最近、息子がなにか始めた。
内容はよくわからない。だけど、部屋に引きこもりがちになって、ふとした時に何かを考え込むようになったのは確かだ。
しかも、アルバイトまで始めた。この前、お金稼ぎたいからと、口座開設の許可をお願いされたときは驚いたものだ。
息子は変わった子だ。
幼い頃からそうだった。やるべきことはしっかりこなすが、どこか無気力に思えたのだ。夫は、生きがいを無くした社会人と評していた。実の子にそれはひどくないだろうか?
そんな息子が、自主的に何かを始めた。
夫は、ゲームにでもハマっているんじゃないかと言った。
納得した。確かに高校生ならおかしくない。今まで何事にも無関心だった息子にも、ようやく興味をそそられるものが出来たのだと喜んだ。ただ、課金には気を付けてほしい。
しかし、息子がホームセンターで買ってきたものを見て、首を傾げた。
私も夫も、ゲームには詳しいとは言えないものの、細い木の棒やノコギリ、プラスチックの板なんかをゲームに使うとは到底思えない。
ゲームじゃなくて、工作に興味があるのだろうか?
思い切って聞いてみる。
「拓人、これ何に使うの?」
「ああ、こいつらで船でも作ろうと思ってな。」
「……ふね?」
「と言っても、ただのラジコンだよ。動画で見てね、せっかくだから自分でも作って見ようかと思ったんだ。」
そう言って、そそくさと部屋に行った。
息子が工作に興味があったなんて知らなかった。あまり良くない考えかも知れないけど、ゲームじゃなくて良かったと思った。課金の繰り返しで、多額のお金がなくなってしまうのは不運な事だろう。
いや、工作のほうがお金がかかる気がする。まあ拓人は、昔から計画的に物事をこなしていたし、アルバイトも始めた。上手くやるだろう。
だからこそ、違和感を感じた。
夫は酒好きで、極たまにではあるが、内緒で馬鹿高いワインを買うことがある。そして、その時は決まって顔が少しこわばっていたりするが………
息子に後ろめたいことは無いはずなのに、その顔に少し似て見えたのは、なぜだろうか?
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やはり時期尚早だろうか?一人暮らしするまで待つべきだったか?
親の目から隠すのは難しい。聞かれたときはヒヤリとした。事前に言い訳を考えていなかったら危なかった。
現状、飛行機作りは誰にもバレていないと思う。何だったら、空に興味があることすら知られてないだろう。なぜなら、空に関することの一切を、インターネットで調べていないからだ。
この世界にも、飛行船やロケットが存在する以上、航空力学は存在するはずだ。
しかし、わけの分からん組織の存在を否定出来ない以上、検索することでこちらの存在が露呈するのは避けたい。本当にそんな組織がいるかも確証が取れないが、用心に越したことはない。
あと、調べたら負けた気がする。だから嫌だ。
駄目押しとばかりに、カバーストーリーも用意した。
おかげで船まで作るハメになったことには目をつむる。
…… いっそのこと、水上機にしてみよう。フロートを分散させてやれば、離水ならともかく、着水するのは難しくない。はじめは手で投げ飛ばせばいいだけだ。
ひとまず、機体のラフ図をかく。
作るのは3hcラダー機だ。
機構は船のラジコンのを調整して使う。通信関係までいちいち作ってられない。
機体は、細い角材を、伸びない釣り糸(PEライン)で補強して胴体を作る。バッテリーなどの重量物を可能な限り下に配置して、重心を下げる。配置場所も調整できるようにしよう。
翼はプラダンを湾曲させて作る。長方形のプラダンに、等間隔でリブ(という名の翼型に合わせてカットした角材)を縛り付けるだけ。
湾曲させることで強度を持たせる。この方法だと厚みのない薄翼しか作れないがいいだろう。このサイズならこれ以上の構造材はいらないだろうし。
飛行性能を競うならともかく、ただ飛ばすだけなら、これで十分だ。
基本的な骨子は固まった。
後はサイズと翼型を決めるための風洞実験と、プロペラの製作だ。あと、機体を飛ばす場所を探さなければいけばい。
わかっていた事だが、何気に大変な作業ばかりだな。
自分は、模型グライダーは作ったことはあります。しかし、動力付きは作ったことはありません。
おかしな箇所があっても、生暖かい目で見てください。
できれば、高評価、コメントおねがいします。