禁書厨な俺氏、チート勘違い系オリキャラになる -とある科学の物質誘導-   作:村ショウ

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一瞬とは言え、久々に二桁位入りの日間ランキング28位!ありがとうございます!

それでは、今回はそれぞれの視点からどうぞ。



30.御使堕し─より天使なあの子へ─②

 

 ─那由他 Side─

 

「この駆動鎧よりも、こちらとしては姿と認識が入れ替わるとかいう重大案件の詳細が知りたいな」

 

 円周お姉ちゃんが、誘導お兄ちゃんのフリをして魔術師たちに返答する。

 正直、お兄ちゃんの視線があの赤いシスター服の女の人に釘付けになっていたのには、少しモヤッとしてしまった。でも、まだ体型的には私に近い人で良かった、なんて考えてしまう自分もいる。

 目の前の神裂というお姉さんみたいな人だったら、私では到底太刀打ちできない。今の白衣じゃなく、あのシスター服なら、お兄ちゃんも……。いや、何を考えてるんだろう、私。あんな恥ずかしい服、着れるはずがない。きっと、目の前の彼女も何か理由があって無理やり着せられているに違いない。あんなものを素面で着られる人なんて、いるはずがないんだから。

 

「問二。その前に、もう一つ疑問点があります。その装置内部に使われている結晶について、知っていますか」

 

「内部構造は秘密なんだがな。変に疑われるのも癪だし、教えるしかないか。AIM拡散力場を収めるために必要な結晶体だよ。他の研究室で使われていたものを、代替品として今は使っている」

 

 A.A.A. OSの中にあるのは、『天使の涙』と呼ばれる特殊な結晶。ルビーのような宝石に近いが、その構造はまったく異なるらしい。そして、かつて私の体に埋め込もうとして失敗した、あの実験でも使われたものだ。

 曰く、『正しく利用すれば天使と会話ができ、失敗すれば確実に死が訪れる』。私の場合は、受け入れる前の段階で体が拒絶反応を起こしたわけだけど。

 

 円周お姉ちゃんがお兄ちゃんのフリをして言ったことは、事前に打ち合わせた通りで間違いではない。でも、それは全てじゃない。この結晶をA.A.A. OSに搭載したのには、まだ別の理由があるはずだ。

 

「解。貴方の発言に虚偽はないと判断します。一旦、あなたへの疑いは下げましょう」

 

 もう少し詳しく聞かれるかと思ったけど、あの赤い服のお姉さんは何か納得したようだ。

 

「この事象についてだったか、誘導。さっきも上やんに説明したが、もう一度聞かせてやるぜい」

 

 金髪グラサンの誘導お兄ちゃんの友達が、説明を始めた。

 その内容は、事前にお兄ちゃんが話してくれたものとほとんど同じだった。一体、お兄ちゃんはどこまで知っているんだろう。

 


 

 ─円周 side─

 

 私は今、誘導お兄ちゃんのフリをしている。

 お兄ちゃんの思考をトレースするのは、他の誰とも違う、特別な心地よさを感じる。思考パターンを学べるのもあるけれど、それ以上に、私とお兄ちゃんだけの感覚に浸れるこの時間が、たまらなく楽しい。

 最近は、私のトレースだけでは読めない思考があるのがもどかしい。お兄ちゃんの全てを、私が把握したい。そのためには、お兄ちゃんが持つ情報を、私も全て知らなければならない。

 私の思考トレースは、確かに物の隠し場所くらいは当てられる。でも、それは『大切なものを隠すなら、彼ならここに隠すだろう』という推測をしているに過ぎない。私が知らない知識、私が知らない場所については、思考することすらできないのだ。

 

 だから、私は誘導お兄ちゃんの全てを知りたい。

 

 かつて、誘導お兄ちゃんは私を退屈な部屋から連れ出してくれた。あの時の、世界が色づくような感覚。それに浸れるこの時間が、愛おしくて、愛おしくてたまらない。

 誘導お兄ちゃんをあんな狭い部屋に閉じ込めたくはないけれど、もっと大きな鳥籠を私が用意してあげられないかな。そこで彼の全てを把握して、私が、誘導お兄ちゃんを管理してあげたい。

 

 ありとあらゆる事象を救いへと繋げたい。お兄ちゃんのその想いはとても素敵だと思うし、彼の助けになりたい。でも、それとは別に、私の手の届く範囲にいてほしい。

 

 木原一族のためなら何でもしたい。でも、それ以上に、誘導お兄ちゃんのためなら、もっと、何でもしてあげたい。

 那由他ちゃんも何か思っているみたいだけど、私の方が先に誘導お兄ちゃんに救ってもらったんだから、悪いけど、先にいただいてもいいよね。

 そのためなら、彼の思考をトレースして、彼の望むように誘導してあげる。そして、彼に助けてもらうためには、もっともっとピンチに飛び込まなくちゃ! 

