禁書厨な俺氏、チート勘違い系オリキャラになる -とある科学の物質誘導- 作:村ショウ
各まとまりごとに那由他ちゃん以外の木原も出したくなるので、前回出せなかった分で今回は円周ちゃんを。
早くも、あの実験から一週間が経った。
上条の奴は、第一位を倒してからというもの、やたらと不良に絡まれるようになったらしい。原作通り上層部から身を案じて提案があったようで、今は学園都市外へ避難しているようだ。そう、今頃はあの神奈川県某所の旅館にいることだろう。
「はっ…はっ…、これはどうかな?」
「うんうん、那由他ちゃんならそうするんだよね!それじゃあ、こっちも行くよ!」
息を切らした那由他ちゃんと、円周ちゃんの楽しげな声が訓練場に木霊する。
「くる…!?」
「うんうん、御坂美琴ならこうするんだよね!」
駆動鎧に搭載されたガトリングレールガンの銃口が、那由他ちゃんへと向けられる。
現在、彼女にはA.A.A. OSを魔術機能不使用の状態で、円周ちゃんと模擬戦をしてもらっている。円周ちゃんももちろん駆動鎧に搭乗済みだ。それも、複数能力再現の『複合型Five_Over』であり、円周ちゃんの各レベル5の動きのエミュレート用に調整した特別仕様である。
「…っ!?」
「はい、そこまで! 一旦、休憩しようか」
勝負ありと判断し、俺は訓練を中断させた。
今回の模擬戦は、那由他ちゃんの判定負けといったところか。
「那由他ちゃんも円周ちゃんも、かなり駆動鎧の操縦スキルが上がってきたな」
「でも、まだまだこのA.A.A. OSのスペックを活かしきれないや」
「うんうん、誘導お兄ちゃんはそうやって褒めてくれるんだよね。木原同士で協力すれば出来ないことはないんだから、那由他ちゃんももっと一緒に頑張ろうね!」
そんな会話をしていた、その時だった。
模擬戦の様子を、那由他ちゃんのAIM拡散力場観測能力を借りてモニタリングしていた俺は、別種の──魔術的な力の重圧を肌で感じた。
そう、この感覚は……あの属性の歪みすら正せるほどの、世界に干渉する大規模魔術。
『大規模魔術を観測。防御術式を構築します。防御対象:木原那由他、木原誘導、木原円周。上位の位階から、そこに住まう存在を引きずり下ろす術式と推定。第二章十一節、結界を張りその影響を緩和します』
那由他ちゃんが搭乗していたこともあり、A.A.A. OSが即座に防御態勢に入る。
『完全防御に失敗。リカバリー術式を構築……成功しました』
『防衛魔術:聖なる刻を示す、黄道十二宮にて分かてを発動。神が創りし星辰を、人が区切り解釈することをモチーフとした結界術式です。これにより、位階の乱れによる影響の緩和に成功しました』
何らかの防御には成功したようだが、『完全防御には失敗』か。
正直、『
「那由他ちゃん、円周ちゃん、大丈夫か?」
「誘導お兄ちゃん、大丈夫だけど、A.A.A. OSが勝手に反応して……」
那由他ちゃんは、A.A.A. OSの誤作動を疑っているようだ。確かに、何の前触れもなく魔術が発動したように見えただろう。
「さっきのは何かな、誘導お兄ちゃん? ……いいや、トレースさせてもらうよ。うんうん、誘導お兄ちゃんならそうする……っ!?」
円周ちゃんの様子が突然おかしくなり、その体がぐらりと傾く。
(しまった、俺が魔術について思考したのがまずかったか……!)
