禁書厨な俺氏、チート勘違い系オリキャラになる -とある科学の物質誘導-   作:村ショウ

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創約13巻のゴー姉ちゃん最高!



26.退屈しない街

 

 まだ実用予定ではなかったが、A.A.A. OSを保管庫に置いておいて正解だった。那由他ちゃんには、もう少しリスクを減らしてから使ってもらいたかったが……。

 あれはA.A.A.の名を冠する通り、対魔術用の装備だ。インデックスに取り付けた学習装置の派生品で吸い出した、デジタル写本の魔道書を組み込んだ代物であり、リスクは決して小さくない。

 上条と共に行動しているせいで忘れがちだが、これこそが魔導書図書館の本来の用途に近いか。

 正直、戦闘中にいきなり視界が遮られた時は肝を冷やしたが、音は聞こえていたし、何より那由他ちゃんを信じていたので問題はなし…! 

 

 ……と、いうわけにもいかないのが現実だ。

 案の定、その後の事情聴取では少し困らされた。とはいえ、俺が木山先生に近い立場だったこと、そして薬味久子による情報隠蔽のおかげで、特に罪に問われることはなかった。A.A.A. OSについても、「実験中の新型駆動鎧」という扱いで済んだ。

 

 本当の問題は、御坂美琴たちから少し不信感を抱かれてしまったことだろう。どうにかして、彼女たちの信頼を勝ち取らなければならない。

 そんなことを考えながら、俺はあの子達の眠るカプセルの前に立っていた。

 

「これでプログラムは完成だ…後は…」

 

 木山先生がキーボードを叩く手を止め、息をつくように言った。

 

「大丈夫なの。絆理ちゃんがね、先生のこと信じてるって」

 

 過去を思い出して止まった木山先生の手を見て、春上衿衣が背中を押す。

 

 そして、木山先生が恐る恐る、眠れる子どもたちを目覚めさせるためのボタンを押した。

 

すると、乱雑開放などは起きずにカプセルが開き出す。

 

「せんせ…い、どうして、目の下に隈があるの…?」

 

「色々と……忙しくてね」

 

 木山先生と彼女たちのやり取りに、俺の視界も潤んでいく。

 

 感動の再会に水を差すのは野暮だろう思い、俺は少し離れた場所から、静かにその光景を見守ることにした。

 

「……誘導お兄さん…?」

 

「那由他ちゃんに、誘導お兄さんだ…」

 

 どうやら、あの子達にとって俺はかなり印象深い人物だったらしい。那由他ちゃんと並べて語られるほどに。

 

「久しぶりだな。君たちが目覚めてくれて……本当に、本当に良かった……」

 

「木山先生も、誘導お兄さんも、なんで泣いているの?」

 

 視界が滲み、俺の頬をいつの間にか一筋の水滴が伝っていた。

 

「誘導お兄ちゃん……」

 

 那由他ちゃんも、そんな俺の様子を見て心配そうに声を掛けてくれる。

 

「あぁ、俺も実験続きで、ちょっと疲れてたみたいだ。また一緒に遊んでやるから、君たちも早く元気になれよ」

 

 俺はなんとも言えない感情に駆られ、逃げるようにその部屋を後にした。

 

 

 それが、数日前のことだ。

 俺は研修室の窓から、空に浮かぶ飛行船を眺めながら、次の実験の準備を進めていた。

 

「木山先生ー、お誕生日おめでとう!!」

 

 病室からの中継だろうか。モニターの向こう側で、まだ病院服を着てはいるが、あの子たちが元気に木山先生の誕生日を祝っている。その光景が、俺にとっても何より嬉しかった。もし俺が介入したせいで、あの子たちが目覚めなかったらと、そう想像せずにはいられなかったから。

 

「先生、早く良くなってね。私たちも頑張るから」

「ありがとう、木山先生。大好きだよ」

「あと、誘導お兄さんも見てるなら、ちゃんと連絡してよね!」 

 

 あまりの忙しさに、あれからあの子たちに連絡すらしていなかったことを思い出す。いや、それだけではない。どこか後ろめたい気持ちがあったのかもしれない。

 


 

 あの子たちに会いに行った、その帰り道だった。

 夜道を歩いていると、不意に後ろから声をかけられた。

 

「アンタ、何か知ってるんじゃないの」

 

 その声を聞き間違えるはずがない。

 学園都市第三位、御坂美琴の声だ。

 

(アニオリではテレスティーナ姉さんにフェブリのことで問い詰める場面もあったが、今回はそのイベントでもないはず。なぜ俺に?)

 

 偶然見つけたから、声をかけてきただけか? 

