禁書厨な俺氏、チート勘違い系オリキャラになる -とある科学の物質誘導- 作:村ショウ
色々とやろうとするとすぐ更新が遅くなってしまい、申し訳ないです。
今回は箸休め・準備回になります!
「那由他ちゃん、ちょっとデートに付き合ってくれないかな?」
那由他ちゃんに、下手したらセクハラなうえにキザな台詞を言ったのには理由がある。
目の前の状況がそうするべきだと、脳の片隅の
ただの性犯罪者の言い訳では? と脳内でマジレスが飛んでくるが、
それを実感したのは、俺の探知能力に面倒な連中が映ったからだ。
今回は木山先生に会うために移動していたし、俺自身が暗部に堕ちた身でもある。警戒を怠るわけにはいかなかった。実際、こうして探知できたのだから、やっておいて正解だったと言える。
その面倒な連中に、風紀委員としての正義感から那由他ちゃんが一人で立ち向かう可能性がある。だから、止める必要があった。本来なら彼女一人でも余裕な相手だが、今の連中は相性が悪い。
俺が引かれるような発言をして那由他ちゃんに多少キモがられようと、彼女の安全が守られるならそれでいい。脳内の計算も、それが正しいと念を押してくる。そして──
「お前、俺らとこいよ」
通りを曲がると、探知通りに見知らぬ女学生が不良生徒たちに絡まれていた。
それだけなら那由他ちゃんでも対処可能だ。だが、問題は不良たちが持つ音響機器だった。あれはキャパシティダウン。テレスティーナ姉さんががばら撒いている、能力者の暴走を誘発する音響兵器だ。感知系の能力者である那由他ちゃんは、特に影響を受けやすい。
だから、先手必勝。俺は強力な物質誘導で、装置を瞬時に破壊する。
「那由他ちゃん、ちょっと失礼するよ」
万が一にも人質に取られないよう、那由他ちゃんの体を抱えながら、音響兵器を片付けた。
「誘導お兄ちゃん、な、何?」
後で反抗期ばりに嫌われるかもしれないが、天使のような那由他ちゃんなら許してくれるはずだ。そう願う。
「そこの君たち、何をしているのかな?」
「はぁ? アンタこそ何もんだよ?」
「俺はしがない一般学生だけど、嫌がってる女の子を無理やり連れていくのはよくないと思うよ?」
「その口ぶり、能力に自信があるってか? 能力者様が子供連れで、お偉いご高説たれてんじゃねーよ」
スキルアウトの一人が、リモコンのようなスイッチでキャパシティダウンを起動させようとする。
「アレ…? 発動しねぇ…。なんでこんな時に」
「偶発的に発動しないと思ったか? その玩具は、もう壊しておいたよ」
挑発で奴らの注意が女学生から逸れた隙に、能力で地面とスキルアウトたちの体を誘導し、その場に縫い付けるように捕縛する。
「なっ…!?なんだ、これっ…!!」
簡単に言えば、局所的に重力が強くなったようなものだ。動けるはずがない。
「あ、那由他ちゃん。警備員の応援を呼んでくれるかな」
彼女を守るためとはいえ、お姫様抱っこしてしまったのがそんなにショックだったのか。腕の中で固まっている那由他ちゃんに声を掛ける。その反応に、逆に俺がショックを受けそうだ。
「あっ、誘導お兄ちゃん……! は、はい! 応援を呼びます!」
なぜか敬語になっている。そこまでのことだったのか……。俺はそそくさと那由他ちゃんをお姫様抱っこから解放した。
「あっ降ろすんだ…」
「いや、この体勢だと電話しづらいだろ?」
もちろん、とっさの言い訳を添えて。
那由他ちゃんが電話している間に、キャパシティダウンの残骸からデータをいただく。自分の持つ情報と相違ないか確認するためだ。
事件をあらかた警備員に引き継ぎ、俺たちは解放された。
「誘導お兄ちゃん、あの……」
