禁書厨な俺氏、チート勘違い系オリキャラになる -とある科学の物質誘導-   作:村ショウ

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木原は多少は外道ではあるべし…。



22.魔導書図書館②

 

 

「──手を伸ばせば届くんだ。いい加減に始めようぜ、魔術師!」

 

 上条がそれを言い終わった時、グキリと上条の右手の小指が妙な音を立てた。不自然に曲がった痛みを感じる間もなく、恐ろしい勢いで襲いかかる光の柱が上条の右手をはじき飛ばす?

 続けざま、上条の顔面めがけて閃光が走る──

 

「──Salvare000!!」

 

 神裂がほとんど叫ぶように魔法名を唱えた。同時に、インデックスの足場となっていた畳が鋼糸を用いる『七閃』で裏返される。

 バランスを崩したインデックスが制御を失い、光の柱は壁や天井を引き裂いた。あたかも巨剣で斬り払ったかのような傷跡が走り、夜空が剥き出しになる。裏ではツリーダイアグラム(樹形図の設計者)が落とされ、アレイスターも多少は焦っているに違いない。

 

「それは『竜王の吐息(ドラゴンブレス)』── 伝説にある聖ジョージのドラゴンの一撃と同義です! いかな力があるとはいえ、人の身でまともに取り合おうと考えないでください!」

 

 神裂が上条へ説明を飛ばす。俺としても絶対にくらいたくない一撃だ。

 だが上条は、バランスを崩したインデックスへ向けてすでに走り出していた。しかしインデックスが体勢を立て直し、上条を再捕捉する方が早い。

 

「──魔女狩りの王(イノケンティウス)!」

 

 身構える上条の前に、炎が渦巻いた。人型を成す巨大な火炎が両腕を広げ、閃光を盾となり受け止める。幻想猛獣(AIMバースト)はこちらにも流れ弾が来る恐れがあったため、俺の前に配備してある。

 

「行け、能力者! 元々あの子の制限時間は過ぎているんだ! 何かを成し遂げたいなら、一秒でも時間を稼ごうとするな!!」

 

 ステイルが叫ぶと、上条は振り返りもせず、一言も返さずに再びインデックスへ突進した。

 

「───警告、第八章第二十六節。さらなる敵兵を確認。戦闘思考を変更、戦場の再検索を開始……完了。対象を変更せず、最も難度の高い敵兵『上条当麻』の破壊を最優先し継続します」

 

 上条への攻撃より苛烈にしようとインデックスの首の向きが変わるが、それに合わせて魔女狩りの王(イノケンティウス)も動くことで対応できている。

 そうしているうちに、三メートル、二メートルと、上条は距離を詰める。

 

「ダメです──────上!!」

 

 神裂が静止するように叫び声をあげた。

 そう、止める理由などアレしかない。光の羽だ。

 インデックスが壊した天井からゆっくりと粉雪のように降り注いできている。

 上条の右手なら数枚なら打ち消せるが、一枚でもアウトな代物が何十枚も同時には消せない。故に、立ち止まってしまう。

 

「──警告、第二二章第一節。天使を模したテレズマに類する未知の術式の検証と、炎の魔術の術式を逆算に成功しました。炎の魔術は曲解した十字教の教義をルーンにより記述したものと判明。未知の術式は供給路の切断が有効と判明、供給路切断と対十字教用の術式を組み込み中……第一式、第二式、第三式。命名、『神よ、何故私を見捨てたのですか(エリ・エリ・レマ・サバクタニ)』完全発動まで十二秒」

 

 閃光は純白から血のような真紅へ変わり、赤いスパークまで散り始める。AIM拡散力場をテレズマと同一視し、核ごと断つつもりだ。供給が止めれば幻想猛獣(AIMバースト)の再生は追いつかない。

 魔女狩りの王(イノケンティウス)もみるみるうちに弱まっていっている。

 

 それを見届けるや、上条は再び走り出した。頭上の羽すら右手で払わず、掌底を突き出して一直線に。

 

 原作通りなら上条はこう思っていたに違いない。

 

 この物語が、神様の作った奇跡の通りに動いてるってんなら──

 まずは、その幻想をぶち殺す!!

