもない俺の戯言を真に受けて苛立ち、私情で科学と魔術の火種になることすら構わずに俺を倒すと? それがやりたいことなら、俺は貴方には勝てませんし、可能でしょう。赤髪の魔術師の命は代わりに頂かせてもらいますが。それも、確実に」
本来なら敵のこの程度の煽りなど、なんなく躱していたであろう神裂だが、インデックスが絡んで内心を吐露した後の隙があったこともあり、何も動けないでいた。
「確実は言いすぎましたね。あなた達非科学に学園都市の毒物や疑似寄生生物を短時間で対処可能な技術があれば良い訳ですしね。そろそろ、決断してもらいましょうか」
確実な誘導のために神裂では苦手な科学の知識にて決断を煽る。
「…わかりました」
苦虫を噛み潰したように返答を返す神裂。
「賢明な判断です。それでは、赤髪の魔術師の治療はお任せしましょう。と言っても、学園都市製の麻酔で眠ってもらっているだけですが。数時間もすれば目を覚ますでしょう」
そう言い放つとステイル・マグヌスのみを残して、木原誘導と抱きかかえられた上条当麻の姿が闇に消えた。
ー木原誘導 sideー
まさか、ステイルに見つかるとは思ってもみなかった。いや、人払いに入った時点で既に警戒されており、前回見せた磁性制御モニターによるインデックス惨殺映像のトリックをステイルなら見破れる状態だった。天才である彼の能力を考慮すれば、蜃気楼による光の屈折を利用して磁性制御モニターの透明化を破ってくることぐらい、予期しておくべきだったのだろう。
ステイルに見つかり、彼の無力化に成功したのも、こちらに有利な環境が整っていたからに過ぎない。魔女狩りの王をはじめ、万全の準備を整えたステイルと一対一で対峙した場合、確実に勝てるかと言われたら不可能だ。
だからこそ、最初から原作通りにインデックスがいる方向をめがけて、全力に見える攻撃を仕掛けさせてもらった。ガトリングレールガンの一斉射は、迫力と音でステイルを動揺させるのにちょうど良かった。出力は落とし、音速の3倍程度のライフル弾の速度から拳銃弾並みにまで落とした上で、物質誘導でインデックスに当たらないよう調整しているが。
それでも、ステイルならそちらに意識を奪われるだろう。そこで彼の足元を崩し、地面から数十センチの高さに滞留させていた麻酔ガスに沈ませるだけで終わりである。
流量については命に関わるため調整したが、乱雑な方法であるため、手術で使用するよりもリスクは高い。早めに神裂さんに引き渡すことにした。
何かしら保険を埋め込むことも出来なくはなかったが、後々の関係を悪くしかねない。
神裂さんを煽りに煽ったのはその点ではマイナスでしかないが、宇宙空間でも生きれる聖人相手に小手先の毒が即効性があるかも分からない上に、効果出るまでの数秒の間にこちらが完全無力化される可能性が高いのだ。肉体スペック自体は一般人に近いステイルとは違う。
これくらいのヘイトは神裂さんなら誠心誠意謝れば許してくれると信じよう。
さて、ここまで動きを変えてしまったが、原作通り上手くいくか心配だ。せめて、樹形図の設計者は確実に破壊しておきたい。
ー神裂 sideー
「まさか、彼があれほど手強い存在だとは思いませんでした。ステイル、貴方を無力化してしまうとは」
「僕としたことが彼女を人質にされたとはいえ、後れを取るとはね。彼女を守るためにはまだ力が足りないか…」
目を覚ましたステイルと神裂はお通夜の様なムードで話す。
「応援は期待できない以上、土御門に協力を頼みますか?」
「いくら彼が土御門の同級生とはいえ、それは土御門の潜入にリスクを生んでしまう。辞めておこう」
「では…」
「次も彼女の幸せを邪魔するのなら、僕が必ず殺る。それだけさ」
殺意と決意を込め、静かに宣言する。
誤字報告、感想等ありがとうございます!
上条さんの葬儀の表紙が話題になってる…。早く創約12巻読みたい。