 

 うんうん、誘導お兄ちゃん的に言えば、『庇護対象』と『主人公(ヒーロー)』、そして『対戦相手の任意選択』の『誘導』だったよね! 

 今度は、私がお兄ちゃんに協力してあげるからね。

 

 私は、目の前で金髪サングラスの怪しい男と話す誘導お兄ちゃんを見据え、固く決心した。

 


 

 ー誘導 Sideー

 

 今回は入れ替わり回であると同時に、原作では水着回でもあるはずだが、那由他ちゃんたちの水着は拝めていない。まぁ、今の状況で着たら、俺は女児水着、円周ちゃんは男の子水着チャレンジをするはめになるのだから、仕方ない。

 というか、事件後は別に水着回でもないし仕方なくもあるけど。

 

「お嬢さん、そっちは男子トイレだにゃー。というか、誘導(・・)なんだろう? お前は入れ替わってないと見た。目的は何だ?」

 

 しまった。

 考え事をしていて、つい癖で男子トイレに入ろうとしてしまった。しっかり役を演じてくれている那由他ちゃんや円周ちゃんに申し訳ない。

 土御門相手に話術で勝てる気はしないが、どうにかしなければ……。

 

「そんなわけ……」

 

「いいや、その反応で分かるぜよ」

 

 とりあえず否定から入ろうとしたが、あっさり見破られた。いや、最初から話す時に那由他ちゃんの名前ではなく、俺自身の名前を呼んでしまっていたのだから、誤魔化せるはずもなかった。

 

「……バレたのなら仕方ないか」

 

 この言葉を皮切りに、土御門の纏う空気が変わったのが分かった。警戒度が一段階、いや、二段階は上がっただろう。

 

「そもそも、どうやって『御使堕し』の影響を防いだ?」

 

 至極真っ当で、当然の質問が飛んでくる。

 

「それは機密事項だ。技術の秘匿、ということで見逃してもらえないか?」

 

「俺はハッキリ言って、お前が今回の犯人でもおかしくないと疑っている。お前ほどの情報網があれば、上やんの両親の情報を調べて、罪をなすりつけることだって可能だからな」

 

「そこまで疑われるなら仕方ない。弁明のために明かそう。統括理事長アレイスター=クロウリーとその直属の『木原』が持つという、対魔術式駆動鎧。その劣化版を開発していてな、それで防いだ」

 

 A.A.A.という兵器は実際に存在している。原作のこの段階でも、土御門なら統括理事長が魔術サイドへの対策を講じていることくらいは承知のはずだ。それを利用させてもらう。

 

「さっきのアレか。ただの駆動鎧ではないと思ったが……。だが誘導、まだ何か隠しているだろう」

 

 土御門は、懐から取り出した拳銃の銃口を、真っ直ぐにこちらへ向けてくる。もはや尋問だ。

 

「そうだな。さっきの子が気にしてた、こんなのはどうだ? 『天使の涙』──」

 

 俺は青く輝く宝石を手に取り、土御門に見せつける。

 

「学園都市で研究中のとある結晶でな。かつて那由他ちゃんに埋め込まれ、彼女の体の七割をサイボーグにする原因となった代物だ。学園都市に似つかわしくないオカルトな話だが、天使と会話ができるらしい。それを埋め込もうとして、彼女は血管が破裂するなど……大変な目に遭ったわけだが──」

 

「能力者が魔術を使う際の拒絶反応と同じ……。ということは、そいつは……! まさか、お前はそいつで『御使堕し』を……いや、あれはあの話が本当なら未完成なはず。なら、そいつで術式を完遂させるつもりか!?」

 

 どうやら、とんだ早とちりをされたようだ。

 

「いや、犯人は俺じゃない。だが、この巨大な力を抑え込むための『保険』にはなるかもしれない、という話だ。それに、未完成と言いつつ、この結晶を怪しんでいた奴こそが犯人なんじゃないか?」

 

 俺はミーシャへ疑いを強める発言でどうにかならないかと思いながら、誘導を仕掛ける。

 

「あぁ、俺たちもミーシャについては疑っている。だが、彼女が犯人でない場合も想定せねばならないからな。現状、お前の容疑が完全に晴れたわけじゃない。知っていることは、今のうちに全て吐いてもらうぞ」

 

「そうきたか。だが、それをされると、妹のような可愛い円周ちゃんや那由他ちゃん達が危険に晒されてしまうな。……そういえば土御門、お前の義理の妹は元気にしてるか?」

 

 バトルや拷問に発展する可能性が見えてきた。最悪を想定し、『誘導』を開始する。ついでに那由他ちゃんたちを「妹のよう」と言うことで、万が一失敗しても、土御門が情けをかけてくれる可能性を少しでも高める。

 

「なっ……!?」

 