那由他ちゃんが口ごもりながら話しかけてくる。
「どうしたの、那由他ちゃん」
「あの、さっき言ってた…で、デートって…」
「あぁ、それか。嫌なら気にしなくていいからね」
あのロリコンまがいのセクハラムーブは、事件で有耶無耶にできなかったか。
「嫌じゃないよ! 誘導お兄ちゃんと一緒に出かけたいな」
あんなムーブをしたというのに…那由他ちゃんは天使か。
優しい微笑み、ほんのり赤く染まった頬。そのすべてが「可愛い」を体現している。もう、俺はロリコンでいいや……。
「それじゃあ、今回はリアル肝試しといこうか」
那由他ちゃんとのデートプランなんて考えていなかったので、何か返さねばと焦り、直近の予定が口から滑り出た。
「肝試し…? この学園都市でするの?」
「そう。暑い夏にはピッタリじゃない? ……というのは建前で、実はある『木原』が人工幽霊なるものを『置き去り』を利用して作っている、という情報を手に入れたんだ。ちょっと気になってて、それを調べたい」
「デートって、そのことだったの…?」
那由他ちゃんが、あからさまに期待を裏切られたような顔をする。
いや、それもそうか。まだ小学生の女の子だ。楽しい場所に連れて行ってもらえると思ったら、中身は仕事だったなんて、大人でもがっかりする。
「いや、それだけじゃないぞ。その木原、どうやら遊園地で実験をするらしい。そこに一緒に行かないかな?」
男一人でうろつくより怪しまれないためのカモフラージュ、という下心も含めての誘いだ。幸い、相手はこちらを即座に殺しにくるような悪意は持っていない。今回はあの二方にも、少しばかり経験値になってもらう。
(誘導お兄ちゃんと二人っきり、遊園地デート、……行きたい!」
那由他ちゃんが何かをボソッと呟いた後、「行きたい」という肯定がはっきりと聞こえた。すぐさま準備に取り掛かる。
向こうも、多人数がいる場所での観測によるフリルサンド#Gの変化を実験するつもりだろうから、『置き去り』の子供たちを連れてきているはずだ。最悪の場合、彼らが実質的な人質として機能してしまう。俺としても、木原誘導としても、取りたくない手ではあるが。
「それじゃあ、いったん帰って準備しようか」
「ありがとう、誘導お兄ちゃん! それと……さっきの、またお願いしてもいいかな……?」
事件に巻き込まれて疲れたのかもしれない。
ともあれ、さっきのお姫様抱っこを嫌がっていなかったようで安心した。
「それじゃあ、
那由他ちゃんを再び抱き上げ、物質誘導で彼女の家まですぐに移動する。
彼女の準備ができるのを待つ間に、標的の位置情報や配置関係を詳細に調べておく。
「お待たせ、誘導お兄ちゃん!」
現れたのは、おしゃれをして、さらなる可愛さを見せつけてくる天使だった。
「すごく似合ってるよ。それじゃあ、行こうか」
用意しておいたサイドカー付きバイクに那由他ちゃんを案内する。過去の俺が四月生まれで、すでに免許を持っていたのは幸いだった。まぁ、サイドカーがついてないと二人乗りは免許取得後一定期間乗せられないのだが。
学園都市内なら公共交通機関でもいいが、今回は仕事も兼ねている。さっきのような短距離ならともかく、長距離を能力で移動するのは神経をすり減らすので避けたい。バイクの手配は、研究者としての財力と暗部としての権限を使えば簡単だった。それにしても、こうも早く持ってきてくれるとは。
那由他ちゃんをサイドカーに乗せて走り出す。ドラゴンライダーのような化け物スペックではないが、学園都市製のバイクは加速性能も走行安定性もかなり高い。……というか、この馬力が出るバイク、十六歳で乗っていい代物なのか?
