禁書厨な俺氏、チート勘違い系オリキャラになる -とある科学の物質誘導-   作:村ショウ

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時系列的には上条さんが神裂さんに敗北して、原作一巻が終わる前にあるであろう自販機SSの話になります。那由他ちゃんのターンからどうぞ。



17.とある自販機の存在証明➀

 

「…は昏睡のまま…」「常盤台…の超電磁砲…」

「あの誘導が…介入…」「木山…く…はやま…」

「あのヘブンキャ…が…」

 

 雑多な声が入り交じる、大病院の研究設備。

 金髪ランドセルの少女はそんな声の全てに耳を傾けてはいたものの、実際に目にした情報の補足程度にしかならなかった。

 

 横に立っていたカエル顔の医者に何かを問いかけるも、申し訳なさそうに首を振られた。

 

「まあ、解ってるから大丈夫だよ、先生」

 

 少女は長いツインテールを揺らしながら顔を少し曇らせるも、次には冷静に顔を上げて呟いた。

 

「誘導お兄ちゃんはああ言ってくれたけど、置き去り(チャイルドエラー)は欠陥品。勝手に目を覚ますなんて、ありえないもんね」

 

 言葉の最後には笑いすら浮かべた少女にカエル顔の医師はただ、深い溜息を吐き出すだけだった。

 

 


 

「うー、まだ首に痛みが……。幻想御手騒ぎのときの痛みなのか、何週間前に寮監に締められたときの痛みなのか、残ってるんだか……」

 

 自販機の前でこの間起きたばかりの事件を思い出して呟く御坂美琴。

 

「ていやッ! うん、体の調子は大分戻ったわね」

 

自販機を蹴り上げて調子を確認したその時だった。

突如として彼女は妙な感覚に襲われる。周囲の空気が微妙に歪み、自分の中に何かが入り込み、筋肉繊維の一本一本、内臓から分泌液が滲み出す様子まで、その全てが覗かれたような感覚に陥ったのだ。

 

 彼女が慌てて振り返ると──。

 

風紀委員(ジャッジメント)だよ、常盤台のお姉さん」

 

「へ?」

 

 美琴の眼前には黒子とは違い金髪で赤いランドセルを背負った少女が立っていた。黒子との共通点はツインテールと風紀委員の腕章をしているくらいだ。

 

「あー、ええと……」

 

 小学生の風紀委員がいることは知識としてはあったが、美琴は現状の不味さに言葉が詰まった。

 

「まさか……こんな簡単にチャンスが来るなんて」

 

「チャンス?」

 

 金髪ツインテールの少女、木原那由他はクスリと笑う。

 同時に御坂美琴には全身にゾワリと先程と同じ違和感が襲う。

 

「器物破損と窃盗の現行犯で……拘束するよ? お姉さん」

 

 木原那由他自身も幻想御手事件の現場には居たものの、御坂美琴と木山春美の直接対決の後から入ったため、実力を測りかねていた。故のチャンス発言。

 

「ッ!?」

 

 すると次の瞬間、0.5秒前まで自分が立っていた場所に、金髪少女が飛び込んできている姿が見えた。まだ数メートルの距離があった筈だが、瞬きする間に彼女はそこまで移動していたのだ。

 

「お休みの時間だよ…超能力者のお姉さ…んっと!」

 

 少女の右手が怪しく揺らめき、発条仕掛(バネしか)けの様な加速で美琴の喉に突き進む。

 

 それに対応し、能力を解放する。青白い稲妻が光り輝く。

 

 だが、空中に浮いた数十本の雷の槍は全て躱された(・・・・・・)。それが、御坂美琴に突きつけられた真実だった。

 

 そして、何度か雷撃やその光による目眩ましなど手加減をしつつも、無力化のための電撃を行ったが、逸らされてしまった。那由他は目眩ましには驚きつつも目を閉じて回避していた。

 

「アンタ、一体なんなの?」

 

風紀委員(ジャッジメント)だよ、常盤台のお姉さん」

 

「そういう事を聞いてるんじゃない、っていうのは、まだ小学生のアンタでも解るわよね」

 

「…うん」

 

 お互いに不敵な笑みを浮かべ合う、女子小学生と女子中学生。

 

「木原那由他──。先進教育局、特殊学校法人RFOの…風紀委員だよ」

 

「え…? どういうこと…?その学校は…もう…」

 

「そこも知っているんだ。木山先生に聞いたのかな?」

 

「あの学校の生徒…?じゃあ、あなたは…」

 

 置き去り(チャイルドエラー)という言葉が出かかるが、喉に押し込めた。

 

「私は置き去り(チャイルドエラー)じゃないよ?」

 

「……」

 

「私は、過程だよ」

 

「過程?」

 