唯一姉さんに利用されて、脳幹先生を思考をトレースした時も気絶したんだった。気をつけておくべきだった。
「円周ちゃん、今すぐ俺のトレースを辞めるんだ!」
俺の静止よりも早く、円周ちゃんは糸が切れたようにその場に崩れ落ちた。
「医務室に運ぶ。那由他ちゃん、手伝ってくれ」
解錠などを那由他ちゃんに任せ、俺は円周ちゃんの体を背負う。下品な話だが、那由他ちゃんとは違う、かすかに柔らかな膨らみが背中に当たる感触が伝わってくる。最低な思考だ。これ以上意識しないようにしなくては。
医務室に着くと、すぐに彼女をベッドに寝かせ、那由他ちゃんと一緒に様子を見る。
「円周お姉ちゃんが倒れたのって、私が受け入れた、あの異質な力と同じ知識に触れたから……だよね?」
那由他ちゃんが、核心を突く問いを投げかけてくる。
「あぁ、そうだ。アレは……」
俺が説明しようとした、その時だった。
「……っ、さっきの思考……何……?」
円周ちゃんが目を覚まし、ゆっくりと身を起こした。
「さっきのは、最近手に入れた『魔術』と呼ばれる非科学的な知識だ。非科学知識は、正しく理解せずに触れると毒になる。化学薬品と同じようなものだな。科学とこの非科学知識は、基本的に相性が悪い。円周ちゃん、もう大丈夫か?」
「うん、大丈夫。でも、誘導お兄ちゃんのそばにいると、なんだか落ち着くなぁ……。理由はわからないけど」
「そう言ってもらえるのは嬉しいが、無理は禁物だぞ」
俺は円周ちゃんの手を取り、安心させるように優しく握る。
……なんだか、那由他ちゃんからの視線が痛い気がする。
「誘導お兄ちゃん。円周お姉ちゃんも、もう大丈夫なんじゃないかな」
那由他ちゃんが、ついに口を挟んできた。これが嫉妬からくるものなら少し嬉しいが、今の俺の行動は円周ちゃんへのセクハラと捉えられても仕方ない。怒られるのも当然か。
「あっ……そうだよね! 木原なら、この程度で狼狽えるべきじゃないよね!」
手を離した瞬間、円周ちゃんはどこか名残惜しそうな顔をしていたが、すぐにいつもの調子を取り戻した。
「それで、誘導お兄ちゃん。さっきの現象について、何か心当たりがあるんじゃないかな? 円周お姉ちゃんが思考をトレースして倒れるくらい、何か考えてたことがあるんだよね?」
「流石は那由他ちゃんだ。今回の事象、A.A.A.のシステム音声、そして記録されたログを今見ていたんだが……どうやら、世界規模の魔術が行使されたらしい。そして、今も俺たちのような一部の例外を除いて、世界はその影響下にある」
俺はまるで推測したかのように、
「魔術って、そんなに大規模なものなの? 能力とは全然、範囲が違う……」
「いや、魔術でもこれほど大規模なものは滅多にない。それなりの儀式場と準備が必要なはずだ。科学で言えば、木山先生が『幻想御手』で能力者を集めてネットワークを構築したように、非科学の力も大規模に使うには、どこかに集約させる必要がある」
「木原として未熟だから、非科学っていうのはよく分からないけど……影響はどんなものなのかな?」
今度は円周ちゃんからの質問だ。
これは良い質問だ。小難しい理論について訊かれるより、実際の現象は説明しやすい。
「円周ちゃんも気になるか。俺の推測通りなら……」
俺は、医務室の壁掛けテレビのスイッチを入れる。
「誘導お兄ちゃん、なんで今テレビを……」
那由他ちゃんが言いかけたその時、彼女も画面の異変に気づいたのだろう。見知ったはずの有名人が、まったくの別人の姿で映っている。もしかしたら、俺たちの知り合いも、いずれ別の人として出てくるかも知れない。
「そう、『姿の入れ替わり』だ。厳密には、魂の椅子取りゲームが起きて、本来の肉体から弾き出された魂が、我先にと空いた肉体に入り込んだ結果、というべきか」
「それじゃあ、今の私たちはどう見えてるの?」
「俺たちは、辛うじて自分の椅子にしがみついている状態だ。だが、影響を完全に防げたわけじゃない。おそらく、他人の役割を上書きされているはずだ。こればかりは、他人から見てもらわないと分からないが……。そうだ、外で待機させていた9982号を呼んで、確認してみよう」
メールで連絡を入れ、9982号を医務室に呼ぶ。
しばらくして、自動ドアが開いた。
「木原幻生……!? いや、9982号か……」
忘れていた。こちらから見ても、9982号が別人に見えるということを。
いきなり、あのマッドサイエンティストの顔が目に飛び込んできて、心臓が跳ねた。
「ミサカをお姉様ならともかく、他の誰かと見間違えるなどあり得ますか? と、ミサカは奇怪な反応を示す
「ん……? 那由他……?」
おかしい。まず、なぜ9982号はこの状況に反応しない?