 

「『何か』って、何のことかな?」

 

「とぼけないで……クローンのことよ」

 

「学園都市第三位を用いたクローン量産計画、通称『量産型能力者(レディオノイズ)計画』だったか? 俺が『木原』だから、関わっているとでも? 」

 

 俺は食い気味に言葉を被せる。

 

「…やっぱり、知ってるんじゃない」

 

 彼女の体から迸る電気が、バチバチと威嚇するような音を立てる。怖いが、ここは毅然と対応するしかない

 

「知ってはいるが、深くは関わっていない。個人的に好ましい計画ではないし、そもそも俺が手を出せるようなレベルの話でもない。それに、その計画はすでに凍結されたはずだ」

 

「……」

 

「もしかして、君は実際にそのクローンを目撃でもしたのか? もしそうなら、何らかのブレイクスルーがあったのかもしれないな。それはそれで興味深いが、だとしても俺には関係のないことだ」

 

「……ZXC741ASD852QWE963'が何だか知ってる?」

 

「セキュリティランクA以上に付けられるパスか?」

 

「……そう。なら、もういいわ」

 

「こちらとしても、命がいくつあっても足りない学園都市の闇に、これ以上関わるつもりはないのでね。ここらでドロンさせてもらうよ」

 

 いちいち接触してこられても迷惑だ。念のため、Five_Overの観測用カメラを、彼女の探知範囲外ギリギリに付けて監視しておくか。

 

 それにしても、やっとあの子たちの件が一段落したというのに、この街は本当に退屈しないな。

 

 監視といえば、那由他ちゃんがA.A.A. OSを使ってかなり熱心に練習しているようだ。調整用に貸しただけなのだが、あまり根を詰めてのめり込みすぎないよう、一度釘を刺しに行かなければ。

 あくまで今は、動かすことに慣れてもらう程度の予定なのだ。

 

 俺はA.A.A. OSの位置情報から那由他ちゃんの居場所を割り出し、そちらへ向かう。

 どうやら、外での起動実験を試しているらしい。人目につかないコンテナ置き場にいるようだ。

 


 

 ー那由他sideー

 

 私はコンテナ置き場で誘導お兄ちゃんから貸してもらったA.A.A O.Sの練習をしていた。

 目覚めたあの子達に、二度と悪意の手が伸びないように。そして、お兄ちゃんを、今度こそ私が守れるように。もっと強い力が欲しかった。

 

 そんな時だった。

 

 唐突に、爆発音が響いたのは。

 (この音の振幅……地雷? 地面からの爆発……!?)

 

 思い出すのは、誘導お兄ちゃんに初めてあの子たちのことを相談しに行った日。その時に遭遇し、誘導お兄ちゃんから聞いた、レベル5のクローンを使った非人道的な『実験』。

 

 私はA.A.A. OSに搭載されたFive_Overの機能で姿を消し、音のした方へ向かう。そして、見てしまった。

傷つき、倒れるクローンの少女。実験体とされた『それ』と、目が合ってしまった。

 誘導お兄ちゃんからは釘を刺されていた。でも、これを見て見ぬふりなんて、できるはずがなかった。

 それでも、一度大きく息を吸い、冷静さを取り戻す。

 

 トドメと言わんばかりに降り注ぐコンテナの雨を、私は物質誘導で受け流す。同時に、FiveOverの機能で、クローンの子がそのままコンテナに潰されたように見える幻影を作り出した。

 

 そして、すぐに彼女の元へ駆け寄り、物質誘導で止血を施す。足が切断されている。コンテナを避けはしたけど、このままでは大量出血で助からない。

 早く、あのカエル顔のお医者さんのところに連れて行かないと……!

 

「なんだァ…? もう一体来てやがんのかァ?」

 

 一瞬、ビクッとしてしまったが、どうやらクローンの元、オリジナルである超電磁砲のお姉さんが来たらしい。

 

このまま、あの強かった超電磁砲のお姉さんが勝ってくれると嬉しかったが、そうはなからなかった。

必殺技のはずの超電磁砲さえ反射され、立つことすらままならなさそうだ。学園都市第一位はやっぱり、圧倒的だった。

クローンを人形扱いする第一位には私も怒りを覚えたけど、何もできない。二人のやりとりを黙って見て聞くことしか。

 

「いや、待て…そこにいやがるのは誰だ…?」

 

 一瞬、私のことがバレたのかと心臓が跳ねたが、違うらしい。

 彼が見ていたのは、いつの間にかそこに立っていた、誘導お兄ちゃんの姿だった。

 誘導お兄ちゃんは私の存在に気づいているらしく、目で退避の合図を送ってくる。

 

 (誘導お兄ちゃんが気を引いている間に、ここから離れろってこと……?)