「お前も能力者である以上、低レベルでもAIM拡散力場を放っている。そして、学園都市には『能力追跡(AIMストーカー)』なんて、太陽系内くらいなら能力者を追跡できる面白い能力があるのは知っているか? さて、ここにある『幻想御手(レベルアッパー)』と、AIM拡散力場を見れる那由他ちゃんの能力を組み合わせたらどうなると思う?」

 

 俺はポケットからMP3プレイヤーを取り出す。視線誘導だ。その隙に、那由他ちゃんへ退避するよう連絡を入れる。土御門が自らのダメージと引き換えに、魔術で彼女たちを人質に取る可能性もゼロではない。

 

「まさか……」

 

「そのまさかだ。土御門、お前がこの渦中にいることは分かっていた。だから、こちらも犯人かもしれない相手に、人質を用意させてもらった」

 

 こちらだけが人質を持つ状況。それが最も好ましい。これで多少悪感情を持たれても、標的(ターゲット)は俺一人になる。

 

「舞夏に何を……!」

 

「まだ何もしていない。ただ、俺も木原の端くれだ。統括理事長は面白い監視装置を開発していてな。超ミクロな監視カメラを、この街中に無数にばらまいている。それを、土御門舞夏のいる場所で自爆させるだけでも、十分な脅しになるんじゃないか?」

 

 土御門は何かに心当たりがあるのか、ハッとした顔になった。

 

「それ以外にも、うちの『木原』には発火というやつがいてな。そいつなら自然な発火に見せて、どうこうするのは容易だぞ?」

 

 俺は完璧な悪役を演じきり、確実に実行可能な脅しを喧伝する。

 

「うんうん、誘導お兄ちゃんなら、ここで動揺したところを一突きだよね」

 

 ──えっ? 

 突然、背後から円周ちゃんの声が聞こえたかと思うと、目の前の土御門の胸から、白い刃が突き出ていた。

 

 那由他ちゃんに渡していたEqu.DarkMatterの小型携行武器を、円周ちゃんにも渡していた。それを刀のような鋭利な形状にして、背後から……。

 いくら彼の魔法名が『背中刺す刃(Fallere825)』だからって、本当に刺しちゃダメだろ……! 

 土御門を殺るのはまずい。原作的にも、そして上条のヤツに殴られるどころでは済まなくなるんですが。それは。

 

「円周ちゃん、なぜこんなことを?」

 

「さて、障害は排除した。これで心置きなく『実験』できるだろう? だよね?」

 

 円周ちゃんは俺のエミュレーションを続けているのか、俺の口調で語りかける。その姿は、まさしく狂気の『木原』そのものだった。

 

 ナイフのような武器を両手に持ち、返り血を浴びて佇む円周ちゃんは、完全にヤンデレ系ゲームのバッドエンドスチルだ。お揃いで着ている白衣が真っ赤に染まり、可愛さよりも恐怖が勝る。

 だが、理由を聞かなければ。まさか、絵面通りヤンデレで「誘導お兄ちゃんが好きだから殺っちゃいました」なんてことはないだろう。土御門はライバルヒロインでも何でもない。

 

「誘導お兄ちゃんならこうすると思ったんだけど、違ったかなぁ? 安心して、当麻お兄ちゃんの行動も読んで、ちゃんと急所は外してあるから。そうしないと、当麻お兄ちゃんも敵に回っちゃうもんね」

 

 円周ちゃんは、ケロッとした顔で答える。

 これが、『木原』……。いつも那由他ちゃんや普段の円周ちゃんを見ているせいで、木原の残虐性を甘く見ていた。

 

「それなら、よかっ……いや、よくない!」

 

 冷静にツッコミを入れようとしたが、声が上手く出なかった。

 

「うーん、まだ私の知らない理由があるんだね…。うんうん、木原なら犠牲を出してもトライアンドエラーだよね!」

 

 そういう話じゃない気がするけど、今は土御門不在でこの事件を解決しなきゃいけない可能性が出てきた以上、今後の対策を考える必要がある。

 

 とりあえず、土御門には手当をしなければならない。明らかに低レベルの肉体再生(オートリバース)でどうにかなるような範疇じゃない。

 

 俺は急いで土御門の手当てをするために、風紀委員(ジャッジメント)でも使われる応急箱を取り出しそうとする。

 

 それよりも早く動いた存在がいた。それは──

 

 





評価、誤字報告、感想、いつもありがとうございます!

円周ちゃんって、他人の思考のエミュレーションができることを考えると、自分を隠すのが上手いと思うんですよ。
エミュレーションがやり方的にたまに本音が漏れ出ちゃいそうですが。
なので、隠れヤンデレ気味の円周ちゃんとか良くないですか??

ちなみに、この話ではPSPゲーム登場の天使の涙という霊装を、那由他ちゃんに使われたことにしています。
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