 

「──警、こく。最終……章。第、零──……。『 首輪』致命的な、破壊……再生、不可……消」

 

 ブツン、とインデックスの口からすべての声が途絶える。閃光も魔法陣も消滅し、部屋に走った亀裂すらかき消えた。

 

 その時、上条当麻の頭の上に、一枚の光の羽が舞い降りた。

 

「上条──!」

 

 俺はその神々しいまでの光景と相反する感情から、つい叫び声を上げる。能力の制御を疎かに出来ないのに、ここまで感情が出てしまうとは。

 

 そう、上条当麻は『一度目の死』を迎えたのだ。

 

 


 

 その後、俺は上条を病院へ運んだ。神裂とステイルにインデックスを任せた方が納得されやすいし、インデックスの頭に付けた装置を外して持ち去る口実にもなる。

 

 これは踏み入れてはならない領域だったのかもしれない。なぜなら、俺の手元には一〇万三〇〇〇冊の魔導書の複製──すなわち“デジタル魔導書図書館”があるのだから。

 唯一姉さんや脳幹先生に目をつけられている以上、関わるからには最大級の防御札を手に入れる必要があった。では、今回の最大の上がりは何か。上手く使えば、魔神にすらなりえる叡智だろう。

 

 このインデックスに付けた脳波観測装置は脳波を観測出来るだけの装置ではない。

 学習装置(テスタメント)と言われる装置の亜種だ。取り付け直後に読み取りを開始しなかったのは、首輪が健在のうちは迎撃されかねなかったから。迎撃を受けずに済む瞬間──つまり、上条が首輪を破壊したタイミングだけが安全な“穴”だった。

 セキュリティも脆弱になり、上条という首輪を破壊できる最優先対象がいる唯一の隙。

 

 魔導書と通常の記憶の読み取りに差異があって上手く読めない可能性もあったが、魔導書は知識を広めるものに味方をするのだがらあまり気にしなくてもよかった。

 自動書記(ヨハネのペン)にはアクセスを試みていることがバレていたが、神裂やステイルに聞かれていないし問題ない。気づかれる可能性があった上条は記憶喪失になった。

 

 ちなみに、那由他ちゃんと御坂美琴が戦ってから上条が目覚めるまでの間に一度、小萌先生宅を訪れている。目的は上条当麻の脳データ採取だ。インデックスには診断目的の学園都市製装置と言って納得してもらった。魔術では癒やせない上条の体を少しでも癒やしたいインデックスの気持ちを逆手に取ったようで少々罪悪感はあるが、実験の為だから(・・・・・・・)仕方ない。

 脳のデータを取った理由はいくつかあるが、光の羽による脳破壊の予測し破壊データを得るのが一番の目的だ。

 これは今後のアレ(・・)対策になる。

 

 

「ふ、不幸だ──!!」

 

 ナースコールとともに上条の絶叫が響く。ぷんぷん怒るインデックスがそそくさと廊下へ出ていくのが見えた。

 

 俺は入れ替わるように上条の病室に入り、ナースコールを止めておく。

 

「上条、記憶がないんだろ。俺はお前の同級生で友達の科学者──木原誘導だ。科学者の端くれとして脳を見ればすぐ分かる。あの場にもいたしな」

 

「木原さん、ありがとう…ございます?」

 

「そんな堅っ苦しい言い方じゃなくていいぞ。さっきも言ったが同級生で友達なんだしさ。今まで通り木原でいい」

 

「あぁ、悪い。木原、俺が記憶を失う前のことについて教えてくれないか」

 

「知っている範囲でよければな」

 

 学校のこと、今回の騒動の概要──簡単な説明をする。

 とはいえ、俺も学校についてはそこまで詳しいわけじゃないが。

 

「木原、ありがとうな」

 

「やめろよ、照れるだろ。まぁ、記憶喪失がバレないようにサポートくらいはしてやるよ。あんまりバレ過ぎたらインデックスにも気づかれるだろうしな」

 

 つい感謝を否定してしまったが、罪悪感が疼く。上条を記憶喪失にしない手段もあったのに、原作改変を恐れて選ばなかった自分がいる。

 

 バツの悪さをごまかすように病室を出る。廊下でカエル顔の医者とすれ違った。きっと上条はこれからあの名台詞を言うのだろう。

 心に記憶か。上条の場合、神浄の討魔の件もあるし記憶も複雑なのだろうが。

 

「誘導くーん、あれほど仕事を増やさないようにといったのに、やってくれましたね」

 

 この前、電話で相手をした唯一姉さんが目の前に現れた。

 旧約1巻でこのボスは聞いてないんですが、それは。

 目をつけられている以上、来るのは覚悟していたが早すぎる。

 

 ここはまだ中立地帯のカエル顔の医者の病院だぞ。

 ここでドンパチするつもりか?

