禁書厨な俺氏、チート勘違い系オリキャラになる -とある科学の物質誘導-   作:村ショウ

29 / 32

今回はわりと善行なのかもしれない。
その結果がどうであれ…。



28.木原なりの善行を②

 

 渋々というか、ほとんど強引な交渉で9982号の引き抜きには成功したわけだが、その後のことをあまり考えていなかった。

 初めて一方通行と対峙した時と同じく、那由他ちゃんを呼び捨てにしてしまったり、「すまない」なんて言葉を使ってしまったり……。思った以上に、俺の心に余裕はなかったのかもしれない。

 正直、この件については原作通り上条が一方通行を倒して終わり、と想定していた。だが、もし彼が失敗した場合を考えると、この状況はあまり良くない。9982号の生存を隠蔽しているといっても、実験が続行されれば露呈するリスクは高まる。上条の介入が少し遅れるだけでも、原作からの乖離は起きうるのだ。

 

 であれば、やることは一つ。上条が原作通りに近いタイミングで、事を解決してくれるよう誘導するしかない。

 


 

 

 俺と那由他ちゃんは、離れた場所から映像を使って戦況を監視していた。流石にFive_Overの監視装置では一方通行にバレる可能性があるため、薬味久子に頼み込み、実験用の定点カメラを使わせてもらっている。

 御坂美琴が実験施設を破壊してくれたおかげで、様々な機関が『絶対能力進化(レベル6シフト)計画』に参入できた。うちや薬味久子息のかかった施設にも協力のオファーが来ていたのは幸いだった。

 

「離れろよ…今すぐ御坂妹から離れろってんだ…この三下!!」

 

 モニターに映る上条当麻が、『御坂妹』ことミサカ10032号を庇い、一方通行の前に割って入る。

 俺にも、9982号から10031号までを助けることはできたかもしれない。だが、それをすれば上条の介入が遅れる、あるいはなくなってしまうリスクがあった。理想を言えば、彼のように誰一人として犠牲にしたくはない。だが、俺はそこまでの主人公(ヒーロー)にはなれない。

 

「ねぇ、誘導お兄ちゃん……。あの人って、前にシスター服の女の子を助けてた、お兄ちゃんの友達だよね……? なんで、この実験の場所に……」

 

「あぁ。上条当麻は、ここに辿り着くべき存在だから問題ない。彼の特異性は、那由他ちゃんもここで見ておいた方がいいだろう。一つ言えるのは……惚れちまうくらい、いい奴だよ」

 

 那由他ちゃんが上条勢力入りしないか気が気でないが、とりあえず彼女の疑問には答えておく。惚れそうになるくらい、上条の行動は格好いいのだから。

 

「……っ!く、は、面白ェ、何なンだよその右手は!」

 

 上条が一方通行にしっかりと、キツイ一撃をお見舞いしているようだ。乖離がなくて良かった。

 

「誘導お兄ちゃん。もしかして、あの人が……垣根帝督を襲撃した時に言ってた、『第一位よりも重要な人物』ってこと?」

 

 そういえば、勢い余ってそんなことまで話してしまっていたか。

 

「ってことは、お兄ちゃんが言ってた『この実験は失敗する』っていうのは……」

 

「そう。『絶対能力進化(レベル6シフト)計画』ですら、上条当麻という一人の少年を成長させるための、壮大な計画の一つに過ぎない、と考えられる。恐ろしい話だろう? いや、ある意味では『絶対能力進化計画』の拡大版か。あれは二万体の『妹達』を使った計画だが、こちらは人口二百三十万人の学園都市そのものを用意して行われる、巨大な計画だ」

 

「でも、なんで学園都市じゃなきゃダメなのかな?」

 

 那由他ちゃんの疑問はもっともだ。目に見える『幻想殺し(イマジンブレイカー)』の力だけなら、これほど巨大な舞台装置は必要ない。

 