 

「また会いましたね、学園都市第一位さん?」

 

 誘導お兄ちゃんが、わざと挑発するような態度で言った

 逃げようとしたが、足が動かない。お兄ちゃんは気づいていないかもしれないけれど、私がここから動けば、残った血の跡でクローンの子の生存がバレてしまうかもしれない。

 

「オマエこそ、実験の関係者じゃねェってのはウソだったようだなァ?」

 

「まぁ、その節はどうも。ですが、数多おじさんと同じ『木原』であることは嘘偽りのない事実ですよ」

 

 お兄ちゃんは、悪びれる様子もなくあっけらかんと答える。

 

「だとしても、オマエはなんでまたツラ見せやがった?」

 

「人探しをしていまして。……えぇ、まぁ、野暮用で出かけたら、たまたま遭遇しただけです」

 

 私のことを察知されることを恐れてか誤魔化す。

 

「偶々だァ? 寝ぼけたこと言ってんじゃねェぞ」

 

「うーん、どうも信用がない。仕方ない、数多おじさんとの関係くらいは、ここで証明してあげますか」

 

「アンタ……やっぱりこの実験のこと…」

 

 超電磁砲のお姉さんが何か言っているが、それどころではない。第一位の一挙手一投足が、死に直結する。その緊張で、他の音は頭に入ってこない。

 

「さっきは学園都市の第三位の代名詞、超電磁砲を無力化したんでしたっけ? なら、次はそれでその『最強』、無敵の能力(・・・・・)を破ってあげましょう」

 

 私も戦ったことのある、あのお姉さんの決め技。それをまるで簡単なことのように言うお兄ちゃんの態度にも驚いたけれど、それ以上に、第一位の『最強』を破る……?

 

「…破るだァ?」

 

「えぇ、こんなふうに。――Five_Over Model:Railgun」

 

 それは、テレスティーナおばさんが使っていた超電磁砲のコピー品のように見えた。でも、本物ですら弾かれたのに、それで破れるはずが……。

 その瞬間、お兄ちゃんのAIM拡散力場が、ぐらりと大きく揺らめいた。

 

「だから、それは効かねェと……」

 

 そう言いかけた第一位の表情が、凍りつく。

 閃光と土煙が晴れた時、信じられない光景がそこにあった。

 

「なんだァ…こりゃ…」

 

 第一位は、自身の頬から垂れる赤い液体を指で拭い、呆然と呟いた。

 

「学園都市第一位、一方通行の能力だろうと、破る手段などいくらでもある。この学園都市は、レベル5全員が反乱を起こしても対処可能な『切り札』を、常に確保しているんですよ」

 

 (切り札…? そういえば前、恋査とかいう名前を、お兄ちゃんが木山先生との会話で出していた気がする。でも、あれはまだ未完成のはず…)

 

 誘導お兄ちゃんがどうやって彼の能力を破ったのか、見当もつかない。

 

「ヘェ……面白いじゃねェか。やろうってんなら、キッチリ相手になってやんぞ……!」

 

 さっきまでつまらなそうに『実験』をこなしていた第一位が、今は狂気的な笑みを浮かべている。お兄ちゃんの誘導で、彼の興味は『実験』からお兄ちゃん本人へと完全に移ったようだった。

 

「いえ、結構。それに、そろそろ『アレ』も来る頃でしょう。……何より、殺ろうと思えば、今ので殺せましたからね」

 

 (確かに、今の一撃が脳や心臓だったら……。でも、どうしてお兄ちゃんはそうしなかったんだろう。人命優先? それとも、第一位の利用価値? これだけの非道な行いをしている相手に、手心を加えるなんて……。お兄ちゃんなら、行動不能にするくらいの調整はできたはずなのに)

 

「お姉様、及びレベル5相当の能力者との戦闘は、実験に許容外の誤差を生みます。直ちに戦闘を中断することを提案します、とミサカは報告します」

 

 クローン……お兄ちゃんが言っていた『妹達(シスターズ)』が、物陰からぞろぞろと現れ、戦闘に割って入った。

 

「やっぱり、来たか」

 

 誘導お兄ちゃんは、それを待ちわびていたかのように呟く。

 

「チッ、テメェが前に使ってた言い訳と同じかよ」

 

 お兄ちゃんが私を助けてくれた時と、確かに言っていることは似ている。でも、なぜお兄ちゃんはここまで的確に状況を読んでいたんだろう。この実験の関係者じゃないはずなのに。あの時も、今も、時々お兄ちゃんらしくない、まるで未来を知っているかのような発言をする。

 

 もっと、深く聞くべきなんだろうか。お兄ちゃんのこと、もっと……。

 

 





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