 

「いやー、つい成り行きで介入しちゃいました」

 

 あえて、トボけて話す。

 そして、ゆっくりと唯一姉さんがいる方と反対側に歩く。

 

「誘導君、どこに行くつもりかね?」

 

 非常口前にゴールデンレトリバーがどっしり構えていた。背中には物騒な兵器。A.A.A.装備の木原脳幹だ。

 もうだめだぁ…おしまいだぁ…。

 

「脳幹先生、お久しぶりです。また、土佐犬アイドルとか紹介しますから、今回は見逃してくれません…?」

 

「誘導くん、なにを言ってるんですか。先生に変なものを紹介しないでください。今回は誘導くんとやり合うって訳じゃないんですよ。先生と誘導くんがここでやりあえば、この病院は最低でも吹き飛ぶでしょうから、やるならここじゃない場所を選びますし」

 

「では、唯一姉さんと脳幹先生2人で来たのは何のようですか?」

 

「誘導くんへの首輪づけですよ」

 

 首輪というとインデックスの件と目の前のダンディなゴールデンレトリバーを考えてしまう。

 

「誘導君、首輪に反応して私の方をみられても困るが」

 

「というわけで、誘導くんには裏の仕事をやってもらいます。誘導くん、意外と那由他ちゃんにご執心ですよね」

 

「つまり、那由他ちゃんを人質に取るわけですね。分かりやすい暗部落ち理由じゃないですか」

 

 めちゃくちゃヤクザな脅しをかけてきやがる…。

 

「善悪で言えば悪、好悪で言っても悪い方法だが──君には効くだろう、誘導君」

 

 ダンディなお犬様の声が追い打ちをかける。この2人のタッグは手強い。

 

「仕方ないですね。じゃあ統括理事長直属にしてくださいよ。その方が自由が利きそうですし」

 

 電話越しに変な命令をされるより、アレイスター直属の方が融通を利かせられる可能性がある。

 

「いえ、誘導くんの配属は決まっていますよ。統括理事会メンバーの薬味久子系の暗部組織として働いてもらいます。誘導くんを私が使い走りにしやすいですしね」

 

 薬味久子か。

 確か唯一姉さんが好奇心を植え込むことで、善人よりだったのが悪人になってしまった統括理事会メンバーだ。

 

「そういえば、唯一姉さんがちょっかい掛けてる統括理事会メンバーでしたね。恋査とか面白いものもありますし、唯一姉さんに使われるなら引き受けますよ」

 

「引き受ける受けないとかそれ以前の問題ですが、納得してくれるなら構いません。組織名と人員が決まったら教えてくださいね」

 

「こっちで決めるんですか。そういうのはそっちで手配してくれるんじゃ…」

 

 暗部組織のメンバー集めからしないといけないのか。

 

「誘導君、君もその方がこちらで選定した人員よりはやりやすいだろう?」

 

「それもそうですね。脳幹先生ありがとうございます」

 

 意外と好きにさせてもらえそうなので、脳幹先生に感謝する。

 

「私には感謝はないんですか。せっかく、薬味久子と交渉してきたのに」

 

「唯一姉さんもありがとうございます。組織名か、『ドラゴン』とかいけます?」

 

 唯一姉さんがわざとらしくプンプンしているので、嫌々ながら感謝する。交渉といっても唯一姉さんのことだ。碌なもんじゃない。少し煽りを入れるか。

 

「誘導君、それは意味を知っての発言かね?」

 

「いや、ちょっとどういう反応するか気になったので、組織名はメンバーを集めながらゆっくり決めさせてもらいます」

 

 わりと脳幹先生の気迫が怖かったのですぐに取り繕う。

 

 自業自得とはいえ、不幸は上条さんに集まるじゃないんですか。

 とりあえず、唯一姉さん&脳幹先生の恐ろしいペアからは解放されそうだ。

 





誤字報告、感想ありがとうございます!
誘導君は那由他ちゃんがいないとより木原の暗黒面に落ちていくタイプ。
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