「学園都市である理由、か。そうだな……あの右手は異能の力を打ち消す。ならば、異能の力がなければ、その価値すら証明できない。那由他ちゃんの能力が、AIM拡散力場が存在しなければ意味をなさないようにな」

 

 俺は那由他ちゃんの能力を例に出しながら解説する。

 

「そして、そういった特別な力は、活躍できる場所にこそ現れるものさ。だから、この学園都市は上条当麻が活躍せざるを得ない『悲劇』に満ちている。いや……満ちさせられている、と言うべきか。あの変態統括理事長の手によってな」

 

 説明になってるかは不安だが、上条の中の方はトップシークレットだ。あまり無闇に話せない。幻想殺しでも意味が通る説明に済ませる。

 

 これで説明になっているかは不安だが、彼の力の核心はトップシークレットだ。無闇に話すわけにはいかない。『幻想殺し』だけでも意味が通るように説明を済ませる。

 

「そう……なんだね……」

 

 那由他ちゃんは、どこか影を落としたように呟いた。

 

 そうこうしているうちに、一方通行が周囲の空気を圧縮圧縮し始める。

 

「歯を食いしばれよ『最強(さいじゃく)』──俺の『最弱(さいきょう)』は、ちっとばっか響くぞ──」

 

 俺たちは、上条当麻が妹達の協力も得て、学園都市最強に勝利する瞬間を、最後まで見届けた。

 


 

 

─那由他 Side─

 

 私は、誘導お兄ちゃんの説明を自分の中で噛み砕くように反芻する。

 上条当麻。あの人が、誘導お兄ちゃんの本当の研究対象なのかもしれない。

 だって、お兄ちゃんが元々研究していたのは、私由来のサイボーグ技術やAIM拡散力場じゃない。『主人公(ヒーロー)』そのものだったのだから。

 厳密にいえば、『木原』や『主人公(ヒーロー)』といった、人々の指向性を誘導する特異な属性の研究。

 

 誘導お兄ちゃんの本来の行動原理は、人々を適材適所へ配置することによる効率化──救われぬ者へより多くの手が届くようにする・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、そんな研究だったはずだ。だから、脳幹先生や加群おじさんがやっていた落第防止(スチューデントキーパー)のサポートみたいなこともしていたはずなんだ。 

 そのために、複数の『木原』が所属する研究所を運営していたのだ。それも研究の一環だったし、私と誘導お兄ちゃんの出会いも、私のAIM拡散力場の観測能力がその研究に役立つからと、実験に立ち会ったのがきっかけだった。唯一お姉ちゃんとも、研究中に会ったと聞いている。

 

 それを考えちゃうと、他の妹達も誘導お兄ちゃんが直接動くかは別として、何かしら手を打っていてもおかしくなかった。なのに、なぜ10032回目の実験まで静観していたんだろう。すでに行動していて、今やっと動けるようになったのかな。

 誘導お兄ちゃんの行動を歪める、何かが裏にあるんじゃないか。

 そもそも、この結末に導くための準備が整っていなかったのか、それとも、下手に動けばもっと大きな被害がどこかで起きてしまうとか……。

 私は、誘導お兄ちゃんのことをもっと探っていく必要がある。

 

 


 

─翌日─

 

 昨夜の一方通行敗北にまつわる裏の後始末を終え、俺は再び病院に来ていた。

 あの実験は無事に失敗し、凍結された。失敗を喜ぶのはおかしな話だが、俺が介入したせいで原作以上の犠牲者が出ることを、何よりも恐れていたのだ。

 

「自由に生きて良いと、あなたは言っていましたよね? と、ミサカ9982号はあなたに確認を取ります」

 

 ミサカ9982号が、俺に話しかけてきた。

 自由、か。無茶な要求でなければ、叶えてやるつもりだ。

 

「あぁ、そう言ったが、何かしたいことでも?」

 

「はい。私はもう一度、お姉様に会いたいです、とミサカは自らの思いを吐露します」

 