『御使堕し』の際、土御門が
そして、俺の反応に対して『那由他』と返したということは、俺が入れ替わっているのは……。
「9982号、今、幻影を見せる能力のテストをしてるんだが、俺たちがそれぞれ誰に見えるか教えてくれるか?」
俺は能力テストと称して、確認作業に入る。
「はい。木原那由他、木原円周、木原誘導に見えますが……そういうあなたが、本当は木原誘導なのですね? と、ミサカは確認を取ります」
俺を指して『木原那由他』、那由他ちゃんを指して『木原円周』、そして円周ちゃんが『木原誘導』、つまり俺だ。
あの結界の影響で、この狭い範囲でシャッフルされたのか?
「あぁ、その通りだ。よし、確認は済んだ。ありがとう。……さて、那由他ちゃん、円周ちゃん、ちょっと実験がてら出かけよう」
これ以上ボロを出して今後の関係性にヒビを入れないよう、俺はそそくさと二人を連れて外に出る。
「どうやら、俺たちは三人でシャッフルされる形で入れ替わっているようだ。A.A.A. OSの対策が、椅子取りゲームの範囲を区切るような結界として機能したのかもしれないな。こうなっては、術者も分からない以上、A.A.A.の性能を秘匿するためにも、それぞれが割り振られた役を演じる必要がありそうだ」
「うんうん、秘密兵器がバレるのは避けたいもんね!」
それも理由なのだが、魔術知識を持っていることを知られるのですら怖い。
「黒幕がいるとしたら、影響を受けていない人間を狙ってくる可能性もある。円周ちゃんなら、俺の思考をトレースすれば演技も難しくないだろうが……那由他ちゃんは大丈夫か?」
「大丈夫だと思う。円周お姉ちゃんの知り合いと会ったりしなければだけど…」
「それじゃあ、二人の知り合いとは極力会わずに済む、この現象を解決できる糸口がありそうな場所に行こう。二人とも、学園都市外への外出申請とIDを用意してくれ」
俺は、上条当麻がいるであろう旅館をあらかじめ調べていた。そこへ向かうための手配を進める。
「分かったよ、誘導お兄ちゃん!」
ーとある海辺ー
「いや、だから上やん。俺も
「
友人の言った言葉を繰り返すように上条当麻は質問する。
「ああ、魔術師だ」
土御門元春が上条にそう告げた、その瞬間だった。
「……ここ、かな」
円周ちゃんが、俺のフリをして第一声を放つ。
俺と円周ちゃんは、那由他ちゃんの駆るA.A.A. OSの上に立ち、ゆっくりと砂浜に着陸する。
「貴方は…!?」
神裂火織がいい反応を返してくれる。
以前、インデックスを盾にした件や、『幸運』について煽った件で、彼女のヘイトがかなり高まっているのは分かっていたが、すでに刀に手をかけ、いつでも抜刀できそうなのは流石に怖い。
「まさか、そうだったとはな」
俺に扮した円周ちゃんが、意味深に言い放つ。
「まてまて、なんで木原たちがここに……って、もしかしてお前らも入れ替わってるのか?」
土御門より早く、上条が状況に反応できたようだ。
「上条、入れ替わる……? 何の話だ。AIM拡散力場の凄まじい変動を感知し、その中心を探ったらお前がいた。ただ、それだけだ」
流石のトレース能力だ。ここにいる全員がお互いに本来の姿で見えているはずだが、完璧に『木原誘導』を演じきっている。
「…ん? この中学生くらいのこの子が木原ということは…そっちの方は誰なんだ…?」
上条が円周ちゃんが反応したことで、散々入れ替わりを経験したとはいえ、混乱している