対象の様子を確認すると、どうやらちょうどいい位置にいる。那由他ちゃんとのデートは後回しになりそうだが、先に仕掛けてしまおう。
「やぁ。偽りの『木原』、ドレンチャー=木原=レパトリさん」
もし『好感の持てる木原ランキング』があれば、きっと上位に入るであろう目の前の男に、俺は話しかける。たとえ最初は詐称だったとしても、結果的に『木原』となったことに変わりはない男に。
彼が作ったフリルサンド#Gの理論は喉から手が出るほど欲しい。対人制圧力、兵器としての耐久性、どれをとっても素晴らしい。何より、その本質が『高エネルギーの集合によって作り出される像』である点が重要だ。原作ですらAIM拡散力場を媒介にできたのだ。ならば、最初からAIM拡散力場を観測できる那由他ちゃんを理論に組み込めば、どうなるか──。
薬味久子が欲しがっていた濃淡コンピューターの技術にも応用できそうだし、実験が完全に安定期に入る前の、今のうちに確保したかった。
そして何より、他の木原でなく、フリルサンド#Gと彼を選んだ理由は──。
「あなたは一体…!?」
相手が一気に警戒態勢に入り、フリルサンド#Gが現出するのを確認する。
「無駄ですよ。その行動すら、すでに俺に誘導されている」
──相性が良いからに他ならない。
俺は物質誘導で、フリルサンド#Gの媒介となっているエネルギーを特定し、周囲に意図的な低エネルギー空間を作り出す。木原端数がピンホールカメラでやった手法の応用だが、研究段階の技術相手なら効果は絶大だ。一度使えば対策されるだろうが、今後、木原端数が同じ手を使ってどうなろうと俺の知ったことではない。
今は目の前の研究対象を無力化するのが最優先だ。
「……すでに調査済み、というわけですか」
俺がフリルサンドを牽制している間に、那由他ちゃんが音もなく背後に回り込み、義手から伸ばした針を彼の首筋に当てていた。それを受けて、青年は静かに両手を上げる。
「誘導すれば、結果は一つに収束できる。ご協力いただけるなら、あなたが望むものを用意しましょう。例えば……『
「貴方には分からないでしょうが、私は子供たちを実験体として……」
「使い潰してるのではない。でしょう?」
「……ッ!?」
「早い話、だからこそ、ですよ。俺たちも、
「少なくとも、俺と那由他ちゃんは違う。どちらかといえば、ある実験で眠り続ける子たちの目を覚ましたい。そのために活動しているんです。あなたも『木原』を名乗るならご存じでしょう。木原幻生というクソ野郎を、その犠牲になった子たちです」
「……それで、あなたは私に何をさせようと?」
「この場で話せる内容ではありませんが、強いて言うなら、この学園都市を多少マシにするための研究、ですかね。俺の傘下に入れば、あなたの研究所と『置き去り』の子たちがより良い環境で過ごせるよう、資金面も含めて全面的にサポートします」
「考えさせてほしい……と言ったら、どうします?」
「どうもしませんよ。ただ、俺があなたと接触した事実は、木原唯一や脳幹にはほぼ確実に、そして幻生にも伝わる可能性がある。それだけは留意してください」
「……つまり、貴方の提案を断れば、もっと悪辣な『木原』が来る。いや、差し向けると脅しているのか」
善意の忠告のつもりが、どう聞いても外道な脅しになってしまったな?
「まぁ、安心してください。あなたがこちら側につくなら、俺はあなたたちを必ず守りますから」
「……わかりました。あなたには勝てそうにない。あなたの下につきましょう」
どうやら交渉は上手くいったらしい。俺はフリルサンド#Gの拘束を解く。
「それでは! 詳細は機密性の高い場所で改めて。俺はこれから、那由他ちゃんとの予定がありますので」
互いの存在を認識できなくするFive_Over MentalOutの応用で、俺たちはその場から姿を消した。
「さて、那由他ちゃん。まずは何して遊ぼうか?」
「それより、誘導お兄ちゃんはさっきの人たちが悪い人じゃないって知ってたの…?」
「ある程度の情報から推測はしていた。でも、それを確かめるために、直接会う必要があったんだ」
那由他ちゃんの核心を突く問いに、俺は少しだけ言葉を濁す。
「そうなんだ…。誘導お兄ちゃんがそう言うなら、信じるよ?」
何か腑に落ちないことがあるのだろう。疑いの色を滲ませながらも、彼女は信じると言ってくれる。なんだか罪悪感が募るな。
「那由他ちゃんに信じてもらえるのは嬉しいよ。それじゃあ、気を取り直して。行きたいところはある?」
「それならー」
そう言うと、那由他ちゃんは先ほどのことを気にしていないかのように明るく振る舞い、遊園地のお化け屋敷を指さした。
今日くらいは、俺も彼女の笑顔に癒されよう。全力で楽しむとしよう。
ドレンチャー=木原=レパトリはかなり好きです。
あと、どんどん誘導がロリコンになっていく。
最近、絵に挑戦中でXの禁書ワンドロに低レベルで参加して、敷居を下げる活動(笑)をしてます。
これは『木原一族』、『投げキッス』という、最高のお題だったので描いた那由他ちゃん&円周ちゃんの投げキッス。
Twitter凍結されたので挿絵として投稿↓
【挿絵表示】