「いいんじゃないか? ちょうど今頃、御坂美琴は上条のお見舞いに来ているだろう。この病院にいるはずだ」

 

 俺は彼女の願いに軽く頷いたが、念のため、物陰から見守ることにした。

 

「お姉様……。と、ミサカは再び会うことができたお姉様(オリジナル)を呼び止めます」

 

「アンタ……さっきも……」

 

 御坂美琴は、目の前の相手を先ほどまで話していた10032号だと思ったのだろう。だが、彼女の腰につけられたゲコ太の缶バッジが目に入り、ハッとして言葉を止める。

 

「なんで……生きて……」

 

「それは……」

 

 9982号が説明しようとするが、彼女は表向きはもう『存在しない』個体だ。どう説明すべきか、言葉に詰まっている。それに御坂美琴とは喧嘩別れではないが、姿を見せないでと言われた個体だったはずだ。

 仕方ない。いっちょ、俺が助け舟を出してやるか

 

「それは、あそこにもう一人、彼女を助ける人間がいたからだよ。あの場には、君も一度戦った、うちの那由他ちゃんがいたからね」

 

「そう、あの子が……。って、なんでアンタが『妹達』と一緒にいるのよ!」

 

 そりゃ、俺が突然出てきたらそう聞きたくもなるだろう。那由他ちゃんと違って、俺はただの不審人物だ。

 

「9982号を含め、『妹達(シスターズ)』は今後、協力機関での調整が必要でね。幸い、うちもその一研究所に選ばれているんだ。どさくさに紛れて計画に参画できたおかげで、貴重な情報も手に入った。実験に協力してくれるお手伝いも欲しかったし、丁度良かったのさ」

 

 ここで嘘をついても仕方ない。俺は正直に答える。

 

「アンタが何を考えてるか知らないけど、この子たちを利用するつもりなら容赦しないわよ!」

 

「おぉ、怖い怖い……。肝に銘じておくよ。そんなことをしたら、君だけじゃなく上条にも殴られそうだしな。彼女は、那由他ちゃんが使う義体のテスターをしてもらうだけだから、安心してくれ」

 

 少し悪どさを出しすぎただろうか。ミサカネットワークに未接続の9982号は、あの上条と一方通行の戦いの結末を知らない。彼女の不安を和らげるためにも、御坂美琴から『妹達』を肯定する言葉を引き出したかったのだが。

 

「ま、この義体があれば、万が一実験みたいなことがまたあっても、一方通行に勝てちゃうかもだけどね」

 

「……アンタ、その義体は本当に安全なの?」

 

 実験再開への安心材料のつもりだったが、別の意味で警戒されてしまったようだ。

 

「那由他ちゃん本人に使ってもらうものだからな。安全でなければ試したりしないさ。彼女も、他人の犠牲の上に成り立つ成果なんて望まないだろうし」

 

「それだと、アンタは他人の犠牲を肯定してそうに聞こえるんだけど?」

 

 那由他ちゃんとは一度バトったからか、信頼があるようだが、俺には欠片もないらしい。

 

「まさか。できる限り、それは避けたいさ。ただ、この学園都市はそう単純にはできていない……という話でもある。……おっと、こんな話より、そこの9982号の話の方が大切じゃないか? お邪魔したね」

 

 俺は言いたいことだけ言って、そそくさとその場を離れる。

 

「ちょ、待ちなさいよ……!」

 

「お姉様、やはり私と顔を合わせるのは嫌ですか? と、ミサカは不安そうに語りかけます」

 

「そんなわけ……! ……まぁ、さっきの奴のことは、またアイツと一緒に問い詰めればいっか」

 

 逃げながら聞き耳を立てていたが、どうやらまた問い詰められることになりそうだ。9982号を置いていったことで、こちらを追いかけてこないのは幸いだが。

 問い詰められる時は、上条にすべてを押し付けよう。

 それこそが、『誘導』のあるべき形というものだ。

 

 





いつも誤字報告、感想ありがとうございます!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。