「前に一度会った誘導お兄ちゃんの親戚の那由他だよ。そういえば、名前は名乗ってなかったかな?」
俺は那由他ちゃんを演じつつ、自己紹介をする。
「私の能力で観測したら、明らかに人為的な高エネルギー反応があったんだ。だから駆けつけてみたんだけど……前に会った誘導お兄ちゃんの友達のお兄さんと、炎を使う神父さんだよね? もう一人は俳優の
続けて、友達確認という名目で即時敵対を回避する。土御門の隣にいる大天使の逆鱗にいつ触れるか、分かったものではない。
「俺としては俳優の
「木原、変動を感知したとか言ってたが、なんでこんなところまで来ているだ…? お前も魔術師なのか?」
上条当麻からしたら、土御門も魔術師なのだからそう考えるのも無理はないか。
「俺は能力者だ。魔術師じゃない。……お前が『も』と言ったのが気になるな。まるで、他にそういう人間がいるみたいじゃないか」
俺は土御門のことは知らない前提だから、あえて指摘して怪しむ素振りをしておく。
「あと、全員『木原』だからな。俺たちを呼ぶ時は、名前で呼んでもらえると助かる」
「……誘導、お前たち『木原』が何をしにきた?」
土御門が円周ちゃんというか、俺に問い詰めるように尋ねた。
「俳優なのに木原までご存知とはね。俺にとって、上条は大切な
流石は円周ちゃん、俺の言いたいことを言ってくれる。友達の言い方には引っかかるものを感じたが。
「だが、お前もそこまで入り込んでいるなら知っているはずだぜい。科学と魔術の間の協定を」
「もちろん。唯一姉さんからは、そちら側への過度な接近は警告されている。だが、今は非常事態のようだ。これだけのAIM拡散力場の歪みだ、最低でも国家存亡クラスのエネルギー変動が起きている。多少の無茶は許されるだろう」
「そうか。なら、お前には俺が
土御門が正体を明かしてくれた。正直、色々とドジを踏みそうで怖かったから、ラッキーだ。
「へぇ……土御門がそっち側だったとはな。さっきの反応、あの赤髪の魔術師にしてはおかしいと思ったが……まさか、あのおっかない聖人さんだったか。で、そこの際どいシスター服を着てる子は?」
(よく見ると、かなりセクシーな服だな……。貧乳ではあるが、ボンデージのような意匠と、透けた生地が扇情的だ。金髪にもよく映える。……いや、那由他ちゃんも金髪だから似合うかも、なんて考えてる場合じゃない)
俺は思考を切り替えて、質問の答えを待つ。
「解答一。あなたの視線に何か良からぬものを感じますが、私は殲滅白書のミーシャ=クロイツェフです」
女性はそういう視線に気づくというけど、バレた…!?
那由他ちゃんの方から視線感じるけど、これで入れ替わりバレたりしないよな…?
「問一。あなたの乗ってきた『ソレ』は、一体何でしょうか?」
「これかい? 機密事項も多いんでね。そちらさんには、あまり詳しくは話せないけど、AIM拡散力場の観測機能付きの駆動鎧で、対能力者戦闘
AIM拡散力場の観測機能は那由他ちゃん由来だけど、嘘ではない。魔術特化だから能力者戦闘『も』ではあるが。
「この駆動鎧よりも、こちらとしては姿と認識が入れ替わるとかいう重大案件の詳細が知りたいな」
俺は根掘り葉掘り訊かれるのを恐れて、話を切り替えたのだった。
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