「そう。絆理お姉ちゃん達が実験体になった実験から派生した能力体結晶を代表とする、いくつかの予測結果に向かう過程の一つ。そして、ただの実験体(モルモット)。それが私。今はそれだけじゃない(・・・・・・・・)けど」

 

 那由他は元々の自分の話と誘導からの新しい方向性もほのめかす。

 

「何をいっているの…?」

 

 眉を望める美琴の体に再び先刻の『違和感』が走り抜ける。

 全身をスキャンされるような不快感が駆け巡る。目の前の木原那由他が原因なのは明白だった。

 

「この奇妙な感覚、アンタの仕業? 何をしているの?」

 

「へえ、何かされてるって解るんだ。それだけ力が強いってことかな…。それとも、電磁波の力で精神感応みたいな事もできるのかな?」

 

「こっちは何をしてるのか、って聞いてるんだけど」

 

「右手…左手…」

 

 女児が呟くと同時に美琴の右腕をうねる電磁の蛇が激しく膨らみ、右手から青白い雷光が放たれ、そのままバチリと音を響かせつつ地面の中に吸い込まれる。

 

「暴走能力の法則解析用誘爆実験。それが、絆理お姉ちゃん達がモルモットになった実験の名前。美琴お姉さんは、もう知ってるかな」

 

 小学生らしからぬ単語の羅列に、美琴は先日の木山春生との会話を思い出す。

 

「あの実験からね、いろんなものが生まれたの。その一つが体晶っていう、意図的に能力の暴走を引き起こす事ができる薬。正確には、もう何年も前からあったんだけどね」

 

「問題だよ、『超電磁砲』のお姉さん」

 

 淡々と語りつつ、少女の目は獲物を捕らえた狩人のように眼前の超能力者を見つめている。

 

「仮に、その体晶と同じような反応を能力で再現できるとして…、他人の能力の暴走の質や量、エネルギーの流れすらも誘導(・・)出来るとしたら、「暴走」って呼べるのかな? 」

 

「まあ、私はあくまで流れとタイミングを操るだけだから、滝壺のお姉ちゃんみたいに、宇宙まで相手を追跡したり、力そのものを乗っ取ったりはできないんだけどね」

 

 美琴の知らない人物名を口にし、那由他は少しだけ表情を曇らせるが、一瞬の間を置き、子供らしからぬ不気味な笑みを浮かべて呟いた。

 

「今はまだ、だけど…」

 

「なるほどね。つまり、人の首筋を操って笑わせるような能力って事ね」

 

 能力の説明を聞き、美琴は強気な言葉で答えるが彼女の中には、まだ疑問が存在した。

 

「結局、どうして私に喧嘩を売ってくるのよ。風紀委員の仕事っていう割には個人的な敵意がむき出しに見えるけど?」

 

「個人的恨みはないよ。ただ、恨みじゃないけど割り切れない感情はあるかなぁ。アレ(・・)も見ちゃたし」

 

 独り言のようにブツブツと呟きながら、 那由他は美琴を睨みつける。本来なら見ていなかった筈の実験のことも含めて。

 

「早い話ね、証明したいの。実験の成果が、学園都市の生み出した『結果』の表向き(・・・)の最高峰である超能力者(レベル5)に届くのかって。流石に正当な理由もないのに、戦ったりは出来ないけど、風紀委員(ジャッジメント)として今まではずっと誰かが何かをしてくれるのを待ってたんだよ?」

 

 そう、今まではである。既に超能力者の頂点である第一位と第二位に邂逅している。

 だが、一方通行も垣根帝督も、なんなら木山春美に対してだって、誘導お兄ちゃんとして慕っている木原誘導と一緒にしか対峙出来ていなかった。

 

 誘導の言葉は信じていたものの、それでも木山先生が置き去りの子達の為に動いていたことを知り、欠陥品とされてきた置き去りの子達と実験体としての自分の実力も測り示したくなった為の今回の行動だった。

 

「要するに、あの子達の犠牲を踏み台にした自分の力を試したいだけってわけ。その齢で、随分と性格が歪んでるのね。」

 

 実験体にされていまだに意識不明だという『置き去り(チャイルドエラー)』の子供達。美琴はその子供達と直接面識があるわけではないが、強い苛立ちを含めてその挑発を口にした。

 

「…じゃない…」

 

「え?」

 

 笑みを消し、先刻よりも深い敵意を美琴に向ける那由他。

 

「みんなは…犠牲者なんかじゃない…!!」

 

 彼女は瞳に暗い炎を宿らせ首を横に倒し、ガキュリと骨を鳴らす、その音に違和感を覚えつつ、美琴は相手との会話を続けようとしたのだが──

 

「確かに、置き去りは学園都市にとって欠陥品だよ?」

 

「でも、…欠陥品を蔑むことは許さない!!」

 

 少女はそれ以上の会話を拒絶するかのように、公園の舗装を浮き剥がすレベルの踏み込みで美琴に向かってか細い体を踊らせる。

 




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